ラストナイト・イン・ソーホー
Last Night In Soho
2021
イギリス
エドガー・ライト 監督・脚本
クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 脚本
エドガー・ライト 原案
スティーヴン・プライス 音楽
トーマシン・マッケンジー、、、エロイーズ・ターナー(デザイナー専科の学生)
アニャ・テイラー=ジョイ、、、サンディ (1960年代の歌手志望の女性)
マット・スミス、、、ジャック(60年代のナイトクラブのマネージャー)
ダイアナ・リグ、、、ミス・コリンズ (エロイーズの下宿のオーナー)
リタ・トゥシンハム、、、ペギー・ターナー(エロイーズの祖母)
テレンス・スタンプ、、、銀髪の男、刑事
マイケル・アジャオ、、、ジョン(デザイナー専科の学生、エロイーズの彼氏)
シノヴェ・カールセン、、、ジョカスタ(デザイナー専科の学生、エロイーズを馬鹿にする)
マーガレット・ノーラン、、、セイジ・バーメイド(エロイーズのバイト先のパブのオーナー)
トーマシン・マッケンジーは「オールド」でこれは間違いなくブレイクする女優だと思ったがしっかり難しいヒロインを演じ切っていた。
彼女と共にヒロインを演じるのがSF映画に幾つも主演しているアニャ・テイラー=ジョイ。相変わらずのビビットなオーラ。
主演がこの二人なら、ゴージャスなものになるはず。
とは思っていたが、不思議な、これまで観たことの無い感じの映画であった。
エロイーズは、ロンドンのデザイナー学校に受かり有頂天になって故郷を後にする。
しかし祖母が送り出す際、あなたの(見えてしまう)能力には気を付けてねという忠告をした。
(当然、お化けでも見えるのだろうと思ったのだが)。
学生寮のルームメイトがいじめっ子の為、外に部屋を借りてみると、1960年代に生きる女性と夢の中でシンクロしてしまう。
その女性が死んでいるとは限らない。まさにその女性の生きる空間に投げ出されるのだ。
部屋に沁みついた記憶像とでもいうようなサンディという女性と彼女を取り巻く世界にエロイーズも影のように入り込んでしまう。
サンディが煌びやかなナイトクラブで鏡を背に踊ると映った姿がエロイーズなのだ。何とも面白い鏡像関係。
サンディが男性客と踊れば、ターンの度にエロイーズに代わったりする。鮮やかな手際の絵であった。
60年代ポップは然程、これといった郷愁を誘うものはなかった、、、。塩化ビニールのレコード盤は良い味を出している。
ロンドンの古い歴史ある下宿とあらば、これまでに様々な人が借りてきたはずである。
殺人事件も一件や二件では済まないかも知れない。
そうした情報が何となく事前に入っていて、幻視と睡眠時異常行動などのある意味認知症とも取れる症状にも絡んだものか。
だが、、彼女は、まだ若い。
しかし霊視というものとも異なる(自殺したママは見えるが、これも幻視ともとれる)、ここでは他人の一時期の生活を共に追体験するのだ。
終盤まではエロイーズが一方的にサンディの生活を寄り添うように観察していて、彼女は見られていることを全く知らないのだが、下宿のオーナーこそ今現在のサンディであることが判明してからは双方向関係~現実の関係となる。
そしてそれまでは悪夢の中で遭うだけのサンディを散々食い物にして来た男たちが、まるでフランシス・ベーコンの絵から抜け出て来たような顔を失った姿でエロイーズの白昼の世界にも侵食して来るのだ。
もしや作者はロンドンの魔界性をこそ描きたかったのか。ロンドンの夜の不穏な街はタップリと描かれていた。
しかしずっと続くこの能力~症状は何なのか。そこが微妙である。
当人にとってその「力」は、日常の平穏な生活を脅かし不穏で不安定なものにする作用しかない。
後半はもう半狂乱で、恐怖に圧し潰されそうになっているではないか。
明らかに要らない捨てるべき、治療すべきものであろう。
周囲は田舎出で60年代趣味のエロイーズを見下し冷たくいつも陰口をたたいている。
彼女には居場所がない。そして夜にベッドに入れば、悪夢のサンディの世界に突き落とされる。
表面的には煌びやかな、搾取と欲望の渦巻く泥沼の世界だ。
そこにあって、唯一の救いは、何かとエロイーズのことを気にかけ心配してくれる心優しい同じクラスのジョンの存在だろう。
彼がいなければ、ホントに彼女は独りボッチである。
兎も角、幻視では、ジャックにベッドでめった刺しにされて殺された、搾取されて果てた哀れなサンディは、実際は自分を貶めた男たちを悉く殺害して、下宿のオーナーとして生きていたのだ。ではあの幻想とは、、、何であったのか。
(そして死体を床下に放り込んで隠すというのは、他の映画でも観たモノだが、腐乱の悪臭をどうするのか)。
しかしエロイーズは彼女が大舞台の歌手としてデビューすることを願っていたにも拘らず貶められ娼婦に仕立てあげられたことを知っており、彼女に深く同情している。
最後は、下宿が出火しサンディがナイフで自殺を図るのをとめたエロイーズであるが、結局彼女を心配してやって来てサンディに刺されたジョンを助けて、下宿はサンディもろとも燃え尽きる。
エンディングは、一年生エロイーズのコレクション発表が皆に絶賛されているところで終わる。
あれまあ、という感じ、、、。
それにしても60年代ってこんな時代~雰囲気であったか?
何とも言えない不穏で甘味で猥雑な空間だ。
わたしにとって、トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイの華やかでスタイリッシュな絡みを見て楽しむ映画であった。
絵的に見事。
今日観たもう一本が「樹海村」というものであったが、久々に見る駄作の見本みたいな映画であった。
SUICIDE FOREST VILLAGE 2021
清水崇 監督
保坂大輔、清水崇 脚本
山田杏奈、山口まゆ、工藤遥、、、
一体どういう本なのか。基本となる世界観がまるで出来ていない。
こんな作品に山田杏奈を出さないで欲しい。
書く気にまるでなれなかった。
Wowowにて
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