イカリエ-XB1
Ikarie XB-1
1963年
チェコスロバキア
インドゥジヒ・ポラーク監督・脚本
スタニスワフ・レム「マゼラン星雲」原作
ズデニェク・リシュカ音楽
ヤン・カリシュ撮影
ズデニェク・シュチェパーネク 、、、アバイェフ艦長
フランチシェク・スモリーク 、、、アントニー
ダナ・メドジツカー 、、、ニナ
イレナ・カチールコヴァー 、、、ブリジタ
ラドヴァン・ルカフスキー 、、、マクドナルド副艦長
オットー・ラツコヴィチ 、、、ミハル
独特のヒンヤリとしたハーフトーンの金属的な質感である。
金属製の製氷器みたいな宇宙船にパトリックという年代物ロボットなど、、、。
ジュールベルヌやメトロポリス(フリッツ・ラング)から流れてきてチェコに発芽したものだと思うが、それにエポックメイキングなサウンドが絡む。
音響・音楽がこれぞチェコという素晴らしいもの。
イジー・トルンカの流れをくむ独自の伝統を感じるが、ここでは円谷の宇宙ものの効果音も彷彿させるゾクゾクくる音が全編を通して鳴り響く。
アルテュール・オネゲルの音も流れたか。彼らは20世紀の良い遺産として彼の音楽を語っていた。趣味が良い。
それらが一体となり、ヤン・シュヴァンクマイエルなどにも通じる禍々しさやエイリアンにも接続する物質的なフェティシズムに充たされる。
チェコはわたしに、特別な文化的基調を齎している。
そうショーペン・ハウアーとともにわたしに多大な衝撃を与えたフランツ・カフカもチェコの作家であった。
2163年、、、宇宙船イカリエ-XB1に乗って、、、
ケンタウルス座α星系に高度な知的生命体とのファーストコンタクトを求めた人類の物語である。
船内には広いトレーニングスペースやピアノも置かれ、音楽や会話が絶えない。
ここは三重連星でありケンタウルス座α星A、ケンタウルス座α星B、赤色矮星のプロキシマ・ケンタウリで成り立つ。
プロキシマ・ケンタウリの惑星プロキシマ・ケンタウリbが地球型の生命惑星の候補として取りざたされたことは記憶にも新しい。
(何とタイムリーな)。
1960年代にこの着想も素晴らしいが、原作がスタニスワフ・レムであれば納得。
(ポーランドの先鋭的文学~SFも音楽ともどもわたしの新たな原風景を形成したものだ。「シルバー・グローブ/銀の惑星」も何故か思い出した。SFのもう一つの流れを強く感じる)。
アルファケンタウリ系にあって惑星探査中に、彼らが地球の歴史上もっとも忌み嫌う20世紀を象徴する遺物~幽霊宇宙船に出逢う。
乗組員の死体からその世紀を象徴する醜い欲望からくる争いの跡が見られる。
彼らはアウシュビッツや広島の歴史的事実に想いを馳せる。
そして残されていた核弾頭の誤爆により、調査に出向いた二人のクルーが犠牲となる。
重苦しい空気に沈むが、オネゲルも20世紀の音楽家だ、と気を取り直す。
とって付けたような場面ではあるが、未来に向かう途上での過去の総括のような面白いエピソードだ。
例の音楽による船員40名ほどのダンスパーティーが開かれる。
まさに宇宙空間に相応しいコズミックダンスである。
とてもこそばゆい感覚のダンスだ。
そして船外活動したクルー二人が宇宙線に被爆し重傷を負いパニックを引き起こす。
ダークスターの放射線の影響で船内のクルー全員が眠くなり、人の心に迷いが生じ混乱が緩く沸き起きる。
地球に帰還するかどうか判断を迫られるが船長はそのまま探査を続行する意向を示す。
そんな中、やがて全員が眠ってしまう。
それを救ってくれたのが探し求めていた知的生命の住む惑星~ホワイトプラネットであった。
彼らはイカリエ-XB1を見出し、力場によってダークスターの放射線から船を守ってくれたのだ。
これは歓迎の印ではないか。
目覚めて集まって来たクルーたちも、その美しいホワイトプラネットに目を見張る。
人類初の宇宙空間における出産とファーストコンタクトに対する感動と希望に湧く船内の様子からエンドロールへ。
最近ではほとんど味わえない未来への希望に充ち溢れた前向きなエンディングであった。
「われわれは後1時間で地球ではない地に降り立つのだ」
ともかく、音響・音楽にこの機械~ロボットなどのマテリアル感を充分に堪能したものだ。
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