人狼ゲーム マッドランド
2017
綾部真弥 監督・脚本
浅川梨奈、、、小池萌(用心棒)
松永有紗、、、佐藤彩乃(預言者)
門下秀太郎、、、周太樹(狂人)
飯田祐真、、、中川未来(人狼)
栗原吾郎、、、宇佐美慧(狂人)
以前、古畑 星夏主演の「人狼ゲーム ラヴァーズ」というのを観たことから、似た感じを期待して観てみた。
夏場に良いような気がしたので。
人狼ゲームというゲームが元々あるそうだ。
このシリーズ映画もこれで6作目を数えるらしい。
死闘を演じなればならない前提から始まるところやほとんど生き残れないところ、特権的な観衆の存在などが先日観た「ハンガーゲーム」にも通じる。
突然、ゲームをするビルに監禁され、首輪を付けられている。ルールを無視したり逃げ出そうとするとそれが締まって殺される。その一部始終をカメラで鑑賞するゲーム管理者~観衆がいる。昼の投票と夜の人狼の襲撃でひとりひとり、自分が生き残るために誰かを殺して勝ち残ろうとする。勝者には褒美として1億円が与えられるという(安い)。
「ハンガーゲーム」と最も異なる部分はディベートにも似ているところか。ともかく相手を言いくるめて騙すことで生き残るしかない。腕力や体力、体術などは関係ない。指定の武器はサバイバルナイフひとつである。
はっきり極限状態である。各自の本性が曝け出される。それは無理もない。またこんな状況下で冷静に生き残る策が立てられるだろうか、それすら疑問である。パニックになって発狂してもおかしくない、、、。
しかし本作は、メンバー構成が「ラヴァーズ」とかなり異なり、人狼ゲームというのは、その構成が変えられルールもそれにより変化するものであることを知る。(まだ二つしか観てはいないが)。
要素の動き方と要素間の協力関係もそれに従い変わることになる。
人狼 1 狂人 7 預言者 1 用心棒 1という構成である。
ちなみに、以前観た「ラヴァーズ」は、、、
人狼2 村人5 予言者1 霊媒師1 用心棒1 キューピッド1であった。
(ほとんど忘れていたため確認に手間取った(笑)。
これを観ると人狼、預言者、用心棒以外は任意に要素を決められる(加えられる)ようでありルールもその分複雑になる。当てられる人数もそれぞれ任意のようだ。
その時のテーマで「マッドランド」では上のように、「ラヴァーズ」では下のように組まれたということになろう。
人狼ゲームの基本は、村に紛れ込んだ人狼と思しき人物を昼間村人が投票(多数決)によって処刑し、夜は人狼が村人の誰かを襲って殺すもののようで、人狼を皆殺せば村人の勝利となり、人狼と村人の数が同数になった時点で人狼の勝ちとなる。
負けた者はその時点で殺されていなくともその場で首輪が締まって死ぬ。
用心棒は夜、村人の誰か独り人狼から守ることが出来る。自分の部屋でそれを指定する。ここでは対象は預言者しかいないが。
預言者は人狼が誰かを知ることが出来る人のようだが、今回見た限りでは人狼と名乗った人がそうでないことを知るにとどまっていた。
狂人は、誰が人狼なのかは知らないが人狼に加担する役割であり、人狼の勝利により勝つことが出来る。人狼グループの村人と謂える。
今回の「マッドランド」では、普通の村人はおらず、狂人のみで構成する狂人村である為、初っ端から人狼がカミングアウトする。
俺の言う事を聞けと。言う事を聞かないとお前を襲うぞという感じで威張り散らしている。その虚勢が効果的でもあった。
普通の村人が多数の中で人狼であることが発覚してしまえば直ちに村人の投票で昼の内に殺され勝負がついてしまうだろうが、今回は立場がノーマルな場合と逆と謂えるか、、、(良く知らないが)。
つまり、狂人が7人に人狼が1人の8人グループ対預言者と用心棒の2人組という対戦関係と謂えよう。
過半数が狂人である環境において、人狼は名乗り出ることで安全が保障されるうえに、うっかり人狼と知らず投票してしまえば、狂人は皆死ぬ運命となるので人狼がはっきり分かることは、狂人にとっても、もっとも重要なこととなる。
だから人狼は圧倒的に有利な立場である。
だが、ここでは最初のルール説明のTV画面に一人しかいないと示されていた人狼が二人名乗り出ている。
主人公の女子が用心棒であることを視聴者側~こちらは知っている為、もう一人の人狼を主張する(もう一人のヒロイン)女子が預言者かなと思われる。当然、狂人~人狼グループを騙さない事には生き残れない。人狼を何とか処刑するところにもってゆくにはかなりの困難がある(8対2は大きい)。
預言者は、用心棒も狂人も見分けがつかないようなので、はっきり言って最も無力な存在とも謂える。その為、はったりで人狼だと名乗り随分頑張るがこれはかなりシンドイ。だが、そこに用心棒のヒロインが見通しあなたを守ると持ち掛けてきて、わたしたちがマイノリティ2人組であることだけはバレない様にしようと結託する。ただし用心棒は自分を守ることが出来ない。ずっと預言者を守り続けることは無理であろう。
だがそこでこの用心棒女子は自己犠牲の精神で本物の人狼が彼女を殺しに現れた時、自分の頭部をリモコンで激しく打ち付け、ナイフの柄で強打されたことを装い窓の下に自ら転落して絶命する。事前に預言者(偽の人狼)に柄の潰れた証拠ナイフを手渡し、彼女の制服のスカーフをポケットに忍ばせておいて、転落時にそれを掴んで落ちたことにした。更に予め最後の投票に当たって、一人の狂人女子に自分が死んだときに必ず誰が殺したかの痕跡を残して死ぬと告げておく。
用心棒の亡くなった次の昼の投票の際、痕跡のあるナイフを調べた狂人女子は、用心棒の思惑通り本物の人狼を処刑の対象とする。
人狼が殺されることで残った狂人は死に、最も弱い立場の預言者女子が独り生き残った。
何故、用心棒女子はそこまでのことをしようとしたのか、、、。
彼女は預言者女子にそれを問われた時、突然こんな境遇に拉致され殺し合いを強いられることになったとはいえ、こんなところにあっても自分の生きた意味を見出したい、と述べる。圧倒的不利の預言者を救うことがそれであったのか、、、。
恐らくそれ以上の選択はなかったのだろう。
われわれが今の生において果たしてこれよりましな選択をして生きていると謂えるかどうか、、、。
ただ預言者女子はこの構成員のなかでは特異な精神性をもった用心棒女子に寄りかかり助かったようなものである。
かなり血生臭い中から独り生き残り、、、。
これから1億円ばかりもらって彼女はどう生きてゆくのか(いや、いけるのか)、と余計なことも思ってしまった。
やや、W主演の女子のインパクトが弱い感じがした。
主演で見れば前作の古畑 星夏の存在感が際立った。