グランド・ブダペスト・ホテル
The Grand Budapest Hotel
2014年
イギリス・ドイツ
ウェス・アンダーソン監督・原案・脚本・製作
アレクサンドル・デスプラ音楽
シュテファン・ツヴァイク(オーストリア)の小説にインスパイアされる
レイフ・ファインズ 、、、ムッシュ・グスタヴ・H(名コンシェルジュ)
F・マーレイ・エイブラハム 、、、ミスター・ゼロ・ムスタファ(グスタフの後継ぎ、現ホテルオーナー)
エドワード・ノートン 、、、ヘンケルス
マチュー・アマルリック 、、、セルジュ・X
シアーシャ・ローナン 、、、アガサ(ゼロの妻)
エイドリアン・ブロディ 、、、ドミトリー
ウィレム・デフォー 、、、ジョプリング
レア・セドゥ 、、、クロチルド
ジェフ・ゴールドブラム 、、、代理人コヴァックス
ジェイソン・シュワルツマン 、、、ムッシュ・ジャン
ジュード・ロウ 、、、若き日の作家
トム・ウィルキンソン 、、、作家
ビル・マーレイ 、、、ムッシュ・アイヴァン
オーウェン・ウィルソン 、、、ムッシュ・チャック
トニー・レヴォロリ 、、、若き日のゼロ
豪華キャスト。
注目のシアーシャ・ローナンやチョイ役でレア・セドゥを使っている。
贅沢である。
若き日のゼロと名コンシェルジュのグスタヴふたり(今風に謂えば相棒か)の珍道中いや奮闘劇である。
独特の映像美を愉しむ映画
何かをこの映画を通して知るというのではなく、映画自体を心地よく味わう為の作品である。
謂わば映画の快楽を知る映画と言えよう。
その点ではティムバートンを思い浮かべるところ。
ピンクや赤の目立つとてもお洒落でとてもアーティフィシャルな模型的世界が展開される。
現代と30年代、60年代の時間軸に分けて描いており、30年代は画面フォーマットがほぼ四角である。
こんな演出も心憎い。
ここでも伝統的な映画と同様、汽車が重要な場面で、主人公たちを運んで行く。
大切な話はそこでなされ、その進行が運命をも左右する。
雪の中、途中で彼らの行く手を止める者は、文化を破壊するファシストである。
主人公は、2度目の強制停車時に撃ち殺されてしまう。
ズブロフカ共和国という架空の国が舞台。
オーストリア・ハンガリー的な匂いがする映画だ。
丁度、カフカが小説を密かに認めていた時代に重なる。
じわじわと迫り来るファシズムの恐怖は描いているが、どこをとってもコミカルで軽快でスピーディな展開だ。
そして甘味な「絵」である。
脱獄シーンがこれ程、軽やかであっさりしたものは見た事ない。
逃避行中のコンシェルジュ同士のネットワークなども、とてもコミカルで面白い。
暗殺者に追われるロープーウエイやソリのシーンも、スリルとか臨場感・緊張感とは異なる独特の雰囲気と距離感を覚えた。
思い返せば殺害シーンがかなりあったにも関わらず、とても愉しい。
グスタヴは余りに有能なコンシェルジュのため、彼に心酔する大富豪に遺産を残されてしまい壮絶な遺産相続に巻き込まれる。
逆恨みの富豪の息子の陰謀にはめられ遺言を実行する弁護士他重要人物も次々に殺害されてゆく始末。
彼も何と富豪殺害の冤罪を着せられ逮捕、投獄される身となる。
だが獄中でも何故かコンシェルジュ風の役目をやりながら、獄中の人々にも慕われ首尾よく脱獄出来る。
逃走のため迎えに来たゼロが香水を忘れたことで激怒してみたり、お洒落なのか間が抜けているのか分からぬ部分もある。
その後もふたりで殺し屋に追われる、、、。
グスタヴはそのコンシェルジュとしての人望が余程篤かったのか、危ない目に逢いながらも人々のネットワークで逃げおおせてゆく。
ドタバタの群像劇なのだか、品が良く何かと綺麗なのだ。
相続した名画の裏に破棄された遺言のコピーが隠されていた事を知り、それによって彼は名誉を挽回し、文章通りに莫大な財産とヨーロッパ随一の名門グランド・ブダペスト・ホテルも自分の所有物となる。
文字通りの大金持ちとなり、ゼロはその後継人と決まる。
しかしファシズムの台頭と戦争突入により、グスタヴの国が消滅するに及んで、彼も消えゆく運命にあった。
何といっても、レイフ・ファインズとトニー・レヴォロリの息のあったコミカルだが気品ある掛け合いが愉しかった。
それが映画自体の軽快なテンポに見事に結びついている。
そして隅々まで行き届いたアーティフィシャルな絵作りである。
本当の意味で、ここちよく見易い映画であった。
バラライカによって奏でられる音楽がとてもマッチしていた。
それから、ホテルのあるというアルプス山脈周辺が、イバラードそんまんまである。
これは流石に笑った。
、、、特別なセンスが感じられる。
この監督の作品はまた観てみたい。
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