台風クラブ
Typhoon Club
1985
相米慎二 監督
加藤祐司 脚本
三枝成彰 音楽
三上祐一、、、三上恭一(野球部3年、理恵の恋人、優等生)
紅林茂、、、清水健(野球部3年、美智子に片思い。サイコ気味)
松永敏行、、、山田明(恭一や健の友人)
工藤夕貴、、、高見理恵(恭一の恋人)
大西結花、、、大町美智子(優等生で潔癖症。恭一のことを慕う)
会沢朋子、、、宮田泰子(演劇部3年。由美と同性愛関係)
天童龍子、、、毛利由美(演劇部3年)
渕崎ゆり子、、、森崎みどり(演劇部3年、泰子と由美とつるむ)
三浦友和、、、梅宮安(恭一のクラスの担任、数学)
尾美としのり、、、小林(東京で理恵をナンパした若者)
鶴見辰吾、、、三上敬士(恭一の兄。大学生)
寺田農、、、清水留造(健の同居人)
小林かおり、、、八木沢順子(梅宮の恋人)
石井富子、、、八木沢勝江(順子の母)
確かに台風はワクワクする。
それから長回しが印象的。
Barbee Boysは、導入にピッタリフィットしていた。
夜にプールに忍び込んで泳ぐと言うのは気持ち良かろう。
星空仰げばホント怪しくてガイアとの一体感も生まれるかも。
しかし田舎町の日常は退屈みたいだ。
学校の授業はほぼ成り立っていない。チャンと聞いている生徒は僅か。
そこへ非日常的な乱入がある。
訳の分からんおばちゃんたちが、数学の授業にいきなり入って来て先生を責め立てる。
先生は閉口、生徒は混乱。この土地柄ならではなのか、まさか時代の問題ではない。ともかく普通あり得ない乱痴気騒ぎ。
感性の鋭い生徒~高見理恵が台風を待ち望むのは、分る。
閉塞感と劣情の嵐ではたまったものではない。
わたしも台風は望んだものだ。
「ただいま。おかえり。」を繰り返す清水は危ない。
サイコ野郎だ。間違いない。
片思いの相手、大町美智子の背中を理科の実験中に大火傷をさせる。
これに対し被害届を出さず、養護教諭が反省しなさいレベルで終わりは流石に無かろう。
保護者にも謝罪は当然で、傷害罪で訴えられても当然と言うところだが、何か変。
このサイコ男、後にもホラーをやらかす(かなり濃厚な怖いホラーだ)。
不穏な空域が濃くなると強風になり雨も降りだす。台風にもなって外もまともに歩けなくなる。
この辺、長回しと相まって彼らの心象風景の反映~重なりとなるところ。
ずっとこのトーンが続く。
抑えられたワクワク感である。
学校は他の教員はいるのだかいないのだかという感じで、梅宮Tのいい加減な対応が目立つ。
生徒が家出しても学校は関係ないの一点張り。
台風が来て生徒が全員下校したかの確認なくさっさと教員が施錠して帰ってしまう。
帰ったら梅宮は自分の部屋で授業中に乱入してきた母娘とその叔父?らとカラオケ宴会で酔っぱらっている。
その間、閉じ込められた生徒たちが、野球部の三上とサイコ清水に演劇部の宮田泰子と毛利由美と森崎みどり、更にまたも清水に迫られ逃げ惑い暴力も振るわれた災難続きの大町美智子である。
清水は美智子の背中を見て泣き出す。2人で泣く。何故か残っていた三上が来て何とか落ち付く。
しかし今このサイコ役が出来るのは、清水尋也くらいでは。
そして彼らは観念して学校に籠ることに。
体育館に集まり再びBarbee Boysの二曲目のチューンでご機嫌に踊ってみたり、適当に暇つぶしたりで緊張感は無い。
同性愛の女子二人は緊張感よりそちらの方で恍惚感に浸っている。
一方、家出した高見理恵は東京に行き、声をかけて来た男と過ごし赤いドレスを買って台風でどうにもならず男のアパートに逃げ込む。彼女が東京に出たのは恋人の三上が東京の高校に進学を決めていたからだ。自分も何にも囚われずに外に出たい。
どちらも台風の為に閉じ込められるが、、、。
真面目な三上はそれぞれの家に電話連絡しようとするが美智子に止められる。
理恵の家に連絡するがまだ帰っていないということで、考え詰めることになる。
何で俺たちはこんな風になるのだろうと。
皆、煮詰まって来る。
担任の梅宮に連絡するともうへべれけで知ったことではないというもの。ここで三上も呆れ果てた返答をすると「お前は後15年経てば俺になる」と言われ電話を切る。ここで決別である。
その後、彼ら学校組は下着姿で台風の中、「もしも明日が…。」を唄いながらの狂乱の踊りである。
まず一人では出来ないがみんなでやれば怖くないというところか、終盤は下着も脱いでいたような。
一種のイニシエーションでもあろうか。
理恵も男のアパートを深夜台風の中一人出て帰宅することにする。
台風で電車は止まってしまったが翌朝には何とか帰り着く。
深夜ずっと寝ないでいつものように哲学的に考えあぐねていた三上はある結論に達する。
窓際に机と椅子を高く積み重ねその天辺に座ると朝方皆を起こす。
「今からいいものを見せてやる。皆が何故こうなったのか分かった」と言って、「厳粛に生きるために、厳粛な死が与えられていない。皆の為に死んでみせる。死は生に先立つ」と言った瞬間、窓から飛び降りた。
驚愕した彼らは咄嗟に窓に張り付く。
台風で水の溜まったぐちゃぐちゃな校庭に彼は真っ逆さまに落下し二本の脚が地表に突き出ていた(笑。
下に降りて来た学校組はただ口をあんぐり開けて唖然とするのみ。
理恵も休校となった学校に向かう山田明に出会い一緒に泥水に嵌りながら校舎を目指す。
台風の通過した後の空はやたらと明るい。
もう全員びしょ濡れ映画。
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