実相寺昭雄の不思議館 思の巻
1992
実相寺昭雄 総監修
スティーグリッツ 音楽
「時の鉱石」
油谷岩夫 監督:・脚本
「顔面喪失」
原口智生 監督:・脚本
「漁火」
小林浩一 監督
:遊法仁 脚本
「ワン・コイン・ドリップ・ドリーム」
高橋巖 監督:・脚本
4編からなるオムニバス映画。
逆木圭一郎
中山昭二
実相寺吾子
李星蘭
下絛正巳
手塚真
寺田農
伴みゆき
光益公映
日高俊樹
風見しんご
実相寺監督の企画のもと、若手監督が集まり作った映画だそうだ。
実相寺監督の作品だと思って観たのだが、、、大変微妙なものであった。
わたしとしては、実相寺監督と言えば「ウルトラマン」なのだが、、、。
何とも言えない作りだが、VFXがやたらとショボい。
しかしBGMはかなりのもの。現代音楽である。
物語の案内役を寺田農が演じる。常盤台蓑作博士として。
震災や戦争でも変わらなかった東京の街が、本当に変わってしまったのは1964年のオリンピック~高度成長期からだと。
都市の変容と記憶と喪失の問題。
実相寺監督は、昔の空気、無くなった風景を定着させたいのだと言う。
都心のビル街、高架橋などが執拗に映される。
「時の鉱石」:
「鉱石ラジオ」自体に興味は引かれるが、30年前のニュースが流れるというのも絶妙。
30年前のニュースでも、最近の出来事のように受け取れる場合がある。
それに宛てた話題のチョイスも良かった。流行歌など特に昔の曲を流すこともあるし、いつの放送か判別しかねることもあろう。
鉱石ラジオを若いライターに託す不思議な老人、中山昭二が良い味を出している。
なかなかの題材だと思ったが、それで何やらドラマが始まるでもなく、スッと終わってしまう。
えっと思った。
「顔面喪失」:
自分を捨て、西洋人に身体毎変わる若者が出て来る。
手塚真がチョイ役で登場。
主人公の弟も失踪していたと思っていたらその手術を受けているところであった。
毒々しい空間で、顔や姿が変貌して行く途上の人間たちが踊り狂っている。
そこで整形外科医の女性が高笑いをしていて、主人公は恐れ戦き弟を置いて逃げてゆく。
巷でも整形が流行りだしており、自分を見失った者たちの狂態と言ったところか。
まあ、何とも言えない雰囲気短編であった。
「漁火」:
全体がとても儚い雰囲気で映画としてまとまっていた。
実相寺監督の娘、実相寺吾子がヒロイン。
結婚を控え実母の住む街にひとりバイクツーリングでやって来る。
下絛正巳演じる祖父とのデートがとても趣き深い。
一周忌を迎えた祖父の霊との触れ合いであったがトワイライトゾーンの香しさが心地よかった。
「漁火」とは、戦争に散った魂が海を渡ってやって来る光だという。
梶芽衣子を彷彿させるタイプの女優さんである。
昭和的なフィルム。
「ワン・コイン・ドリップ・ドリーム」:
伴みゆきヒロインの恋に縁のない女性が魔法使いからコインを貰い自分のお相手を見つける噺。
「自分を信じなさい」がテーマか。
激動の時代、自分をしっかり持っていないと、騙されて流されるだけだよという感じの物語。
偽のドリームジャンボ宝くじのギッシリ詰まったバッグを持って彼女が走って走って走りまくる(笑。
とてもコケティッシュな伴みゆきがコミカルに演じる。
出逢う敵組織や易者や魔法使い、その他の人間が皆単純化され誇張された人形めいた者たち。
ビラ配りワンシーン登場の風見しんごの宣伝のバーに行き、そこでふいに彼氏が見つかる。
所謂、ラブファンタジーなのね。
どの短編ももっとブラッシュアップすれば、面白く成ったのになあ、、、と思わせるものであった。
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