2023年08月の記事 - NewOrder
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GOMA28

Author:GOMA28
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実相寺昭雄の不思議館 思の巻

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1992
実相寺昭雄 総監修
スティーグリッツ 音楽


「時の鉱石」
油谷岩夫 監督:・脚本

「顔面喪失」
原口智生 監督:・脚本

「漁火」
小林浩一 監督
:遊法仁 脚本

「ワン・コイン・ドリップ・ドリーム」
高橋巖 監督:・脚本

4編からなるオムニバス映画。


逆木圭一郎
中山昭二
実相寺吾子
李星蘭
下絛正巳
手塚真
寺田農
伴みゆき
光益公映
日高俊樹
風見しんご


実相寺監督の企画のもと、若手監督が集まり作った映画だそうだ。

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実相寺監督の作品だと思って観たのだが、、、大変微妙なものであった。
わたしとしては、実相寺監督と言えば「ウルトラマン」なのだが、、、。
何とも言えない作りだが、VFXがやたらとショボい。
しかしBGMはかなりのもの。現代音楽である。
物語の案内役を寺田農が演じる。常盤台蓑作博士として。

震災や戦争でも変わらなかった東京の街が、本当に変わってしまったのは1964年のオリンピック~高度成長期からだと。
都市の変容と記憶と喪失の問題。
実相寺監督は、昔の空気、無くなった風景を定着させたいのだと言う。
都心のビル街、高架橋などが執拗に映される。


「時の鉱石」:

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「鉱石ラジオ」自体に興味は引かれるが、30年前のニュースが流れるというのも絶妙。
30年前のニュースでも、最近の出来事のように受け取れる場合がある。
それに宛てた話題のチョイスも良かった。流行歌など特に昔の曲を流すこともあるし、いつの放送か判別しかねることもあろう。
鉱石ラジオを若いライターに託す不思議な老人、中山昭二が良い味を出している。
なかなかの題材だと思ったが、それで何やらドラマが始まるでもなく、スッと終わってしまう。
えっと思った。


「顔面喪失」:

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自分を捨て、西洋人に身体毎変わる若者が出て来る。
手塚真がチョイ役で登場。
主人公の弟も失踪していたと思っていたらその手術を受けているところであった。
毒々しい空間で、顔や姿が変貌して行く途上の人間たちが踊り狂っている。
そこで整形外科医の女性が高笑いをしていて、主人公は恐れ戦き弟を置いて逃げてゆく。
巷でも整形が流行りだしており、自分を見失った者たちの狂態と言ったところか。
まあ、何とも言えない雰囲気短編であった。


「漁火」:

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全体がとても儚い雰囲気で映画としてまとまっていた。
実相寺監督の娘、実相寺吾子がヒロイン。
結婚を控え実母の住む街にひとりバイクツーリングでやって来る。
下絛正巳演じる祖父とのデートがとても趣き深い。
一周忌を迎えた祖父の霊との触れ合いであったがトワイライトゾーンの香しさが心地よかった。
「漁火」とは、戦争に散った魂が海を渡ってやって来る光だという。
梶芽衣子を彷彿させるタイプの女優さんである。
昭和的なフィルム。


「ワン・コイン・ドリップ・ドリーム」:

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伴みゆきヒロインの恋に縁のない女性が魔法使いからコインを貰い自分のお相手を見つける噺。
「自分を信じなさい」がテーマか。
激動の時代、自分をしっかり持っていないと、騙されて流されるだけだよという感じの物語。
偽のドリームジャンボ宝くじのギッシリ詰まったバッグを持って彼女が走って走って走りまくる(笑。
とてもコケティッシュな伴みゆきがコミカルに演じる。
出逢う敵組織や易者や魔法使い、その他の人間が皆単純化され誇張された人形めいた者たち。
ビラ配りワンシーン登場の風見しんごの宣伝のバーに行き、そこでふいに彼氏が見つかる。
所謂、ラブファンタジーなのね。


どの短編ももっとブラッシュアップすれば、面白く成ったのになあ、、、と思わせるものであった。




AmazonPrimeにて










妖怪奇談

Woman Transformation004

Woman Transformation
2007

亀井亨 脚本・監督・編集
松井建始 原案・製作
主題歌「山茶花」桑田沙織

伴杏里、、、岩崎みひろ(ネイルアート好きのフリーター、KAMAITACHI)
宮光真理子、、、山根美智子(モデル、ROKURO)
市川春樹、、、佐伯まな(中学生、NOPPERA)
桃生亜希子、、、飯岡(ネイルサロンオーナー)
綾野剛、、、真吾(まなの不良彼氏)
手塚とおる、、、大迫(医者)
浅見千代子、、、旗振りおばさん(蛇妖怪)


最初と最後に出て来る児童の登校の旗振り当番のパンチパーマのおばさん。
大変ビビッドで強烈。蛇の妖怪なのか、冒頭では男子児童を丸吞みしてしまったようだが、最後の場面では女子児童も同じ妖怪のようで、決死の闘いとなったはず(このシーンは何のためのものなのか。妖怪は結構この世に潜んでいるよということか)。

Woman Transformation0031

3人の女性が妖怪に変化する噺という事で観たが、確かにしっかり練られて作られたドラマではあるが、妖怪なの?
しかもひとり死んじゃうし(妖怪として活躍する前に)。
所謂、フリークスになったと考えた方がしっくりするが。
奇病で次第に身体が変わって行く女性たちの始まりの物語という感じ。

山根美智子は笑顔が作れず皆から虐められるモデルで、首が痛み長く伸びることに悩む。
岩崎みひろは爪が異常に早く伸び、切る事も叶わず鋭い刃になり持て余し混乱して流離う。
佐伯まなは、家庭の放任で淋しく寄る辺ない思いをしながら、顔が無くなって行くことに慄き絶望する。
それぞれ3人の個々のドラマを描きつつ彼女らの交錯・重なりもしっかり魅せる。
上手い作りだ。

Woman Transformation002

美智子は内向的で暗く上手く対人関係が築けないが素直で優しい性格である。
みひろは自分の綺麗なことを鼻に掛けており、ヒトを見下し自己中である。
まなは、寂しさを紛らわすように不良と付き合い幼馴染のみゆきを完全に自分の手下扱いをするなど、情緒不安定で歪んだパーソナリティである。
しかし、上記3人に飯岡も含め、女優陣はかなりレベルは高い。虐められ役のみゆきの女優さんもだ。
綾野剛は、この時期、下積み中であったのか。情けない役をやっていた。と言うか気づかなかった(苦。

Woman Transformation003

そしてとても切なく辛い思いをしながら、美智子はろくろ首となりみひろを助けて死ぬ。死に顔は爽やかで喜びに充ちていた。
みひろは美智子に命を救われた後、長い爪を持て余しかまいたちとなって呆然と夜の街を歩き、のっぺらぼうを発見する。
まなは、自分の顔が無くなって行く恐怖に慄きながらCDの曲を聴いて泣いているところをみひろに拾われる。
これから「かまいたち」と「のっぺらぼう」はどうなるのか?「ろくろ首」はあのままなのか?発見されたらそれはそれでニュースだが。

全体にとても切ない物語である。
彼女らは、周囲から疎外され孤立し居場所を失くして行く。
ろくろ首は死んでかつてない幸せそうな表情をしているではないか。

Woman Transformation005


しかし妖怪となったのならそこからの活躍が描かれないと、これは単なる前日譚でしょ。
(前日譚としてよく出来ていた)。
これでは何も妖怪譚としては始まっていない。
しかも始まる前にろくろ首は死んでいる。
妖怪ってそんな簡単に死ぬのか?そもそも、、、。

Woman Transformation006

宮光真理子と伴アンリは今何をやってるのか?
かなりのオーラを放つ女優だと思う。伴アンリは「リリイ・シュシュのすべて」でデビューしたようだ。
市川春樹も熱演であったが、女優はこの後辞めたらしい。勿体ない。





AmazonPrimeにて










妖怪大世紀

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2008

松宏彰 監督


第一話 「覺」(さとり)
、、、大石里沙
第二話 「七人ミサキ」
、、、堀有希
第三話「面霊気」(めんれいき)
、、、深澤ゆうき
第四話「濡女」(ぬれおんな)
、、、高瀬有紗
第五話「山地乳」(やまちちち)
、、、高梨麻衣、黒沢萌衣
第六話「天狗」(てんぐ)
第七話「滑瓢」(ぬらりひょん)
、、、田中涼子
第八話「河童」(かっぱ)
第九話「赤マント」
、、、安藤成子
第十話「座敷童子」(ざしきわらし)


妖怪ついでに、、、妖怪学習番組みたいな体裁のオムニバスもの。
「人の心に影があり、人の暮らしに闇がある限り、妖怪は今ほらそこにいる」で始まる。

老後は滑瓢(ぬらりひょん)に限る。
こんな風に余生は送りたいものだ。隙間でのんびりと、、、。
安藤成子ホント久しぶりに観る。これも15年前の姿だが。
他は、皆知らないヒトばかり。妖怪はかなり有名どころ。

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「覺」(さとり)は、管理社会が徹底した先の状況のシミュレーションみたいで最悪の事態を見せている。
人の内面を晒してしまったら個の尊厳など失せてしまう。こういう妖怪は要らないの代表。単に迷惑。

「七人ミサキ」って自殺志願者サイトと持ちつ持たれつの関係だったのね。7体の妖怪で構成される。
ひとり死んだら彼らの中の一人が成仏して死んだ一人が彼らのメンバーとなるシステムだと言う。
これはずっと続くな。

「面霊気」(めんれいき)は、面には念が入っていて、自分が作られた里に戻りたがっているそうだ。
その面は自分の念を被った人間に植え付け、乗っ取ってしまうこともあると。
まさにアイデンティティだね。

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「濡女」(ぬれおんな)海辺で何か貞子みたいな動きをするびしょ濡れの白装束の女。
それだけで絶対に近づかないが、ここに出て来た釣り人は「何かお困りですか?」などと惚けたことを言い、直ぐ近くまで行き、目を合わせてしまう。尋常な相手でないことを悟り逃げ出すが、もう逃れられない。目を合わせた相手には何処までも付き纏う。
こりゃ自己責任だわ。自宅の風呂から出て来られてはもう観念するしかない。

「山地乳」(やまちちち)寝てるときに寝息を吸われると死んでしまうという。但しその場面を他の人に見られると長寿が保証されるそうだ。ここでは水泳部合宿で同じ部屋に寝た高梨麻衣と黒沢萌衣でハッキリ明暗を分けた。黒沢は高梨に見られたためセーフでしかも長寿ゲット。高梨が吸われている時、黒沢は熟睡だったので、高梨は死んでしまった。その時、声は出せないのか?ちょいと起きてよとか。

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「天狗」(てんぐ)神通力使っていろいろと面白いことをする妖怪。7歳の男の子を攫い、旨いものを食わせたり人の知らない処を見せて回ったり、サービス精神も旺盛。数か月後に自宅押し入れに還って来た少年は「天狗文字」でお礼の手紙を書いていた。
これもアブダクションのひとつか。かなり良い体験をしたものだ。何で全国ニュースにならない?7歳の証言では無理か。

「滑瓢」(ぬらりひょん)全く目立たず、余りに自然にそこにいて、いることにすら気づかれない妖怪だそうだ。隙間に存在する。
しかし妖怪の親玉らしい。大概大物はそういうものだ。
それにしてもこの章の就活女子大生の田中涼子と滑瓢の関係はいいね。
時折いることを思い出すけど気にならない。
彼はそんなときはお茶を片付けてどこかに行っている。老後の参考になるわ。

「河童」(かっぱ)は、アメリカの宇宙人グレーとの類似性が取りざたされている。だが最近は温泉で女性客のお尻を触るくらいの事しかしていない。かつてはダム建設の際に精力的に手伝ってくれたそうだ。カッパの手のミイラとか見たことあるが、かなり人に近いところにいてほぼ無害の存在のようだ。カッパが撮られたビデオまで紹介されていた。しょうもない。

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「赤マント」安藤成子もこんなバイトしてたの?という感じで。もっとメジャーで受ける人のはずだけど。
やはりキョンキョンみたいに自己プロデュースを意欲的にしていかないと逸材でも埋もれてしまうね。
トイレに入り、質問に答えてしまうと悲惨な死にざまを晒すことに。彼女の友達が犠牲に。
赤マントって、ここでは1,2を争う凶悪妖怪だな。
トイレが異界への出入り口というのは分かる気がする。

「座敷童子」(ざしきわらし)これがかなり人目に付いている存在だと言う。
わたしは見たことない。これがいる家庭は繁盛し、これが去ると没落するそうだ。
最初からいないので、どうというモノではない。


机周りの掃除などしながら観るにとても合っていると思える。
BGMが余りにやる気ないどうでもよい感丸出しのモノ、、、トホホ。
しかし一見の価値あり。




AmazonPrimeにて





真木栗ノ穴

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2007

深川栄洋 監督・脚本
山本亜紀子 『穴』原作
椿 「めぐり逢えたのは夢じゃない」主題歌

西島秀俊、、、真木栗勉(作家)
粟田麗、、、水野佐緒里(実業家水野の妻)
木下あゆ美、、、浅香成美(出版社編集、真木栗担当)
北村有起哉、、、佐々木譲二(真木栗のアパートの隣人)
キムラ緑子、、、沖本シズエ(食堂アルバイト)
田中哲司、、、水野貞男(佐緒里の夫)
小林且弥、、、赤坂栗生(宅配屋)
松金よね子、、、飯田時子(食堂の主)
尾上寛之、、、細見貢(置き薬のセールスマン)
大橋てつじ、、、秋田健(雑誌社編集長)
佐久間麻由、、、佐々木譲二の彼女


西島秀俊史上最弱軟派の売れない作家をやっている。
レアだが、大丈夫かという感じ。
水野佐緒里が幽霊なのは、彼女を取り巻く状況が真木栗勉の執筆した通りになってしまうところでこちらには明白になる。
後は彼女(たち)だけが幽霊なのか彼の世界そのものも妄想なのか。
ただ、彼女と関係した者たちは皆死者なのだ、、、それ以外も内包した妄想世界なら勝手にしなさいである。
彼はどうした経緯で霊に魅了されたのか憑かれたのか。そこがピンとこないままであった、、、。

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しかし生活のため、成り行きで雑誌の官能小説連載を苦手ながら引き受けるというのも面白い。
その関係者、担当の浅香成美以下雑誌編集の人々とお隣さんなどは現実に見えるのだが、、、。
ここまで妄想(入れ子状の妄想)としたなら、じゃあ実態はお前何処で何してんのよ。
となるが、最初の小説書き終わったシーンがまた最後に来ていたから、何やら連載小説を完結させたところから妄想に入っていた可能性もある。
何処までが真木栗の妄想なのか、入れ子状になった妄想なのかよく分からなくなるところ。
売れない作家の妄想を鑑賞していただけというのは、余りに虚しい。

とは言え、噺そのものは絵空事的キッチュなコミカル感満載(笑。
これをお笑い芸人が主人公でやっていたら余りに嵌り過ぎて詰まらぬが、西島秀俊が真面目な表情でやってるところが笑えてよい。
粟田麗という女優さんも如何にもという感じで、この清楚で理想化された不自然な奥さんがまた良い。
ホントにこのような人が倒壊寸前のアパートに引っ越して来るなどまずあり得ないが。
そこを逆手に取ったような、共犯的な後ろめたいトキメキを齎す効果はある。

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アパートがボロ過ぎて空き巣に部屋を荒らされたことがきっかけで、東西両側の壁に崩れて空いた穴のあることを発見(何処までボロなんだ)。そこから覗くと隣の若い男性の様子が丸見え。ボクシングファンで時折彼女を連れこんで来るのも全て確認。
そして反対側の部屋は空であったが、そこに小説のネタになるうら若き美しい女性でも入ってくればなどとまずあり得ない想像をしてみる。すると買い物帰りにイメージをそのまま具現したかのような女性がアパートを見上げているところに出くわす。
部屋に戻り、あの女性だということで紙にデッサンして壁に貼り、そこから膨らむイメージで小説を書き始めた。

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するとその女性がホントに隣の部屋に越して来る。白い日傘をさして、もうここから嘘くさいいや、幻想的と謂うべきか。
イメージ通りのいや絵に描いたような若奥様であった。
そして真木栗の担当となった浅香が原稿を取りに来ると彼は妙な格好で隣室を覗いている。
まさか覗いているとは思わぬ彼女は、その恰好から、先生ヨガか何かされてるのですか、と訝りながら聞く。
ああそんなところだ。こういう体勢からふとアイデアが生まれてくるとか、よりによって西島秀俊にやらせるのだ。
ファンはどう思ったか。監督に対し、よくやったと殺意を抱いたが半々かも。
ともかく、真木栗の手で、ボロアパートに住む男性が壁の左右の穴から覗いた怪しくも如何わしい世界を描写するという設定の連載小説が綴られてゆく。まんまであるが、編集の浅香は(言われた通り)フィクションだと信じている。

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これが思いの他、評判がよく担当の若い浅香は初めて社内で褒められたと喜び、やる気満々である。
雑誌の売り上げアップにも繋がっていると、会社を辞めなくて良かったと、彼を先生と慕い尊敬の念を隠さない。
締切日も守り書き続ける中、その原稿~物語通りに隣の佐緒里の部屋を訪ね、関係を結ぶ運送屋と薬売りの様を見て驚くと同時にほくそ笑む。自らが考え書いた通りの事態となるのだ。ちょっと世界を支配した気分か。

しかしその至高感も急転直下。浅香が持って来てくれた真木栗の連載の載っている雑誌の別のページを見て驚愕する。
IT実業家の若き妻、佐緒里の写真があり、彼女は実業家の夫の事業失敗で既に心中していたのだ。
激しい頭痛から置き薬屋に電話したことで薬売りの男もすでに自殺しており、さらに運送業の男も事故死していたことを知る。
日時から見ると彼女と関係を結んでいた時は、すでに亡くなっていたのだ。
隣部屋には死者だけが入れたのか。穴はそれを唯一覗く場であったのか!あの空間とは一体、、、。
そして真木栗の部屋を空き巣狙いした片棒の食堂バイトの沖本が病気で亡くなっているにも拘らず彼のもとを訪ねて来る。
彼女は去り際に早くそこを出なさいと言う。
そして最後の章には自分自身を登場させていたことに慌てる真木栗。

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終盤になり急にホラーテイストが強まってゆく。
慌てて最後の原稿は書き直すと言い、原稿を取りに来た浅香を追い帰すが、、、。文字は乱れる。そう次第に乱れてゆく。
この辺りは山場である。
どういうところにアパートがあるのか、近くに結界を超えるような自然のトンネルのような切通しがある。

アパート取り壊しの期日が近いため、真木栗以外の唯一の住人である隣のボクシングファンが彼女と一緒に荷物を抱え引っ越してゆく。
まだ僕の隣の女性がいるというと、怖い話すんなよずっとこのアパート、あんたと俺しか住んでねえだろ、と気味悪がって去って行った。

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結局、以前約束していた梅酒と灯篭を持って、真木栗は佐緒里の待つ隣の部屋を訪ねる。
そしてふたりは、、、どうしたものか、、、

翌日、誰の気配もない真木栗の部屋を訪れた浅香が机に残された原稿を引き取ってゆく。
確か佐緒里側の穴は塞がっていたが。

そして何故か最初の連載を書き終えた真木栗の様子がリフレインされて終わる。

「この世に矛盾が蔓延(はびこ)り、終末が近づいている。どうやら私たちの世界がある一人の男の空想である事が近く発表されるだろう」〟何とも言えない件。「私たちの世界」って何?この世とは謂うまでもなくわたしの世であるが、それは微妙に他者の世とも重なり合い縁が捲れているかも知れない。

こうした夢か幻かみたいな映画につきものの危うさはあるが、キャストと噺自体が面白いので、かなり愉しめる内容であった。
最後がもう少しねえ、、、という感じだが。




AmazonPrimeにて








入江の殺人

Murder in the Cove001

Murder in the Cove
2013
カナダ

現地の人々(漁民と警官)

ドキュメンタリーフィルム。ノバスコシア州アカディアが舞台。
ロブスターを長年に渡り密漁する者と漁民との間で起きた根深く割り切れない殺人事件を取り上げる。
出て来る声、事故の写真等、かなり生々しい。
インタビューを断る人もかなりいたようだ。

Murder in the Cove002

ロブスターはかなり良い商売になるらしい。確かに見栄えも立派だし。旨そう。
ロブスターになったら喰われる運命であることもこれで分かる。コリン・ファレル(笑。

密猟を長年働いていたのは、フィリップという男。
小さな漁村である。皆どこの誰だかよく知っている。
最終学歴も中二の子供の頃から窃盗などの非行を繰り返して来たという男である。
しかしこの男を慕う友人もちゃんといる。
地域の者は皆、彼が漁師の漁具を壊し密猟していることは知っており、ずっと嫌っていた。
容疑者とされたのは、いつも笑顔を絶やさない紳士として知られる仕事熱心で真面目な男ジェームズ。

Murder in the Cove003

村人の誰もが事件に対するアンビバレントな複雑な感情を抱く。
しかし前面に出てこの誰もを悩ます密猟問題を抜本的にどうにかしようという動きは生まれなかったのか。
警察や組合と連携してこうした漁場ならではの防犯システムを組むなど、、、。
何と言うか自閉的に内包して籠ってしまった鬱屈が或る時、歪な形で弾けるという感覚。

フィリップは多くの人を傷つけた死んでも仕方ない男だったが、もしかしたらそれがわたしの息子であったかも知れない。
フィリップとつるんでいた幼馴染は、彼は多くの人に悪いことをした。わたしも手伝ったことがある。だから何も言えないが不憫な男だと、、、。
「それが現実だ」と彼は吐き捨てる。
うら寂しい光景だ。

Murder in the Cove004

ツインマギー号のドウェイン船長とジェームスとグレイグ乗組員が容疑者として逮捕される。
警官もフィリップの悪行については認識していた。だが、正式な訴えが無く動けなかったみたいなことを言う、、、。

フィリップ殺人事件を受け、古くからの友人や親せき、住人たちに事情を聴いていくうちに明かされていくものがある。
フィリップが密猟したロブスターを漁師が安く買い取りそれに上乗せした金額で売りさばいていた事実。
地元水産局員も彼の獲物を買っていた。彼が漁のライセンスを持っていないことを知りつつ。
持ちつ持たれつの関係があったことが公にされる。
人々はフィリップを利用して来た。彼がまだかなり若い頃から彼を利用してきた。
泥棒をさせそこから甘い汁を得ていた。しかし彼は結局、その泥棒で殺される。
シャバでは彼をよく思わぬ人との取引を続け、捕まったら刑務所で暮らす。彼にとり刑務所の方が過ごしやすかったらしい。
戻って来ても居場所はない。盗みをして刑務所に行く度に悪友が出来、悪さを更に覚えるという悪循環が形成される。

「フィリップに逢うと皆1時間で良い奴だと思い込ませてしまう。そして奴は君の車の中のモノを全て持って行ってしまうんだ」。
そう言うタイプらしい。行くところは基本、刑務所以外にない。
その悪循環を断つこととなったこの度の殺害である。
ツインマギー号でフィリップのボートを轢いて破壊し、彼に向け発砲し碇を巻き付け引き摺り海に沈めるという残虐な殺し方だ。

Murder in the Cove005

裁判所は自警行為の正当性は容認できない。

しかし陪審員からは過失致死罪。驚きである。
これは、どう見ても殺人ではないか。
実行犯のジェームズに懲役14年の刑が言い渡された。ドウェイン船長には10年。グレイグは2年の保護観察。
「もし私たちが個人で復讐や報復を実行できるなら、その恐怖から生活は混沌を極めるでしょう。」というような言葉が添えられた。正義とは兎角こういう形で実行されてきた。

5年後にジェームズは仮釈放されるがその1年後に死去。
再度、この事件に対する思いが交錯した。
コミュニティには亀裂が入ったままである。
フィリップと子供時代からつるんでいた旧友は、わたしには3人の子供がいる。もう下らないドラマに付き合う暇はない、と言う。
フィリップを偲びながら。
フィリップに対する同情を平然と口にしフィリップ側であることを主張する人もいる。
そして彼を仕向けてしまったのはわたしたちだ。彼はわたしたちのなかの一人なのだ、という内省の声も聴かれた。

Murder in the Cove006

字幕がホントに観にくかった。また量が尋常でない。
大変ストレスフルなドキュメンタリーフィルムになってしまった。
字幕以外は良い出来であったのだが。いやかなり良いドキュメンタリーであった。
上に出たり下に出たりの字幕が全てを台無しにした。





AmazonPrimeにて



ロブスター

The Lobster001

The Lobster

2016
ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス

ヨルゴス・ランティモス 監督・脚本・製作
エフティミス・フィリップ 脚本

コリン・ファレル、、、デヴィッド
レイチェル・ワイズ、、、近視の女
レア・セドゥ、、、独身者たちのリーダー
アリアーヌ・ラベド、、、メイド
ジョン・C・ライリー、、、滑舌の悪い男(ロバート)
ベン・ウィショー、、、足の悪い男(ジョン)
ジェシカ・バーデン、、、鼻血を出す女
オリヴィア・コールマン、、、ホテルのマネージャー


動物になるのならロブスターがいい。100年生きるからって、茹でて食べられたらそれまでだと思うが。
わたしはてっきり主人公が最後にロブスターになるものととっても期待していたのだが、、、。
丁度真ん中辺りで、レア・セドゥが出て来て得した気分になる(笑。

The Lobster003

ともかく、社会で独身が認められず独身者として確保されると45日以内にパートナーが見つけられない場合、動物にされてしまう。
しかし森で独身者同士狩りをしあい、狩ったものの数だけ持ち日数は多くなる。つまり執行猶予が伸びる。
飛んでもない制度だ。
何かの悪夢みたいな噺である。
ホテルという矯正施設に放り込まれるなんてカフカ的。
そこで相手のいることが有益であることを教育されたりする。とても滑稽な劇を皆真面目に観ている。
しかし似た特性でないとならない。鼻血カップルみたいに誤魔化せるが。

The Lobster002

デヴィッドはそこを抜け出すと、森の中には独身者のコミュニティがあり、そこでは恋愛は一切禁止となっていた。
自分独りで生きなければならず、生きている間に墓穴も掘っておかなくてはならない。
どちらの共同体も極端で大変厳しい。

何なんだ一体。
そんなもんどうでもいいじゃんか、で済まされないのがとても不毛で不自由。
それを受け容れて誰もが生きているのが不条理と謂えばそれだが。

The Lobster006

おひとり様の集団でデヴィッドは自分にピタリの近視の女を見つけ相思相愛となる。
何とも皮肉なもので、恋愛を奨励するホテルでは良い相手がいなかったのに、恋愛禁止の森の集団に見つけてしまうのだ。
まあ、世の中悉くそんなものだ。

このへんてこりんな世界を実にリアリティたっぷりに普通に演じているので、やはり稠密な悪夢を見ている感触。
普通に展開される微妙な不条理感が何とも言えない。
一番、そんな雰囲気だったのが、森のリーダーが自宅に部下を呼び両親の開く演奏会を皆で愉しみ寛いでいるのだ。
会社を営んで成功しているといい両親も喜んでいる。そして買い物して森に戻る。
このリーダーの立ち位置がよく分からない。カモフラージュして自宅で暮らせそうなのに。
だが不思議にこの行動に違和感もないのだ。
夢ってそういうことが多い。
このリーダー宅でデヴィッドと近視の女が余りに限度を超えていちゃついてたのを見て、リーダーは2人の掟破りの関係を悟る。
誰が見ても分かるが。

The Lobster004

リーダーは罰を与え、自分の最も信頼する部下であった近視の女を盲目にしてしまう。
その仕打ちに怒りデヴィッドと近視の女は森から逃げる。
その後、どうなる事やら、、、。

The Lobster005

痛いのと、動物が虐待されたり殺されたりが目立つ映画である。

音楽とオリヴィア・コールマンの歌はなかなかのもの。




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京都画報 ~ 京の和菓子

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エピソード3 - 京の和菓子

「古代の宇宙人」より100倍面白い。
変な宇宙人や煩いリポーターより和服の素敵な常盤貴子が紹介する京都の方がずっといいわい。
今日は、和菓子と来た。
和菓子~
あ~ちゃんとした和菓子、ここのところ全然食べてない。

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しかし食というモノはとっても大事なもので、粗末なものばかり食ってると恐らく感性がしなびると思う。
今住んでる近辺にも和菓子屋はあるにはあるが、、、。
(最近一軒は潰れた)。
煎餅しか置いてないような佇まいで入る気にならない、、、のだ。
店の風情って大事だと思う。

「とらや」の羊羹から始まる。
「とらや」って京都だったのね。やっぱり和菓子は京都か。
「夜の梅」、「玉手箱」、「虎孟けぶ」、、、見た目はもとよりネーミングも込みである。
それでまた「あがる」というもの。
そして驚き。「色差し」であるが、筆でチョンと色を乗せるのではなく、他の色の生地を馴染ませて多色を実現しているのだと、、、。
何なんだというような手の掛け方が出て来て、、、「金平糖」に極まる。

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まあ食べる芸術だわ。
菓子は果物に始まり、掌の自然を具現化するのだと。
背筋を正して頂かないとという気持ちにもなる。
ともかくこれだけ手が入っていて恐ろしく潔いシンプルさに収斂しているのだ。
まあ、歴史が畳み込まれてますなあ。店構えのズッシリ感も凄い。

そうそう、どの店に行っても、皆一子相伝の何代目当主というのが出て来て蘊蓄を垂れるのだ。
(場合によっては宇宙人と遭遇する方が気楽かも)。
脈々と受け継がれてきた結果が菓子として結実しているとは言え、、、。
常盤さんもにこやかに対応しているが、ちょっと重くはないか?
その後に出て来るお菓子が絶品なので問題ないか。
完全にお菓子が勝っている。

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有斐斎弘道館だったか。ここは文芸サロン、展示会にも使われるところで
「花弁餅」はもう典型だな。
そしてさらにゲストが最も思い出深いものを創作菓子にしてサプライズもしてしまう(番組用だろうが)。
常盤さん大感激。
昔乗っていた愛車をモチーフにした創作菓子だ。

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何故か池坊何代目とか言う人の生け花を鑑賞する。
「有職菓子」を代々調達して来た和菓子屋だ。もう老舗感が半端でない。
水仙のすっとのびる姿を掛け軸と共に飾りその図象関係を味わう。
そこに出される創作和菓子。
これがまたシンプルだが割ると中には仄かな鶯色の餡が。
何とも上品で柔らかな甘み、、、
という事らしい。見ていてその通りだろうと思う。
最近、ホント食べてないわい。そういうの。これはいかんと思う。人間が干乾びる。暑いし。

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やはり瑞々しい文芸の甘みが必要なのだ。
金平糖の専門店にその製作の見学も兼ねて訪れる。
何でも金平糖の専門店は世界でここ一軒なのだそうだ。ちゃんと後継者は育てているよね。心配になる。
ポルトガルから入って来たモノを受け継ぎ175年目らしい。
(もう本国にも作る店はなく、託されたそうである)。
信長も大ファンだったと聞く。
作るのに3週間くらいかかるという。今はワイン、日本酒、チョコ、ミルク味など多彩な味と風味のバリエーション豊富な金平糖となっているそうだ。
しかし手間暇のかかる贅沢な菓子ではある。

そしてソワレというカフェへ。
店内が「青」なのだ。古風な青い光に充ちている。とてもシック。如何にも小説などに出て来そう。
そこで常盤さんは「ゼリーポンチ」を満を持して注文した!
何でもこれまでずっと頼みたかったのに頼めなかった飲み物だそう。
感慨ひとしおという感じであったが、見た目どうなんだろう、みたいな、、、。
よく若い女子がキャーキャー言って飲んでるらしい。
(一度経験すれば気が済むタイプのモノかしら。人が飲んでるとちょっと気になるという手のモノはあるわね)。

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最後に和洋折衷の和菓子屋「中谷」。
「でっち羊羹」で有名だが、奥さんが洋菓子パティシエ、旦那さんが和菓子の何代目当主なのでふたりで作っていたら自然に混ざって傑作折衷菓子がどんどん生まれて来たらしい。
「絹ごし緑茶ティラミス」はネット注文で9か月待ちとか。こりゃ店に行って食べた方が早い。
枯山水をイメージした形となっている。
他にも「栗蒸モンブラン」、「笊餅わらび」などのヒット作を生み出している。

どうなんだろう。ゼラチンと葛の相性って。恐らくその辺の融合が肝なのだろうけど。
きっとうまく折り合いをつけているのだ。でないとチグハグになろう。

ともかく、実際に食べてみないと分らない、とは言え、ネットで9か月待ちなんて、注文したこと自体忘れてる。


何か良いものを食べねば、という使命感だけは持った。




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京都画報 ~ 庭園の愉しみ

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エピソード2 - 庭園の愉しみ
2021

京都自体が大きな庭園みたい、、、

この京都巡りは癖になる。
また観たくなった。
妙に心地よいのだ。

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庭である。
庭は良い。
特に中庭には以前から興味があった。
かつて足しげく通った個人経営の版画美術館に6畳くらいのこじんまりした中庭があっていいなあと思いながらフルーツティーを飲んだものだ。
ほとんどがらんどうに近いものであったが、その空間が愛おしい。
光と影を観ているだけで何故か満ち足りてくる。
場所も九品仏であったから街自体がお庭に思えたが、、、。

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京都の庭は、緻密で整っていて、しかも大規模である、やはり違うねえ。
「平安神宮の神苑」を巡る。本格庭園。「神苑」である。怖い。ここで庭の見方が示される。

常盤さんに庭園を案内してゆく作庭家の小川勝章(12代目)という人の解説が細かい。良く喋る。
彼の先祖の七代目 小川治兵衛という日本庭園の先駆者の手になるものである。
成程ね。と思いながらこちらもついて行く感に。
リモート時代のお庭散歩にはよい、、、丁度暑くて外には出られないし。

何と言っても川である。清らかな水の流れである。
琵琶湖疏水の引き入れによる流れる水によって形作られる庭園の趣深さ。

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お庭の囁きに耳を澄ませば、、、自ずと分るもののよう、、、
ちょっとゾクゾクするではないの。
饒舌な小川さんが常盤さんにヒントを出したりして進むのだが、まあ噺が細かい。
きっとこの庭はせせらぎを横切って貰いたいのでしょう。作り手の意図が感じられます、、、。
ハイハイこっち歩きましょう、、、。

そ.れにしても、、、木漏れ日によって生まれる小路の表情が愛おしい。
見晴らし石があり、ここからお庭が見てもらいたがってます、、、成程。
しかし作者7代目の仕掛け~意図にはやはり感心する。
ここからしゃがんで観ると大きな渓谷が現れます。その通りだ。
自然を手本にした「崩れ石組」の手法で、時間を掛けて強固な組み方になって行きます。勉強になるわ。
この調子で進む。

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そして川の流れを見て、この庭の物語を考えると、川上に向けて歩むのが理想かも知れません、、、
「順路」とは何か?そしてお庭の横顔とか正面とか、それぞれの趣きを確かめ、沢渡に使われた石の由来も面白い。
「お庭の正面を探していただくとお庭と親しくなれます、、、」。
お庭を歩むって深いねえ、、、。

そして常盤さんご指摘のように「借景」が見事に活かされていた。
日本文化は借景が配慮されてないと。
自分の住処を作る時に、良い景色のところ、とかではなく何処を借景とするかを決めてから選んだという。
そんなとこに住みたいわ。


次いで、妙心寺塔頭の退蔵院。

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「見立て」の美学が堪能できる。
狩野元信の作った庭園である。つまりバリバリの狩野派絵師が作った庭。
石を如何に使い配置するか、だな。「よい景色」というものが腑に落ちる。
動いてする禅が掃除であるというのもまさに。管理が肝心である。うちの娘にも是非その精神で掃除をさせたい(無理。
床の間とはこういうものを謂うのだと、初めて知る。なるほどねえ。主がもっとも大切にして来た景色が分かる。
枯山水の“禅の庭”。

しっとりとした老舗和菓子屋を訪れ、中庭を堪能。主は季節の移ろいをここで感じるそう。
京菓子の芸術性も堪能。「余白の美学」である。最後にお客様が完結させるという。
あんまり難しいこと考えながら食べるのはキツイが。
いい加減なタレントの食レポなどでは到底用をなさない。

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寺町通の名店「スマート珈琲店」で締め。
常盤さんお気に入りだという。
太秦御用達みたい。
古いドイツ製の焙煎機で代々淹れているそうだ。
創業当時の味を守り続けている。
旨いコーヒー飲みたくなった、、、。

最後に「余香苑」という昭和に作られたお庭も探訪。
小川氏の蘊蓄をしこたま聞いて、精進料理店「阿じろ」で景色を見ながらのお食事、、、
精進料理ってこんなに豪奢なの?で、お開き。

わたしもこのペースに馴染んで来たような。




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京都画報

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Season1・1:京都の美意識

2021


伝統と美の雰囲気に目で触れたというものか。
観ることが時に、感触を思わせることはある。

「自然の美」、「食の美」、「芸術の美」、「用の美」について和服の似合う常盤貴子が、その世界の第一人者たちと語りあう。
残暑の不快に効く。そう不快に。度重なる不快に。

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確かにさりげなく研ぎ澄まされてきた時間を至る所にみるものだ。
特に「路地」。京都の路地は格別。
  
素敵な「路地」ほど素敵な場所はない。
仄かな光と静かな風の誘う。
その先の茶室なんてどれだけ尊いものか。

こういうところで暫し時を感じたい。

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わたしの普段の生活ではまず縁のない華道 未生流笹岡家元、笹岡隆甫と、料亭 瓢亭 十四代当主、高橋英一というそのみちの第一人者と常盤さんが色々と語りあう。
特に深い専門的な噺と謂うより風情ある粋な噺だ。
成程と聞くだけだが。特別な感想を持つほど、知識もない。
しかし成程と思う。噺を聴いた範囲で分かればよい。また少し知見を深めたところでより分かればよい。
またそれなりの感想も持つだろう。すると自分に合ったペースでその分野の情報も向うからどんどん入って来るようになる。
すると俄然面白く成って来るもの。

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「日美」でもよく出る「京セラ美術館」にも訪問。
上村松園の作品収蔵で有名だが、やはりちょっとだけ出て来る。
女流日本画家の美人画は改めて観て、端正な様式美だと思う。涼やかで大変美しい。
(最近大正時代京都で活躍した日本画家、甲斐荘楠音を知ったことはわたしにとって大きい。甘く退廃的で妖艶~時としてグロテスクしかしどこかダ・ヴィンチを想い起させるディテールが光る)。
でもね。美術館は実際に行って自分のペースで観なければ意味なし。
ただ、行ってみたいという意識は確かに持った。

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そして「茶筒」である。物凄い精度の「茶筒」なのだ。
これ観て得したと思った。
まさに「用の美」の極致。シンプル極まる精密機器の芸術。これ物凄く欲しいぞ。
これは最高だね。ああ、こういうモノと共に時を過ごしたい。
ホントにそう思う。しかし「茶筒」だ。
今からでも間に合う。これからこういう「用の美」シリーズの空間を構成して住むか?
フィギュアとかガチャガチャしたプラスチックもの整理して。

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茶が途轍もなく旨くなること請け合い。
お茶の時間が頗る尊くなる。
「真鍮の茶筒」、「銅の茶筒」、「ブリキの茶筒」などそれぞれが固有に美しい。
「お前が落としたのはどの茶筒だい?」などと聞かれたらホントに困るな。
何の噺だ。
勿論、茶器も買わんとね。
でもまずはそれだけでも満ち足りるではないか。

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久しぶりに良い考えに出逢った。

GOONプロジェクトなるものを茶筒の老舗 開化堂 六代目、八木隆裕という人が熱っぽく紹介。
そのプロジェクトの西陣織の老舗 細尾 十二代目 細尾真孝という人の噺も色々と、、、
「茶筒」が気になりあまり頭に残らなかったわい。
(ここ最近、覚える先から忘れる状況なのだ、、、)。
ともかく生活を観直そう。
そうしよう。




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緊急事態宣言

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シーズン1エピソード5 - #5 MAYDAY

2020
真理子哲也 監督

岩瀬亮
内田慈
他多数、、、(外国人)

ショートフィルム集である。全部観る気は微塵もなし。

緊急事態宣言発令後の世界の自粛生活の様子を監督の友人たちがそれぞれビデオで送ってくれたものを編集して届けるというドキュメンタリーもの。 コロナ禍でなくとも、現在のような猛暑では室内クーラーから離れた外界での自由な行動は生命の危機を齎す可能性がある。つまり隔離生活を強いるのは、コロナのようなウイルスの災厄ばかりではない。それを実感する今日この頃。
(闇雲なグローバル化が一旦留まったかと思ったところで出て来る膿みたいなものもあろう)。

日本、アメリカ、ブラジル、ドイツ、イタリア、イギリス、ルーマニア、南アフリカ、韓国、中国、スリランカ、ブータン、ガーナ、マレーシア、マラウイ、、、これくらいだったか、、、漏れがあるやも、、、ともかく世界中のMAYDAY状態を特に脈絡なく次々に見せてゆく、、、。

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それぞれの生活ぶりはシンプルで面白かった。ドイツの若者は疎開してたのか、愉しそうだった。芸術家らしい。
それほど馬鹿げた闇雲な自粛も観られず、深刻にもならず観られた、、、色々と確認させられるが、、、。
夫婦で子育てしながら、この事態に順応し少しでも有意義な生活を創造するぞと頑張っている光景など、普通に心地よい。
しかし基本奥さんが提案し選択の余地なく夫に迫り、その通りに進めてゆくのが世の道理だなと改めて思った。
まあ、それで支障なければ、なるべく平和が良いが、、、。

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一緒に家族と普通に食事をしている光景が多かった。
多少は形式とか人数が変わっているみたいだったが、生活の改変というほどでもなく、いずれ元に戻るさ、が前提となっている。
お気楽な基調である。しかしこの機会をしっかり意識的に捉え直しておく必要はないか。ウイルスとの関係に留まらず。

そう言えば、松岡正剛氏が、「生物学的な免疫、社会的な免疫、心の免疫を獲得しなければ、社会基盤が崩れる」と言った旨をどこかで語っていた。まったくその通りだと思ったが各自が自身の立ち位置から具体的にどう動いてゆくかである。
個々のレベルではある種の息苦しさから自分だけでなく他者をも破滅に導くような動きに脱するモノも出がちになってくる。
こういう機にこそ沈思するのに良いかも知れぬ。「免疫」がキーワードとなろう。

ジョージフロイド射殺抗議のデモお尻にくっつけていた。まあ丁度その時期だったな。蛇足とは言えしつこく。
"And Life goes on"で終わる。いやずっとこんな調子で続いて行く、、、か。作品テーマ的に妙に膨らめたな。
この最後のデモメッセージは、わたしとしては免疫、特にコロナ以前から綿々と続くアメリカ的な免疫問題と謂える。
当然、個人のこころの免疫問題でもあるが。いつまでも続くべき問題では不味い。今こそ考える時だ。



シーズン1エピソード1 #1デリバリー2020 も観てみた。

中野量太 監督

渡辺真起子、、、母
岸井ゆきの、、、娘
青木柚、、、息子

自粛生活が続き、食材もデリバリーで賄う日々である。
家族の誕生日は必ず全員で祝うというルールの下で母、娘、息子がオンラインで集うことに。
娘の誕生日であり母がホールケーキを作り、息子と母と父とで祝うのだ。
しかし何でまた母はホールケーキ作ったのか。誰が食べるのか、とこちらは当然思う。
この辺に母の気持ちのアンバランスさが窺える。

暫くは家を出てそれぞれ新卒社員、大学生として頑張っている子供たちとの談笑など続くが、娘、息子のアパートにそれぞれ彼らが自分で頼んだ「鰻重」が届く。父が「鰻重」ファンだったらしい。
暫くしてやっと父が母の画面に現れる。
充分予想できたが遺灰である。

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数日前に、コロナで亡くなった父親が登場という事で全員でバースデイパーティーが始まる。
何故かこの期に及んで二人の子供が「かーちゃんむりすんなよ」としきりに言う。
それを謂うならこの企画を母が出した時点で謂うべきだろう。もうここまで来たら「とにかく明るい」感じでやりきるべき。
母は動揺~混乱して喚き散らしてケーキに顔を突っ込み、息子は鰻重を焼け食いし、娘は何だか泣き叫んでいる。
全く「免疫」がなってない。もうどうしょもないファミリーである。
確かに母の嘆くようにコロナで死ぬと死に目に会えないものだ。
母がこの状態なのだから、この日は2人は家に帰るべきだったな。ケーキもそれなら無駄にならないし。

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まあ、チャンチャンというかたちで終わるまとまったショートフィルムだった。




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MINAMATA-ミナマタ-

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Minamata

アメリカ・イギリス
2020


アンドリュー・レヴィタス 監督・製作
デヴィッド・ケスラー 脚本
W.ユージン・スミス、アイリーン M.スミス写真集『MINAMATA』原案
坂本龍一 音楽

ジョニー・デップ、、、ユージン・スミス
真田広之、、、ヤマザキ・ミツオ
美波、、、アイリーン
國村隼、、、ノジマ・ジュンイチ
加瀬亮、、、キヨシ
浅野忠信、、、マツムラ・タツオ
岩瀬晶子、、、マツムラ・マサコ
ビル・ナイ、、、ロバート・"ボブ"・ヘイズ


母らしき人が寝たきりの娘に子守歌を唄うシーンに始まる。患者の尊厳がどう描かれていくのか。
ジョニー・デップはレオナルド・デカプリオ、ピーター・オトゥールとともに大好きな俳優であり演技が見たい。
「写真」を武器に、彼がアウトサイダーとしてどう関わるのか、である。國村隼が社長だとかなり悪そう。

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何故か森永純は出てこない。スミスが来日する前に逢っている写真家であり彼の撮った東京のドブの写真を見て「ヒロシマか~原爆か」と言って号泣している。スミスはその時点でヘドロの表面を撮った森永の写真に戦慄し感極まる経験をして水俣に来ている。一時期、森永を助手としていたはず。この辺はずっと昔「游」(松岡正剛編集)で読んだことで詳細は思い出せない。

スミスの沖縄戦でのトラウマ~フラッシュバックは描かれていた。これでは、アイリーンにその件を説明されて日本に誘われても簡単にOK出来ない事情は分かる。
機材は全て売り飛ばしたと言っていたが、いつの間にかカメラを持っていたが、実は売っていなかっただけの噺?
スミスは小食でかなりの酒豪~いやアルコール依存症だったのか(森永は酒は呑めなかったはず)。やはり森永を出すと水俣問題に綺麗に収斂するのが難しくなるか。キヨシに「おじさんも水俣病か」と聞かれるほど手が震えている。

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ジャズが好きだ。即興が全てだ。しかし俺にはもう自分の音楽が聴こえない。偶々出逢った少年にカメラを渡してしまう。
ここで坂本龍一の音楽が密かに流れ出す(わたしは坂本龍一の映画音楽は大好きだ。ピアノ曲全般に好き)。
「僕はいつも人を失望させる」が彼の口癖か。こういうタイプはいる。ホントならめんどくさいオヤジだ。
しかしあそこにNYの彼の暗室を再現して宛がうとは、彼らが本腰入れてることは伝わる。だが彼も流石に一流写真家であり、やるからには「写真家も無傷ではいられない」ことは覚悟していた。
何としてもアイリーンの支援する水俣病被害者の団体(支援会)は世界に広くこれを知らしめ、チッソに正式に過失を認定させ責任を取らせたいのだ(支援者会は最近まとまったが、60年間かなり多くの様々な会に分かれて活動をしていたようだ)。
裏ではもう一時決別したLIFE誌が本格的に彼の写真特集を組みWHO、反核団体、国連人間環境会議の協力も取り付けていた。

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スミスとアイリーンらは病院にスパイのように潜入して患者の写真を撮って回る。顔を隠す患者もいるが、指の表情だけで説得力は十二分にあるではないか。そして秘密のラボに蓄積された証拠書類とビデオ、写真など次々に発見して撮影。病院潜入からスリリングなスパイサスペンス展開となる。
有機水銀中毒が直接的原因であり、チッソはそれを確認後も15年毒を廃棄し続けて来たことを突き止める(これ本来誰がやるべき仕事か)。

「感情に流されるな、撮るべきものに集中しろ」流石は一流。人物造形はジョニー・デップならでは。
しかしホントにチッソの社長はスミスに5万ドルで手を引かせようとしたのか。
被害者を何とも思わぬこのような極悪人がまかり通っていたのか(水俣病が公式確認された後もすっと工場排水を続け被害を拡大し続けたこと自体納得しかねるが、公害訴訟の難しさなのか。被害補償もこの映画の時点では見舞金程度、大体国が救済措置など一切採っていない)。企業による妨害・奸計、警察は完全に企業側。時代が分からなくなる。被害者団体指導者ヤマザキの真田広之の重厚な演技は圧巻。

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スミスの紅い現像光景がまた良い。絡む坂本龍一のストリングスがラベルの緊張感を感じさせる(もっと静謐だが)。
もう一つの山場?現像室が放火される。こんな犯罪が平気で行われる。いつの時代か(演出だったらやり過ぎだが)
スミスも呆れて手を引く気にはなるが、。ビル・ナイの迫真の演技にも圧倒される。枠を作って待ってるところでトンずらされてはたまらん。後半の折り返しである。脚の不自由なキヨシがスミスを慕い要所要所でやって来る。BGMも慈悲深い。
スミスは、個々の家族を最大限の敬意と配慮を持って撮り、世界に伝える約束をする。
ここからは映像と音楽は一体となり静かにカタストロフへ。それまでのタメも効いた凄まじい株主総会での睨み合い。
ダイナミックな臨場感がまたも音楽と一体となって続く。

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スミス自身巻き込まれ大怪我を負うが、企業側の男が焼失した暗室のフィルムを予め保管しており、入院中の彼に謝罪して手渡す。
そして冒頭のシーンに繋がる。
ライフ誌に掲載された「入浴する智子と母」はフォトジャーナリズム史に残る名作となった。しかし同誌は1972年12月最終号を発刊。
遂にヤマザキ達はチッソ相手に勝訴するも、未だに企業も国も充分な責任を取っていない状況が続く。

わたしも最後までこのドラマチックな映画を観て、ハタと気づくが、確かにこれはユージン・スミスだ。
あの戦場で弾丸を喰らい命果てる瞬間の兵士を神話の英雄の如くモニュメンタルに撮る人である。
当然、どの水俣作品もギリシャ悲劇に当て嵌めても良いような造形美となっているのだ。

ああこうなってしまうのね。坂本さんの重厚な音楽もピッタリであったが。
日本の写真家だとどうだろうか。もっと対象を主体として突き放して切り取らないか。もっと軽やかに。そう思った。
スミスの造形理念のもとに完璧に作られた写真と思える。最後に気付いたが。


どうしても水俣病と聞くと、石牟礼道子の作品を想う。

「きよ子は手も足もよじれてきて、手足が縄のようによじれて、わが身を縛っておりましたが、見るのも辛うして。

 それがあなた、死にました年でしたが、桜の花の散ります頃に。私がちょっと留守をしとりましたら、縁側に転げ出て、縁から落ちて、地面に這うとりましたですよ。たまがって駆け寄りましたら、かなわん指で、桜の花びらば拾おうとしよりましたです。曲った指で地面ににじりつけて、肘から血ぃ出して、

『おかしゃん、はなば』ちゅうて、花びらば指すとですもんね。花もあなた、かわいそうに、地面ににじりつけられて。

 何の恨みも言わじゃった嫁入り前の娘が、たった一枚の桜の花びらば拾うのが、望みでした。それであなたにお願いですが、文ふみば、チッソの方々に、書いて下さいませんか。いや、世間の方々に。桜の時期に、花びらば一枚、きよ子のかわりに、拾うてやっては下さいませんでしょうか。花の供養に」


「花の文を──寄る辺なき魂の祈り」『花びら供養』
坂本きよ子という水俣病患者の母親が語り手であり、このことばを石牟礼に託した後、彼女も娘と同じ病で亡くなった。
石牟礼道子の「苦海浄土」は、1970年に木村栄文監督で映画化もされている。
こちらも観ておきたい。

また偶然、NHKの番組で根岸季衣による上記引用部分の朗読を録画していた。
若松英輔のエッセイ「悲しみの秘儀」に収録された石牟礼の章「花の供養に」からの抜粋。
今は永久保存版としてとってあるが、ベテラン女優の朗読の力をまざまざと知ったものだ。




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古代の宇宙人からちょっとだけ

Akashic Records

Akashic Records
2017
アメリカ

シーズン10エピソード9 - アカシックレコード

これが偶然、目に付いた。
大學に入ったばかりの頃、書店で見つけたルドルフ・シュタイナーの「アーカシャ年代記」を思い出す。
(この本、余りに驚愕し友人に軽率に貸してしまった為書き込みされ結局こちらに戻らなかった。しかたなくもう一冊買ったらそれが乱丁であった。トホホ。まだ書庫のどこかに眠っているが)。
凄まじい空前絶後の書籍であった。他のシュタイナーの本も片っ端手に入れて読んではみたが、最初のインパクトが大きすぎて尻つぼみ状態となってしまう。

関係ないが人に大事なモノを貸すのはその頃止めた。
LPレコードを傷をつけられて返されたり、これも戻ってこないものもある(レアと言うかもう何処にもないものだ)。
今は、ウェブ上でデータがお手頃価格で手に入るし、「ポチっと買えば」と言うのみ。

本題に戻る。
これは一言で謂って「ムー」だった(笑。
もう内容がそのまんま。この話のネタで呑み会とかでちょっと盛り上がったりもした(就職初年頃)。
宇宙にはいまあるクラウドのような「宇宙の全ての情報の書き込まれた特別な領域」が既にありそのアカシックレコードに繋がると時代を飛躍させる発明・創造が得られる。繋がるという事はそれを受け取る準備の出来た器という事であるが。
接点のない異なる文化圏で地域を隔てた才能ある人がほぼ同時に発明をする例も幾つもある(148件だという)。
「蓄音機」、「無線通信機」、「電話機」、「ジェットエンジン」、「ニュートリノの体積の発見」等々、、、
それから二コラ・テスラやアインシュタインの閃きである。これも繋がりであると、、、。受信者の能力でもあるが。
宇宙はエネルギーと情報により成り立ちアカシックという情報領域は量子波で出来ている、、、。
言ってることは面白いのだが、、、
バババンガというブルガリアだかの女性透視予知能力者に興味をもった。つまりこれも繋がる能力だ。
知的生命体との接触は近いうちに必ずあるという。そして火星がきな臭い。
100年、1000年単位の予言もあるが、かなり象徴的なモノの謂いである。

但しそれにより世界全体の方向づけがなされることも少なくない。
コントロールが良い方向に向くのかどうか、大きな犠牲を払うことになるのか、このへんである。
原爆がよい例だ。
古代の火星で核攻撃の跡が明らかになったというのは、確かに他でも観た記憶がある(自然生成された原子炉とかではなく)。

ここでやはりまたしても気になったのは、全ての物事は同時に起きている。
更に地球視点で見ると物事は反復している。
この二点。
以前、このへんについて書いたものだが(少しばかり)やはりね。
何とかしないと。

ともかくリポーターの男性の吹替の声と喋りが実に神経に障り観にくかった。
そもそも「古代の宇宙人」というの、実写版の「ゆるキャン△」で志摩リンが図書室で見ていたので気になってはいたが(笑。

やっぱりこういうのか~、というところで愉しめばよいのだが、近ごろ余り乗れなくなっている。
ついでに10エピソード10 - 神々の声というのも見てみた。何とも、、、。

・・・・・・


そして何と、エピソード13 - 日本に眠る宇宙船において「ムー」の人が例の煩いレポーターと日本の謎の巨石を巡って凄い噺をしているではないか。コメントする気にならない。

・・・・・・

やはり出たかと思った。これを観た外国人は日本をどんな国と思ったか、、、。
エピソード9 - アカシックレコードだけでよかった。
もう観る事はない(いやまた気になるかも知れない(笑)。





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港の日本娘

Japanese Girls at the Harbor001

Japanese Girls at the Harbor
1933

清水宏 監督
陶山密 脚本
北林透馬 『港の日本娘』原作

及川道子 、、、黒川砂子 
井上雪子 、、、ドラ・ケンネル 
江川宇礼雄 、、、 ヘンリー 
沢蘭子 、、、シュリダン耀子 
逢初夢子 、、、マスミ(砂子の娼婦仲間)
斎藤達雄 、、、三浦画家 
南條康雄 、、、原田紳士 


「真面目」という言葉とドアの開閉がとても印象に残る作品。
勿論、これでもかと流れるテーマ曲のBGMが洪水のような暴力性を覚える。
サイレント映画で読みずらいキャンプション入りの1時間10分は長かった。
(もしかしたらカットされた部分もあるかもと思われる節もあり)。
.
Japanese Girls at the Harbor002

内容的には、最近トレンディTVでやっていてもおかしくないような、三角関係のドラマか。
こういう噺には全く関心ないので感情移入とか絶無であるが。
どうなんだろう。1933年である。結構、モダンなのでは。
ドアの開閉でとても上手く演出されてテンポ良く展開する。おおっとビックリする場面もあるし。
だがかなりの頻度で挿入されるキャンプションが大変読みにくく、ちょっと飛んでる箇所を思わせるところもあった。
そしてやはりサイレントである。チャップリンみたいな奇想天外な動きの連続ならあっという間に覚えても、ここは日常ドラマである。
長く感じた。
ただ、街並み、港などの光景が異国情緒たっぷりで気品も感じられ、絵の鑑賞という形で観れば価値はある。
(登場人物も何やら外国人~ハーフ?役ばかりだし)。

台詞(文字)的には「真面目」が目に付く。「真面目に生きなさい」とか「真面目になって」みたいな、、、これがやたらと目に付く。
この時代日本では、こんなにいつも真面目にとかが日常的に飛び交っていたのか。
他に言いようがなかったのか、、、う~ん、真面目ねえ~。捉え方の問題か、、、。
ともかく気になった。
(人は不可避的に真面目であることから逃れられないものである。真面目を手放すと楽になるのだが)。
かくいうわたしはどうしょもない程真面目なのだ(苦。
だから敢えて真面目に頑張れなどと言われたくはない。

Japanese Girls at the Harbor004

砂子とドラの間にヘンリー(ウルトラQの一の谷博士)が入って来て3角関係みたいになるが、ドラは身を引き砂子とヘンリーが付き合う。バイクに乗り山に行ったり海に行ったり街を走ったり、、、しかしそこにシュリダン耀子という得体の知れない女が入りこむ。彼女に誘惑されるヘンリー。彼を取り戻しにやって来た砂子が教会でシュリダン耀子に銃を向け撃ってしまう。うそ?殺してしまったのかしら、、、と思っているともう場面は数年後に飛んでいる。
砂子は娼婦に身をやつしているようだが、刑務所に服役した感じはないのだが、、、あの件が気になったまま進む。
(恐らくカットされたシーンがあるのでは?)
ドラとヘンリーは結ばれ幸せな生活を送っていた。
その横浜に砂子は舞い戻る。彼女には居候の売れない画家がいつもいた(取り敢えずペアか)。

だが、その砂子と取り敢えず一緒に住んでる画家のところにヘンリーがやって来る。
砂子がドラとヘンリーの家庭にお邪魔する。
ここでそれぞれのペア間が搔き乱される(これも取り敢えずの三角関係か)。
何か最近のドラマでもありそうな噺でないの。
そして砂子と売れない画家の住むアパートの隣に何とあのシュリダン耀子が引っ越して来た。
彼女はその画家に手頃な職はないかと尋ねる(聞いた相手が悪い)。シュリダン耀子は知っていて移り住んだようだ。
画家とシュリダン耀子は度々噺を交わしたり洗濯したりで知り合いとなる。

Japanese Girls at the Harbor003

そして最後にシュリダン耀子の死に際に砂子が対面する(職に困っているお隣さんがシュリダン耀子だったことを知る)。
世間が何と言おうと耐えて、真面目に生きるのよと砂子に諭す。
(流石に死に際だし、お前に謂われたくないとは言わない)。

砂子と売れない画家は別天地で人生をやり直す決意で横浜港から出港する。
ドラとヘンリーは彼らの船を遠く見送る。

絵はカメラの動きも含め大変見事であった。
これくらいの完成度が当時あったのだと改めて認識。
ただ、井上雪子がヒロインであるのは分かるが、もっとヒロインである及川道子ってとても普通の人ではないの。
別に文句はないが、少しばかり気になった。

Japanese Girls at the Harbor005

最高のシーンはわたし足を洗って別のところで再出発するのと告げに来た娼婦仲間のマスミが出て行こうとしたら警官が外に二人待っていて「悪いこと出来ないわね~バイバイ」と言って連れて行かれるスピーディーな展開(笑。唸った。


総じて絵の綺麗な映画である。





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エリア51

Area 51 000

Area 51

2015
アメリカ

オーレン・ペリ 監督・脚本

リード・ワーナー、、、リード
ダリン・ブラッグ、、、ダリン
ベン・ロヴナー、、、ベン
イェレナ・ニク、、、イェレナ
ロイ・アブラムゾーン
フランク・ノヴァク


POVで主観的視座から愉しめるとは言えブレや暗さが尋常ではない。主観的視座は良いのだが実際は、ブレることはない!
そこは頼むよ。
ハンディカムとセンサーはよいけど。電波妨害機やフロンガスやら熱探知カメラ等々の装備も頑張っていたが、、、。
エイリアンのチョイ見せ具合は上手いと思った。あのくらいが無難である。

Area 51 001

結構、軍事施設入るまではなかなかスリリングだったが、入ってからデカい声でギャーギャー喚いたり、ドカドカ走ったり、監視カメラやセンサーにすぐ引っ掛かると思うが、なんであれほど自由に基地内で遊べたのか、、、。基地内のセキュリティがどうなってんだ、という感じ。
それにしても決行する3か月前のパーティーでリードの身に何があったのか。
独り夜空を見て呆然としているなんて(わたしはいつもそんなものだから不思議には思われないが)。
あの時点で人が変わったのは確かだろう(彼は導かれたのか?何で彼なのか、、、)。
それからはUFO~Area 51の資料ばかり観ている。ここで回りの者はちょいと考えるべきだった。

それで結局、リードとお友達4人はアメリカ政府側ではなく、宇宙人に連れて行かれてしまったというわけ?
これあまりにも基地の危機管理体制脆弱すぎだろ。これでよく宇宙人をしまって置けるものだ。
普通は忍び込んだ時点でお縄だろう。不法侵入者は国が捕まえなけりゃ。
一般人があちこちのブースに入ってやりたい放題、UFOにも乗ってしまって、妙な白い液体みたいなもので騒ぎ、反重力物質に喜び、それらが保護ケースを破ってパニックになるとか、充分愉しめたはず。
(わたしだってあんなUFO乗ってみたい)。
イェレナというArea 51の暴露本を出版してから自殺(謀殺された)した元職員の娘からの施設内部の詳細な地図はおおきかった。
これがなければ、無駄に動いているうちに掴って終わりであったはず。
お陰で迷うことなく要所要所を見学して有意義に回れたものだ。
そしてほどほどにしとけばいいものを、どこまでも奥地に入ってしまう。
しまいにはサイコスリラーめいた展開にもなり、、、

Area 51 002

それで漸く侵入者ありとの警報が鳴り、基地内が騒然となる。
なんだか知らぬが、ポッドが沢山並んでいるブースで、そこから一体が起き上がり彼らをつけて来たのか、、、。
大変な怪力と熱線みたいな武器で鉄の扉を破ったりで凄い。こんなものがフリーで動けるような環境にしているのか。
どれもが目を覚ましたら~アクティブになったら、どうなるのよ。
まさかね。これでは基地内の兵士は皆瞬殺されているはず。

基地内の体制が余りに酷い。
カードと指紋とオートロックもあるが、リード達はやすやすと通過してしまう。
なんせエリア51の職員宅に不法侵入しIDカードとコロンの瓶を強奪しているのだ。
コロンの瓶からよく認証に必要な綺麗な指紋が採取出来たものだ。
結構調子のよいノリでテンポ良く進み、、、
施設は警備体制の薄さを除けば、次々に面白いものを見せてくれる楽しいアトラクションハウスであった。
楽しいレベルでリード達も逃げて来るべきだった。

Area 51 005

彼らは結局アブダクション(逆行推論の方ではない)に遭ったという事なのか。
あの真っ白い空間で意識もなく吸い込まれてゆく、、、リードがパーティー後に夜道で発見された時の表情ではないか。
今は遠い惑星で実験材料ではなく過ごしているならラッキーだが。
酷い扱いを受けていなければ地球より楽しいかも。いやあの宇宙人ならもう分子レベルにまで解体されてるか(チ~ン。

エイリアンはともかく、地球の技術力ではどうにも制作できないモノに触れる機会は提供しても良いのでは?
どうなんだろう。弊害ってあるのかな。

そこそこ面白かった。




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サイレント・トーキョー

Silent Tokyo000

Silent Tokyo
2020

山浦雅大 監督
秦建日子 脚本


佐藤浩市、、、朝比奈仁
石田ゆり子、、、山口アイコ
西島秀俊、、、世田志乃夫
中村倫也、、、須永基樹
広瀬アリス、、、高梨真奈美
井之脇海、、i、来栖公太
勝地涼、、、泉大輝
毎熊克哉、、、里中
加弥乃、、、印南綾乃
白石聖、、、里中の妻


ジョンレノンの”Happy Christmas”から着想を得ているとのこと。
And so this is Xmas~とつづく、、、。そんじゃあまあクリスマスだしねえ、というところ?
サイレント・トーキョーの副題みたいに引用されている。
くっつけると長くなるのでやめたが。

Silent Tokyo001

何か重厚にしたいということで音楽で必死に煽っていた感がある。
こういうのってドゥニ・ヴィルヌーヴみたいに淡々と撮る方がインパクトますと思う。
音楽もヨハン・ヨハンソンみたいな繊細で内省的なモノ。
凄みのある役者で固めているので、演出がドラマチック過剰にならぬ方が効果的ではないか。

Silent Tokyo002

広瀬アリスが何やら浮いているんだよね。
演技がどうのという前に浮くタイプの人柄に思える。
多少浮く女性役とは言え、ちょっとねえ。

渋谷ハチ公付近で爆破予告が出ているのにユーチューバーたちを筆頭に物見遊山でやってくる民衆はリアリティあり。
予告時間少し前に、ふざけて爆破の真似をして見せるお調子者もこんな風に必ず現れると思う(笑。
あのちゃんという人が、爆風で飛んできたものが激突してスマフォで撮影されながら死ぬところは素敵。
爆破シーンは頑張った。
確かに犯人の謂う通り、戦争の被害を彷彿させる。
総理大臣の「この国を戦争が出来る国にするのです」にブチギレ警告というのもそれはそれで説得力は感じるところ。

Silent Tokyo003

石田ゆり子は終盤、佐藤浩市とのレインボーブリッジドライブ中に全て洗いざらい喋ってしまったので、そうなのか、と納得するが、、、
他の人々の立ち位置が良く分からない映画であった。
そうほとんど分らぬ珍しい映画だ。
一番、分からないのは、西島秀俊の相手役で仮面ライダーで奮闘した中村倫也。
もう思わせ振りな演技で彼が何者で、何をやってるのか分からなかった。
彼の演技がと言うのでなく、本・演出の問題だろうが。
どういう人なのか全然掴めないのだ。
(わたしの夏バテのせいか)。

今日は映画を途中二回止めてグーグー寝てしまった。
夢で基本データを何度も何度も上書きする悪夢を見た。
こういう作業をよく見てしまうのだ。

Silent Tokyo004

この爆破犯人は、マジで総理とTV対談したかったのだろうか。
政府の方針が決まったうえでの政策となれば、ちょっとした意見交換でどうにかなるのもではない。
テロをちらつかせ脅す以外にないだろう。
そういう形になれば、今回のような事件は幾らでも起きる。
フランスみたいになってしまう。
あのちゃんみたいな人が何人となく犠牲になるのだ。

Silent Tokyo005

レインボーブリッジからあの速度で海に落下し車は爆発したのに、石田ゆり子はどうやって助かったのか。
その後、メールしてたし。
彼女は、この先どうするつもりなのか。
そう、どうするんだろう。

やはり皆が実態を伴わない何かシリアス風な雰囲気を見せられた映画であった。
わたしは合間に観た悪夢に興味が惹かれる。
なかなかしんどいのだが。

Silent Tokyo006

何を観たのか、何なのか、時折あるそう言う映画である。



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蛇のひと

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2010

森淳一 監督
三好晶子 脚本
中島康雄 音楽

永作博美、、、三辺陽子(商社営業事務・独身OL)
西島秀俊、、、今西由起夫(商社課長、失踪)
板尾創路、、、今西の幼なじみ (義太夫の弟子仲間)
劇団ひとり、、、島田剛(漫画家の卵、今西の隣人)
田中圭、、、田中一(陽子の同僚、今西を一緒に探す)
勝村政信、、、里中(今西の元同僚)
ふせえり、、、柴田(河井)のりこ(保険勧誘員、今西の友人と結婚するが離婚)
佐津川愛美、、、里中の妻(パート勤務)
北村有起哉、、、原田(予備校講師、妻と愛人の3人暮らし)
奥貫薫、、、原田の妻
河原崎建三、、、功太夫(義太夫の師匠)
遠山景織子、、、今西の母 (功太夫の愛人)
國村隼、、、伊東部長(今西の上司、自殺)
ムロツヨシ、、、陽子の婚約者(地方工場経営)
石野真子、、、伊東牧子(伊藤部長の妻)


何も考えずポチっと押した映画を観た。
なかなか良かったと思う。

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人は関係の総体であるから、勿論、他者の一言が影響を及ぼすことは充分あり得る。
この映画、類稀な騙りの天才がヒトを上手く口車に乗せることにある種の快感を感じていたら、どんなことが起きるかの実験例みたいで面白い。身近でも(わたし自身も)悪質なアフィリエイトに騙され飛んでもない商品を買わされるみたいなケースは少なくないが、言い包められた結果が良いのか悪いのか分らぬ場合もある。

この今西は、義太夫の師匠の内弟子として才能を開花させるも、師匠と愛人の間に生まれた子と言う立場から周囲からの虐めを一身に受け大変過酷な少年時代を過ごしてきた。だが、騙りの才能を活かし、ここぞとばかりにそのチャンスに一門を潰す。
(これは早熟な少年の計画的犯罪というより自らを守るために身についてしまった特性と考えられる。そこに騙りの才能が深く結びついた)。
文字通り彼らが皆殺し合い、滅びる方向に向ける(展開がエキセントリックで荒唐無稽だが、芸の道だとあってもおかしくはない)。
これはその流派の内輪揉めの悲惨な事件で終わった。

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その後、天涯孤独の身として騙りの才能を活かし、どの仕事に就いても花形として活躍し信頼され良い人として過ごす。
その人の人生を決めるような一言でその方向に向けてしまうが、実際にそれで良かったのかどうかは、その人自身にも周りの目にも分らない。映画の中では、少しばかり不幸になっていると言っているが、違う生き方と比べた訳ではない。その判断は出来ないはず。

伊東部長の自殺を機に失踪した今西を探す命を会社から受けた彼の部下の三辺。
彼女は長い間、有能な今西の下で仕事を熟してきたが、彼の個人的なことなど何も知らなかった。
そして彼についての情報を収集し捜索する間に数奇な人生を垣間見てゆく事に、、、。
彼は単に仕事のできる有能な良い人という単純な人ではなく、騙りによって人を操り、場合によっては殺し合いもさせていたことを知る。伊東部長の自殺にも深く絡んでいたが、彼と部長の最後の会話を聴いていた部長の妻は、失踪した今西に疑いのかかっていた一億円横領は冤罪であり今西に謝りたいと金を持参して会社に現れる。
つまり会社での疑いは晴れ、三辺の役割は早く彼を仕事に復帰させることとなるのだった。

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かつて今西のことばに乗り、マンションを購入した夫婦は、共稼ぎがキツく顔を合わせる暇もなくなったという。
しかしそのマンションをとても気に入り、購入価格が半額になった情報を今西がいち早く掴んで後押ししたにせよ、決めたのは自分たちである。当然、稼ぎの工夫など夫婦ですべきことだ。
塾の講師をしていた先輩が教え子と不倫の仲になり奥さんと大変な修羅場となった際に、今西はこいつが正気に戻るまで、三人で暮らせとことば巧みに提案する。彼は長くても一週間すればペアが確定すると言ったが、そのまま5年一緒に暮らしているという。彼らは感情の起伏の乏しい、精気のない共同生活に脱していた。
だがこれも試しにトリオ生活をした過程で彼らが決着を着ければよかったはず。
今西に励まされ一流会社を辞めて6年間芽が出ず漫画家を目指して籠って描き続ける男は、遂に賞を取り華々しくデビューの運びになる。
田中は今西さんに後押しされ唯一成功した人ですね、と三辺に同意を求めるが、彼女はただ彼が努力した結果よと返す。
そうなのだ、そう考えるのが正当だ。

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様々な影響は受けざるを得ないが、結果を引き寄せるのは当人(たち)である。
今西のことばに乗ったにせよ、舵を取ってゆくのは当人であり他人のせいにしたところで自立性を自ら否定することになる。
功太夫一派と伊東部長は自滅するべくしてしたに過ぎない。
そして三辺のような女性は、いつまでも今西の下で仕事をしていても毒されないだろう。
何と言うか、言葉に対し解毒力をもった人はいる。

最後に中西をある意味狂わせるきっかけとなった万華鏡(少年弟子時代に彼の宝物の万華鏡を盗んで兄弟子が捨てたもの)を三辺はさりげなくプレゼントする。これで彼もかなり自分を取り戻した様子であった。
やはり三辺なら大丈夫だ。
それを通すと醜く惨たらしい現実も綺麗な光に充ちた空間に見える。
誰もが少なからず(不可避的に)、そのフィルターを必要としているのだ。
要はどういうフィルタを持っているかの違いだけか。
少なくとも中西と三辺はそれをしっかり自覚している。

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ムロツヨシが三辺の爽やかな好青年婚約者として出ていた。
今ではサイコ秀吉で活躍しているが(笑。
トーンが落ち着いていてスッと浸れる面白い映画であった。





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*中古



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三つ子

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2010

佐藤智也 監督

山川紗代
山川智代


今日は雑用が多くて時間が取れず、短編映画を観る事に、、、

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花と月と夢という三つ子の女性の噺。
双子の女優が演じる。
一卵性の双子である。
うちは二卵性の双子なので、普通の姉妹より似ていない。ほぼ他人状態である(笑。
であるからか、喧嘩ばかりしている。中身だけでなく性格・個性・資質も全く似ていないのだ。
(余計な噺だが(爆)。

夢が病に倒れ病院に入院し月が付き添いで看病にあたるが、もう先は短いと医者に謂われる。
彼女は酸素マスクをして眠るばかり。
そこに花がお見舞いにやって来て葬式や、遺体の解剖の件を持ち掛けるが。
月は夢にある意味依存している様子に対し、花は現実的に突き放した感覚で捉えていることが見て取れる。
2人で夢について話すうちにかなり感情的な絡みからぶつかり合うことに。

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そして突然、夢の意識が花に乗り移ったり月に乗り移ったりして、それぞれふたりと話す。
超常現象みたいになる。
しかしこれって、2人がヒステリーの状態になってるのか、ホントにポゼッションの状況なのか。
乗り移っているのなら、夢はどちらかの中に入ったままなら、その個体として生きられることにもなる。
彼女次第だ。夢が勝手に2人に入って来ているみたいだし(あるいは招き入れているのか、それとも同時にそれを願っての事か)。

結局、まだ生きることの可能な二つの身体をフルーツバスケットみたいに三つの意識~魂が取り合う形になるのか。
お願い止めて夢ちゃんとか言いながら、夢が二つの身体をそれぞれ通して何やら相手に思いを語る。
解剖OKよ、とか。

さて夢は自分の身体に戻り、亡くなって御終いとなるのか。
何やら鳥居の前で3人で語り合うイメージが現れ、そこで夢が鳥居の中に歩み入ると月もそれに従い入って行く。
現に戻ると、月はリストカットしてベッドに俯せに倒れ事切れていて、夢と共に亡くなっていたことを花は知る。

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つまり独り亡くなり二人残るのではなく、月は夢に付き添い2人亡くなり、花独り残ることになったのね。
一卵性の双子というものは霊的に強い繋がりとかあるのだろうか。
ふたつの卵が二つに分裂して四つになり、その一つが母体に吸収され、三つ子となるには一つは消滅した卵の片割れとしてある。
だから残ったペアは強い一体感を持ち、もう一人はその対象は既に失った存在なのだ。
心中の形をとった夢と月がペアであったのだろう。きっと。

そういう噺なのかどうなのか。
ともかく20分の短編映画で、机の上を掃除している間に終わってしまった。




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ラストサマーウォーズ

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2022

宮岡太郎 監督
奥山雄太 脚本

阿久津慶人、、、宮竹陽太(映画オタクのコミュ障、監督)
飯尾夢奏、、、高梨明日香(クラスのマドンナ、ヒロイン)
羽鳥心彩、、、栗原夏音(ネットにあげたラノベが人気、脚本)
松浦理仁、、、早川俊(メカオタク、カメラ)
小山春朋、、、盛山基雄(応援団旗振り、マイク)
上田帆乃佳、、、刈部志穂(助監督、プロデューサー)
井上小百合、、、土方美菜(宮竹たちの担任、彼らの理解者)
長妻怜央、、、宮竹匠(陽太の兄)
デビット伊東、、、宮竹宏(陽太の父)
櫻井淳子、、、宮竹晴子(陽太の母)


流石は、元乃木坂だけあり井上小百合が爽やかな理解ある先生役を好演した。
いくちゃんも映画の方でも活躍してくれ!
謂いたいことはそんなところか。
本題に入りたい。

last summer003

「やれるかどうかじゃない。やるしかない!」
全てそうなんだよね。
そう言う姿勢でないと何も形にはならない。

であるが陽太という友達0の映画オタクが、海外旅行に行く予定の明日香を、海外に転校してしまうと勘違いし、「君をヒロインにした映画が撮りたい」などと口走ってしまう。それを何人もの生徒に見られる。しかも学校のマドンナでもある彼女は快諾してしまう。
さて困った。映画の撮り方など全く知らない。何であんな事言っちゃったのか、と悩む。何なんだこいつ。

last summer004

先生が映画マニアだと陽太が見抜くところが、テスト用紙の裏に「激突」のタンクローリーを描いていたのを指摘されての事。
あの絵で気づくのは映画に詳しい人に違いないという事で、先生に映画の撮り方を教わる。
映画を撮るのに最低限必要な人について説明を聴く。そして監督デビュー。単純な奴。
次々にスタッフが集まる。
この辺、陽太一人では何も出来ないが、夏音というブレインが脚本で立候補してくれたお陰でどんどん噺が進んでゆく。
夏音も陽太が明日香を映画のヒロインに誘ったことをビックリして見ていたひとりであった。

夏音はすでにWeb上にラノベを連載し、かなりの人気を博している頼りになる人物。
彼女の人選で、陽キャラの外向的な志穂を助監督兼プロデューサーにし、ドローン飛行に興じていたメカオタクの俊をカメラに、応援団の旗振りを何時もやっている力自慢の基雄をマイクに指名する。皆、待ってましたのノリである。
その代わりに、皆の夏休みの宿題ノートは、陽太が引き受けることに。これはウィンウィンの関係だ?

last summer001

後はもう、スタッフに引っ張られて準備や脚本、演技、撮影は進んでゆく。
(余りに調子よく事が進み過ぎな感は否めないのだが、明日香の転校までに撮り終わらなければならない一心である)。
こんなにいきなり団結してやって行けるというのも何とも言えないが、こういうのも良いかなとは思う。
但し、陽太の母が兄の幼い時の怪我がトラウマとなっていて子供に一切危ないことを禁じている。
ここが後半、ネックとなるが、丁度よい彼らの結束を強める試練であり噺の盛り上げどころにもなった。
それから後はかなりコミカルにマンガチックに収斂して行く。
もうひとつ兄の立ち位置がちょっと不自然で余計なシーンも入って気になるが。

last summer005

陽太の母が息子が自分たちで映画製作をしており、危ないことをしないか気になり学校や保護者に伝えて彼らの取り組みを止めさせようと働きかける。この辺はもう毒親のレベルだが、一旦止めさせられたことで子供たちには火が点く。
陽太と明日香のやり取りがグループメールでスタッフ皆に筒抜けというところも愛嬌があって良い。気持ちも共有できる(笑。
ドタバタで現実感は薄いが、気持ちは伝わる。
特に終盤、スタッフ一人一人が彼らを止める親を抑えて後を頼むと撮影の続きを促すところなど。
楽しいが、これでどうやって最後まで撮るんだという感じだが。
最後に残った陽太と明日香の最後のシーンを撮るところで彼の両親がもう止めなさいと車でやって来る(よくそこが分かったな)。
しかしそこに先生が駆け込んで来て、わたしたちの務めは子どものやりたい事を応援して力になることだと必死で諭す。
頑張れ井上小百合。最後の山場か。
母親も折れ、他のスタッフの親たちも彼らを認め、協力することになり、、、
一番最後のシーン、ゾンビの村人を明日香の弓矢で一掃する場面のエキストラ参加をして終わる。

last summer006

何とも調子のよい展開だが、これまた最後に、映画を撮り終わり明日香も去ってしまったと思っていたら、彼女の登校に驚く陽太。
彼女はハワイ旅行に夏休み終盤に行き、帰った頃に学校の今より近い土地に家を新築して引っ越したという。
また彼女に再会できてよかったね、というところか。
こういうファンタジーも良いと思う。わたしは嫌いでない。

このヒロイン、飯尾夢奏は確かにヒロイン向きの女優だ。
まあ若くて有望な人が多いね。ただ、多すぎるのが気になる。
お兄さんの存在は余計であった。





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W・シャトナーの世界の怪奇現象 Ⅷ

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これがSeason1の最後、エピソード8 - 奇跡の生還である。
最初から全部観る気はなかったのだが、この最後の章は、やはり観てみた。
危機的状況において人に何ができるのか、それには興味がある。

まあ、こんなことあったよ、どまりではあるが(笑。
それでも気に留めたいところはある。

旅客機墜落で独りだけ生き残り、ベトナムの密林で8日間捜索隊が来るまで持ちこたえた女性。
彼女は他の人と違うとしたらお腹が苦しいからシートベルトをしなかった事くらい。
隣りに座っていた彼氏は急降下するときは手を握り合っていたというが、即死であったという。
シートベルトの差なのか、その他の微妙な(未知の)要因があるはずだが、それらについては分からず仕舞い。
その時固有の複雑な力学が働いたはずだ。フライトレコーダーをいくら詳細に分析しても、これをシミュレートするのは不可能だろう。
何故その女性が助かったかなんて、まず分かるまい。
そうなのだ、何故彼女だけが助かったのかは、”分からない”のだ。
ただ本人は、内なる声~ハイアーセルフか~に従って助けを待ったと。
即死でなくとも8日何も出来なければ餓死である。骨折していて動けない。しかし知恵が色々と授けられたみたいである。
手の届く範囲で、雨水を貯めるアルミホイルによる受け皿製作とか、、、。


スカイダイビングでパラシュートが開かず、インストラクターと共に4500m上空から落下した人。
フリーフォール後に開くべくパラシュートが開かず仕舞いでは、シンプルにフルにフリーフォールでないの。男だねえ。
ただ飛び降りたとしたら4500m、、、あり得ない。重力加速度は約9.8 m / s2である。160kmくらいの速度で落下。
生きた心地はしないだろう。わたしはジェットコースターも無理派である。こんなの飛んでもない。
しかし酷い骨折はしたが、2人とも意識はあり動けないが助けを求めて叫んだという。
回復には長い時間を要したが、助かり回復したのだ。
何故死なずに済んだか、、、アドレナリンの過剰放出。血液の量が増し筋肉が強靭になる。骨格や結合組織を保護する、にせよ、助かった理由は、分からないそうだ。
奇跡的に助かるとか新聞に書かれ少しの間、有名人になるが、何故生還出来たかは分からない。

次は隣を走っていた車が、自転車の少年を轢いてしまい、その車の下から彼を救出した男の例。
彼は体格は良いにせよ、その車は1tを軽く超える重量だ。
しかし彼は素手で車を持ち上げ下に挟まって倒れている少年を救い出した。
よく言われる火事場のバカ力か?
ともかく、是が非でも少年を救おうと死力を尽くしたということであろう。
もうあんなことは出来ないと本人も言う。
大変なご苦労であるが、それだけの事でもある。
人にはそういった潜在能力が眠っており、急場で覚醒する場合があるという事か。
筋肉には極限状態で発揮される力があるという。
(それでキン肉マンなどのスーパーヒーローもいるのか)。
「力を発揮するには理由がいるんだ」(その男性曰く)。

「揺ぎ無い決意が爆発的エネルギーを生むのだ」と言っているが、車を持ち上げた人は当てはまるが、、、。
他の件については、違う要素が絡んでいる。
根性で何でも乗り越えられるかもとか思ってしまうヒトが出そう。

タイタニック号の悲劇がここでも取り上げられる。
(最近、それを見学に行ったタイタン号の悲劇も記憶に新しい。爆縮)。
パン焼き係の男性が、ボートに乗るのを拒まれ長いこと氷点下の冷たい海に浸かっていたが、他の人が10分で命を失うところ、2時間漂った末に救出されたという。
何故彼はこんなに冷たい海水に長い時間浸かっていても助かったのか。
本人曰く、海に落ちる前にかなりウィスキーを呑んで暖まっていたからだ、そうだ。
普通、酒呑んで海に入ればそれだけで死んだりする(たこ八郎氏もそれで亡くなっている)。
逆に血管の拡張により低体温症になり易いという。
アルコールの酔いでパニックにならなかったことが精神的に良かったのでは、という意見もあったそうな。気の持ち方か。
恐怖の回避は確かに大きいはずだが。彼は直ぐに船の仕事に復帰したという。

6歳の少年が森で家族と逸れ一人彷徨い、平坦な道ではないおよそ30kmを移動し、民家に助けられた。
レスキュー隊が森の中、街路からも空からも名前を呼び続けて捜索をしたが、結局森から街路に出て来たところを近くの家の人に保護された形らしい。
行方不明となった午後から翌日8時まで、歩き続けたようである。
その間、自分の感覚~気持ちに素直に従って歩いたという。
ちょっと違うぞという時は戻り、安心して歩ける方向に向けて進んだようだ。
内なることばに耳を澄ませという事か。
ともかく、何かを感じ取り進むべき方向を選んだことは確かのよう。
こういう時に必ず出て来る「高次の存在と繋がったのよ」スピリチュアル~メタフィジカル系の人も登場。
解説してくれるが謂うことは皆同じで分かり切っているし陳腐。

最後に車の運転中に知人でもあり事故死したダイアナ妃のイメージが眼前に浮かび上がり、車を路肩に停めたことで、玉突き追突事故を免れた女性のエピソード。
大事故でかなりの台数の車が滅茶苦茶になっていたが、その女性の車だけ無傷で助かる。
当日霧が深く安全運転していたが、ダイアナ妃の顔をまざまざと観て直ぐに走るのを思い留まったという。
少し前に彼女が事故死していた。直ぐにピンと来たそうだ。
彼女の中の潜在意識の発動による危機回避か、実際にダイアナ妃が危険を知らせてくれたのか。
彼女は、後者を取っていた。そういったネットワークもあるのかも知れない。
番組によってどちらに持ってゆきたいかが決まるところだろう。

結局、急場にあれば「内なることばに従え」ということ。
後は、アドレナリン大放出で気力をもって立ち向かえ、という感じか。
酒に頼るのは、ヒトによると思う。

W・シャトナーさんとはひとまずさようなら。




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スクールガールズ

Las ninas001

Las ninas
2020
スペイン

ピラール・パロメロ 監督・脚本

アンドレア・ファンドス
ナタリア・デ・モリーナ
ゾーイ・アルナオ
フランチェスカ・ピノン
マース・マリーン
エバ・マガナ


1992年、バルセロナオリンピックの年のスペインが舞台。
サラゴサの修道院に通う、母親と2人暮らしの少女セリアの思春期真っただ中の苦い迷走ぶりを描く。

Las ninas003

地味な生活をしていたセリアであったが、両親を亡くしバルセロナから転校してきたブリサとの出逢いで、流行、音楽、ファッション、メイク、煙草やアルコール、性についての知識~文化に触れることに。交友・行動は広まるが、不安定で刹那的な逸脱行為が目立つようになって行く。そして共に親が揃っていないことから差別を受ける。
もう一人の友人クリスの姉の残酷な侮辱と虐めも彼女を追い詰めた(だが世間一般の声の代表でもある)。
セリアは自分と自分の置かれた環境~運命に対して不可避的に向き合わざるを得なくなるのだ。
しかも思春期である。生活も苦しい。「スポーツブラ買って」に対して「来月ね」と、母も彼女の成長や葛藤に向かい合う余裕がない。
母に対する反発と自分の出生についての疑念を募らせてゆく(出生の秘密は手帳を探して見ていた。書かれたことは、こちらには分からない)。

Las ninas002

セリアは、ブリサと共に、問題行動を重ね、学園長から呼び出しがかかるまでになる。
学園での告解の際に、彼女は神父に独身で子供を持つことは罪であるかを問う。
一番、引っ掛かっていることではあるにせよ、、、。
答えに縋れればと謂う気持ちもあろうが、初めから無理であることも知っている。
正解ではないのだ。欲しいものは。

Las ninas004

”アウレリオ・マテオ 1932-1992"ってどういうことよ。
セリアが生まれる前に死んだ(はずの)父の墓である。
セリアは生れてはじめて母の実家を訪ね祖母と対面する。
呼んだのは、叔母だ。
その実家では、お菓子を勧められただけ。誰も何も話さない。何も話してはいけないのだという事だけが分かる空間。
最後に母と二人で墓参りする。

Las ninas006

しかしこれがどういうことなのかは、わたしは分からない。
これまで一切自分の家族の事を語らなかった母である。そしてその家族も初めて会う孫に、何一つ語れない。
ただ母の耐えて来た苦悩だけは、感じ取れる。
それが何であり、どういう経緯を辿ったのかも分からずとも、苦悩の重さだけは実感できることはある。
語ろうとしても何も語れない重みだけが実感できれば、それで充分ではないか。
セリアはそう思ったに違いなかった、、、。

Las ninas005

ここで初めて母の積年の苦悩を知り、セリアは母を許す。
最後に母が彼女の合唱の発表を聴きに来たところで終わる。
(始まりも合唱の練習光景であった)。

淡々と難しい役を演じ切ったセリア役の女優は、なかなかのもの、、、。
次の作品が愉しみ。



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緑はるかに

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1955

井上梅次 監督
京中太郎 脚本
北条誠 原作

浅丘ルリ子、、、ルリ子
高田稔、、、お父様の博士(科学者)
藤代鮎子、、、お母様
浅沼創一、、、千ビ真(ルリ子のお友達)
永井文夫、、、ノッポ(ルリ子のお友達)
石井秀明、、、デブ(ルリ子のお友達)
渡辺典子、、、マミ子(ルリ子のお友達)


何でまた、ルリ子のお父様とお母様がサーカス団の大混乱の場に姿を現し、彼女と再会を果たしたのか?
これはもう透視能力でもなければ実現不可能ではないか。
または、夢の出来事?いや夢の締めくくりか。

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緑のオルゴールの音。
東京から遠く離れた北海道で研究を重ねる(オルゴールをくださった)お父様。
優しいお母様と夜の窓辺に、思いに耽る。
夢見がちなルリ子。
トワイライトゾーンへと溶け込む。
白兎との踊り。

とその時、夢は悪夢に変調する。
童話に出て来る悪者が車でルリ子とお母様を誘拐する。
お父様が急に御病気になったのでお連れしますと言って。
車が着いた処は、洞窟なのだ。急な転調。
そこでお父様と再会を果たすが、ルリ子を連れて来た悪者は研究を横取りしようとするX団のスパイであった。
博士から研究の秘密を奪おうとして彼らはお母様を手荒く折檻する。
それでも口を割らず博士は娘が持って来た緑のオルゴールに秘密を隠す。

そして父も母も亡くなってしまったと思い、娘ルリ子はその洞窟から緑のオルゴールを持って逃げ出す。
森の中で~ここは一体何処なの~孤児院を抜け出したトリオと出くわす。
今やルリ子も彼らと立場は同じ。同じ子ども以外の何者でもない。
彼らと一緒に逃げることになるが、再びルリ子はスパイたちに捕らえられ、トリオがそれを探し出しルリ子を救い出す。
エレベータである。吊り橋である。崖である。そして川。
ルリ子は男たちから逃げる際に、川に大事なオルゴールを落とす。
川を流れてゆく緑のオルゴール。それを追おうルリ子たち。そして悪者たち、、、。
夢の逃避行。

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実写版ワカメちゃんみたいなマミ子に出逢い、彼らに合流する。
オルゴールを追って東京に戻る彼らと共に、そこにいるお母様に遭うと言うのだ。おばあちゃんと二人暮らしは淋しいと。
彼らは東京に流れ着く川に沿って逃げていた。
地形はまるで分らない。夢の地形を行く。

ルリ子たちは、或る古道具屋のウインドウでまさに探していた緑のオルゴールを見つける。
それわたしのよ、といっても主人は1500円で売ると言う。
それで5人で靴磨きをしてお金を稼ぐ。
一日300円儲かるから5日で買えることになる。
しかし1500円握って店に急ぐが、一足先にそれは売れてしまっていた。

それを買ったのは、マミ子の到着を待ちわびるお母様であった。
マミ子もオルゴールが大好きなのだ。
悪者スパイ団も緑のオルゴールを手に入れる為、サーカスを開催し賞金で釣って緑のオルゴールを持参させ集めていた。
そこにルリ子たちも他の孤児院の子供たちの協力も得、サーカスに乗り込み、緑のオルゴールを取り返そうとする。
サーカス団はオルゴールを巡り、大混乱となる。
そこへ死んだと思っていたルリ子の両親が現れ、なかなか見つからない本物の緑のオルゴールはマミ子のお母様が彼女に聴かせているのだった。
博士はそこから秘密の研究を記したカードを取り出しライターで火を点け燃やしてしまう。
「これで悪者から研究を守れたよ」と。

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緑のオルゴールを求めて旅をするイニシエーションであったか。
研究成果を灰にするなら始めからしていればよい。
これはお父様の仕組んだイニシエーションゲームなのだ。
最後は、白兎たちとのバレエの舞台にルリ子たちが招かれ大団円で終わる。
夢の終わりか。

浅丘ルリ子がいくら何でも若過ぎた。あなた誰よレベル(笑。
もう少し歳を取ってからの彼女の演技を見たい。
歌は明らかに他の人が唄っていた。
フィルムがかなり痛んでおり、飛び飛びになっていたが、それも味かな。





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何故かジグゾーパズル(笑。素敵。




W・シャトナーの世界の怪奇現象 Ⅶ

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エピソード7 - 脳の驚異

エピソード6 - 死の向こう側は、全く見る気になれないので、こちらで終わりにしたい。
前生記憶とか死後の世界とかには辟易する。いらない。
W・シャトナー氏とも馴染んで来たところだが、そろそろさよならである。

さてここでは、脳についての興味深いエピソードの紹介とそれぞれについての見解が述べられる。
脳を考えれば必然的に意識の謎も取り上げられるが、、、。
ここを契機に色々と調べてみるにはよい番組かと、、、。
わたしも脳と意識に関する書籍は幾つも持ってはいるが、積んだままである。
読まないと、と言う気にさせてくれる(笑。何でわたしには時間がないのか?これ共感してくれる人いると思う(笑。

さて謎ばかりだが、意識との問題から言うと何故脳はいやわたしは自分と言う意識を持ち続けられるのか。
核心となるところ。情報の収集・管理・保管もまだメカニズム的には分かっていないが。
つまり(最近試みられている脳のデータをコンピュータに取り込むというもの。ここでわたしと言う意識も移せるのか、である。誰もが懐疑的である)。


人が最も賢い時とは誕生したその日であるそうだ。
数千億個のニューロンがフルに活きているという。
いまでもわたしは次女が生まれてきた時の顔を忘れない。
もう全てを悟った賢者の顔だった。
真に満ち足りた表情なのだ。
但し、残念ながらあれ以降そんな顔に出逢ったことが無い。
人はどんどん愚かになって行くのかも知れないと思うことがある。
何か大事なネットワークから、外されて人として生き始めるという意味は一体何なのかと、、、。
それからは実に覚束ない生を歩んできたと思う。とても貧しい生き方だ。何の確信もない、、、。
死によって再びネットワークに繋がれるならホッとするが。

事故で脳に多大な損傷を受けた男性がその後も支障なく過ごした事例もある。
鉄道での爆発事故だが周囲にいた人は皆、彼の即死を確信した。彼の頭部を太く鋭い1mの釘が貫通したのだ。
しかしその後、12年間、彼はそれまで同様、普通に生活したという。
脳がどのように損傷部位の補填をしたのかは分かっていない。
神秘だ。

学習は、配線の組み換えにも例えられる。
常に学習や思考の度に組変わり続け変化する脳、全容解明のしようのないのも確か。
普通、天才は生まれながらに天才であるが、、、
これは遺伝ではない。親は大概ごく普通の人である。
兄弟で、片や数学の天才、片や音楽と語学の天才という例もあるが。
何故、飛び抜けた能力を示すのかそのメカニズムは未だに分からない。
分らない事ばかりであるが、面白い。それに関するエピソードなど豊富で、、、

後天的に天才を獲得する人もいる。
プールで頭を酷く打ち、5日間安静に寝た後で、コンサートをして回る程のピアニストになっていたという男性もいる。
余程打ち方が良かったのだろう。39歳で天才となった人だ。ピアノも音楽も縁のなかったにも拘らず。
まさに神秘的としか言いようがない。
何でも眠っている間、ずっとピアノの鍵盤みたいなイメージが頭を巡っていたそうな。
これも何かのネットワークに繋がったということか。

後天性サヴァン症候群と呼ばれる(自閉症や知的障害のある人が特定の分野で飛び抜けた能力を発揮する例としてサヴァン症候群がよく挙げられるが)。芸術に高い能力を発揮する例もある。実はわたしもそう言う人に接した経験がある。
ただ未経験の分野で発現と言うのが何とも不思議なところ、、、。
そして脳の左前側頭領域にダメージを受けていた人である例が特徴的であると。
頭の打ち方により~良い子は真似しないでね~そういった幸運に見舞われるのだ。
脳の左半球が抑制された分、右半球が解放され活性した例のひとつと解説する科学者もいるが、、、。
これも大胆な再配線の例と謂えるか。
天賦の才は発現の問題とも謂えよう。

これがきっちりと理論・方法論的に操作・制御・管理可能ならマインド・デザイン・センターも出来るだろう、、、。
あなたはどのような才能がほしいですかと(笑。大変な商売になる。
単に何処かの領域を不活性化するようなことは出来ても、そんな単純なものとは思えないが。
(とりあえず現段階でもどの領域がどういう働きに対応しているかは調べ上げれられてはいる)。
しかし新たな可能性に恵まれるのだ。実に魅惑的なことではないか。

そこでなんと我らがW・シャトナーは、自分の中に凶悪な殺人犯の特徴を示す才能が眠っていたらという噺を提示する。
それって才と謂うより、病に括られるのでは、、、ともかくそういう芽が脳に組み込まれていたらという仮定であろうが。
精神病質者の脳研究者は彼の脳の接続に問題があると言う。
特に眼窩前頭皮質の機能低下である。この大脳辺縁系の働きの弱さが共感、理解、思いやり、心配、良心などの不活性化を生んでいる。普通の脳で自然に起こる感情が湧かない。

接続の活性化の試みはなされている。電気インパルスにより。
但しマウスではなく人の場合、対処は難しい。
ここで番組は、才能~特質は、遺伝か環境かを問う。
脳のCTを撮って自分が凶悪殺人犯の特徴を強く持った脳であることに狼狽する人の例を見る。
彼は多少共感力は低いにせよ穏やかな家庭を維持しているという。
発現においては遺伝要素は30%のレベルだという。これはよく言われている。

脳は、人体内の信号だけでなく、遠方からの信号も受信しているという件についても取り上げる。
ここはかなり示唆的で、重要な所か。
遠隔透視の例から始める。
離れた場所に意識を飛ばし、その場所の情報を持ち還るというもの。
冷戦時代、ソビエトとアメリカが競って秘密裏に研究を重ねた分野でもあった。
スパイ活動やイランで起きた人質救出作戦などで大変有効に機能した実績も豊富にある。

そして最近始められている脳のコンピュータへの全データアップロードである。
コンピュータに接続されたアバターロボットが知覚を提供することで、永遠に電脳存在として生き延びようと言う試みである。
しかし、そのデータの集積の場所にわたしが出現する保証は全くない。
意識が生じるかどうかも全く分からない。今のところ科学者誰もが懐疑的でありはっきり否定する人も少なくない状況である。
金持ちで既にそれをやっている人はいるそうだが。
脳組織の再現で意識は立ち現れないというのが、多くの見解だ。
記憶の改竄、変換はマウスのレベルでは成功しており、精神疾患への応用は進められて入るが(トラウマの制御など)。

意識は身体性と共に脳の外に広がっており、宇宙~情報フィールドに繋がっている。
(身体性の問題をもっと前面に押し出して欲しかったが最後の方で少しばかり解いていた)。
そしてここでは宇宙意識とあからさまに言ってしまう。
個体の脳レベルでの捉え方では、我々の脳~意識の問題は解けないという見解を示して駆け足で終わる。
まだまだ自分のコピーなんぞ作れる段階ではない。

これは、自分であれこれ当たりながら深めてゆく契機になる番組にはなっていた。
自由研究キッズにも取り組んでほしいところ。


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W・シャトナーの世界の怪奇現象 Ⅴ

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エピソード4 - 奇怪な未確認生物は、無理(笑。
「未確認生物」はお噺になっていない。
ともかく、未確認生物は、シーラカンスのような昔に絶滅したと思っていたモノが生き残っていたり、彗星から或る時にやって来て地上で進化した特別な系の生物であるとか、、、。タコなどそれではないか、怪しい。
などというのも面白いが、、、ほぼ全て噂話と憶測の域を出ない聴いてもそのママ忘れるようなものであった。
そもそも「未確認生物」なので対象自体があやふやで、その何だかイメージすら定まらないものについてあれこれ覚束ないことを言っても何だかワケわからんということにしかなるまい(最初からはっきりしている。テーマが不味い)。
もうこのシリーズやめようかと思ったが、もう一つ観る事にしてみる。とりあえず。


エピソード5 - 風変わりな儀式

「儀式」の意味と力が問われる。
火渡り儀式から紹介される。
これは世界中の各地で行われている儀式の中ではメジャーな部類か。
確かに炭が真っ赤に燃えているところを6mくらい素足で渡るのだ。
温度は500℃から700℃は上がるという。
普通、人は70℃で火傷をする。

だが、儀式の参加者はちゃんと手順を踏んで行った者は火傷をせず渡り切るという。
この(手順も含めた)儀式とは何か?
確かにこのような強烈なものから探る方が分かり易いか。

灰が充分熱ければ蒸気の薄い膜が皮膚と炭との間に生じ熱伝導が阻害されるという。
ホントか?それでも蒸気の熱さで普通に火傷しそうに思うが、、、。
ベテラン火渡り行者の謂うには、火傷をするかしないかは、心構え次第だと言う(この方が説得力は感じる)。
実際に火渡りする前に手順として、エネルギーを高めるエクササイズをするのだ。
参加者だけでなく周りで見守る関係者全員で踊ったり瞑想するなど、気持ちの高揚をMaxに持ってゆく。
そして一種の興奮状態で一気に渡り切ってしまう!
極度の覚醒状態が現れコルチゾールのようなホルモンが過剰に分泌され痛みも感じなくなるのだ。
心拍数もかなり上がっているが、当事者と観客もがほぼ同じ数値で同期すると。
参加者も見守る者も同じ状態で~どうやらここが肝心な所らしい。大きな共振の場を作るのか?
観客との共同体的な経験となることが儀式とも謂える。

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右腕の強い痛みを或る日感じ、その治療に幾つもの病院に行って診て貰うがさっぱり原因が掴めず、痛みも全く取れない。
生活に支障が出たが、そのままの状態で2年が過ぎた頃、彼女はブードゥー教の存在を知る。
色々調べると、ブードゥー教の術者は、こころとからだの関係を深く理解しているという認識に至った。
そこで彼女はブードゥー教の術者を訪ねる。彼は凄い高級なホテルのオーナーでもあった(つまり儲かっているのだ。それも信用を示すか)。彼は彼女に対し「本気か」と聞いたそうだ。飛行機で長旅でやって来てダメとか言われたら堪ったもんじゃない。「勿論」と返す。すると直ぐに施術~儀式に入った、、、。
彼女の一番痛む個所を触ってゆくと、術者は「黒い猫の形をした悪霊が憑いておる」と言う。
そしておもむろに、そこからソレを引き剥がすように取り除いたという。
帰りの空港では嘘のように何の痛みも残っていなかったそうな。
良い噺である。

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定番の儀式と言えば、エクソシストであろう。
でもホントにポルターガイストとかあるのか、わたしにとって未知の領域に思えて来たのだが、、、。
やはり向うではホントにあるのね。日本では見たことないけど、悪魔は来日しないのか。

ある家に引っ越して来た母と子供3人の家族が次々に不可解な現象に巻き込まれる。
まあ、典型的なエクソシスト映画で観られるアレである。声がしたり物音が響いたり、人影が見えたり足跡があったり、物が移動したりの、、、しかし家族は不安と恐れに苛まれ憔悴しきる。
母に事情を聴くが、関係者も警察も何か特別なことが起きていることを察する。
「そういえばあそこの娘の様子が変わっていた。ベッドの上に浮かんでいたんだ」って飛んでもなく変わってるでしょ。感心してる場合じゃないわ。もう大変な事態になっていることに気づいた人々は、教会に連絡する。
これってそれなんじゃない、という感じでベテランエクソシストが、儀式を執り行う許可を得る(許可が降りないと出来ないのだ)。
聖書や十字架、聖水をもって、悪魔に語り、神に語り、、、ラテン語で、、、。
それを繰り返すうちに対象の悪魔的な所作や表情が消え、悪魔も退散したことが確認される。
1件落着。この過程でそれほど怖い現象は見られなかった。良かった。

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イスラエルで干ばつが続き、人々は大変困っていた。これでは農業がまるで出来ない。
それが5年ほど続いた。よく我慢したものだ。
そこで主席ラビが人々に呼びかける。嘆きの壁に向かい全員で祈るのだ!と。
皆が正装して厳粛な儀式を行う。只管祈り続ける。
そう祈りの力が試されるのだ。
集団の祈りの力がどう作用するか。
すると2週間後に漸く雨が降り始めるのだった。
単に干ばつが終わっただけだとか罰当たりな見解を述べる科学者もいたが、ずっと降らなかった雨がこのタイミングで降り出したのだ。わたしは祈りの成果と取りたい。

儀式はわれわれの思想や信条を表現したものであり、霊的フィールドを作り出し、大いなる力を与えてくれるのだ、で締めくくっていた。
わたしは「変化を起こす力」としてそれに注目したい。
今後、使える形に持ってゆきたい。考える余地あり。


死~葬式と格闘技と言う残酷な儀式についてのレポートもあったが、別にこれというものでもなかった。
もうこのシリーズ物もこの辺で、ということにしようかと思う。




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W・シャトナーの世界の怪奇現象 Ⅲ

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エピソード3 - 自然の怪異

最初に案内人W・シャトナー氏曰く、非人為的世界を自然と呼ぶ。
しかし自然が不自然であればどうするか。
自然の摂理に反していたら、、、われわれはそれに翻弄されるしかないのか。解明に挑むべきなのか、、、と。
どうなんだろう?これまでも「自然の脅威」と言う括りで、それに挑んで来た歴史ではないのか、われわれの文化とは。

最初のエピソードは、ベネズエラのマラカイボ湖だ。
観ながら大事なポイントだけ速記しておくのだが、ほぼ何を書いたか読めない(笑。
はじめの頃の噺は印象的でないと、観終わった頃には掠れているもの。これは確か、、、
毎夜、稲光が空や湖を照らし続けているという。何やら地球創世記の面影を彷彿させるのでは、、、素敵。
ここで、二度も続けて落雷を受けた女性がいるのだ。勘弁して。わたしはやはり噺だけで結構。
雷は同じ場所には落ちないというが、ここでは何度でも落ちる可能性ありという。落ちる確率は宝籤に当たるのと同じと言うが、先の女性は籤を二度も当てていることに。素敵。いや、よく命が未だにあるものだ。まさかそれに運を使ってしまったか!
残念なのかラッキーなのかよく分からないが、数奇な経験をしたことは確かで、それ以来嵐が近づくのがはっきり分かるようになったそう。毛が逆立つそうだ。
世界中にこういう場所はあるようで、「雷のホットスポット」と呼ばれるらしい。つまり自然の避雷針みたいなところか。
カオス理論のアトラクターとか、色々科学者の切れ切れのことばが出て来たが、耳を引いたのは、雷の絶大なエネルギーにより通常加速器内で実験的に生成される「反物質」が生成されているというもの。これもう少し聞きたいところであったが、全て一瞬なのだ(笑。少し腰を落ち着けて解説して欲しいところ。それから本題である雷の落ちやすい場所と人についての見解も勿論。
紹介に終わった感あり。

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ペンシルべニアの炭鉱の町の噺に移る。
ほぼ廃坑となった後も住民は残っていたそうだが、ある日少年が地面から白い蒸気が吹き上げており、それに近づくと近くの穴に落ちてしまった。彼は途中で木の根に掴り助かったが、それ以来町の下には、未だ消えていない火が存在することを人々は知る。
その後、ゴミ処理の件で州の指導が入り、ゴミの焼却が命じられ実施されたことをきっかけに、町の下に眠る巨大な廃坑の迷路の坑内火災へと発展し、遂に地上に激しい炎として噴出する。その火災の激しさは凄まじく、60年経っても全く衰えない。
考えられるどんな手を講じても火は消えないのだ。そもそも少年の事件を経て何で火など燃やしたのか。

地面も500℃を超すところも出て陥没して家を呑み込んだり、そうでなくとも軒並み焼けて倒壊し、文字通りのゴーストタウンと化していた。それでも5人まだ住んでいるそうで、こういうの根性とか呼ぶんだろうか。火とガスの噴出する、既に草木もない場所で。
調査した学者の見解では、有毒ガスもずっと噴出し続けており、時間が経てば経つほど火災は長引くという。
鎮火まで200年はかかると言われているが500年でも消えない可能性が高いそうだ。
石炭が大分残っているのだろうか、それが燃料となり、穴から空気が供給されているし、大変な事態だ。
人の自然の利用の仕方の問題と謂えようか。地下の火は特別なのだ。

ポーランドのノベ・ツァルノボ村では、森の木が地面を舐めるようにどれもが曲がっている。
植物学者が見ても自然発生的とは考えにくい。
しかし盆栽みたいに人が手を加えてそのようにしたというのも無理がある。
手間が余りにかかり過ぎるし、その後ほったらかしはあるまいとのこと。確かに。自然の広大な地で盆栽を試みたにせよ、作者は誰なのか。
ともかく、大木が一様に激しく曲がっているのは、単に異様で不気味だ。趣深いとか芸術性に酔う気はしない。
植物学者の説では、森の木は共同体を形成しており、会話をしているという。
木と共生する菌根菌が延ばした菌糸で他の木々の菌根菌に接続しているのだ。
つまり木々が自らの意思で共にそうしていると謂いたいのか?
土壌の化学物質とか特異な木の遺伝子の問題とか、他のアプローチもないものか、、、。
木に霊性はあると思うが。

カナダのウインザーでは、ヒトを追い詰める怪音の問題である。
4時間から4週間に渡り同じ不快な音が続くという。独特な低周波音の継続である。害を及ぼさないはずはない。
夜に起こることが多く、当然睡眠に影響し健康被害が訴えられている。
これは堪らない。わたしなら絶対に引っ越す。
政府の見解は、ノイズの発生源はザグ島であると。デトロイトの対岸の工場の音が川を越えてウインザーまで届くという。
「共振」であり特定の周波数の時に周囲のモノが音を増幅させる現象を学者は主張している。
しかし日中より夜の方が聴こえる。週末にも変わらず聴こえる。工場の操業していない日時に聴こえているのだ。
その発生源が覚束ない。
地震によるものという仮説もあるが、検証中というところか。

デビルスタワーが紹介される。
その山の成り立ちが科学的に全く不明であるのだ。
しかし見た目が神々しく厳粛で、近づいて観るうちに心が浄化される思いになるという。
助かに画面からみるだけでもそれが納得できる威厳ある風格である。
未知との遭遇でUFOの着陸地に選ばれた場所でもある。
映画上映以来、観光客は絶えないそうだ。
聖地というに相応しい場所であろう。
これについては単に紹介以外の何ものでもなかった。

イエローストーンパークの紹介で脅かして終わる。
多様な間欠泉が幾つもあり、ここも観光客の絶えない美しくも自然のエネルギーの感じられる場所である。
だが専門家の謂うには、この地下には超巨大な火山が潜み、巨大マグマの塊があるという。
巨大噴火による大絶滅はこれまで地球史に3回あるが、ここもその規模の噴火は確実であり、それがいつ起きるかだけの問題であるそうだ。
その辺の予測の出来ないことは分る。
われわれは自分の国の地震予測も雷の発生も落ちるところも何も予測など出来ない。
そうしたレベルだ。
しかしこれは起きてからでは対処不可能な事態と謂える。
また凄まじい範囲の大絶滅を地球は記録するのだろう。

そこそこ面白かった。



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W・シャトナーの世界の怪奇現象 Ⅱ

Loretto Chapel

エピソード2 - 謎に包まれた建造物

エチオピアのラリベラ。巡礼の街。
この聖地が、飛んでもない。教会が地上に建てられたものではないのだ。
11棟の教会は全て地面の岩盤を刳り貫いて形作られている。地下に向けた彫刻のように。12世紀の事だ。
そこで出た岩はどうやって運び出すのか、それがわたしは凄く気にかかってしまう。
通常の建造物は地上で、下から上に向けて建造される。
だがここは地下に向けて岩を掘り進んで作っているのだ。20年かけて。しかしよく20年で出来上がったものだ。
奥行き30メートル。地中に障害物があったらどうするつもりだったのか?
ともかく、とんでもない意図が無ければこんな突拍子もないことをするはずもない。
何で、何の為にそうしたのか?

ラリベラ王は、エチオピアにエルサレムを再現しようとしたと(夢のお告げらしい。わたしもそんな夢見たい)。
地下世界はより神秘性、厳粛さは昇まると思う。文学・芸術の憧れの場でもある。
そして壁面に刻まれた文様からはテンプル騎士団の関与が濃いということ。
彼らは石工術・建築にも造詣が深かったそうだ。
「契約の箱」(十戒の刻まれた石板の収められた箱)を安置するための場所であったというのが、ここでの解釈であった。
この建造物がそれを守るに適した構造であると。イエスの使徒が12人であることから、まだ発見されてない教会の存在も囁かれているという。

次いでサンタフェの中心部に位置するゴシック様式のロレット・チャペルの「奇跡の階段」。
(プレ・ラファエル派の絵にあった気がして直ぐに調べに行ったが、「黄金の階段」と勘違えしたみたい)。
絶妙なバランスで自立した33段の支柱の無い二重螺旋階段である。イエスの生涯も33年。
一切釘やネジや接着剤が使われていないという。二重螺旋構造が強度のミソなのだ。魅了される美しさだ。
材料もアメリカにはないもの(地域の限定出来ないトウヒ)で、何処から入手して誰が作ったのかも定かではない。
ロレット修道院を建造した人が聖歌隊席に上がる階段を作らずに急死してしまい、、、
困った修道女が聖ヨセフに祈っていると階段を作ろうという大工が現れ独りで作り、代金を受け取らず消えたという。
彼は聖者だったのね、と修道女たちは喜んだという、まさに聖者による救済というキリスト教的説話。
一番、好きなタイプの噺でありモノであるが。リポーターが実際に上がってみると足元に何もない宙に浮いた感触であると。
わたしも昇ってみたい。宗教に目覚めるかも知れぬ?!
33という数字からフリーメイソンを関連付け、テンプル騎士団を持ち出していた。
この回はそれで攻めるつもりか。

と思ったら、次からは打って変わって人の禍々しい執念の作った大邸宅の噺である。
この噺は有名であり知っていた。
奇妙で不気味、異様としか言いようのないその建物はサンノゼにあるウインチェスターハウスである。
設計図に従い完成させるのが一般の建築であるが、この家は夫人が生きている間(40年ほど)ずっと増改築を続け非常に不合理で理屈に合わない化け物のような邸宅にしてしまったのだ。
3.6mにある足場のない扉や一歩進めば下に落下する扉とか先のない階段、そんなものばかりなのだ。
何故、そんなことをし続けたのか。
夫の作った大量殺傷に画期的な連射の出来るウインチェスター銃で巨額の富を得たが、不幸なことが続き、占い師にみてもらうと、その銃で殺された多くの霊による呪いだと説かれる。家をこの先ずっと増築し続けなさい。そうすれば助かります。一人の占い師のいう事を真に受けたのね。屋敷が迷路に成れば霊に見つからずに生き延びることが可能ってそれは無いでしょ。
それ以来、霊を惑わすような怪奇な作りの家が膨れ上がって行く事となった。そして13という数があらゆるところに見られるという。
この意図に関しては、まだ解き明かされてはいない。
面白いといえば確かに。しかし逃げ続ける生涯は幸福とは縁がなかったと思う。孤独だ。
死後見つかった金庫には、幼くして亡くなった娘の髪と早世した夫の死亡記事だけが保管されていたという。

一番の極めつけがフロリダにある石の建造物だ。この記事も昔目にしたことはあったがほぼ忘れていた。
”サンゴ城”である。
巨大なサンゴを一人で運び込みそれを彫って組み立て建造した広大な城なのだ。
そう、他にもこの手の独りでコツコツ城を作る男の噺を読んだことがある。
そういう人は時折いるものだが、この人の場合、凄いのは石の重さが数十トンもあるモノがざらなのだ。
全部合わせると1100トンになるという。
どうやって運び加工し積み上げたのかが、一人の作業で作られた為、不明なままというところ。
奇想天外なデザインや工夫を凝らした作りは、魅力的である。
何やら特殊な機械を発明していたという説もある。永久運動ホルダーという磁気を利用する装置を開発して使ったとか。
超電導?ともかく神秘的なベールに依然包まれている。
はっきり見つかっているのは、滑車と三脚だけらしい。重機でも独りでは大変だ。それは無いと思う(笑。
彼は生前「ピラミッドの秘密を知った」と述べていたそうな。きっとその技術を応用したのだ。


この他、クフ王のピラミッドは発電所だったのか、とか言う二コラ・テスラと絡めた話題もあったが、少々展開と詰めが薄かったので割愛したい。ピラミッドが地球のエネルギーの集束装置だとかいう説は聞いたことがるが、、、。

かなり気になるモノばかりが取り上げられており、楽しい時間であった。
自由課題に使えるかどうかは分らぬが、きっかけにはなるかな、こういうのも。




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W・シャトナーの世界の怪奇現象

Unnatural phenomenon

エピソード1 - 呪われた地

W・シャトナーは俳優であり司会進行を担当。
調査・解説は科学者や民俗学者や超常現象研究家が行う。

幾つもの「呪われた場所」に注目し、何故そこが禍々しい場所となっているのか原因を探ろうというものだが、サラっと場所の紹介するに留まっている。何処かで再度、取り上げる~調査の続きを発表するのでなければ、余りに物足りない。

その場所に何やら違和感を持ったなら、精密な人体センサーが何やら危険な兆候を受け取ったとみてよい。
というのは、同意する。
わたしも違和感を感じたモノは避けるようにはしているが、、、避けようのない状況もある。
それは確かに障ることが少なくなかった。


富士山の樹海~青木ヶ原から噺が始まる。
もう60年以上自殺者が絶えない。
確かに尋常ではない。入り口には思いとどまるよう立札があるが。

自殺を考えている人を後押しする負のエネルギーが蓄積されていると研究家は解く。
成仏出来ない霊がそこに留まり続けているとアメリカの研究家に謂われると妙な説得力を覚える。
すでにイメージも絶大なものになっているし、行けば逆らえない効果も大きいのでは。
1000年以上昔の富士山の大噴火で出来た樹海は、火山岩~玄武岩で出来ている。
この岩石の圧電性物質は、電磁場を発生させるが、それが脳に及ぼす影響が大きいという。
この地磁気は人を鬱にさせると、、、。
その地磁気の影響なのか、本でも以前読んだことがあるのだが、、、樹海はホントに音が無いという。
鳥の賑やかな囀りとか木々の騒めきが全くないならば、やはり異常だ。あれだけ緑が生い茂っているのに。
何種類かの鳥や虫の鳴き声がなければ、ピクニックなどそもそもする気にはなれない。
やはり死地に相応しい場所なのだろう。
松本清張の「波の音」という小説からここが自殺の名所となったというのは初めて知った。

やはり何度か本で出合った事件だが、ディアトロフ峠事件が次に取り上げられた。
ベテラン登山家男女9人がウラル山脈の雪山ホラート・シャフイル山で変死を遂げていたもの。
死に方が余りに異常であるため、様々な説が上がる。ソ連も途中で調査を打ち切ったことで憶測も呼んだ。
かなり有名なものであるが、高所における強風に雪原という環境の作り出す有害な現象という見解を取っていた。
この山の地形と激しい風から生まれる低周波音~可聴下音が脳に異常を生じさせ、この登山家たちに殺し合いをさせたのだと。
それ以前に遮蔽物のない山の斜面にわざわざキャンプを張るというのもどういう目的であったのか。
何故少し下方の森林地帯にキャンプを張らなかったのか不思議なところ。
勿論、未だに全容は解明されてはいない。
昔からこの山は「死の山」と呼ばれ恐れられてきた。地元の人々は避けてきた理由も知りたいところだ。
確かリウマチが悪化して一人下山して助かった人がいたはず(最初は10人編成であった)。
宇宙ステーション・ミールでも振動によって異常を来した船員がナイフを同僚に向けた話もあるという。

シャウニー湖の遊園地では、多くの子どもが悲惨な事故死を遂げているという。
その事故の件数の多さから、廃園となったがかつてそこで働いていた男が土地を買い取り再び遊園地を再開した。
そこで再び惨事が起こり、土地を調べてゆくと大規模な先住民の墓が見つかったそうである。
大きな墓地の上に建てられた遊園地であったのだ。
この件は、神聖なる土地を汚す者への呪いと受け取られた。
もうそう受け取る以外になかろう、という強度を持つ。
超常現象研究家もその地に入った途端、幾つもの視線や重々しい空気に呑まれたという。
ブランコが自然に一つだけ動いていて、そちらをしっかり見るとハタと止まるなどの現象に合うようだ。
しっかり清めの儀式をしてもらいたいもの。

インディアナ州に多くの住人が次々に自殺や変死を繰り返し、誰も住まなくなった家があるという。
人々から北米一の呪われた家と呼ばれる。
超常現象研究家が二人その家の恐らく最後のオーナーに頼まれ調べることに。
磁場と気温の変化を測る機器を持って中を調べるが体調を崩しそうになり直ぐに出て来る。
その家は逆十字の形をしており、最初に建てた人間は悪魔を呼びよせる目的ではなかったかと推測される。
もうその領域から攻める以外に残っていない有様。
ひとつ驚いたのは、その家を徹底的に調べるため、その研究家が現家主から家を買い取ってしまった。
(見上げたものだ。是非その結果を知りたい)。

その後も幾つか禍々しい場所が紹介されたが、ホンジュラスの打ち捨てられた白い街は、調査隊が身をもって原因を明かす羽目に。大変悪質で危険な寄生虫疾患であった。治療を誤れば現代でも命を落とすという。
こういったところが他にもあり、火で燃やして清める方法が取られている。
炎による浄化である。宗教とも結びつく行為である、というよりそこから来ているのかも知れない。
火と宗教は極めて結びつきは深いもの。
原初に置ける呪い~呪術と信仰の起源に想いを馳せてしまう。

冒頭で科学的に究明してゆく趣旨を述べてはいたが、超常現象もまた科学では説明できない未知の現象と捉えることは出来る。
ここに科学のメスを入れることは一つの課題ではあろう。
かなりの部分は本格的に調べれば究明されるはず。
それに対する改善・対処法も講じられる。
手付かずのまま犠牲者が出てしまうことはやはり避けたいものだ。
かなり例を沢山挙げる構成であったが詰めが甘く、それぞれの扱いが些か浅いところは残念であった。



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コルト45 孤高の天才スナイパー

Colt 45 000

Colt 45
2014
フランス

ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 監督
ファティ・ベディアール 脚本

ジェラール・ランヴァン、、、クリスチャン
ジョーイ・スタール、、、ミロ
アリス・タグリオーニ、、、イザベル
イマノル・ペルセ、、、ヴァンサン・ミレス
シモン・アブカリアン、、、リュック
トマ・ラングマン
リシャール・サムエル
ミカエラ・フィッシャー


つまり拳銃弾の噺なのね。”.45コルト弾”
これ常にカメラもこれを要所要所で追っている(映してゆく)。
これが主役。粋だねえ。”M1911”が何度もアップで。
邦題ダサ。
孤高の天才スナイパーでも何でもないし、邦題つける人はこれまでも感じて来たが、映画観てない。
ヴァンサンが孤高のスナイパーになる前日譚の位置にあるような映画とも謂える。

Colt 45 002

射撃の腕前と銃に関する知識と改造技術に極めて優れた能力を持ち、更に銃弾まで作ってしまう。
しかし人としては、脆弱な上にコミュ障でもあり警察学校の射撃練習の教官と武器庫の管理を任されている。
事件に巻き込まれるまでは、ずっと実戦は避けて来ており、そもそも向いていないヴァンサンであった。
しかし何だか分からないが、凄い銃の使い手が身近に現れ、彼と直ぐに親密になり秘密に作っている銃弾のことなど喋ってしまう。

Colt 45 003

なんと言うか、フランスのクライムサスペンスを観ると決まってそうなのだが、警察の上層部が犯罪組織と繋がっていたりで、現場で必死に捜査を進めてゆくうちに上から横やりが入ったりなど、警察の闇の深さが描かれることが多いが、これも例外ではない。
(フランスはホントに警察がヤバいのかと思いたくもなる)。
人間がまだ出来ていないが、銃に関する知識と技量が並外れている者など上手く操作すれば実に役立つというものだ。
そしてまんまとヴァンサンは嵌められる。
悪質な言いがかりで車にぶつかって来て暴力を振るう相手に危険を感じて射殺してしまい、ミロにその後始末を頼む。
その負い目から彼の謂う通りに動くことに。武器庫から銃を盗んで提供したり、彼の開発した破壊力抜群の銃弾を渡したり、、、。
このミロという男は何者なのか(新たに配属されたとか自己紹介していたが)。
そもそも何故やすやすと警察の組織の深みに入りこめたのか。
ミロの思う壺であるが、、、この男も使われており複雑な立場にあった。

Colt 45 004

麻薬取引をしている犯罪組織や銀行からミロがヴァンサン特性の弾丸を使い次々に犯罪を犯す。
そして銃の腕と知識を買われ捜査班に配属されるが、絡みのある彼.は追い詰められるばかり。
このハラハラ感を味わう映画である。銃撃戦やアクションシーンではなく。
捜査の途上で、親しくなった同僚が次々に殺害されてゆく。
警察の組織内での対立構造も露わになり内部抗争の起きかねない一触即発の事態にもなってしまう。
特に、女性捜査官イザベルが自らが対象に対して仕組んだ罠が元で殺される羽目になったところで、限界に来る。
彼女の娘とも遊ぶ中になっていたこともあり。メンタルが持ちこたえられなくなる。

Colt 45 001

ついに隠し通せることではなく罪悪感に駆られ上司のクリスチャンに経緯を全て打ち明け助けを乞う。
驚きながらも先ずは敵を抑えなければならない。
2人でミロたちの組織に乗り込む決意をするが、クリスチャンがヴァンサンと並んで歩いている時に例の奪われた弾丸で殺される。
事ある毎に、自作の弾丸の薬莢が転がっている(アップで映される)。
そうそれこそが主役なのだ。

ここでついにヴァンサンは、初めて独り立ち上がる。
彼はもう完全に吹っ切れた(箍の外れた)復讐者に過ぎない。
機械的に犯罪組織に乗り込み、ギャングたちを片っ端に射殺しつつ、ミロのいる場へと突き進む。
ミロを追い詰め自ら作った銃弾で射殺するが、、、。

5か月後、終身刑をくらっていたヴァンサンに大統領恩赦が言い渡される。
そこに国家の秘密組織がスカウトが来たのだ。その上層部の男は、彼に愛用のM1911を渡す。
(この銃のアップと例の銃弾のアップが大変印象に残る)。
その組織とは、ミロの所属し働いていた非合法秘密組織であった。
詰まり彼はミロと今や同じ立場とされたのだ。
麻薬や強盗組織から奪った金で対テロ対策に役立てる組織であるという。
(これは大ぴらに出来るはずもない。しかし移民にとってはこれ以上ない収入ともなろう)。

Colt 45 005

なかなか硬質でストイックな物語であった。
リック・ベンソンよりも渋いかも。
この監督は他のモノも観てみたい。



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マンディ 地獄のロード・ウォリアー

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Mandy
2017
ベルギー

パノス・コスマトス 監督・脚本
アーロン・スチュワート=アン 脚本
ヨハン・ヨハンソン 音楽

ニコラス・ケイジ、、、レッド・ミラー
アンドレア・ライズボロー、、、マンディ・ブルーム(レッドの妻)
ライナス・ローチ、、、ジェレマイア・サンド(カルト教団の教祖)
ネッド・デネヒー、、、ブラザー・スワン(ジェレマイアの信者)
オルエン・フエレ、、、マザー・マルレーネ (ジェレマイアの信者)
リチャード・ブレイク、、、ザ・ケミスト(ジェレマイアの信者)
ビル・デューク、、、カルザース(レッドの友人)



【 全世界と朕のバラード 】 feat. her name is YESTERDAYさんのお勧めで観てみた。
呆気に取られた。
冒頭であんなに長くクリムゾンのスターレスがかかるなんて、、、そして音楽はヨハン・ヨハンソンと来たら期待値Maxとなる、、、。
邦題は、”Mandy”が良いと思う。この邦題ではわたしはまず観ようとしない。

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面白かったのは、アル中じゃなくて薬中でもう完全にぶっ飛び続けのカルト教団の教祖が、ニコラスの奥さんを誘拐して、どうよとばかりに自作の曲を聴かせたら、「それってあなたの曲なの?」と思いっきり嘲笑されて激昂し、夫の前で妻を焼き殺す。
「闇の深い女程、明るく燃える」にはわたしも笑った。なかなかの映画だとこの辺から前のめりになったものだ。
時代設定が分からないが、こんな風なサイケデリックなアコースティックサウンドがよく流れていた頃を懐かしみノスタルジックな思いにも浸れた、、、。

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この綺麗な奥さんを誘惑すると謂うなら、間の抜けた感じの曲ではなく”イースト・オブ・エデン”や”シド・バレット”の曲でも流せば、良い反応が返ってくるはずだが。
しかし、彼女が素敵!と目を輝かせてしまっては、ニコラスの復讐劇もパンチのないものになろう。奥さんを奪われた男の復讐劇では、こんなにドロドロしたヘビースプラッターな展開には無理がある。
この奥さんも自分を神と信じている男の作った曲をあそこまで馬鹿にすればどうなるかくらい分かるとは思うが、それでも馬鹿笑いしちゃったのね。芸術至上主義者で妥協が出来ないヒトなのかしら。
わたしなら褒めまくって取り敢えずそこから脱する隙を窺うが、、、。

ともかく音は深淵なのだが、ひたすら薬漬けの禍々しい夢幻世界なのだ。
トリップしてる心象世界は、こんな感じなのか、と思いつつ観てゆく。横尾忠則のイラスト世界にも似ている。
(日大の人々もこんなのを愉しんでいるのか)。
特にこのカルト教団の最も強い薬を舐めた時の激烈なトリップ世界の毒々しい表現は凄かった。
あれいつも舐めていたらそりゃ戻ってこれないわね、、、。

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教団の雇っている用心棒のライダーたちがかなり強く人間離れした身体性をもっており、彼らとの闘いは充分スリリングでスプラッターしていて見応えあった。ショッカーよりも多分強い。
但し、気になったのが、この連中と闘うに当たりニコラスは友人に相談している。
妻が焼き殺されて復讐に行く、という事で知恵を授けて貰うのだが、彼はその道の情報通で貴重な噺を教えてくれ、有意義に使えよと彼お手製の矢まで託してくれる。
わたしはこの特製の矢で最後、ラスボスを射抜くのでは、と思っていたのだが、、、。

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我らがニコラスは、一番最初にほぼ効果ない場面でこれを使い、それっきりであった。
もう忘れたかのようにそれっきり。
後は、教団で仕入れた(奪った)武具で、ずっと闘っていた。そっちの方が気に入ってしまったのか。どこか赤ん坊が次々に玩具を変えて遊ぶ光景を連想する。
薬もどんどん試して深みに嵌って行く。まあその方がスプラッター大戦には向いているはずだが。
とは言え彼は生きて戻って報告時に、お前わたしの大事な矢をどの辺で使ったのかと、とっちめられると思う。

ニコラスの闘い方自体が、もう全く出たとこ勝負でイメージ的にはフランケンシュタインみたいに迫って行くので、確かに向うから見ても不気味でちょっと怖いかも。
だから途中で二度もへまして(隙を突かれ)捕らえられて痛い目に遭う。だが、かなりの怪我に見えたが普通に動く。
そう、ビックリしたのは、その前、妻が捕らえられて目の前で処刑される時、脇腹を鋭利な剣で刺されて悲鳴を上げていたはずだが、そこを脱出し家に戻ったところで酒吞んで寝るだけで治療も何もしていない。
この人も何か変なのか。どこか変みたい。確かに変。
ともかく出て来る人が全員大変ヘビーな薬中ばかりなので、こちらもそのレベルで観ることを要請される。
アルタードステイツで共鳴しなければ、、、。熱中症で観ると判って来る部分があるのかも。
別にそこまで分からなくても愉しめるが。

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そう言えば、教祖のところに辿り着くまで皆殺しにしてゆくのだが、ひとりだけ女の信者を殺さなかった気がするのだが、何故?
あれも奥さん殺しに加担した悪女だぞ。
確か死んでない。ニコラスが他の男を殺した時に普通に見ていた女だ。
わたしは、あの女が最後にニコラスが乗り込む車に先回りして乗っていて不意を突くのでは、とちょっと期待していたのだが、もう忘れられてしまったみたい。教祖も殺されてしまった後で一人ぽっちはなかろう、、、。

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音がヨハン・ヨハンソンなので、深淵・厳粛な雰囲気の中、復讐を終えたニコラスの笑い顔が一際怖い。
薬の世界を垣間見たような映画であった。

これもカルト映画に違いない。
貴重な映画を知ることが出来、感謝したい。
(この邦題では絶対に観なかった映画である)。




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ベイビー・ブローカー

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Broker
2022
韓国

是枝裕和 監督・脚本・編集
チョン・ジェイル 音楽

ソン・ガンホ、、、ハ・サンヒョン(クリーニング店主、赤ちゃんブローカー)
カン・ドンウォン、、、ユン・ドンス(サンヒョンの相棒、教会に勤める、養護院出身)
ペ・ドゥナ、、、アン・スジン(刑事)
イ・ジウン、、、ムン・ソヨン(赤ん坊の母)
イ・ジュヨン、、、イ刑事(アン・スジンの相棒)
イム・スンス、、、ヘジン(ドンスの後輩の少年)


この監督ならではの”疑似家族”がここにも繊細に形作られる。
そう、とても繊細で静謐な「間」の息づく韓国映画であった。
明暗を活かした演出が特に美しい。絡む音もリリカルで的確。

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ソン・ガンホとペ・ドゥナの間の演技にはちょっと驚く。存在感もレベルが違う。
韓国映画の凝縮されたソリッドな展開のなかでは、あまり味わえないのでは。
他のキャストも言うことなし。
イ・ジウンはシンガーソングライターとして有名らしいが、一度聴いてみたい。
イム・スンスという子役もとても自然な演技で、勘の良い子だと思われる。

日本の”赤ちゃんポスト”と同様に”ベイビー・ボックス”というものが韓国にもあるという。
そこに若い女性が赤ん坊を預け~捨てに行く。だが籠に入れるのではなく躊躇するように手前に置いて去って行った。
この受け手に当たる表向きクリーニング屋と教会に勤める男二人は、赤ん坊を高値で売るブローカーの仕事をしている。
現場を張っていた女性刑事が2人、この先長く彼らを追跡することになるのだった。
誘拐人身売買の件で現行犯逮捕するために張りこみ付き纏うのだ。
それはつまり外部から赤ん坊を巡る彼らの動き、言動を具に明かす役目も果たすことになる。

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高値で赤ん坊を売り抜けようとする男たちと赤ん坊を一度は取り戻そうとやって来た若い母も、彼らに同行し、買い取り候補に会いにオンボロワゴンで旅に同行する形となる。
途中で立ち寄ったドンスを慕う養護院の少年も車に紛れ込み、行動を共にすることとなり進展して行く。
ここにいる誰もが生い立ちに暗い闇を抱えている為、最初はぎこちない。お互いにこころを開かない。
ドンスとヘジンは捨て子で同じ養護施設で育った。
それは彼らを追う刑事も同様のようだ。であるため殊更に子供を捨てる親を憎む。
そもそもソヨンが赤ん坊を育てられないという意識を持っているのは、その父親から彼を守るために殺害してしまったことによる。
誰もが過去に囚われていた(ソヨンは勿論、警察に捕まることは前提として子供を暫しの間観守っている状況)。

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そしてブローカー一行は、ろくでもない里親を退けているうちに好条件の里親候補に辿り着く。
ずっと彼らを追い続ける刑事人も早く現行犯として捕まえるために囮捜査を決行したりするが、ブローカーたちはきっと転売が目的だとか言って、赤ん坊を渡さず、そのまま彼らと刑事の時間は縺れながら一つの物語として進展する。
ブローカーと若い母と脱走少年の関係はお互いを知るにつけ深まって行く。
刑事たちも彼らの置かれた立場と抱えた問題の理解を深める。
もはや共に赤ん坊の未来を如何に守って行くかに収斂するのだ。
好条件の里親と対面を果たすが、予想を遥かに越えたよく出来た夫婦で、皆がそこに赤ん坊を託す決意をする。
その前に遊園地で最後の時を愉しむ。

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「生まれて来てくれてありがとう」
これをムン・ソヨンは、ホテルの照明を落とした部屋で他の4人に向けて謂う。
その言葉を掛けられることなく、その思いもかけられることなく生きて来た者たちであり、ソヨン自身にもヘジンが囁く。
勿論、暗がりの中から、こちらにも向けられた言葉である。

生まれてここにいる実感のもてない者、ここにいること自体に大きな葛藤を抱える者は実は少なくないことをわれわれは知っている。
ひりつく感情を覚えて、素直に受け取れない彼らがいて自分もいる。
自然に受け取るには、これまでの人生が過酷過ぎた。

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だが闇がひとつ空け、新たな日を迎えると、ずっと近くに彼らがいるはずであった。
しかし夜のうちに事は進展していて、、、ソヨンは自首し、スジンが赤ちゃんを自ら保護することになっている。
ドンスは逮捕される。少し前から刑事はソヨンに接触しもっとも彼らと赤ん坊にとって良い形を提案していたのだ。
サンヒョンは、別ルートで赤ん坊の父親の妻の手配で脅迫し強奪に現れた暴力団にケリを付けていた。
彼はその為、赤ん坊の周辺から姿は消している。
赤ちゃんを引き取ることになっていた夫婦もソヨンと共にしっかり見守っていた。愛情はタップリ受けて育っているのだ。
そして刑期が前倒しになり予定より早く(3年で)出所したソヨンをかつての皆で待っている。

ドンスとサンヒョンも交えた全員での再会も遠くないことを匂わせる光景のなかで終わる。
ヘビーな内容であるが心地よい時間であった。




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徹底検証!世界で起こった奇妙な現象 Ⅳ

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StrangeWorld

2016
アメリカ

エピソード4 - 殺人ネズミ


今回はネズミの大発生に挑む。
最初は、大発生の原因とその再現性についての調査であったが、、、

そもそも人類とネズミは、共に湿地帯を争った最大のライバルであった。
その争いの再燃とも取れそうな、大規模な闘いが起きている。

オーストラリアが舞台。
アレックス・ハナフォードは、今回はオーストラリアで広大な農場主へのインタビューで飛び回る。
小麦ラインと呼ばれる穀倉地帯が軒並み大発生したネズミの被害に遭い甚大な損害を出している状況を確認。
人々の記憶の範囲では大被害は1970年代にあり、それから10年後、数年後と次第に間隔を狭めてそれは起きて来たが、、、。
(詳しく当たるともう100年前から記録にあった)。
既にそれが常態と謂ってよい状況になって来たという。
巨大な農場を抱える農家がネズミに呑み込まれている。
「殺人ネズミ」の出現。

農場、納屋や家の中がネズミで溢れかえる。
通常、われわれには想像がつかない。
扉を開ければ、ネズミが堰を切って滝のように5分以上途切れることなく溢れ出て来るのだ。
何かモノをどけたり、外したり、乗せているものを少しでもずらしたりする度にネズミの群れが途切れることなく溢れ出す。
その数、何万匹か?恐怖に駆られる住人。
ヴィデオで確認するアレックスも唖然とするのみ。身体能力も凄いものだ。
ことばを失う。

収穫した小麦や撒いた種が甚大な被害に遭うが抜本的な対策がない。
発芽もしなければこの先、どうやって暮らしてゆくのか。
各個単位でそれぞれ駆除をしているが、まさに鼠算的に増えるため全て焼け石に水。
一日に2万匹駆除しても事態に何の変化もない、、、。

飼っている豚や鶏が襲われたり、ベッドで寝ているうちに夫人が脚を酷く噛まれることもあった。
つまり生きているものも平気で襲うのだ。
(恐ろしいことに連中は深く噛むのだ。傷口は小さく見えても奥深くまで)。
雑食であるため基本的に何でも喰らう。一日に20回くらい食事をする。巣は食料源の傍。
勿論、伝染病の媒介もある。(25種類以上の)。
赤ん坊がいたりしたら堪ったものではない。
娘が穴の開いたネズミの頭を舐めようとしたのを見て母親は驚愕したという。
ホラーだ。メンタルを完全にやられる。
家を解体して他に移り、政府の駆除が終わってからまた戻って来たと謂う家族もあるが、、、。

基本的に状況は何も変わらず、というより年々悪化の一途を辿っているという。
今回のアレックス・ハナフォードは、4人の専門家を訪ねる。
アデレード大学動物学教授を訪ねる。
ハツカネズミで、外来種。(この他にもヨーロッパ人入植により、駱駝、ウサギ、オオヒキガエル、等がいるという)。
大群に対しては逃げるしかないと。確かに。確実に齧られる。
異常繁殖する原因は、病原菌が少ない、ネズミを捕食する動物が少ない、単一栽培が主流であるため(一斉に収穫されることで食料が豊富)。繁殖を制御する要因が無い。

もうひとりは、動物研究所の所長である。
遺伝学的に言えば完璧な野生動物であり、ネズミの繁殖速度は、一回に20匹子を産み出産から12時間で妊娠可能となり、それが通年続くことから、1000匹農場にいたネズミは8週間後には64000匹のネズミになる。26週間で400万匹(メスだけで)。オスが同じ数いて800万匹暴れ回れば、、、。10週後に4000万匹に達すると制御不能となる、、、。

3人目はバイオセキュリティの専門家。
大発生の誘因を特定するだけでなく、周期が狭まり頻繁に発生するようになった原因も探る必要があることを確認する。
同時期に起きたトビバッタの異常発生と被害との関係性から見えてきたこと、、、
気象条件である。

そして気象学者にコンタクトをとる。
ネズミとバッタの大発生した年は降雨量も多かった。春の大雨は穀物を実らせ夏は雑草を茂らせる。
つまり豊富な食料と涼しい気候である。わたしも間違いなく太るぞ。

バイオセキュリティの専門家に再度、気象の問題も絡めて見解を聴く。
新しい農法の普及にある。土壌の浸食を防ぐために不耕起栽培に切り替えた。
畑を耕すと土壌の表層が崩れ地中の水分が失われる。肥沃さが損なわれるが、耕すことで毎年巣穴を破壊していた。
耕作を辞めた事と地球温暖化の絡みでネズミ天国となったようだ。
周期ではなく条件次第でいつでも爆発する状況で、かつてない危機に見舞われている、現状確認に終わった。

いつものスキっとしたエンディングはない。



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スターシップ9
モーガン プロトタイプL-9
ロスト・エモーション
スローターハウス5
ザ・ドア 交差する世界
メランコリア
アルファヴィル
アンダー・ザ・スキン
不思議の国のアリス
イーオン・フラックス
サリュート7
アポロ13号
シルバー・グローブ/銀の惑星
イカリエ-XB1
アイアン・ジャイアント
アンドロメダ
地球の静止する日
地球が静止する日
宇宙戦争
トランス・ワールド
ロボット
ヴィデオドローム
イグジステンズ
マイノリティ・リポート
フローズン・タイム
マザーハウス 恐怖の使者
EVA
ベイマックス
ファースト・コンタクト
ファースト・マン
13F~サーティーン・フロア
あやつり糸の世界