2023年06月の記事 - NewOrder
プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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トラが出入りを繰り返す

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ここ4日で、トラが家を出たり戻ったりを3回している。
(あれ?いなくなった?戻った?いなくなった?戻った?と、いいように振り回されている(爆)。
出入りの頻度が急過ぎるのだ。
これでは、家と外を自由に出入りするタイプの生活形態への移行ではないの。
こういうのもありだろうが、、、。めんどくさい。

還ってきたところで、とっ捕まえてしこたまシャワー浴びせてドライヤーで乾かす。
そしておやつをあげると、「うみゃ~い」と一心に食べて、水もたっぷり飲み、いつものご飯も喰らってグウグウ眠る。
好きな時に起きて、あちこちで悪戯をして、怒られる前にわたしのベッドの下に隠れて自主的に反省している。
(これまで悪戯を叱るとベッド下に身を隠して来た。最近では何かやらかすと自分から入っている。これを見て何かやったなと判断することも。大概は何処かに登り何かを落としていたり、ビニルのパッケージを破り中身が散乱していたり)。
トラ!と呼ぶと「にゃ~に」と出て来るので憎めない。ただの「にゃ~」ではきっと許さないが(笑。

neko002.jpeg

やたらと可愛い声で「にゃ~に」と尻尾を立ててやって来るので、ついつい「お~よしよし」とか迎えてしまう。
どこがどうよしよしなのか。
このトラ、綺麗好きなのか、砂を取り換えたり水を取り替えたりした直後にトイレをしたり水を飲む。
ともかく取り換えた後が最も好きなのだ。
布団もそう。

以前は、3日後くらいに戻ってきたことがあったが、最近は異常に短いスパンで戻るのも、外で綺麗な環境で住めるはずは無いし、おやつもご飯(総合栄養食)も手に入れられるはずもない。
家で好きな時に食べ、寝て、悪戯して、暫くベッド下に隠れて、受けの良い鳴き声で喉下あたりを撫でられて尻尾ぺたぺたさせていれば、まあよい生活が送れるものだ、、、。日に必ず3度のご飯と2度のおやつ、水も3回は取り換え、トイレの砂は随時綺麗に。
悪戯で適度の運動も出来ている。

そんなトラだが、実は役にも立つ。猫の手も借りたいと謂うが、その手でゴキブリの退治を過去3件している。
あの素早いゴキブリを更に素早い動きで追跡してパンと抑えると、ゴキブリはそこでへたっている。
後は掃除機で吸い込んでゴミで出すだけ。
やはり野生の血を感じる局面はあるものだ。狩りの本能か。なかなか頼りになる。
それまでは、仕掛けを置いておいたり(これは今もあるが)、殺虫剤で追い回し、部屋中が臭くなってしまい人間がその部屋を暫く脱出する羽目となったりした。

neko004.jpeg

今では、よくやったと謂って手を除菌シートで拭いてやるだけ。
その後は、大概好物のおやつをあげる。
この時はもう一心不乱で一気に食べきるのだが、普段のご飯は少し食べては、あちこち歩き回りまた少し食べては、隣の部屋で爪とぎをしてとか、マナーはなってない。
ちょっと自由に育て過ぎたか、とも思うが、うちの娘たちに比べたら遥かに可愛いものだ。
ヒトの気に障る文句ばかりを並びたて、何でもヒトのせいにし、自分では何もやらずに散らかし放題。片つけさえもろくにしない。
猫の百倍手の焼けることは間違いなかった。そうだった。
トラに文句を言ってる場合ではないのだ、、、。

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わたしの毎日の疲労は、決してトラによるものではない。









七つの顔

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1946

松田定次 監督
比佐芳武 原作、脚本

片岡千恵蔵、、、多羅尾伴内
月形龍之介、、、野々宮信吾
轟夕起子、、、清川みどり
喜多川千鶴、、、早苗
服部富子、、、滝田万里
原健作、、、御園部俊彦
月宮乙女、、、黒川典子
丸山英子、、、千早ヱリ子


終戦直後の映画。
感慨深いものである。歴史的意味も大きいのでは。

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ロケの範囲では、しっかり街は整ってはいた(非現実的な光景にも見えたが)。
ここでクラシックカーのカーチェイスが見られるなんて、ちょっと有難い気がして来るものだ。
(こんなに走らせて大丈夫なのかというスリリングさも味わえ)。

多羅尾伴内シリーズというものがあるらしい。
片岡千恵蔵である。チャンバラではなく探偵である。7つの顔を持つ男。
「ある時は~。またある時は~。またある時は~。」と傾く。
サスペンスでありアクションもあったり、、、硬派のラブロマンスも、、、。
面白いが、この時期の邦画については、ほとんど知らない。
どちらかと謂えば、探偵では天知茂の明智小五郎は少しばかり観たことはある。

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轟夕起子は「洲崎パラダイス 赤信号」、「武蔵野夫人」、「錆びた鎖」、「女子寮祭」で観て来たが、本作が圧倒的に素敵であった。
やはり若い(若い上に、怪しさと凛々しさが両立している。更に歌も上手い)。
今なら久保さんかしら、どうだろう。
オーラの色は違うか、、、。
(轟夕起子は宝塚出身なのか。であれば久保さんは乃木坂である。それが何だと言われても困るが)。

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何と言うか、銀幕のスターを観たという感じ。
皆、独特のオーラがある。
そう活劇というのだっけ。
ストーリーの枠はしっかり出来ていて、どんどん警察の先を行く多羅尾伴内。
多羅尾伴内を追いかける美女清川みどりという構図で充分愉しませる。
きっと貴重なエンターテイメントであったに違いない。

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こういう雰囲気も時折味わいたいものだ。
フィルムの修復はしてもらえたらよいのだが。
やはり、轟夕起子の映像は残すべき。





AmazonPrimeにて









幽霊報道

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2021

ウンノヨウジ 監督

嶺生まや、、、アシスタント
ウンノヨウジ、、、監督
奈々瀬玲、、、アイドルグループ”芯辣melt ”のメンバー

何とも微妙な味のモキュメンタリー。
最初の1話目を見たところで、何なのよ~と言ってリタイヤしそうになったが、そのまま3話まで観たところで癖になる味に気づく。
もうこのシリーズの”2”を見つけたら必ず観ると思う(笑。
ここで大事なのは、放り出さずに3話まで観る事である。
この「モキュメンタリー映画」はオムニバス形式になっておりそれぞれの噺に関連性はない独立した3話モノである。
もう3話の終わりごろは、ちょっとこのふたりには好感を持っているかも知れない(笑。

これってどこぞの駅蕎麦が気に入ってしまいそこに行くと必ず電車を降りて取り敢えず食べてしまったり、高架線下の焼き鳥屋の匂いに負けて一杯やりながら食べたら用もないのにまた行きたくなってしまったり、場末のバーにたまたま入ってカウンターで呑んでみたらすぐ隣のオヤジの法螺話がとても味があって、その後その法螺話目当てで何度も通ってしまったり、、、これ全てわたしの以前あったことなのだが、、、。これに実に近いものがある。
焼き鳥屋については、鰻の串焼き屋であったこともあるが。

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3話あり、全てウンノヨウジ監督とアシスタント嬢の嶺生まやの2人が霊現象を探査しその原因を究明してお祓いまでして解決すると言うもの。霊障の報告があると、ウンノヨウジ監督は東京のアシスタントの嶺生まや嬢を事務所に呼び、2人でその場所や人に逢い、体を張ってそこに寝泊まりしたり車で深夜訪れたりして徹底的に調べて原因を究明してしまうのだ。

ドキュメンタリーであれば、ほぼ何も起こらずキャーキャー騒ぐくらいで終わりであろうが、これは網を張って待機すれば必ず訴え通りの現象が起き、しっかりビデオにも幽霊やその音が収められ、嶺生まやがWeb上からその場所で起きたかつての事件を探り出し、近隣の住民からも情報を収集したものを起きた現象と結びつけ、ウンノヨウジが推論する。妥当性はどうであろうか。ともかく物語として納得させてしまうのだ。きっとこうして殺された霊の叫びに違いない!でしっかり締めてしまう(笑。
特有の味がある。このコンビも味がある。良い相棒だ。シリーズとして成り立つ。

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「空き家の怪音」
何だか変な御色気路線に横滑りしそうなところを、くそ真面目な顔とやり取りでシリアスにまとめてしまう。
(内容的にはギャグマンガ的な強引な解消なのだが)。
アシスタントの嶺生まやの淡々とした真面目な姿勢が基調となることで成り立っていることは分かる。
嶺生まやとウンノヨウジとは何者なのか。この微妙な路線は、ちょっとした隙間を突いている。
なかなかの力技であった?
しかし地縛霊は、自分がされたことを客観的に(映画的に)再現して訴えるものなのか。

「レンタカーの霊」
かなりスリリングな映像である。特に幽霊を轢いてしまったかという時の演出は良かった。
こちらもビックリした。
しかし、後ろの座席にあそこまでクッキリした霊を乗せてしまっては、怖さも半減するのでは。
中古車のレンタカーに憑いた霊か、その場所に憑いた霊かと謂うところで奥行きを持たせるのも面白い。
ここでも霊障の解決は基本、上と同様のパタンである。
暗闇での細かい演出は(カメラのピントが合わなくなるなど)なかなか良かった。

「黒いストーカー」
小綺麗な地下アイドル?の娘が見えないストーカーに狙われていると助けを求めて来た。
ストーカーなら警察だが、相手が見えないのならわれわれの領域だということで、検証にあたる。
実際のライブステージもファンと一緒に鑑賞するのだが、このグループこの劇だけのものなのか、ホントにあるのか、、、
あったらそこそこ面白いトリオだと思う。人気も出るはず。
ファンやアイドル嬢が被害に遭ったという現場の近隣住人からの情報とWeb上の事件検索とここでは霊媒師にも頼み、地縛霊であることが分かる。しかし赤外線カメラにまたもや黒い人影を映してしまい、見えない腕にこれ見よがしに捻られ赤い痣みたいなものも付けられると何やら仄々してきてしまうではないか。
結局、孫を暴漢から身を挺して守って死んだおじいちゃんの霊で、ウンノヨウジが怪力で腕を捻られたのは、彼がその暴漢そっくりだったからという間の抜けた霊なのだ。しかもその霊は例のアイドルの腕も掴んで赤痣を作っている。
とても優しい良い霊なのでお祓いして天国に行って貰いましょうとか言っていたが、そんなに良い霊ではないぞ、と謂いたい。結構人々を怖がらせ被害者も出しているではないか。しかも抜けているし。

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だが詰まらないかというと。何やらじわじわ来る面白さがある。
味わい深い仄々ホラーであり、モキュメンタリーの形式を使った微妙な隙間作品と謂えるか。
次も観たい(笑。
何でも”3”まで出ているみたい。
”芯辣melt ”というアイドルグループは実在しているみたいだ。しかしここに出演した奈々瀬玲は卒業したとのこと。



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チャーハン

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2019

武石昂大 監督

門田宗大、、、とおる
伊島空、、、しんたろー(とおるの旧友)
根矢涼香、、、さや(とおるの彼女)


おるすばんの味。」の監督作品。
これも何とも言えない空気が充満してゆく(笑。
「おるすばんの味。」ではカレーだったが、チャーハンの怪しさがよく出ていた、ような。
ご飯さえ残っていれば、取り敢えず作れてしまう。
(チャーハンだけでなく、ビールと煙草も鍵も大事なガジェットである)。
おもろい短編作品であった。
短編で度々観る根矢涼香がヒロイン。「欲望の怪物」、「透明花火」、「次は何に生まれましょうか」、「SEASONS OF WOMAN」等で、わたしも馴染んで来た。

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かなりのホラーでもある。
特に最後はハラハラした(笑。

しんたろーという、アパートを追い出されて無職で、行く当てもない男が突然転がり込んでくる。
とおるの友人と謂うなら職が見つかるまで居候するのも分かるが、とおるの彼女にとってはたまったもんじゃない。
(しかも彼女が部屋に入ると、いたのが彼氏ではなくこの男なのだ。チャーハン出されてびっくりする)。
そしてとおるも帰宅するが、何故か今一つぎこちない。ホントに友達なの?という感じで滑り出す。
皆25歳くらいか、奇妙な3人の生活が始まるのだが、、、このギクシャクした微妙な緊張感(の演出)は上手い。

この侵入者、他人の家の食材を勝手に使いチャーハンばかり作って食っている。
生活費、部屋代くらい出すのかと思っていたが、そんなもの全く意識しておらず、冷蔵庫の中身は使い放題、風呂も電気も水道も遠慮なし。
しんたろーみたいなの時折いる。
他人の家で誰よりも堂々と我物顔で過ごせる輩。

しんたろーに対しとおるは、余程学生時代に恩義でもあるのかと思っていたがそうでもないのが分かる。
(思い出話で、部活で万年ベンチの友人であったことなど、、、適当に合わせている会話にも取れる)。
とおるの彼女のさやは、ずっとなんか変という感じでいるが、彼氏に合わせてそれなりに付き合う。
これがずっと続いて異様な空気で息が詰まって来る感じなのだ。
そりゃ最初から無理があるし、、、。
勿論、わたしには絶対に無理だが。半日でも無理。もう無理という感じで観続ける(爆。

3人で寝苦しい夏の夜にアイス買いに行って食べながら歩き、なんか夏休みみたいって、何なんだその奇妙な呑気さ。
しんたろーは毎日、夏休みじゃないか。
いつまでも職が決まらないにも関わらず飄々と人の家で寛いでいる(ちゃんと探しているようにも見えない)。
そして3人で花火で燥いで遊ぶ。この光景の違和感は凄い。

まあ、何でも野放しに寛大に接していたとおるも、奴が毎晩ごそごそ家探ししている様子に察しが付く。
そして買ってやった寝袋から、、、出て来た。
ある夜、ビールを一緒に呑みながら、やっていたこと知っているぞと打ち明ける。
普通なら警察に通報するところだと。
風邪ひいた時に病院を勧めたのに保険証がどうのと謂い行かなかったが、ちょっとそこも怪しい。
それよりもショッキングなのは、「誰なんだよお前?」ここへ来てそれかい?つまり最初に逢った時に、えっこいつかと謂う怪訝な顔をしたのだ。とおるが。事前にとおるにそれらしき連絡は入っていたのだろうが(鍵をポストに入れておいたのだし)、、、しかし本物かどうかは定かではない。と謂うより、ともかく来たんだから取り敢えず受け容れていたのか、、、。
彼女にもそれを伝える。やっぱりねという感じ、、、「ホントは何て言う名前なんだろ。」って危険すぎるのでは、、、。

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しんたろーは出て行くから勘弁してくれとか言って出て行ったのだが、、、
何故か、とおるもさやも懐かしがる。恋しがる?行くとこあるのかしらとか言って心配する。もう戻らないのかしら、、、。
既に猫のような存在か?
そして暫くすると携帯が鳴り響き、その後にドアチャイムが鳴る。明らかに外からドアを開けようとしている気配。
3人で仲良くチャーハン作りをしていた頃の楽しいイメージがパーッと湧くのだが、とおるはドアの鍵をそっとかけてしまう。
間違いなく邦画で最も怖いホラーシーンであった。

上手い。短編でこの微妙な空気感をしっかり描いている。



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フェイクプラスティックプラネット

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2019

宗野賢一 監督・脚本・製作

山谷花純 、、、シホ/星乃よう子
市橋恵、、、優子
越村友一、、、清水雄二


今日は多忙を極め、時間的に手頃だったので観てみた。
山谷さんが気の毒。
何だこれ、であった。

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安易でくだらないエピソードの羅列で何をか作った気でいる。
思い付きだけで作ってみたけど、どうよ?
と、言われているみたい。
勘弁してね。

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最後まで付き合って、損した以外に何もない。
邦画ってこういうの、時折あるので、困ってしまう。と言うか怒りを覚える。
勿論、ヒロインがこの人だから観ただけのことで、違う人なら直ぐにリタイヤ間違いなし。
結局、シホにそっくりな星乃よう子という昔のアイドルが何なのよ。
たまたま逢ったルポライターがそのアイドルの元カレってどういう設定なの?
無理があり過ぎ、リアリティ無さ過ぎ、、、だがこれは全てにおいてそう。

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何やら変な赤服のカルト集団みたいなのが出て来てそれがどうしたの、どう回収されるのかもなく、、、
唐突に夫を撃ち殺した妻の遺体運びを手伝って、ピストルをもらったり、、、
死神みたいなのが現れてみたり、、、
親友の風俗嬢が聖書に凝っていて何やらどうでもよいことばを聞かせてみたり、、、
全てがウザったい。
これが現実なのか幻視なのかとか考える気にもなれない。

その他愛のなさはどうでもよいとしても、最も許せないのは、ルポライターが一度見せて貰った写真にあったシホの母らしき人を実際に探し当てるなんてあり得るか?もうナニコレである(爆。
昔の写真でしかも一枚の正面から撮られただけの小さな画像の記憶を元に現在のその人物を特定するなんてまずあり得ない。
日本にどれだけの人が住んでると思ってるのか。
それを日常生活の局面で遠くから眺めた時点でその人だと一目で断定している。
まさに狂気である。

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そうしてみると、全てが狂気か悪夢の文脈に収まるか。
ネットカフェでずっと寝泊まりしているうちに発狂して、そういう世界に内閉した。
そう思うしかない。
とは言え、そんなもの見せられて、おもろいはずなかろう。
いい加減にしてもらいたい!

山谷花純 さんには出る映画、選んでもらいたい。





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アカーサ 僕たちの家

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Acasa, My Home
2020
ルーマニア、ドイツ、フィンランド

ラドゥ・チュロニチュック 監督・脚本

エナケ・ヴァリ
エナケ・ジカ


ドキュメンタリー映画である。
かなり広大なバカレシュティ湖の自然に囲まれた中で原始的な生活を送るエナケ一家に密着する。

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彼らは9人の子どもと両親、更に犬や豚や鶏が自由に出入りする掘っ立て小屋で、身を寄せ合いと言うか重なり合うように雑魚寝をしている。下の方の子は大変幼い。ちょっと心配になってしまう。
病気とか流行ったら大変だなと思う。
普段からノミやダニなど凄いはず。

子供は生まれた時からこの環境である。それをデフォルトとして生きている。疑問は無い。
文明社会から逃れて自然の本来人間らしい生活を謳歌しているようなことを両親は言っているが、、、
父親は別に働くでもなく、長男?に湖で魚を獲らせて街に売りに行かせている。
子供たちには全く読み書き計算も教えていない。
わたしは必ずしも公教育を皆と同じに受けさせろとは、謂う気もないが、必ずこのような場は消滅し、子どもたちは他の人間と共に生きざるを得ないのは明らかである。
子供に出来る事が釣りくらいで良いのか?

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この公園に親は18年間棲んで来たと謂って自慢しているが、子どもに対して何をして来たのか。
子どもの将来に対して何を考えて来たのか。
単に子供を労働力として扱って来たに過ぎない。
どう考えても独り立ちは困難で搾取される人間にしかなれまい。
そして児童福祉課と警察が入る。
今回本格的に行政が動いたのは、この家族の棲み付いたバカレシュティ湖周辺の土地を国立公園として立派なものに整備するということで、この家族だけの問題ではなくなったからだ。要するにここにいられては邪魔なのである。

一番上と二番目の男子を見れば年齢からして不幸中の幸いであったことは間違いない。
15とか言っていたか?それでまだ全く文盲と謂うのは余りに危険だ。
この親は子どもを別個の人格として観る気持ちがない上に、自分にとり都合の良い所有物としか考えていない。
そして行政側に文句ばかり言っているが、大変怒りを覚える。
確かに児童福祉課は次第に悪い意味でお役所仕事の関りになって行き、警察は池で釣りをしていた子供に注意だけでなく暴力も振るっていた。
ルーマニアというお国事情も鑑みてゆく必要もあろうが、少なくとも彼らがロマであることから来る差別意識も下敷きになっていよう。
(これが両親を社会生活から逃避させた要因のひとつであったかも知れない)。

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今や街に移り住み、家を間借りして暮らしているが、子どもは学校で勉強を始めている。
長男はこれまでの生活にかなりの矛盾を覚えており、父親に対して批判的である。
彼は公園の運営チームに所属し、給料を得ていることから彼女と共に別の家で暮らし始めた。
そして彼女が身籠り、親として都会で生きてゆくことを決意させられるところに来ている。
都市の生活に馴染めない弟もおり、かつての公園内に戻りたいと思いを打ち明けて来たり、、、
確かに交通が激しくコンクリートに囲まれた忙しない環境に馴染めないのも分かるところだ。

最後に公園の管理の一環であろうか舟を漕いで湖のゴミを拾う仕事をする長男の表情に複雑な翳りを覚える。
かつて何の疑問も感じずに日々を送っていた身に染み付いていたこの光景がもう違和感を感じるよそよそしいものとなったのだ。
今のヒリツク日常の不安と綯交ぜとなり、大人の顔である(良くも悪くも)。

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親の在り方は大事である。
今、長男が一番不安に思っていることは、学習の遅れより、家庭でコミュニケーションスキルを全く学ばずに来たことだ。
学校は、同年齢の子の単なる集合場所としても意味は持つ。
特に差別のある環境では、その学習は重要である。





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滲みと一瞬の恋

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滲み
2023
加藤也大 監督

笠松七海、、、まい(高校生)
近澤智、、、ひろき(高校生)

面白い細長アスペクト比。こういうのあるのね。
きっと若い監督で皆のやらない変わったものを作りたかったのかな。
BGMと言うか音の効果が独特で忙しなく、映像もエフェクトばかり、色調は落ち着てるけど、、、MVに向いてるのでは、、、。
真夏の話みたい。高校生の彼氏と彼女が並んで歩くが寡黙な彼氏に対し彼女の方は「暑い」を繰り返し苛立ちを隠せない。
よっぽど暑い上に他に何かを抱えてもいるみたい(笑。

笠松七海は「次は何に生まれましょうか」と「おろかもの」で印象深い女優だ。個性がはっきりあるので、見ればああ、あの娘だとすぐ分かる。そこが微妙な女優さんだと気づかないことも少なくない。

噺は明日転校する彼氏に彼女が最後に何かを伝えたいみたいなところか、、、。
会話の中で、弟が暑がって死んだ、を彼女はただ暑くて参ってると受け取ったが、彼の家に行ってみたらホントに死んでたと謂うところが純粋に可笑しかった(唯一の笑えるところだ。
そして弟が死んだら両親が急に優しくなったと謂って彼氏は悩んでいた(何で?
ベッドに彼女と並んで腰かけ、彼だけカレーを食ってた。
何でベッドに腰かけてカレー食べるの?彼女は食べないのね。お腹空いてなかったのか、ベッドで食べるのが嫌だったのか。
最初から彼女に出す気はなかったのか、、、別に考えることではないわね。

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こういうのをBGM鳴らしてバシバシエフェクト、フィルター掛けながらやるので、ちょっと集中しにくいかも。気が散る。
でも集中して観るような内容ではない。そもそもエフェクト掛けて上と下を切った特徴的な「写角」の絵自体を見せたいのね。
それは伝わってきた。
こういった手法でどこかのアーティストのMV撮ると良いのでは。

「滲み」って何かしら。

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一瞬の恋

2022

岡本博文 監督

村山優香、、、秋山かえで(高校生)
大西桃香、、、石橋涼子(かえでのクラスメイト)
搗宮姫奈、、、林美羽(かえでのクラスメイト)
麻央侑希、、、宮田麗子(古典教師)
近藤雄介、、、渡辺岳人(産休補助教師、歴史)
谷口恵太、、、田中進次郎(オタクストーカー高校生)

これは連続ドラマで、続いて行くもののように思われたが、この一話で止まってるみたい。
ウルトラマンのヒロイン村山優香がイケメン命の能天気ギャルに扮して弾けるオチャラケ・コメディ。
(「お雛様のヘアカット」のヒロインの真逆の役か)。
それに付き合うのがAKB48の大西桃香と次期ウルトラマン出演の搗宮姫奈、敵役で宝塚女優の麻央侑希。
なかなか豪華かも。

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高校に産休補助でやって来た先生がイケメンだということで、彼を教員宮田麗子と生徒の秋山かえで取り合うことに。
双方ともこの渡辺岳人という先生に気に入られようと彼に関する情報を集め、必死にアタックして行く。
彼は模範的な爽やかな先生で好感度は増し増しであった(笑。
石橋と林も秋山に協力し、田中進次郎というストーカーを利用しようとするがこれが全く使えないオタク。
片や宮田先生は、生徒で優等生の助手がおり彼女の諜報活動により、渡辺先生の経歴・趣味だけでなくこれから先の予定まで掴んでしまう。これで宮田側の大きなリードとなる。
そして宮田は渡辺が行きたいと思っていたコンサートチケットを用意し、秋山は単に破れかぶれで、共に揃って告白しようとした時、、、

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何と彼が手配中のパンツ泥棒であることが発覚してしまう(爆。
2人とも撃沈し、宮田先生は怒って助手を引き連れ退散、秋山は直ぐに次のイケメン探しに出発。
石橋と林もそれに付き合う、、、。
明るく楽しいお友達の集う学園ドラマであった。

こういうコメディはどれだけ誇張・単純化を図り分かり易く楽しく笑わせることが基本となるが、役者(特に村山)の頑張りは分かるが、それ程笑えなかった。基本は押さえていても一本調子で単調なのだ。笑いには意外性やズレも肝心で、そこで思わずクスっと来させる。えっと謂わせるようなものがツボとなることが多い。この直前に観た「滲み」で、弟が暑さで死んでたとぼそっと言ったのが、行ってみるとホントに死んでた、と謂うのには笑うしかない。この辺、取り込んで貰いたい。

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オーバーナイトウォーク

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2019

磯部鉄平 監督・脚本
永井和男 脚本

高田怜子
屋敷紘子
安楽涼
細川博司


磯部鉄平 監督作品、これで4本目である。
これまでに「真夜中モラトリアム」、「そしてまた私たちはのぼってゆく」、「予定は未定」を観た。

この映画は、夜更けから朝(まだき)までかけて下北沢から新宿までを姉妹で話をしながら歩いてゆくもの。
その姉妹の作る時間系が何とも心地よい。
無意識的にこういう場面が際立つ映画はあるが、この監督は意図的にこの場所をメインテーマとした。
目の付け所が良い。
磯部監督の4本見た中では一番気に入った作品となる。

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屋敷さんは、「予定は未定」のヒロインであったが、ここでもアスリート体質が見られた(笑。
持ち味と言うか個性であろう。こういう役柄は必要とされる。

女優の卵がちょっと有名監督の映画でヌードになるかどうか、カフェの関係者との集まりで迷っている。
これからの売り出しを考えれば、チャンスであるか。
そこへ、上京してきた彼女の姉が妹の同棲中のヒモに案内されてそれに加わり、話し合いは何となく落ち着く。
妹は決心しその依頼を受けたのだ。
そして姉は映画オタクたちのざわつく場から妹を連れ出す。
下北沢から新宿まで歩いて行こうと、、、。

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ここからが全てである。
その前は、ここに入る為の取っ掛かり。
どっぷり更けた夜の街を携帯の道案内で迷いながらふたりで新宿に向かう。
その間、何やら最近の気がかりや子供時代の想い出、よく遊んだ公園など脳裏に浮かぶ事を気軽に語りあう。
母を老人ホームにいれることにしたという姉の噺で少し状況が強張るが、周囲のモノや人で、というより夜の街の独特の光と重力のうちに蟠りも解消される。
そして互いに共振しながら歩く速度から生じることばである。
もう個人的な脳裏とか言うのを超えて口先から零れ出る。いやふたりの間に零れる。これが香しい。

夜の街の散策ライブはわたしもやってみたい。
ひと頃、スウェットスーツを着て夜のウォーキングをしたものだが、喋りながら歩く方が断然良い。
ストイックに歩いたところで面白くもなんともないのだ。
自閉的な歩きで何が解放されるものか。
心身共にフレッシュにならないと。

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夜の街には昼間には見つからない店があったり気にもかけなかったショーウインドーが異様に艶やかに香しく光っていてついその前で足を止める。
外車などとても惹かれてしまう(日本車のスタイルが如何に外車のパクリかというのもこんな時に気付く。ローバーやルノーを観た時など)。

路上に寒いと寝転ぶ叔父さんを観て、ふたりがちょっとお父さんに似ていると燥ぐのも面白い。
昼間に観たら単に気色悪いというだけであろう。
そしてあさまだき。
トワイライトゾーンがもう少し特別に描かれたら素敵だなと思ったが、早朝に新宿に着き、姉はお道化たサインを妹に送って明るく去って行く。何だ地方から出て来たのに、一晩も泊まらないんだ。

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そして妹の部屋には昨夜、ヒモの彼氏が連れて来たと思われる例の映画オタク~関係者が3人?も寝ていた。
これでは姉を連れて来たら大変だ。
妹はここに帰る前に、自分の依頼されていた役を他の女優がやることに決まった通知を受けていた。
彼女はバイトを辞めて女優一本でやってゆく事に決め、オーデションの準備を始める。
ヒモの彼氏はそれではお金はどうするのと聞くが、何とかなるわよ、である。やる時はそれに集中するのが一番の近道だ、
僕はどうすればいい、に対して自分で決めて、である。彼女吹っ切れた(笑。

夜を通って来るだけでイニシエーションにもなる。
わたしも実行したい。




AmazonPrimeにて






「予定は未定」とカップリングのお得版。


アッシャー家の惨劇

House of Usher003

House of Usher
1960
アメリカ

ロジャー・コーマン監督
リチャード・マシスン脚本
エドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」原作

ヴィンセント・プライス、、、ロデリック・アッシャー
マーク・ダモン、、、フィリップ・ウィンスロップ
マーナ・ファーイ、、、マデリン・アッシャー
ハリー・エラーブ、、、ブリストル


エドガー・アラン・ポーは中学生の時、結構夢中になって読んだが、これは余り覚えてなかった。
(ただ、主人公は妹の婚約者ではなく兄の旧友で、招かれて邸宅を訪れたはず。根本的な設定が変えられている。ここではその兄が頻りに彼を追い出そうとしているのだから)。感覚が異様に鋭く神経過敏な所は同じだった(確かにこの手の人は生き難い)。
高校生の時、全集を買い込んだが、それから読むことが少なくなり、そのままになっている、、、まだあるが。
大學の時だったか、アランパーソンズ・プロジェクトが「アッシャー家の崩壊」というアルバムを出して、暫くの間、毎晩聴いていたことがあった。まあまあのアルバムだったが、マイク・オールドフィールドには遥かに及ばない出来であった。

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さて本作、かなりフィルムが痛んでいた。これ程の痛みの進んだ映画を観るのは久しぶり。
登場人物も4人の密室劇というか、アッシャー家の邸宅内だけでのスペクタクルである。
外は昼間もあったが、殆ど夜の印象で、ほぼ嵐だった気がする。
屋敷は壁に罅が大きく入っており、建物自体が崩壊寸前。
アッシャー家の家系も終焉を迎えていたのだ。

そこへフィリップ・ウィンスロップというマデリン・アッシャーの婚約者が訪ねて来て、彼女を連れて一緒にここを出ようと誘う。
結婚して出る分には何の問題もなかろうが、兄(父にしか見えないが)と召使のブリストルは彼女は病弱でそれは到底無理なため、彼に帰れと謂う。
シャンデリアがこれ見よがしに落ちて来たり、骸骨が寝ていたり、二階の欄干が外れていたりで、じわじわとホラー感覚でウィンスロップを追い返そうともする。ウィンスロップの説得に対し兄は妹を外に出す気は全くない。
それはない。到底納得できないウィンスロップは食い下がる。確かに彼女は生気がなく食欲もないのだ。
(この辺のやり取りを観ていると、妹は兄たちから洗脳され毒を食事に盛られて病気になっているような感覚をもってしまう。それなら主人公に一刻も早く彼女を外に連れ出して貰いたいという気にもなる)。
ボストンにかつて一緒に住んでいた時はとても元気だったのに、実家に戻ってからこうなったということで、ここの環境は(人を含まて)健康に良くないということから、何とか彼女を連れ出そうとする。
それを常に食い止め彼だけ追い返そうとする兄(どう見ても年恰好から父にしか見えない)。
この辺のやり取りがじわじわ続く、、、

House of Usher001

だが、兄が阻止するため彼女が死んだと棺桶に詰めてしまってから、急展開となりウィンスロップはアッシャー家の血が呪われていることを知ることとなる。代々呪われた血の肖像画もおどろおどろしく。
兄はそれを語ってはいたのだが、彼は真に受けなかった、、、。
終盤の悪夢も交じる演出の鬼気迫る展開の中でそれを悟る。凶悪な犯罪者や狂人を輩出していたのだ。
兄はそれが妹の身に発現する前に綺麗なまま彼女を葬りたかったのか。
そしてついに生きたまま棺桶に収められていたマデリンが狂気の形相で現れ、兄に襲い掛かり首を絞める。
その頃にはアッシャー家は炎に包まれ、ウィンスロップは這う這うの体で辛うじて逃げ出す。

確かアッシャー家は沼に沈んで行ったはずだが、、、。

呪いを恋愛と絡めて悲惨さを高めたにせよ、兄がサイコ気質で妹が被害者みたいな気持ちで後半まで観てしまった。
ほぼこの婚約者と同じ目線である。

1960年にしては、フィルムの痛みが酷く、管理が悪かったのだろう。
アッシャー家のフィルムとしては相応しいのかも、、、。




AmazonPrimeにて






ザ・ディープハウス ~湖底からの呪い~

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The Deep House
2021
フランス・ベルギー

ジュリアン・モーリー 、アレクサンドル・バスティロ監督・脚本


ジェームズ・ジャガー、、、ベン
カミーユ・ロウ、、、ティナ
エリック・サバン、、、ピエール


YouTuberカップルの登録者、いいねを増やす為の奮闘を描くホラー。
陸上ではなくいわくつきの湖の底に沈んだ館の中を探検して一儲けしようぜ~というもの。
水中ドローンとか準備万端で臨むが、そのスポットを紹介してくれた人物がヤバい奴で、飛んでもないことに、、、。
(そう言えば大金持ちが5人潜水艇で3800mの深海に111年前に沈んだタイタニック見物に行って消息不明とか、リンクを感じる).

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道すがらのやり取りとか見ていてどうもベンという男がウザイのだが、、、
よく彼女もそれに付き合っていられるなあとおもいつつ観てゆく事に。
まあこの所の方も必要以上のビビりで煩くこれもまためんどくさい。
似た者同士か。めんどくさい点で。

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これもまたPOV路線かい、と思ったがそればかりではなく普通の映画の(超越的な)視界もあり、水中ドローンの4K視界もあって観易かった。安定した視界でないと、集中できないものだ。変な臨場感で観難いのはご免なので。
だが、何やらことが起きた時に水中でモゴモゴ細々したモノが浮上して視界を遮ることも多く観難い点は幾つもあった。
水中での緩慢な動作~動きも今一つスリリングと謂うよりまどろっこしい。
水中パニックものの難しさを感じる。
だが、酸素残量という制限がハラハラに役立つことは確か。

The Deep House004

ただ何と言っても、設定が分からん。
ピエールの意図がさっぱり分からない点にまずあるが、この水底の邸宅をどういうつもりで教えたのか。
YouTuberカップルを誘い込んで、どうしようとしたのか。
あの邸宅内の壁のこれ見よがしの猟奇的写真や記事や何と水中でも作動する殺人ムービー。その説明的内容(笑。
サイコ殺人家族が村人(子供)を惨殺していてこれを知った村人に殺害されるがピエールだけ逃げ延びる。
何ともオドロオドロしいストーリー。

こんな舞台装置、昔のモノであるはずもなく、獲物に備えてつい最近の仕込みであろう。
彼女の謂うようにずっと水中にあったら、海水も淡水もあったものじゃない。人が骨になってないはずあるまい。
他のモノも皆、新品同様でないの、、、。
死体のマスクを外したら昨日死んだような顔だし。ここで直ぐにびっくりして嵌められたと気づかないと、、、。
そして拷問で殺されたふりの役者はピエールの家族なのか?もう普通に二人を水中で追い回し、2人はギャ~ギャ~逃げる。もう水底アトラクション~お化け屋敷か。しかし酸素マスクつけないでどういう仕掛けなのか、、、にしても何でこんなめんどくさい芝居をうつのか。
どうもやろうとしてることが分からない。YouTuberカップルに良いネタのプレゼントにしては度が過ぎている。

The Deep House005

やり過ぎとかいうものではなかったようだ。
ベンは少女?にナイフで殺され、ティナはもう酸欠の極致で何とか水面に届くかどうかのところまで浮上はしたがそこで映画は終わり。助かったかどうか位まで教えてもよかろうに、、、。
最後の彼女の命からがらの懸命に浮上する姿はこの映画で唯一美しいと感じるシーンであった。

撮影は結構上手であったと思う。
いや大変だったはずだが上手くまとめていた。

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最後のBGMに乗ったエンドロールの終わったところで、ピエールと何やら役者みたいな女子が酸素ボンベ付けて何やら窺っているところで、プチっと切れたが、あのシーンは何?

映画としては、本も含め描き足りない。




AmazonPrimeにて





最近はTVアニメが断然面白い

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面白くて夢中で観ているものが「鬼滅の刃」と「Dr.Stone」と「水星の魔女」、更にAmazonPrimeで「地獄楽」。
どれも、ちょう~おもしろい!
全てアニメだ。まずは基本となるアイデア~世界観が圧倒的に面白い。
脚本、演出も素晴らしい。原作が良いのだろう。作画も言うことなし。
テーマ曲もどれもとても良い。
(最近の映画の曲では「シン・ウルトラマン」くらいだし)。
この辺を観てしまうと、なんだかぼや~っとした実写映画など観ていられない。
映画を観て、高揚することが最近ホントに少なくなった、、、。

「鬼滅の刃」と「Dr.Stone」がTV放送が一区切りとなってしまい、ちょいと淋しい。
次のSeasonの放送の頭を忘れることが心配。
これがうっかりしそうなのだ。
冷蔵庫からさっき出したばかりの缶ビールをもう忘れてるくらいなのだし?
だが、TVを観ることが最近増えており、番組放送予告を目にする機会は以前よりは多くなったか、、、。

なんせ初めてNHKの大河ドラマを連続で観ているくらいだ(笑。
(連続ドラマは、他にも桜井ユキさん主演のも観ている。この人主演のPARCOのCMムービーが大変素敵だったので、、、)。
イクちゃんのお友達の久保さんが出ているので観ているのだが。
(久保さんが出る以前から観てしまっている)。
ここで何より目を惹く女優は、巫女千代役の古川琴音(久保さんも勿論だが。
古川琴音はこれまでに幾度か映画では観て来たが、今回が一番強烈な印象を受けたかも。
もう目が凄い。山田杏奈の目は鋭く抉るような目だが、この人の目は妖気が漂う。人魂が4つくらい舞っていそう。
(その辺りは地獄楽のインパクトあり。何という強度)。
やはりキャストが凄いと物語自体の魅力も増す(当たり前だが)。

上記4つのアニメはうちの娘たちもバッチリ嵌っているのだが(全て次女に薦められたものだし)、「水星の魔女」は難しい。
よく長女が理解して夢中になって観ているなと不思議で、ちょいと内容について聴いてみたのだが、余計チンプンカンプンになってしまった。次女に聴くべきだったか、、、。ただ、次女は長々とした話をするのを好まない(それで幾分か聴き易い長女に聴いたのだが)。

映画(実写)がわたしにとってどんどんつまらなく成る分、アニメの面白さ刺激が強烈になって来た。
これから更に強くなる傾向だと思う。


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地獄へつづく部屋

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House on Haunted Hill
1959
アメリカ

ウィリアム・キャッスル 監督・脚本
ロブ・ホワイト  脚本

ヴィンセント・プライス、、、フレデリック・ローレン(富豪、パーティー主催者)
キャロル・オマート、、、アナベラ・ローレン(フレデリックの妻)
リチャード・ロング、、、ランス・シュローダー(パイロット)
アラン・マーシャル、、、デイヴィッド・トレント博士(精神科医)
キャロリン・クレイグ、、、ノラ・マニング(フレデリックの会社の従業員)
エリシャ・クック・Jr、、、ワトソン・ブリチャード(屋敷の所有者)
ジャリー・ミッチャム、、、ルース・ブリッジス(新聞記者)
ハワード・ホフマン、、、ジョナス・スライデス(屋敷の管理人)
レオナ・アンダーソン、、、スライデス夫人


息抜きのつもりで、ジャケットの如何にも古風でキッチュな怪談ものを選んだ。
とてものんびりと観られるホラーで、途中で片付け仕事をしたくなってしてしまった。
お陰で部屋が幾分か綺麗になった。たまにはこういうのも良い。

ヴィンセント・プライスといえば、「地球最後の男」、「シザーハンズ」でも観ている。独特の風格と如何わしさ漂う癖の強い役者に見える。
この映画では妻と愛人の始末を企むラスボスの立ち位置だ。

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屋敷の外観だけは、フランク・ロイド・ライト設計のカリフォルニア州ロスフェリスのエニス・ハウスを使っているそうだ。
その写真が何度も出て来る。箔がつくのか。
屋敷に閉じ込められて一晩過ごす密室劇タイプの話。
屋敷内のセット?は部屋数はあるが、間取り内装は平凡で調度品も特に高級な感じはしなかった。
何でもフレデリック・ローレンという金持ちの道楽で、幽霊の出る屋敷を借り、そこで一晩過ごせたら一人につき1万ドル差し上げましょうということでゲストが選ばれ屋敷に招待される。ひとりはこの屋敷の持ち主でアル中のブリチャードである。

後は、飛行機パイロットのランス、精神科医のデイヴィッド・トレント博士、フレデリックの会社の従業員のノラ、新聞記者でこれを記事に書きたいルース、パーティーの企画で協力した妻のアナベラである。そして屋敷の管理を任されているスライデス夫妻もパーティーでは部外者だが関わっている。
ブリチャードが狂言回し的な立場で動こうとしているのだが、どっちつかずでノラの視点に近い形で流れていた。
各人物設定は、よくあるタイプの普通の人々であり、ちょっとプレイボーイ風のランスが直ぐに可愛い若い女性のノラとくっついてペアで行動を始める、これまたアメリカ風の流れである。

ブリチャードがのっけから、この屋敷ではすでに7人が幽霊に惨殺されている。わたしの身内も何人も殺されたとか皆を怖がらせるので、どんな不気味で狂暴な霊が出て来てどんな酷い殺され方をするのかと、ちょっとワクワクしながら観てゆくのだが、ノラがギエ~とかデカい叫び声をあげ何度も驚くわりに、特に怖くも恐ろしくも何のことかも分からなかったりする。
実際、ほとんど何も起こらないのだ。
間延びもしていて、こちらの頭もぼや~っとして来てしまうのだが、流石に終盤は、ほう、そうなのかと思ったら、もうひとつどんでん返しもアリ、それで結局どうなるのか、と思ったらあっさり尻切れトンボで終わってしまう。
えっと思うが後の祭り。そこそこおもろい展開なのだが、最後に次はあなたって何なのよ。
関係ないわ(爆。

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しかけ~からくりを実行するには、タイミング、労働力、機材などでちょいと無理もアリ、CG使えば何とかなるかみたいな場面もあるが、それ当時は無理だろうし、銃が実弾でないことで、ああなる展開は分かるが、実際にそれを知らずに殺すつもりで撃つと謂うのもヒステリーになったにせよ、どうなんだ。確かにノラというのは煩くて鬱陶しい女であった。一晩パーティーやって泊まれば金が貰えるというのに、もう帰るとか言い出して、何のつもりか、勿体ない。

結局、死んだのは夫を裏切りこの機会を利用して彼を殺害し他のメンバーもついでに片つけようとしていたアナベラとその共謀者のデイヴィッド・トレント博士だけであった。死ぬ前のアナベラのドレス姿がこの映画で最も綺麗なシーンであったかも。
怖いところもハラハラもなく、スプラッターもなく(当時は無理か)、死んだところも直接見せない。
最近のホラーからすれば上品であるが、刺激が無さ過ぎてこちらが痴呆状態になるホラーであった。
机周りの片付けなどするのに向いているホラーかも。

「TATARI」というカラー化されたリメイク版があるとか、、、観る気ないけど。




AmazonPrimeにて








A

A 001

A
1998

森達也 監督・編集・撮影
安岡卓治 撮影

荒木浩(オウム真理教、広報部長)


荒木広報部長、懐かしい。
どことなく親近感があって、ちょっと応援したくなるタイプだ(笑。
しかしこの映画は、期待したほどではなかった。
いや落胆した。これを元に考えようなどと謂う気が失せるような映画であった。

ドキュメンタリーであるが、そのなかで当然、オウムに残るものと一般の人、警察、マスコミとの間のやりとり、ぶつかり合い、ちょっとばかりの論争などがあったが、詰まらない。
とても浅い。

公安警察による逮捕シーンで「転び公妨」と言うか「転ばせ公妨」が第三者(取材中のtv局)により克明に撮影されていて、強引に逮捕された信者が釈放される決め手となる。幾つかおやっとするシーンはあるも、全体にダランとした流れである。
警察側も一般市民もチンピラヤクザと化しているのがよく分かるが、これは当時ありふれた光景でもあっただろう。
そして何度も煩い無神経な曲がバックに流れ不快になる。
かなりお粗末な出来に思えた。

一般市民側のオウム批判は、連中は殺人集団だ、バカ集団責任取れ、出て行け、解散しろ、死ねなどの感情に任せた罵詈雑言がほとんどで、そんなこと言われても僕たちは真面目に出家して只管修行やってただけだし、事件の事も知らなかったし~そんなこと言われても~では、お互いに不毛で、お互いの言説によりこの事件~出来事のメカニズムの隠ぺいを意図せず図ることになってしまう。

叩かれる対象ができると、安全な立ち位置からここぞとばかりに威勢に乗って罵詈雑言で攻撃して憂さ晴らしをして来る一般民衆はともかくとして、残った信者たちには、個々に総括をしてもらいたかった。広報部長には教団としての。
基本的に大変真面目な人々であろう。出家までして道を究めようと努めて来たのだ。
並大抵の覚悟では出来ない。

その意志を貫き、この教団が何故あのような惨劇を引き起こす因子をもっていたのか。
教義にそのような過剰防衛~排他的攻撃性が本質的に込められているのか。
それとも教団管理運営上何か外部の敵を捏造する必要があったものか。
サリン事件前に、スパイ騒動やアメリカ軍が攻めて来たなどの被害者の印象を外に対して、危機感を内側に対して植え付けるような大袈裟な広報や粛清が行われていたことは明るみに出ていた。首を絞めるのもあったが、あの熱湯風呂である。そして坂本弁護士事件。
この辺の常軌を逸した修行システムと狂気とも謂える犯罪も含め、末端信者に疑心暗鬼や懐疑心など生じなかったのだろうか。
その点についての切込みは全く無かったので、何とも言えないが、サリン事件は上層部によって秘密裏に決行されたテロであったにせよ、それまでの過程で外部の敵のでっち上げなどに対するわざとらしい言説に妙な性向、動き、いや教団の無意識を感じない信者は居ないはず。場違いなところに、ヘリまで置かれていて。浅原の狂気としても。
つまり内部にいてわたしは知らなかったで、誤魔化せる立場の者はいない。
折角、道を究める強固な意志で入信したのだ。ここで自己欺瞞に陥らずに個々に(自分の場所から)事態を分析し総括するのが残った者の唯一の責任の取り方ではないか。真相を知る上層部は皆裁判で裁かれそれまでである。
こういう世の中だ。形が違っても同様の構造を持つセクト~共同体が再び吸引力を持ちかねない。
信者から出される総括の価値は充分にあるはず。そこがどうなったのかわたしは知らない。この手の本など読まなかった。

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少なくともこの映画でのMr.Aは、終始ムニャムニャしているだけで、終わっていた。
わたしはこの映画の題が、”Araki”と”Aum”のAから来ていると知り、彼の思想と本心などがかなり詳細に分るものと期待していたのだが、取材陣たちとの終盤の噺に至っても、親が心配しているがもう戻れないとか、社会に出て普通に暮らす訳にはいかないとかいうこれからの個人的な身の振り方などを話題にしていて、耳障りな歌がバックに流れる中、何となく終わってしまっていた。
とてもがっかりである。
観る程のものではない。




AmazonPrimeにて













精神

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2008
アメリカ、日本

想田和弘 監督・製作・撮影

山本昌知、、、精神科医
他スタッフと患者


岡山県岡山市の「こらーる岡山診療所」に集まって来る様々な精神病患者と山本医師、職員を巡る映像。
ナレーション、テロップ、BGM一切なしの観察映画となっている。、
この映画で余計な説明や妙な演出入れられてはもう台無しなのは言うまでもない。。

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そういった映像作品というのを忘れてただ見てゆくうちに、その古風な日本家屋の中でこれまた使い古されたシートに座り患者の噺を聴いたり先生のボソボソとした受け答えをみたりするのに直ぐに馴染んで来る。
そう、わたしには彼らの噺が全く自然に普通に抵抗なく入って来るし、先生の答えにも納得するし、、、2時間越えのドキュメンタリーでも全然飽きない。

大体、わたしの話すことと書くことが彼らの噺と書くもの(詩も含み)と何ら変わらないし、考えそのものもほぼ同質である。
であるから、友達のやり取りを観ているかのよう。
わたしは自分を健常者とも狂人とも思ったことがない。そんな線引き自らにして何の意味があるか。
他人に対してもどうでもよい。全く。

この映画は主役は出て来る人間すべてと謂って良い。
誰もがそれぞれ面白いし味わい深い。
誰もが生き難さに苦しみ、変な(頭の悪く邪悪な)健常者からの迫害に耐え忍び何とか生きてきた。
正直、彼らの方が人生に対する哲学を真っ当にしており(生きた)知識も豊富だろう。
それが映像からよく分かる。

そして精神医学を修めた医者の治療、薬の投与でも果果しくなく、ここで多い人は数十年(25年以上とか)山本先生と共に生きて来た。もう信頼関係がどうのと謂ったレベルではない。ともかく「こらーる岡山診療所」で、過去に幾度も自殺未遂して来た人が安定して過ごしている。少なくとも何でも噺を丁寧に聴いてもらい安心して集まっている。
これだけだと、人徳のある人の下で何となく共生または共依存関係を取り結んでいるだけではないか、という疑念を抱く人もいるかも知れない。

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この映像だとその時々の患者と先生とのやり取りの断片だけが窺え、その関係に行き着くまでの過程がはっきり見えてこない。
確かに患者たちはきっとこれまで周囲の人に軽んぜられ、排斥され、従属され指図され支配されて生きて来たのだろう。
(耐え切れずに何度も自殺未遂を経て来た人も少なくない)。
あからさまにそれを強く訴える人もいたが、多かれ少なかれ度合の問題だ。
自分の思いや感情などを訴え聴いて貰える機会は少なかったに違いない。
それを丁寧に聴いて貰える場が開けているだけでも、自分の声を聴いて自分を知り~対象化し、考えを深く巡らせ整理できる機会は生じて来るものだ(わたしは風呂場で独りごとを言ってそれに変えていた(笑)。そこで先生から貴重なアドバイスも貰えればそれは貴重な場である。

しかしただ話を親身に聴いて貰えて、経験豊富な専門家の意見も貰えたからといって、ここまで慕われるだろうか、と謂うよりこんなに無くてはならぬ人として尊重されるのか。
少なくとも方法論を持っている人でなければ、事態を変えることは無理だと思われた。
普段はほとんど確認しようとは思わない、映画の公式ホームページに飛んでみたら、監督と山本医師との対談に出逢い惹かれるものがあった。
なる程ね、と感心したものだ。

山本医師は、かつて340人収容されている閉鎖病棟に勤務していたという。
患者たちは部屋に鍵を掛けられ閉じ込められていた。そうでもしなければ手も足りず管理が出来ないということから。
しかし行動の自由を奪われ行きたいところにも行けない患者たちに不満を抱くものは少なくなかったそうだ。
そこで山本医師のやったことは、患者たちと「誰が鍵を掛けているのか」を話し合うことであった。

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最初の頃は患者たちは病院側(医院長をはじめ管理者)を責め看護師側は「勝手に帰られたりおかしな行動をとられたら収拾がつかないみたいな反論で対立していたらしい(容易に想像つくが)。しかしその話し合いをずっと継続させてゆくうちに、おれたちもおかしい行動はとっているな、という自覚的な意見も出ると、看護師側からも患者の為と謂うより自分たちの安心の為に掛けてきたことを認める意見も出て来る(真っ当だと思う)。そこで山本医師が患者とか看護師とかいう立場を超えて、一緒に鍵を開けてお互いに気配りしながらやってみては、という形に持ってゆくと、それがとても上手く運んだという(話し合いの場を設けてからここに及ぶというのがミソだ)。一緒にバレーボールを愉しむような関係性まで築いたことで治療環境が一気に好転した。

この辺、とても示唆に富むところだ。こうした場に転換できる方法を打ち出せる人でないと、相を変えることは出来ない。
「こらーる岡山診療所」の日々患者の噺によく耳を傾ける姿と専門家相手の講習からは、いまひとつ見えてこないところであった。
普通の医者なら鍵を閉めたままで、型通りの診療ルーチンと薬物投与を続けるだけであったはず。勿論、現状維持に努めるだけではストレスは溜まる一方で、事態は徐々に悪化するのは目に見えている。

映画では、極力演出は省き日々のありのままの患者と医師とスタッフの姿を一定期間切り取った形のドキュメンタリーとなっており、個性豊かな活き活きとした患者の多様な姿を知る上では大変役立ったが、このスパンだけでは、山本医師の仕事の一部しか確認できなかった感は残る。


面白い映画であるのは間違いないが。




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きさらぎ駅

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2022

永江二朗 監督
宮本武史 脚本

恒松祐里、、、堤春奈(民俗学専攻の大学生)
本田望結、、、宮崎明日香(女子高生)
莉子、、、松井美紀(ギャル、飯田、岸とつるむ)
寺坂頼我、、、飯田大輔(トリオの1人、岸の手下)
木原瑠生、、、岸翔太(粗暴なトリオのボス)
芹澤興人、、、花村貴史(サラリーマン)
佐藤江梨子、、、葉山純子(高校教師)
瀧七海、、、葉山凛(純子の姪、女子高生)


本田真凜の妹の演技を初めて見る。
成程、確かに女優だ。育ちの良い女の子の役を無難に熟していた。
噺はホラーRPGそのまま(初級編という感じ)に思える。

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最近流行りの(特にホラーで多用される)一人称視点のカメラで描かれるが、よく揺れる。
ドキュメンタリータッチの臨場感を持たせたいのだろうが、視界は安定していた方が観易いし臨場感や生々しさは他の演出方法を工夫してもらいたい。それにこれにはもう飽きた。

民俗学の卒論テーマに「神隠し」を選ぶと謂うのは面白いかも知れぬが、都市伝説の謂うようにやってみたら自分も神隠しに遭ってしまったというのは、何とも、、、。それでは論文提出出来ないではないの。
確かにフィールドワーク大切だけど、この場合は経験者~行って戻ってきた葉山純子のインタビューで済ますべきか。
いや、それだけでは確かに信憑性ないし、データに乏しい。バカにされて論文が通らない可能性も大だ。
ということで、やはり実際に踏み込むしかないのだった。
(現地で何らかの物証集めや写真やヴィデオを撮っていた様子も無いのだが。メカニズムの考察の意識も感じられなかったが大丈夫なのか)。

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しかも元高校教師の純子は、この女子大生を使ってかつての勤務校の女子生徒である宮崎明日香の救出を目論んでいた。
彼女は、電車で二度寝過ごしてしまった(まず普通に乗り越し、戻りの路線でもまた乗り越し元に戻ってから向かう)ことで、その路線には本来無い「きさらぎ」という駅に忽然と着く。つまりこの行程を踏んで違う次元の路線に接続することになったのだ。
酔っぱらうなどして同じ工程を踏んでしまいその駅で目覚める乗客と共に、その異空間の住人たちや奇妙な現象からどうやって逃げ、最後の脱出の曖昧な方法までを春奈に伝える。ゲームのやり方というところか。失敗すれば文字通り神隠しに遭ったことになる。

恐らく、その世界では侵入者が来ることでスイッチが入り、電車内の囚われ人が悪夢の中に目を覚まし、降りてから決まった形で行動をはじめ、それに対する住人?も特定の反応~攻撃をして来る。空間自体が一種の生き物のような様相も見せ、急に壁に血管が現れたりするのだ。抗ウイルスみたいな住人に襲われた人間の爆発するような死に方も外から侵入した菌みたいだし(笑。太鼓の音が予兆となるなどグロテスクな煽りも効いている。ともかく固有の時間の反復と変容と謂う形で存在する悪夢のような生体系のような(笑。やはりホラーゲームのような。

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しかし、最後の扉からの脱出法だけは嘘を教えるのだった。その扉は一人しか通さない事を純子は掴んでおり(恐らく春奈の前にも何度か他の者で試して知ったものか)、頼りとなる者を待っていたのだ。
複数で逃げて扉まで辿り着いても、自分が助かるには他を差し置いて独りで扉を通過しなけらばならない。
純子は自分が盾となり明日香を先に行かせたら彼女が扉毎消滅して失敗し、後に残った自分だけが助かり戻って来たと教える。
この嘘がどう作用するか。堤春奈の人格任せの策であろう。

結果は葉山純子の目論見通りに運び、宮崎明日香は生還した。
情報を元に行動した堤春奈は切り抜ける過程では先手を打ち予見しながらの進み方が出来(それによって流れの変容は起きるが基本線は変わらず)最後の扉まで辿り着く。そして葛藤するが、助かりたいがため、わたしが連中を食い止めるから先に行ってと明日香を促す。いい人ぶってその通りにしたら、彼女だけが通り抜け自分は入れず扉は消滅してしまったのだ。
そこで初めてハメられた事に気付くが、もう後の祭り。

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何故か終わりに純子の家で預かっている姪の高校生、凛がその工程で「きさらぎ」を目指す。
工程が守られれば必ず着くのね「きさらぎ駅」には。確かな路線だわ。
その電車の中には、以前宮崎明日香が座っていたシートに堤春奈が眠っている。
姪の彼女が救出に来てくれたということ?
だとするとその姪は誰が救うの?
めんどくさいわ~。これ。

今のわたしのように3分の2ほど眠った状態で観るには適した映画だ。
何と言うか、ホラーであれば、「怪奇蒐集者 黄泉がたり 村上ロックより抜粋」くらいのインパクトが欲しい。





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Letter to you 〜想いは時を越えて〜

Letter to you001

Letter to you
2022

石山 泰人 監督・脚本・撮影・編集

紗也香
伊藤 直行
菊地 陽哉


また短編。
これもまとまっていてスッキリ観られた。
雰囲気も繊細で優しい絵である。
3.11で実際にあった出来事を元に描いたのだという。

冒頭で悩める人に対するメッセージを書いて流したボトルメールが自分の戸惑いへの答えとなって還って来るなんてロマンチック💛
というオチの良い噺であった。
こうした類のシンクロニシティってわたしにも何度もあったはず。
だが何かの救いとなったかどうか。
チャンスとして掴み切れなかったのだと思う、、、。

Letter to you002

結婚を前提に付き合い始めた先輩が例のボトルを流した翌日に津波で亡くなってしまい、その後東京に出て会社勤めをしていたユキ。
数年経って同僚から告白され気持ちの整理がつかぬまま、これまで通り彼女は「その日」に郷里のその海辺に還る。
するともう大人になった先輩の妹に偶然会う。
いつもふたりで落ち合っていた海辺には彼の妹も来ていたのだ。
ユキが身に纏っていたストールは先輩にプレゼントされたもので、選んだのはその妹であった事を初めて知らされる。

彼女はいつまでもそんなものを持っていてはダメだとユキに諭す。
兄もそれをきっと望んでいると。
ユキと彼女は暫し思い出を語りあい、今度一緒に呑みましょうと言って別れる。
そしてユキが浜辺に一人立つと、ストールが急に風に舞う。
追いかけて拾いに行った先に、何とあのボトルメールが漂着しているのだった。
あの時、その返事は秘密だと謂い、自分の名前を添えて流した彼であったのだが、ユキは初めてその内容を知る。

それはまさに今の彼女へのメッセージ以外の何ものでもなかった。
「過去は忘れて未来へ進め、幸せになれ。応援している」と、、、。
その後、会社で告白してきた彼から仕事の問い合わせ電話が入る。
ユキは要件に答えた後で、彼の先日の申し出を受けることにした。

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当時、こういった(不思議な)出来事が遺族に幾つもあったという。
あって良いと思う。
われわれは癒されなくてはならない。





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予定は未定

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2020

磯部鉄平 監督・脚本
永井和男 原案・脚本


屋敷紘子
辰寿広美
南羽真里
時光陸


邦画に戻り、又もや短編(邦画は短編の方がおもろい)。
ユーモラスで悲哀があってスッキリしたコメディ。

特に出だしのトイレでのおばちゃんとの電話。
ここから惹き付けられる。

もういい加減にしてとばかりに「何おもろいこと言うてはるの?」とかで水を流して切り上げるのだが、関西おばちゃんのまくし立てトークはホントおもろい。
一方的な「お見合い話」の電話だ。
あんたかてもうアラフォーやで、とか、知らんわというところか(笑。

カラッとしていて悲哀タップリの話。
結婚願望はあるも、お見合いとかで決められたくはない。
常にワクワクドキドキする「出逢い」を待っていたら、、、
婚姻届けの紙飛行機に乗せられてしまった(悲。

女芸人をひっかける深夜番組企画で作った婚姻届けが風で飛んで、、、。
たまたまキャッチしてしまい(ここで運を使ってどうする)、運命を感じてときめくなんて、、、とても寂しい。と言うか侘しい。
企画したプロデューサー自身に、こんなんで引っ掛かるはずないですよね~と謂われては、ドレスアップしてわざわざそれを持って行ったわたしって、、、。
この軽さがまた粋で良いのだが(笑。

この映画、わざと紙飛行機を飛ばす(子供にわざとらしく飛ばさせたり、ヤケで彼女が飛ばしまくったり)。
薄っぺらでちょっとした風で何処かに飛んで行く紙飛行機みたいなものに縋ってしまうわたし、、、とか(爆。
演出は分かったから、、、だが関西(知らぬが)風でよい。

屋敷紘子さんの役が元800でオリンピックを狙っていた陸上選手というものだが、よく走る。
呑んで遅くなって終電が間に合わなくとも走って帰ったり。
ハイヒールで派手にコケてみせたり(笑。
なかなかの体当たり演技も関西風に思えるのだが、関係ないか。
やはり世話好きのコテコテ関西おばちゃんの影響は大きい。

最後におばちゃんのお勧めの男性と取り敢えず会うが、お互いに時間も無いしこの先頑張りましょうと言って直ぐに別れる。
そしてまた走るのだ。この頃には、ちょっと気持ち良い(笑。
飽くまでもときめく出逢いを求めて生きる女性の姿を描いたものか?
よく分からん。

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わたしの叔父さん

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Onkel
2019
デンマーク

フラレ・ピーダセン 監督・脚本・撮影・編集
フレミング・ベルグ 音楽

イェデ・スナゴー、、、クリス
ペーダ・ハンセン・テューセン、、、叔父さん
オーレ・キャスパセン、、、ヨハネス
トゥーエ・フリスク・ピーダセン、、、マイク


デンマークの小津という感じの監督だ。
田舎町で景色は神秘的ですらあり、画面がとてもよい風合い。
「間」もしっかりある。ここが他の欧米作とは違う。特に相手をそれとなく窺いながらの会話。
獣医学科に進むのを控え、ずっと体の不自由な叔父の身辺の世話をしながら酪農の仕事をしているクリスの日々を追う。
淡々と起伏の無い日常の反復は、ちょっとドキュメンタリー映画に近いものも感じる。

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まだ若い時分に両親と弟を亡くし叔父さんに引き取られたという事から、叔父に対する感情は特別なものであろう。
母を早くに亡くし、弟が死んだ後、父がその後追い自殺ときている。
叔父に投影するもの(依存度)も複雑で大きいはず。

淡々とした日常生活、質素な食生活も愛おしいものである。
只管続く反復も何やら心地よいではないか。
そして毎晩流れる世界情勢のTVニュースである。2人の世界には全く関係ない情報を無表情で受け流す光景もまた面白い。

しかしヨハネスの謂うように、永遠に叔父の面倒を見続けて過ごす訳にもいくまい。
獣医のマイクの手助けをして知見を広げたり、讃美歌に触れヨハネスに出逢い、外に向けられた目が彼女の日常生活に変容を齎す。とても自然なことだと思う。

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大学教授でもあるマイクの手配で、大都会コペンハーゲンに出る。
(出る前日にはとても大量の料理を作っておき、極力何もしないように言い聞かせておく。3日くらいなのに3か月家を空けるような大袈裟な過保護さ加減である)。
獣医の勉強が主だが、それより彼女には外の世界に触れることが必要であった。マイクもそのつもりであろう。
携帯と聴診器もプレゼントされ、ヨハネスも含め関係性が少しばかり広がる。
面白かったのは、コペンハーゲンの回転寿司であった。とても衛生的な作りで照明はバーみたいな雰囲気があった(笑。
初めて生魚を食べたと叔父に楽しそうに携帯で知らせる。

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更に面白かったのは、ヨハネスとのデートに叔父が付いてくることだ。
最初のデートだけ、その人となりの確認したいが為、付いていくのかと思いきや(デンマークの習わしかと)、次からのデートも映画にも一緒に付いて来るのだ、これには流石にヨハネスも辟易する。
だが、クリスにとっては普通という感じ。叔父も勿論。やはりこの依存関係キツイ。
当然やきもきするヨハネス。

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コペンハーゲンという都会で様々な事に触れればより視界も広がりアンテナも立つはずであったが、、、
何と叔父が約束の時間に電話に出ない。
これでもうクリスは居ても立ってもいられなくなる。まだ来たばかりで、マイクは気にするなと謂うが、、、
マイクの奥さんに家を訪ねて貰ったら、倒れていたのだ。
直ぐに駆けつけるクリス。

叔父も彼女の意識が外に向いてきたことに気付き、そっと後押しは始めていたのだ。
普段しない外出となれば、買い物のときにヘアドライヤーを買ったり、ヘアカットもかって出ている。
このまま行けば、少なくとも叔父からの精神的な自立は図れたはず。

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結局、クリスは以前より叔父にピッタリ貼りついてしまい、外への視界を閉じてしまう。
叔父もそれにドップリと甘えているぞ。
最後の2人のシーンに何とも言えない気持ちの探り合いは感じられる、、、

出来れば叔父の方から積極的に彼女を外に誘う手立てをとって欲しいところだが、完全に元の形で着地し落ち着いた田舎の酪農生活が再開している。動くことは難しい(これはわたしもよく分かる)。
しかし、これでよいのか、、、ヨハネス頼むぞ(笑。
いや笑いごとではなく。

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確かにデンマークの小津という感じであった。
とても良い作品~監督との出逢いだ。



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そしてまた私たちはのぼってゆく

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2020

磯部鉄平 監督・脚本
二朗松田、谷口慈彦 脚本

南羽真里
浄弘卓磨

愛乃助
野村洋希
加島愛
白木原一仁
松本真依


真夜中モラトリアム」の磯部鉄平監督の短編である。
それほど拘りたい監督ではないが。
ただ短編と謂うのが良い。
表したいこと~ヴィジョンがスッキリと無駄なく描写されているものが多い。
冗長なものが少ないのが助かったりする。
(短編で冗長だったらシュールでしかない)。

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「真夜中モラトリアム」みたいに、ここでも高校時代7人グループであった1人が卒業前に亡くなり、社会人となった6人が高校に集まるところから始まるのだが、その不在の彼女が物語のキイとなる。
とっても構造が似ている(笑。

この監督、不在の存在が今生きている人間~関係性を翻弄するという構図が好きなのか。
それは良いとして、何で卒業後も母校に集まろうなんて考えるのかね。わたしには全く理解できない。

また、ここでも登場人物は皆、軽い(笑。
図書室に入りこみ、そこにあった降霊術の本から「かごめ」をやってみようということになる。
乗り気ではない楓も含め無理やり適当に始めてしまったのだが、遊び半分のいい加減な気持ちでやっている為、儀式の途中で魔方陣から男子の1人が指を離してしまう。
これで全員に呪いがかけられ、その場にとじ込まれるということに、、、。
ループが始まるが、違和を感じるのは最初乗り気でなかった楓独りであり、彼女はそこに亡くなった彼女の姿を幻のように垣間見る。

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他の仲間は何度も儀式をやり続けていることに気付かない。
だが、楓が儀式の輪から外れ、亡くなった娘の後を血相を変えて追い始めてから、楓の事を気にかけていた男子もその魔法陣をくしゃくしゃにして、追い始める。魔法陣が無くなったことで他の皆も内部空間へと解かれるが、全く通常の空間ではなかった。
楓と彼女の後を追う男子以外は皆下に降りようとするが、幾ら階段を降りても降りられない。
無限階段の構造となっている。
トイレに行こうとすると体育館に出てしまい、屋上から降りると最初の部屋の掃除用具入れから出て来てしまう。
エッシャーの建造物みたいな擬構造が出来ていた。

恐らく何の役にも立っていないが、辞書を調べると「かごめ」を逆読みにすれば呪いは解けるということで、スマホに録音して逆再生して、これで脱出できると喜んでいた。
ともかく、軽い人々である。

そのなかで、ただ只管楓はその亡くなった女史を追い続けてゆく。
亡霊のように少し先を走り去って行くのだが、実体があるのだ。
そして屋上でしっかりと出逢う。実際に抱き合うことが出来る。
楓とその娘との間には秘密の関係があり、何度もループするなか屋上で彼女との関係を徐々に修正してゆく。
(この娘は屋上から飛び降り自殺でもしたのか。ここでそこに至るまでの再現を何度も行うなかで経験~関係を変えようとしているのか)。
そして彼女との蟠りが解けた時点で楓は、一緒に行こう、と屋上の端まで彼女に誘われて行ってしまう。

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その頃、呪いが解けて皆は下まで降りる事が出来、ほっとするのだが、楓を気にする男子が彼女がいないことに気付き屋上を見上げると、楓が独り屋上の際どい位置まで歩み出ているではないか、、、。
全速で駆け上がり、すんでのところで自分を見失ったような彼女の手を取り、寄り添って下まで降りて来る。
楓が我に返った、その瞬間、皆はまたあの部屋のあの場面に引き戻されているのだった。

どうしてもあの亡くなった彼女は楓を連れて行きたいのだ。この現象はまさにその彼女と楓との関係のなせるものであった。
それ以外にこのループを解くことは不可能なのか。
そもそも「かごめ」をいい加減な気持ちでやるべきではなかった。それ以前に何で、高校などにやって来たのか、、、。
(と謂うところは、せめて教訓としたい(笑)。






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娘の修学旅行

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妻との海外旅行以外で、娘が家を幾晩も開けるのは初めて。
気が抜けて何も手につかない(笑。
疲れを感じ、昼間から横になったらそのまま寝てしまった。

今日は買い物すらしない、一歩も外には出ないで過ごした日であるが、、、
亡霊のような老婆が訪ねて来たりで、奇妙な日であった。
ドアフォン越しにやり取りしたが、ぼやっとした世界が更に霧に塗れてしまう。

保健証を拾ってくれた人がいて、という出だしで名前も住所も知っているのに、1丁目分離れたわが家にその人はどんな人か知りたいので訪ねて来たのだと謂う。友達でもなければ、普通そんな遠くの人間知るはずもない。
わたしは極、近所の住人ですらほとんど知らない。
(知っている所もあるが、お世話になっているご近所もいれば、許せる範囲外の飛んでもない糞屑もいる)。

大体、拾ってくれた(どういう形で拾ってくれたのか)人の名前と住所を知っていてお礼でもしたいなら、菓子折り持ってそこを訪ねればよいだけの噺だ。
どういうつもりでわが家を訪ねるたのか聴いたら、そこら辺りをランダムに訪ねて歩いているようなことを言う。
よくヘリでバタバタと放送する徘徊老人のひとりとかであろうか、、、。
と感じたが、ドアを開けて会ってみる気など100%無く、無言でモニタ越しに様子を窺っていると、じゃあいいですと謂って去って行く。
玄関の鍵をかけていなかったので、直ぐにかけた。

新手の詐欺ではないように感じられたが、余りにも訳が分からない、迷子の亡霊に思える。
今日観た短編映画がホラー?であったのだが。
成程、魔物が魔除けの役だったのか、と思い当たる(爆。

心身共に覚束ない空気(妖気か)に浸かっているよりも、ビビットな狂気の嵐の方がフィットするのに気づく。
また慌ただしい日々に戻るのだろうけど、恐らく疲労がどっと襲ったのだ。

偶々見た深夜のTVで竹中直人の凄さを思い知った(笑。

明日は今日観た映画の感想を書きたい。


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真夜中モラトリアム

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2017

磯部鉄平 監督・編集
二朗松田 脚本

南羽真里
GON
時光陸
西川莉子
永井和男
岩本守弘
松本真依


松元麻衣子の葬式の帰りに、高校時代の仲間で立ち寄ったカフェで、かつて一緒に埋めたタイムカプセルのことを思い出す。
時間も夜更けだが、それを掘り起こすことにする。彼女の秘密も知ることができるかも、、、。
この不在の存在を巡る設定~アイデアは面白い。
会話劇でもあり、色々と注ぎ込めるではないの。

そこに至るまで、酒を呑んで各々過去の想い出に耽っていた。
フラッシュバックが頻繁に入って来て、、、
コメディのようなやりとり、、、。
どうやら一人の女史は、亡くなった彼女に手厳しい。残りの男性たちには憧れの君であったようだ。
もう一人の女史は中立みたい(笑。
枠作りは良いと思う。

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そして真夜中の河川敷に道具を用意してゆく。
死体を掘り出すみたいな感じもして、、、
余りに広い草原となっている河川敷を、明かりを灯し覚束ない記憶を頼りに移植こてみたいなものであちこち手当たり次第に掘って行く。
次第に無謀な徒労感が蔓延る。疲労と酔いも手伝って。
全てが覚束ないのだ。
彼女についての記憶も何処に埋めたかも、そもそも何をやってるのかも、、、。

自分が何を埋めたのかも誰ひとり覚えてなかった。
しかし諦めかけた時にひとりのこてがカチっと手応えを得る。
皆が集まり掘り出して箱の中をそれぞれがそっと確かめるのだが、、、
自分が入れたものは直ぐに分かり、喜びと共に取りだせるのだ。
そうしたものだろう。

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最後に亡くなった話題の主、麻衣子のノートが残る。
彼女は生前、偶然に出逢ったこの中の男性にタイムカプセルもう開けた?と尋ねていたそうだ。
(彼女は久しぶりに出会った友人に何故そのことを切り出したのか?)
流石にそれを直ぐに手に取り中身を確認するのは誰もが躊躇する。
だが、辛口女史が拾い上げた。彼女がカプセルを暴こうと主張した当人でもあった。
するともう一人の中立女史が、個人情報だから、、、とちょっと牽制はする。男性たちも及び腰だ。

中身を不敵な表情で読み出した彼女は、陳腐な内容だと酷評してゆく。
コミュ障の芸術家気取りね、と吐き捨てる。
麻衣子は高校時代から、曲作りをしていてライブやデモテープを作ってはレコード会社に送ったりしていたらしい。
デビューまでのロードマップも記してあった。
男性陣は彼女には憧れを抱いており褒めそやしていたが、この女子は気に食わぬ様子。

時間も時間となり、それぞれがその場から去って行く。
最後に、男性一人と辛口女史がぽつんと残った。
すると女史は、突然ノートにライターで火を点けるのだ。
驚いてそれを阻止しようとした男性であったが、彼女は本人がいたらきっとこうしてと謂ったわ、と語気を強めて断言する。
男性は取り敢えず箱の中にノートを戻したが、まだ火は鎮火した訳ではない。
女史がほくそ笑んで謂うには、最後のページに何て書いてあったと思う?好きな人の名前よ。
男子は慌ててそれを拾い上げようとし、それを見降ろす女史は悪魔のような笑みを浮かべている。

「真夜中モラトリアム」という特異な場の設定。
(誰にとっても時折こうした場~一時停止は発生する)。
何とも言えない短編であった(笑。




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盛り場流し唄 新宿の女

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1970

武田一成 監督
川内康範 原作
山村英司 来栖三郎 脚本
鏑木創 音楽

山本陽子、、、高橋礼子(クラブのホステス)
北林早苗、、、本条沙知子(クラブのホステス)
木村功、、、舟木(舟木総業の社長)
大信田礼子、、、本条真理子(沙知子の妹)
富士真奈美、、、西川きよ子(クラブのホステス)
藤竜也、、、波川透(舟木の部下、バーのマネージャーから舟木商事社員へ)
藤圭子、、、藤圭子(新宿の流し)
月亭可朝、、、月亭可朝(芸人、自分役)
宮城千賀子、、、相原アサ(クラブのママ)
小松政夫、、、村松正男(スカウト屋)
山本勝、、、大堀肇(結婚詐欺師)
久保幸一、、、内山(悪徳弁護士)


題は藤圭子の劇中で唄う『盛り場流し唄』『新宿の女』からそのまま取ったもののよう。
その世界観を描く作品か。昭和の香りはプンプンしていた。
BGM音楽は時折、キングクリムゾンしていたが。

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古い(と謂ってもそれほど古くない)邦画を観てみることに、、、。
新宿夜の街の話である。普段、まず観ない。
違うものもたまには観てみたいと思う。
宇多田ヒカルのお母さんが同じ曲を何度唄っていたか(『新宿の女』はデビュー曲なのか)。
持ち歌沢山あるのだし、もっと色々唄わせてあげればよいのにと思っていたのだが、この頃はまだなかったのか。
恐らくどの歌も世界観は一緒のはず。
「夢は夜開く~」はよく知ってるのだが(これはまだ出ていなかったのか)。

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女性は運の悪い人ばかり、男は波川透以外、悪い奴ばかり、、、
救われない噺。波川~藤竜也も救ってくれる人かと期待したが、社長への義理をとってしまう(流石は元やくざ)。
皆暗く、大信田礼子と小松政夫ペアだけがやけに軽くて明るい。
(このペア好きだ(笑)。
このふたりのスピンオフ作品が見たいくらい。
勿論、コメディである。ここでもコントみたいなのを見せて欲しかった。
大信田礼子と小松政夫って、いたよなあ~と暫し感慨に耽る(コマツの大親分~とか思い出す)。

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山本陽子が大変綺麗であったが学生運動家のヒモに散々苦しめられ結婚詐欺師に騙され自殺。
高級クラブのホステスで玉の輿の方が似合う人だが。
確かに本条沙知子~北林早苗も不幸とは言え、父が飲酒、信号無視で人を轢き殺して懲役2年は軽すぎるだろう。
罰金刑があるにせよ、家族全員で踏ん張ればなんとかなるものだ。
悪徳弁護士の謂うように、被害者の家はもう大黒柱を失い完全崩壊なのだから。

借金を返すには水商売しかない、寄って来るのは悪い奴ばかり、、、というパタン。
まあ早く金を作らなければ、と焦ると弱みに付け込む邪悪な屑が寄ってたかる。
そう人の世は、弱みを見せるとろくなことはない。
山本陽子~高橋礼子の場合は、男運自体が無かったわね。
新宿と謂えば、占い師が定番だが、占ってもらえば良かったものを。
新宿の母とかいう人も確かその頃いたような、、、どうだったか。

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そして、舟木総業の社長が一見いい人みたいに思えたのだが、高速道路建設予定地情報を非合法に入手しそのエリアの土地の事前買い占めに走る。そのエリア内に古くからの伝統人形作りの本条家があった。
彼は沙知子を二号さんとして囲い面倒をみると謂い、検察の手が回ると自分の罪は部下の波川に負わせる。
しかしその頃は、沙知子と波川は相思相愛となっていた。

何代も続いた伝統ある人形屋は取り上げられどこかのアパートに引っ越す。
妹とその彼氏も相変わらずの雰囲気で手伝う。
最後は和服を着てきりっとした表情で健気に頑張る沙知子の姿。

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何と言うか、山本陽子ファンには外せない一作だ。
藤圭子ファンにとっても、、、(ちゃんとセリフもある)。




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SEASONS OF WOMAN

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SEASONS OF WOMAN
2020

川崎僚 監督・脚本
松谷由香 音楽

「笑女クラブ」 2014 孤独と友情を巡り

「彼女のひまわり」 2017 友情を巡り

「AUTUMN OF WOMAN」 2016 婚活と就活を巡り

「雪の女」 2019 結婚と出産と仕事(キャリア)を巡り


斉藤結女 、、、「笑女クラブ」、「雪の女」
瀧本七菜恵 、、、「笑女クラブ」
根矢涼香 、、、「彼女のひまわり」、「雪の女」
芋生悠 、、、「彼女のひまわり」、「雪の女」
宍泥美 、、、「AUTUMNOF WOMAN」、「雪の女」
見里瑞穂 、、、「AUTUMNOF WOMAN」、「彼女のひまわり」



4つのオムニバスで構成されるが4話目にそれまでの3話の登場人物がひとつの場に繋がって収斂する。
恐らくは、3話までは個々の短編として独立して作り、それらの先の行く末を4話目(冬)に総括してまとめようとしたのでは。
これは春夏秋冬の流れで「女」が描けるぞと。
その意味では良くまとまった作品だ。オムニバス形式としても成功している。絵も綺麗で無駄が無い構成だ。
キャストも良い。どのepisodeの女優も言うことなし。芋生悠がやけに若い(まだ洗練されてない感じ(笑)。

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やはり女性は妊娠・子育てをどのように自分の人生のヴィジョンのなかに位置付けてゆくか、、、。
これが大問題だと思う。キャリアを積み上げてゆく野心と子供を産んで育てるというこれまた途轍もないイベントをどう両立させるか(失敗例も多い)。
妊娠・子育ては大きなイベントだ。勿論、夫の方も子育ての一翼は担うが、幼少期はやはり母親の役割は大きい。
社会で男と争い地位を築く意欲と子供を持ちたいう願いをどちらも強く持つ女性は少なくないはず。
勿論、婚活に意欲を燃やし、玉の輿に乗る欲望に走る女性や家庭や子供に邪魔されずに自分のキャリアを最優先しようという女性はいる。
ここで演じている女優さんもそれぞれだと思う。

SEASONS OF WOMAN001

さてはて、、、最初の「笑女クラブ」では秀才の「笑女クラブ」部長が、皆を笑わせ友達の和を広げようとしている。
それに乗って来る子もいれば、白けて距離を置こうとする子もいる。
秀才部長も孤独に絶えかねそういう部を始めたことが分かり、一番その動きに拒否反応を示していたがり勉女子が数学の問題を一緒に黒板で解くことで打ち解け共に笑い親友となる。
独りでも自分を人に合わせるなんて御免だという子と独りは嫌だ皆のなかで認められて生きたいという子がいるのは分かる。
性格~個性の違いでも良いと思うが、ここでは正反対にいるように見える二人が親友となる過程か。それは良い関係が結べると思う。

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「彼女のひまわり」では、共通の友人が亡くなり、郷里に残った者と大学進学で東京に住んでいる者が所縁のひまわり畑で亡き友人を巡り、語り合うというもの。
ピアスを片方落として見つからないというのを口実として、かつて高校時代の3人の間の蟠りを解こうとする芋生とそれに素直に応じられない根矢。両者の葛藤が描かれる。
3人と謂う関係は難しいものだ。だが普通そうだと思う。そこを色々掘り起こしても解決にはなるまい。
亡き友が好きだったひまわりの花の噺に絞るところでまとめている。このシーン自体は良いと思う。

SEASONS OF WOMAN007

「AUTUMNOF WOMAN」となると、自分で選んだ職場で働くが、婚活も進めている宍泥美。妹も就活を行っているが全然上手く行かない。姉妹共に相手に選ばれず苦労していた。
自分が婚活の相談所で紹介された相手から断りの連絡を受け、情けなくなり落ち込んでいた夜、妹が就活で悉く落とされて泣きついて来るのだ。姉としては自分のことで落ち込んで思い切りそれに浸ることも出来ない。
妹を慰め自分が買って来た惣菜を食べさせる(これが遅い時間に買った値引きされたものであることが侘しさにも繋がる)。
就活で上手く行かない妹は、出版社で自分のやりたいことを熟している姉の姿に憧れを抱いている。
だが姉も大変キツイ状況に生きていた。これまでもいつも先に妹に泣かれていた為、自分は泣くことすら出来なかったことをぶちまける。お互い様なのだ。お姉ちゃんも辛いんだということを妹も自覚する。
「お姉ちゃんだって泣いていいんだよ」と妹に謂われ妹に支えられて泣く。
まあ特にどうと言うものでもないが、そういった状況がナイーブに描かれていた。

SEASONS OF WOMAN010

「雪の女」で総まとめとなる。何やらこの過程~展開をかつて担当していた小説家が作品として描いているメタ構造をとるのだ。
根矢をヒロインとして「女性の強さ」を描こうとしているという。だがこの先が描けないと彼女に泣きついて来るのだ。

皆が繋がって登場だ。最初の秀才の女史はもう就活で根矢の出版社に狙いを定めコンタクトをとって来る。
だが、未だに勝ち組とか言っており、実際の仕事の厳しさはまだまだ分かっていない。
それから就活より婚活に意欲的な友人が多いことが気になると言っていたが、確かに就活も婚活を見据えたうえでする女史も少なくないことは確かだ。この秀才女史は、結婚など考えずホントに好きな仕事を全力でやればよいと思う。
根矢は自分で選んだ編集の仕事に就いていたが、自分の思うようにはなかなか運ばないもの。
ここでは、結婚し子供を持つ同僚とまだ未婚で仕事に集中しながらも葛藤する状況を描く。頼みの先輩であった宍泥美はキャリアを捨てて結婚し妊娠していた。彼女は今の状況に満足している様子である。
しかし根矢は部署を変えられ到底満足の行かない電話対応の仕事に移動していた。
まだ先が見えない秀才女史と妊娠して子供に期待をかけている先輩はまだ良いが、自分は途方に暮れるばかり。
冬を迎えた自分はどうすればよいのか。他の女性陣も皆先は見えないのは同じだ。

SEASONS OF WOMAN009

もう頑張れない、と彼女は何度も言う。
だが、先輩のお腹の子どもが動いたということに感極まって泣く。
そして春を待つ、、、

つまり、答えは示さない。この映画での何らかの決着~着地は描かず終わる。
それでも各女優の熱演で充分鑑賞に堪える作品になっていた。
とは言え、もう一歩踏み込んで処方箋はいらないが、こういうパタンもあると謂うのを示しても良かったか。

SEASONS OF WOMAN011

斉藤結女という女優を発見。他に何に出ているのか観てみたい。
エンディングの曲のヴォーカルが何とも平べったい。




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逢魔が時の人々

People in the Twilight Zone003

People in the Twilight Zone
2023

溝口稔 監督・原案・脚本・編集

杉江大志、、、藤山豪
大島葉子、、、母
団長安田、、、父
田崎那奈、、、父の妻


成程。”Twilight Zone”の人々ね。
であれば、とても幻想的ですらある心地よさを覚えるではないの。

お雛様のヘアカット」の監督である。(海外での受賞が100もあったという)。
今作は、登場人物皆が「普通」からズレている。
無駄なくまとまりの良い映画であった。
短編が得意の監督のようだ。

People in the Twilight Zone001

藤山豪青年は、会社面接に36回連続落ちている。大学は美術の専門校である。
母は看護師として豪を女手一つで育て上げるが、近ごろ異常に忘れっぽい。
父は画家になると謂って出家しその寺の住職の娘と結婚してしまうが、まだ絵は1枚も描けていないそうだ。
生活費も送らないという。
父の新しい妻であるが「狐憑き」と呼ばれ、寺の鐘が鳴る「逢魔が時」になると狐になって狂暴に襲い掛かって来る。
息子が父の絵が見たいと寺に行ったときに丁度その場面に出くわす。
帰って母に相談すると親友の精神科医を紹介される。
彼女の処方の薬で発作は無くなり安定するのだが、まるで人格も好みも変わっていた。自己免疫疾患ということであった。

その精神科医の息子はLGBTであるという。
確かに顔が女性なのだ。だが、ロックミュージシャン目指してるみたいなので、何の問題もなかろうが。
そんな対話をするなかで、豪の母は一度済んだ会話をまるで初めてのように繰り返す。
精神科医は、彼女に若年性痴呆症の疑いを持ち検査を勧める。
母はまさかそんなとその時は取り合わなかったのだが、、、

二年後、母は施設に入所しており、息子も認識できない状態となっていた。
母は息子を最近入った新たな看護師だと思い会話を続け、息子もそれを受け容れ優しく合わせていた。
傍から見れば、利用者さんと看護人である。
だが、自然で楽しそうですらあり、喪失感の重い暗さを引き摺っていない。

皆が優しくズレているのだ。
天然なのかも知れぬが、、、
まるでそれを前提に付き合っている感じである。
よくあるのは、(自分たちと)違う者を徹底的に叩き排除する体質であるが。
その邪悪な陰湿さはここには見られない。
ある意味、健康的である。

People in the Twilight Zone002

わたしも記憶はよく飛び、物を何処に片付けたか全く思い出せないことがある。
まるで時間系を乗り換えたかのように思えて来るのだ。
特異な孤独に苛まれもする。
しかし違うものになってしまったと思えばそれはそれ。
完全にいってしまってもよいのだ。
(何故、アイデンティティを手放せない?)

わたしもここに出て来たお母さんのパタンかも。
それはそれでお気楽かも。



AmazonPrimeにて




青い塩

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Hindsight
2011
韓国

イ・ヒョンスン 監督・脚本

ソン・ガンホ、、、ドゥホン(元ギャングの幹部)
シン・セギョン、、、セビン(優れたスナイパー、ギャングに雇われている)
チョン・ジョンミョン、、、エック(ドゥホンの忠実な弟分)
イ・ジョンヒョク、、、ペク・ギョンミン(ドゥホンの組の大幹部)
キム・ミンジュン、、、K(殺し屋元締め)
ユン・ヨジョン、、、カン(凄腕殺し屋)
オ・ダルス、、、ユク先生(セビンの射撃コーチ)


「イルマーレ」はハリウッドリメイク版は観ているがオリジナルはまだ観ていない。
その監督作である。「反省」?「後知恵」?
元裏組織の伝説の大幹部をソン・ガンホが熱演。安心して観られる。

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黄金(ファングム)、塩(ソグム)、今(チグム)という3つのグムが大切だ。とか凄く勿体ぶって謂うので、どう絡んでゆくのかと思ったがそれほどのものではない。ただ言ってみただけに近い。まあ、塩は終始出て来るが。
最後に撃たれた弾丸も塩であったし、、、(笑。

何とも呑気なハッピーエンドで良いのだが、ドゥホンの兄貴を殺した奴を殺すという誓いはどうなったのか。
途中、元の組や頼まれた殺し屋組織から何度殺されていてもおかしくないシーンがあるが、何だか有耶無耶になってそのままダラダラお互いが牽制し合っていたり、、、何となく呑気に過ごしたりもしている。
ギャングの抗争劇としてはイマイチ、テンポも迫力も残忍さも弱い。韓国映画特有のハードなヴァイオレンスはここには見られない。
伝説的凄腕のドゥホンの無双振りもほとんど見られないのだが、、、。

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その代わりと言うか、セビンという(今風に言えば美しすぎる)若い女性スナイパーが、腕は凄いが標的~主人公を撃てずにずっと悩み苦しむ葛藤場面が続く。
最初から最後までそれでずっと引っ張る。
料理教室に通うドゥホンの監視の為、自らも入学して隣で料理を作っているうちに次第に親しみを持ってしまうのだ。
ドゥホンは下手だが、セビンはとても上手で時折教えたりしていた。

しかし彼女には任務があるのだ。
こちらも充分はらはらしながらのめり込める。
ホントに撃っちゃうのかね、それとも逃がすのかな、、、と(笑。
まあ、そこに尽きると謂っても良い。
よくあるタイプの映画にも思えるが。

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ドゥホンは組から抜けてレストラン経営を目論む男であるが、何やら死んだ(殺された)兄貴(ボス)が後を継いで欲しいと望んでいたらしい(遺言にそうあったみたい。死ぬ前にも幹部たちにそれを伝えてはいた)。
だがこの男を迎えるのを拒む連中から命を狙われる。当然、すでに足を洗った奴に組を任せられないという幹部や、自分がトップになる番だという者もいるのだ。これは穏やかではない状況となる。当のドゥホン自身、戻る気は無いのだし。
もう厄介な奴は消してしまえという事になる。
そこで借金の帳消しを条件にスナイパーとして雇われたのが美少女セビンである。
かつてオリンピック記録を非公式に出した有能な射撃の競技者であった。
この娘、銃器の改造や弾丸も自分で作ってしまう。
塩で出来た弾丸もある(体内で直ぐに消滅してしまう弾丸など。完全犯罪に有効だ)。

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彼女には親友がおりその娘が大きな借金をこしらえたみたいであるが、この辺よく分からない。
ともかく、ギャング相手に借金をしてしまったことで、返済は膨大なものになり、闇社会の仕事を引き受けているみたいだ。
所謂、殺し屋稼業か。便利屋とか言っていたが。

ギャング組織の実験を握っている男は議員として立候補を狙っている。
麻薬を政治の運動資金に変えている男だ。いかにもよくある噺だ(映画では)。
そして独りいつまでもしつこく追い回す凄腕殺し屋がいる。
このキャラも必ずいるタイプだ。
忠実で頼れる男である弟分エックが肝心なところで助けになる。
このタイプも1人は不可欠。でないと主人公が最後までもたない(笑。
そう、そしてセビンが自分を葬る殺し屋であることを知りつつ彼女を救おうとするドゥホン。
渋いヒーローはこれですな、の典型みたいな役。流石に上手いためとても自然だが。

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最後は、ドゥホンを守るためにセビンが自身の作った弾丸で彼を撃つ。
超絶技能で殺したと組織(殺し屋)に見せかけ、国外脱出して、何処かの南国のリゾート地で、ドゥホン、セビン、エックとセビンの妹分の四人でレストランをやって繁盛していた(爆。まあ、セビンのような美女をスナイパーに据えたところで現実味はほぼなくなっているので、良しとしたい。しかしギャングは金持ちだからそこにいつ遊びにやって来るか分からないと思うが、、、。

面白いが結構ご都合主義的なところもあり、特に噺自体に新鮮味は無い。
ソン・ガンホの存在感と演技力、シン・セギョンの果敢なげな美しさで魅せる映画だ。
シン・セギョンが新鮮であった。強いて言えば(爆。




AmazonPrimeにて







*中古



サイキック・キッズ -みえる子供達- 7.8

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psychic kids

2019~

アメリカ

A&E Television Networks


このドキュメンタリーはポルターガイストめいたはったりがなかった為、信頼感を持って観ることが出来た。
しかし霊を祓うのがやけにあっさりしている感をもってしまう。こんなに簡単なのという印象なのだ。
実際彼らの内面ではどんな相転換が起きているのかこちらが分からないだけであろうが。

大概、霊を感じる時は、悪い意志しかないようだ。
だから苦しいはず。自身も悪いエネルギーを帯びてしまっている。
クライアントが体調を崩していることも少なくない。

今回もこれまでと同様に、自分に違和感があり、能力が高まるにつけ、誰にも見えないモノがよりしっかり判り、恐怖や不快感を増している。しかし周囲は理解、共感しようにもその方法が分からない。悪霊が相手ならそれを追い出したいが対処法を知らない。
当人も伝えようがなく、自分の殻に閉じこもってしまう例が多い。日常(学校)生活自体に必然的に困難が生じる。
だが、このドキュメンタリーに出て来る家族には、ほとんどに霊障に苦しむ子供を何とか救って守って行きたいという愛情が窺える。
それは救いであるろう。ちゃんとこの救済番組にも辿り着いているのだから。

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何を置いても基本、居心地の悪さ、不安、恐怖を覚えながらの生活はご免だ。
家の中に「門」が出来てしまっているのが一番厄介らしい。
邪悪で支配的な霊がどんどん入って来ては、たまったものでは無かろう。

それらに支配されない。
霊と向き合いはっきり境界線を引く。
主導権を持つ。

これが肝心となってくる。
わたしも霊ではないが邪悪な連中に対しては、上記の姿勢は基本としたい。
そして霊能者として大切なのは、能力を操れることだ。
確実に霊の影響を受けず霊を退散させること。
これが出来れば、指導者としても活躍できる。
実際に霊が離れた時の感触というものが明瞭にあるらしい。
(身が軽くなり爽快になるそうだ。わたしもそんな感覚を味わってみたい。ホントの解放感)。

災厄と感じられた自分の特性が、それを操ることで自分の武器に代わる。
人助けにも役立つ。
他人の病状、感情、思考の読み取れる子もいる。
上手く使えば、自信と確信に繋がり心強い存在となれよう。
実際に彼らを指導している霊能者はFBIにも協力している。
(失踪者の捜査など)。

psychic kids003

そしてSeason1のepisode8でついに本格的な「悪魔」が現れる。
つまり人間の霊ではなく姿を持たない黒い影だけの強力なエネルギーを持つ悪魔の登場なのだ。
まず指導者として向かったのは、ぺりであったが、家の中を捜査中に弱点を攻撃され、その正体は掴むが対抗出来ない強力な相手であることを悟る。この時同行した撮影スタッフも皆体調を崩し機能できなくなっていた。彼女は相手は悪魔だと謂う。
スタッフにとり過去最凶の敵である。ハナという霊能力のある少女に取り憑いてその後、家自体に憑いてしまったようだ。
この力が強大であるために霊能力を持たない家族にも物理的に影響を及ぼしていた。ハナも階段から突き飛ばされたという。
このままだと捕りこまれてしまう危機的状況も迫っていた。家に入った誰に対しても攻撃をしてくる邪悪な存在なのだ。
ぺりは悪魔学を修めたライアンに指導を引き継ぐことに。

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ライアンも弱点を突かれやっとのことで家中の探査を終わる。
結論は、間違いなく悪魔がとり憑いているというもの(これまでは全て14ケースとも人の霊であった)。
指導者ふたりともこれまで接した相手の中で桁違いの力を認める。
(番組的に凄いのを最後にぶつけて来たね~)。
ハナは自分の能力のせいで家族が巻き込まれたと感じ責任と罪悪感を抱いてしまっていた。
ライアンは彼女にまず自分の能力を封じ、白く光るバリアで卵状に自らを包み攻撃から身を守る技術を伝授する。
これを毎日続けることで、悪魔は彼女にコンタクトが取れぬ上に、白い光によって徐々に力を弱めてゆくという。
その間に、彼女は悪魔に痛めつけられて弱った身体を回復し、機を見てそれを完全に払う準備をしてゆくというもの。
決着は彼女自身が付けなくてはならない。これは教育なのだ。彼女に力を付けるのが目的である。
最後のepisodeだけかなり違うオカルト映画に近いものであった。

出て来る人々が皆優等生なのがちょっと気にかかった。
綺麗にまとまり過ぎな所も、、、でも充分興味深く観ることが出来た。



Season2もあれば観るかも。


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サイキック・キッズ -みえる子供達- 1~6まで

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psychic kids
2019
アメリカ

今日は何を見ようかと迷ったものだが、超常的な現実を観てみたい(蟲師の影響)ということで、これにした。
取り敢えず、1~8のシリーズ物の6まで観る。
流石にこの鑑賞の仕方はキツイ。
(観始めた時間が遅過ぎたこともある)。
一日、一話をじっくり観てゆくのが良い。

ホントに見えるのね。見える人たちには、霊が見えるのだ。
そして方法・技術をしっかり身に付け心構えをもってないとそういう人たちは、身の危険が大きい。
やって来る霊はほとんどが悪霊だからだ。多分そうだろう。良い霊は皆昇天してしまっているだろうし。
厄介なのは、見えるひとにしか見えない為、対処が難しい。

もう感想を書く時間もないが、まだ若い霊能者が霊障に苦しむ子供とその家族を救うドキュメンタリー。
勿論、スッキリした編集によって1話、42分にまとめているが、悪霊のグレードもそれを呼んでしまった子供の個性も皆違い、周囲の理解度の問題も絡み、結構大変なイベントとなるはず。
霊はいるかどうかなどともかく、現に子供が大変苦しんでいるのだ。
そこは手を尽くして救わなければなるまい。

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だが実際、指導者として派遣された霊能者も子供も双方ともに同じ霊を感じ観ることが出来るのだ。
特定の場所を指導者と共に探索し子供の霊能力をテストするが、捉える反応が同じなのには驚く。
施設を昔から管理する責任者に確認すると、報告内容が事実とピタリ符合する。
それを別室でモニタで確認していた両親も驚きを隠せない。と同時に子供の謂う霊の存在とそれが子供をどれだけ苦しめて来たかを認識することとなる。当然、家族の子どもに対する姿勢も変わる。
この親~兄弟に認められ励まされることの重要さが分かるところ。子供は自信を持ち外界に対処できる力を得る。
(中には孤独に耐えかねて霊との関係が深まってしまった子もいた)。

兎角、霊の見えてしまう子供は、変わり者扱いで学校では虐められ、親からも厄介者扱いされていなくともしょっちゅう怯えてパニックになっていれば、家庭を乱す子供という立ち位置で途方に暮れられる。それはある意味、無理もないが、親は何であっても子供の理解者であらねばなるまい。番組の親たちもそうありたいと願う気持ちはあるのだが、現状を打開する策~方法が全く見つからずに手をこまねいて来たのだ。うちの場合は、不幸にも子供を理解する気など微塵もない親であったが(そういう家庭もあるにはある)。

親が子供を助けてと、藁をも掴む思いで縋って来たのが、この番組である。
若い霊能者の指導者たちも皆、10年前くらいにこの番組に助けを求めた者たちだという。
ここで救われ透視力を伸ばし知識・経験を積んで、指導者となった人たちなのだ。
それがまた救いを求めて来た子供を導くという。
良い噺だ。

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ここで、取り敢えず肝心な事と思えたのが、自信を持つこと、である。
これには子供であることから、親が全面的に子供を信じ、励ます姿勢であること。
その自信~自尊心がないと容易に霊に捕りこまれてしまう恐れがある。
(特に孤独で淋しい、自尊心の無い子供が危険となる。霊絡みでなくともそうだ。かつてのわたしがそうであり、親は子供の自尊心を打ち砕くことしかしなかった)。
そしてこの子たちは不可避的に霊が見えてしまい彼らは寄って来ることには変わりない。
その時、はっきりと線が引け、霊を断ち切り生活が出来る方法を持つことである。
皆、指導者直伝の技術で立ち直っていた。やはりプロである。というか何にもプロはおり、頼る時は頼るべきだ。
そして霊と関わることになれば、自分がしっかり主導権を持つこと、である。
これによって、将来自分が指導者として霊障に苦しむ人々を救うことも出来るようになろう。
(番組でも救われた子が将来この能力を活かしてゆきたいと述べるケースは多かった)。

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これを観て、うちも悪霊がとり憑いていたりして、、、という疑念も湧いた(笑。
いや笑い事でもないかも(番組でも笑って対応している子供に指導者が注意を促していたな)。

どんなモノが障っているか分からない。
明日は残りを見て、ケースについても印象的なモノの感想を書きたい。
今日はここまで。




AmazonPrimeにて








KIMI/サイバー・トラップ

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Kimi
2022
アメリカ

スティーヴン・ソダーバーグ 監督
デビッド・コープ 脚本
クリフ・マルティネス 音楽

ゾーイ・クラヴィッツ、、、アンジェラ (データーストリーム音声担当)
バイロン・バウワーズ、、、テリー(彼氏)
ハイメ・カミーユ、、、リバス(エージェントのまとめ役)
デレク・デルガウディオ 、、、ブラッド(アンジェラの企業のCEO)
リタ・ウィルソン、、、ナタリー(技術部門の責任者)
ベッツィ・ブラントリー、、、 KIMI(バーチャルアシスタントAI)
エリカ・クリステンセン、、、サマンサ


スマートスピーカーの導入は考えていたところ、、、。
スマートホーム構想は無い。それをやると人間が堕落し太るだけに思える(爆。

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ヒロインがやってる仕事が、スマートスピーカーと連携しているAIのKIMIの音声認識度のチェックみたいであったが、、、
それを手動で修正しフィードバックしているみたい。えっ?!
普通スマートスピーカーは(Amazon開発のバーチャルアシスタントAIのAlexaがメジャーだが、ウェイクワードだけを保存しているはず)、ここでは、全てのやりとり(広く周囲の音まで)を録音しながらリアルタイムで彼女のような技術者が対応度をチェックしている。
そのデータは全て企業のサーバーにあるみたい。どういうこと?ユーザーのプライバシー無いの?
これ、ありなの?

それをチェックしているうちに殺人事件としか思えない音を室内BGMの中に見出す。
こりゃ大変と思い機器で解析してみるが、間違いなくその場面であることを知る。
その連想する光景が自分の今抱え持つトラウマとも連動するもので居ても立ってもいられなくなる。
企業の上司に電話したり、仕事仲間に相談したり、企業のサーバーに入る為の画策をしたりするのだが、、、ここで入れちゃうのが凄いと言うかセキュリティー大丈夫なのか、、、。
直ぐにFBIに知らせるというのは、ダメなの?

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ともかく、コミュ障で外出恐怖症で更にコロナのロックダウンを経てその症状が進んでいるヒロインが何だか分からぬ薬を大量に忍ばせ、企業の責任者にUSBメモリにコピーしたデータを持ってゆく。噺ではFBIを間に挟んでのやり取りが約束されていた。
大変な決意で外に出たが、外界自体が恐怖でしかない。
ヒトもたくさんいるし、、、もう街を横切るだけでも大変。だが遥かに大変な罠が待ち構えていた。
それにしてもヒロインのマンションはやけにガラス面が多くとても開放的な間取りなのだ。
ヒロインをいつも窓越しに観察している男もいたりして、この部屋で寛げる人には思えないのだが、、、。

しかし企業に連絡した時から彼女の動きは察知されており、エージェントが捕獲の為派遣されていた。
何故か?それはその企業が悪さをしており(この内情は今一つ掴めなかった)、その殺人事件もこの企業による口封じであったのだ。
だからヒロインは飛んで火にいる~状態にある。

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上司は彼女を何とか丸め込みデーターを確認しようとする。FBIを呼ぶ気はもとより無い。
ずっと押し問答が続き上司は彼女を部屋に残し出て行く。何やら忙しなく指示を出し。
歯の痛くなった彼女がトイレに行き鎮痛剤を飲んでいると、メールを打った相手からなぜ消した、と連絡が入る。何らかの動きを探る介入があることを察知した時、遠くから如何にもという感じの黒服の男がやって来るではないか。異変と身の危険を覚えた彼女は逃げ出す。
奴らはデータだけ処分し引き籠りの女を自宅で強盗殺人に見せかけ殺害するつもりであったのだ。

街を逃げる途中で一度捕まるが、デモ集会に紛れていた為、車に連れ込まれたところで、デモ隊に救助されるところは面白かった。
兎も角こういう時はスマフォを持っていることは居場所を教えて歩くようなものだ。
これ専門のエージェントに嗅ぎつかれる。彼女も直ぐに気づき、電源を落とす。だがここで遠隔強制起動がかけられる。
出来るの?と思ったが彼女は今度はスマフォをゴミ箱に投げ捨てる。するとエージェントは、すかさず女が今何処にいるかではなく、何処に向って行くかだ、と謂いそれまで追いながら取り込んでいたメール・通話履歴から数分前にFBIの場所を検索したことを掴む。そしてやって来たところを捕まえる。この辺、流石。参考になった(笑。
捕まえた彼女をマンションのエントランスまで連れて来たところで、向かいのマンションのおデブの男性が彼女に声をかけて割り込んで来る。ここが一番のサプライズであったのだが、何とこの男性、彼女が家を出て行くところを見て、引き籠りが自ら家を出る時は余程のことであり、重大なトラブルに巻き込まれている恐れがあるということで、自らが引き籠りであるにも関わらずマンション前で彼女を見張っていたと、、、。これにはわたしも驚く。しかし彼女を逃がそうとしたその男性は腹を刺される。

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その後も、男性は血みどろになりながら、犯人3人の隙を見て落としたナイフを足で隠し後で反撃もする。
頼れる引き籠りぽっちゃり系である。彼女は、KIMIを上手く使い相手をひるませ屋根裏に逃げ込み、そこで釘打機?だと思うが(コンプレッサー付いてたかどうか)次々に上から3人のエージェントを撃ち殺す。
この男たちITには冴えをみせていたが、肝心のこっちにはどうも詰めが甘く間延びし過ぎなのだ、普通あの太っちょ引き籠りヒーローは直ぐに射殺されているはず。そしてデーターのUSBとダウンロードに使ったノートパソコンも特定したのだから、それを奪い直ぐに彼女も始末のはずが、妙にもたもたしている。KIMIが多少何かしたくらいで天井裏に逃がすのは余りにお粗末。

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その後、彼女は吹っ切れたらしく、晴れやかな笑顔で彼(事件中まるで役に立っていない彼氏)とデートする楽しそうなカットで終わり。きっと難しい顔したカウンセラーとの画面越しの治療より、この一件がリスキーこの上ないが、効いたみたい。自分に起きたかつての暴行犯罪にも重なりその解消に役立つこととなったか。
あの血塗れ男性は助かったのかい?救急車は呼ばれていたからどうにかなったはずだが。
ゾーイ・クラヴィッツが引き籠りなのに薬飲んで奮闘する姿には、共感した(笑。

この映画、危機感を煽る演出が凝っている。何か事件があったとき、突然アイフォンが鳴り響いたり、ビンが床に落ちて割れたり、犯人が襲ってくると思ったら彼女との待ち合わせの男性に過ぎなかったが、その直後に麻酔薬をふいに打たれる、、、などとても効果的であった。量産を続けるベテラン監督らしい熟れた作品だ。



AmazonPrimeにて。
最近、Primeなのに課金されるものがやけに多くなった。












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雨が降って

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蟲師の特別編「日蝕む翳」(2014)も観た。
やはり素晴らしい。スタッフが大したものである。
タイトにこの出来のモノをずっと作り続けられることが、何と言っても恐れ入る。
この作品でも、、、
「話を聴くこと」、「ことばは実現する」、「何事もないこと」に関して考えさせられるものであったが。
流石にもう「蟲師」で引っ張り切れないのでこの辺で終わりにしたい。
噺がどんどんダイナミックに展開して膨らんで行くものではないので、2時間くらいの映画版があっても充分堪能できる世界が描けると思う。
是非そういうものも観たい。

実はその他にも「モノノ怪 」というものも観た。
大変、アートディレクションに凝った作品である。薬屋がモノノ怪退治の主人公であるが、この人自身がグラムロックのアーティストみたいな出で立ちである(笑。サイケデリックなキャラデザイン~作画だけでなく、騙り、所作、物語としての流れにも作品ならではの妖艶な様式美を徹底させていることは分かる。
モノノ怪に相対し薬屋は、「真」「理」「形」を捕らえたところで、はじめて「退魔の剣」が抜けるというもの。
全てがスタイリッシュなのだ。だがその分、自然な流れ~動きの因果関係が掴みずらい。ノイズもない。特にどう祓ったのか肝心な所などよく分からない(笑。顛末などははっきり(説明的には)描かないでこちらに放り出すのは悪くはない。
しかし全体の流れとして演出に気を取られて何がどうなってるのかよく分からぬところはある。独特の世界観は充分窺えた。

その他にもシリーズの一話だけ二作観てみた。それなりに面白かったが、物語の題を忘れた。
観たばかりなのに、全く思い出さない(笑。
内容は雰囲気や印象は残っているが、特にまた続きを観たいと思わないモノはそのまま掠れて消滅するだけか。

ここのところ、インプットばかりが過剰になってしまい、食傷気味であることは間違いない。
創作し出すとブログどころではなくなるかも知れないが、アウトプットは大事である。
ただでさえ、太って来て大変なのだ(爆。

色々な意味で出さないと。
感想も勿論、不可避的に自己表出の一形態であるが、積極的にゼロから捻りだすこともしなければ。
バランス~調和が大事である。
そして「何事もないこと」が一番。
ギンコが何処かで言っていた中道。

さて、今日は良く寝たい。
些か疲れた。




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蟲師 続章 第十一話~第二十話 特別編「鈴の雫」まで観る

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2014~2015

漆原友紀 原作
長濵博史 監督・シリーズ構成
桑畑絹子、伊丹あき、山田由香 脚本
ルーシー・ローズ「SHIVER」OPナンバー

第十一話 草の茵
第十二話 香る闇
第十三話 残り紅
第十四話 隠り江
第十五話 光の緒
第十六話 壷天の星
第十七話 水碧む
第十八話 雷の袂
第十九話 泥の草
第二十話 常の樹
特別編「鈴の雫」

ギンコ(蟲師) 、、、中野裕斗
語り/声、ぬい 、、、土井美加
化野(あだしの) 、、、うえだゆうじ
淡幽(たんゆう) 、、、小林愛


山と命と理の間に流れる約束のなかに、、、

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超低空飛行のなかで観た。
(途中で意識を失うこともあったが直ぐに目覚めていたはず)。
この物語には徐々に馴染んで来た。ギンコに馴染んで来たと謂うべきか。
わたしにはこの世界観、水が合う。

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「光脈」そして「ヌシ」が常にキイとなって展開する。
光脈は、地中深くを流れる、黄金色に光り輝く命の水脈であり、その上に位置する山や村は繁栄する。
しかしそれは進路を変えてゆく。「ワタリ」や蟲師はその状況を適確に掴む者たちだ。
(文化人類学者や地質学者たちのフィールドワークにも重なるところか)。
ヌシは山全体と繋がり、金鉱を保つため統制をとる存在である。
ずっと昔から全ての生き物は命の理の下に生きて来た。ヌシはその約束の現れである、といったことをギンコは述べていた。

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確かにヒトの目には見えないモノ~存在によって支えられているし、まだ知らぬ系も存在するはず。
まだダークマターもダークエネルギーについてもほとんど分かっていない(そもそも何でダークマターとダークエネルギーと分けて考えるのかも分からない(笑)。
この件、どう解明されるのかワクワクであるが、結構ドキドキでもある。
それだけでなく宇宙を生成、制御する重層する流れは確かに感じるところ。

いつどこで繋がるか分からない蟲との邂逅はまさに交通事故であろう。
物語でも同調してそのまま暮らすケースがあるが、同化してしまい人ではないモノになることを決意する場面もある。
ギンコとしては、待っている者がいるところに戻してやることを原則としているようだが。
彼の蟲と同等に人と謂う存在に対する洞察の深さはこの物語の一番の魅力だ。
あの何時も咥えている 蟲煙草(蟲除け)もクール(笑。

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民俗学でも謂われる黄昏時(誰そ彼時)はここではしばしば「おおまがどき」として極めて危うい「場所」となる。
影だけで現世(うつしよ)に現れ影を踏むことで入れ替わってしまう。
ギャングの人攫いもあるにせよ、こんな事態も多くの未解決事件のなかにはあるのかも。
ホントにいつどこでどのように繋がるかは分からないのだ。
何がきっかけであろうと。宇宙線であろうとニュートリノであろうと、、、。

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しかしギンコの采配のクールな所は、、、
蟲による病を治すのではなく、時にはそのまま維持することもアリだと謂うところ。
ちょっと違うものとしてそのまま生きるという事である。
どんな姿となり目の前から消失してしまおうと、その対象を森羅万象の中に認め想い続けなさいと謂うところ、刺さる。

とても印象的であったのは、第十八話 「雷の袂」で、我が子をどうしても愛せない母親と愛情を求める息子との鬼気迫る葛藤を描いたもの。結局、息子は他所の家で育てられることで幕引きとなる。
ここに蟲も何も無い。だが、ホントにどうにもならない理がある。
息子を愛せない母は、どうやっても愛する事など出来ない。

musisi026.jpg

最近とっても疲れてヘトヘト、、、光酒 (こうき)を是非呑みたい。
光脈を流れる、たいそう美味な酒であり万薬の長とされるそうだ。
呑みたい。
とっても呑みたい。

切ない噺ばかりの蟲師のなかでも「鈴の雫」は特に切なかった、、、




U-Nextにて











”Bon voyage.”

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オートマタ
スターシップ9
モーガン プロトタイプL-9
ロスト・エモーション
スローターハウス5
ザ・ドア 交差する世界
メランコリア
アルファヴィル
アンダー・ザ・スキン
不思議の国のアリス
イーオン・フラックス
サリュート7
アポロ13号
シルバー・グローブ/銀の惑星
イカリエ-XB1
アイアン・ジャイアント
アンドロメダ
地球の静止する日
地球が静止する日
宇宙戦争
トランス・ワールド
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