アンドロメダ
The Andromeda Strain
1971年
アメリカ
ロバート・ワイズ監督・製作
ネルソン・ギディング脚本
マイケル・クライトン『アンドロメダ病原体』原作
アーサー・ヒル 、、、ジェレミー・ストーン博士
デヴィッド・ウェイン 、、、チャールズ・ダットン博士
ジェームズ・オルソン 、、、マーク・ホール博士
ケイト・リード 、、、ルース・リーヴィット博士
ポーラ・ケリー 、、、カレン・アンソン(看護婦)
ジョージ・ミッチェル 、、、ジャクソン老人
ラモン・ビエリ 、、、マンチェック少佐
地球の静止する日 ”The Day the Earth Stood Still ”(1951)ロバート・ワイズ監督のSFと謂えばわたしにとって、これである。
色褪せない名作だ。(ちなみに「地球が静止する日」(2006)はリメイク版で、ゴルドベルグ変奏曲が流れるこれも名作)。
「アンドロメダ」については知らなかった。BSに入って来たので観てみた、、、毎度のことである(笑。
(恐らくロバート・ワイズ監督と言えば、もっとも有名な映画は「ウエスト・サイド物語」かなとは思うが。これの感想は書いていないが、見事なエンターテイメントという以外に何が謂えるか)。
墜落した人工衛星スクープ7号に付着した未知の生命体が原因で、赤ん坊とアル中の老人の2人を残し村一つが全滅する。
死体がころころ転がっているのだ。明らかに人工衛星が宇宙から持ち込んだ「病原菌」による事件であることは疑いようのないものであった。
「宇宙戦争」”War of the Worlds”では、火星人が地球のバクテリアに感染して全滅するが、その逆である。
その被害の検証と危険性~伝染(パンデミック)を防ぐ為、各分野の一流の科学者がその地に召集された。
死人の血が直ぐに凝固して傷をつけた腕から血液の粉末がさらさら砂みたいに落ちるところなどインパクトは大きい。
「科学的な危機を正確かつ客観的に記録した報告」という体裁をとっている為、ドキュメンタリー風に描写しているのが一番の特徴である。わたしは始めの頃は、本当にあった事件かと疑いつつ心細い気持ちで見ていた(笑。勿論、DNA構造とは全く別種の結晶構造による緑の生命体が出てからフィクションであることに安心したのだが(爆。
だが、アンドロメダ菌株の増殖など、その光具合の演出で終始不気味で不安な基調は維持されていた。
また、この時期特有のSF画像の質感が何とも言えない郷愁に染まる。
レトロなテクノロジーが何ともくすぐったい感覚だ。
特にコンピュータであり、そのパネル表示などたまらない。表示ドットの粗さがまた良い。
ジージー音を立てて印字するプリンタも、ランプ類もスウィッチもしかり。
今なら、空中に現れる透明パネルを指でスクロールなどしながら入力したり確認したりとなるところだが。
しかしディテールはしっかりしている。
全てが堅牢に作られていて話し共々重厚である。
まずワイルドファイア地下研究施設入構時の何重にも渡る厳格な「防疫・滅菌手続き」を漏らすところなく丁寧に追って行く。
非常に詳細かつ説明的な描写なのだが、それが一貫して全般に行き渡っている。
前半は施設の全容やシステムを明かす(原爆の自爆装置が自動で作動することが大きなポイントである)が、どうにも禁欲的で派手さのない内容なのだ。しかし、石に付着した緑の生命体を特定したところから、かなりの緊迫した展開となる。
アンドロメダ「菌株」の正体を探り、それを無効化する対策を練って行く4日間の過程は、事件やアクションはほとんど無いにも拘らず充分にサスペンス要素もあるスリリングなものであった。
科学者全員には明かされていなかったようだが、スクープ7号は、宇宙空間の微生物を回収して生物兵器を作り出す軍事目的で運用されていた。この辺はある意味、お約束かも知れないが、冷戦下であれば、このような思惑も必然であるか。
結局、ふたりの生存者の状況観察と、アンドロメダ菌株に対する培養実験など様々な実験観察、それを元にしたコンピュータシュミレーションなどからアンドロメダ菌株は狭いpH領域において生存~増殖可能である事が解明される。
強い酸性(アル中のおやじ)か、強いアルカリ性(赤ちゃん)であれば助かるというのだ。
う~ん、、、。
感染した科学者が一生懸命、速い呼吸をしていたのが、何とも言えない。
それから、赤いアラートの光を見て癲癇発作を起こす紛らわしい細菌学者もいたりして、伝染と間違え混乱を呼ぶなどとてもリアルなシーンもあった。
アンドロメダ菌株の無害化に彼らは成功する。
取り敢えず、その時点で一件落着ではあるのだが、伝染が施設内に感知された為に自動で自爆装置が作動してしまう。ここで原爆が起きれば全世界に息を吹き返したアンドロメダ菌株が勢いよく広まってしまう。というところで、危険を冒して科学者が自爆装置の解除に身を張って挑む。ここがほぼ唯一のアクションシーンであるか。
レーザー光線を受けてよろよろになりながら、なかなか頑張る。
自爆8秒前に停止。
施設内の人間は誰も死ぬことのない、ほぼ実験観察のみで130分を超すスリリングな時間を提供する硬派のSFであった。
この緻密で律義な描き方からして、ロバート・ワイズという監督、非常に真面目な人ではないか、と感じた。