ジオストーム
Geostorm
2017年
アメリカ
ディーン・デヴリン監督・脚本
ジェラルド・バトラー ジェイク・ローソン(ダッジボーイ開発者)
ジム・スタージェス マックス・ローソン(ジェイクの弟、ダッジボーイ管理責任者)
アビー・コーニッシュ サラ・ウィルソン(シークレットサービス)
エド・ハリス レオナルド・デッコム(アメリカ合衆国国務長官)
ダニエル・ウー 、、、チェン・ロン(マックスの友人、科学者)
アンディ・ガルシア、、、アンドリュー・パルマ(アメリカ合衆国大統領)
タリタ・ベイトマン、、、ハンナ・ローソン(ジェイクの娘)
アレクサンドラ・マリア・ララ、、、ウーテ・ファスベンダー(国際宇宙ステーション司令官)
一瞬「磁気嵐」かと思ったらそちらではなく「地球嵐」とでも呼べるか、地球規模の大嵐というか自然災害のようだ。
この大災害が飛んでもない野望による人災であり、それをギリギリのところで食い止めるパニック映画である。
ストーリーが細かいところまでよく出来ており、迫力ある描写にグイグイ惹きつけられる久々の傑作であった。
2019年に途轍もない気象異常により大規模な災害が起きた、というところから始まる。
(ちなみに説明のナレーションは早熟の才能を示す科学者ジェイク・ローソンの9歳の娘である)。
その気象異常をコントロールするための人工衛星を張り巡らせたシステムが構築されダッチボーイと命名される。
ダッジボーイによって地球の気象は落ち着き安定した気象コントロールと運用がなされていた。
「インデペンデンス・デイ」(ローランド・エメリッヒ)同様、金のあるアメリカと中国がここでもリーダーシップを取っている。
ところが、2022年アフガニスタンで突然、一つの村が住人ごと凍り付いてしまう。
ダッジボーイの不具合が原因か、、、ということで一次は上層部に盾をついて管理者をクビになったジェイクがステーションに呼び戻される。この時、彼の弟マックスが総責任者に任命されており、発明・開発者の兄はその部下という立場となる。
その後立て続けに、あり得ない衛星の誤作動・暴走が見られる。
インド ムンバイでは巨大な竜巻が次々に発生。
香港では、異常な気温上昇からガス管が爆発、竜巻が発生してビルも倒壊。科学者チェン・ロンがその原因に迫るが、ゼウス計画と言い残して、何者かに殺される。このことから マックスはホワイトハウスを疑う。兄も同様に政府の中枢にいるものを疑う。
東京では銀座の惨劇が映される。ゴスロリの少女もいて描写は細かい。大きな雹に見舞われバスが潰されたりしてゆく。
リオデジャネイロでは、異常な気温低下で、人、鳥、飛行機等がたちまち凍結してしまう。
ロシアでは、熱レーザーが発射され雪や氷が溶け火災に包まれる。
アメリカでは、落雷が続き甚大な被害が広がる。等々、、、。
これらのVFXは実に激しく迫力と臨場感に富んでいる。
街の破壊、倒壊スケールも「インデペンデンス・デイ」と互角。
この監督、ローランド・エメリッヒ監督に感性や思想が近い人かも知れぬ。
と思いきや、「インデペンデンス・デイ: リサージェンス 」の製作・脚本家でもあった。
道理で。この人が寧ろブレインか。
権限を持つ層からの衛星へのアクセスがことごとく巧妙にブロックされていたことから 内部の中枢にいる人間の仕業であることがはっきりする。任務にあくまでも忠実なシークレットサービスのサラ・ウィルソンも事の重大さを認識しマックス~ジェイクに協力することとなる。この女性、車の運転と銃撃戦に素晴らしい腕を見せつける。
気象を自在に操れるのなら強大な武器に転用できる。
それは、今回のように誤作動に見せかけ忍ばせたウイルスによるゼウス計画の試行で破壊力は充分に確認された。
アメリカは近日中にダッジボーイを国連に明け渡すことになっていたのだが、自国の利益~軍事利用の為にそれをさせないように画策したのだ。最高位の機密情報にアクセスできる人間は限られてくる。
それは誰か?
気象コントロール衛星網~ダッジボーイを現在停止できるのは、大統領ひとりしかいないことが分かる。
大統領の手と瞳が無ければ停止命令が出来ない生体認証システムであった。
そのことからジェイクは大統領の陰謀であると考える。
しかしそれを最も大統領に近く、彼らの理解者でもあったはずのレオナルド・デッコムにマックスが打ち明けた途端、彼を殺害しようと牙を剝いて来るではないか。
実は国務長官が国家転覆とアメリカによる世界征服を企んでいたのだ。
(もう既に歴史に例を見ない大量虐殺犯である)。
この突飛な筋書きが映画の中ではとてもスムーズに説得力をもって明かされ緊張感タップリに展開されていた。
結局、ステーション内のプログラミング担当の男が多額の金で雇われ、ウイルスを感染させ全ての衛星をゼウス計画にのっとった作動をさせていたのだ。そして最終的にジオストームを地球に起こす。だが、それも全的崩壊させては意味がない。そこを反逆者たちはどう考えていたのかは、映画の中では分からない。つまりどの程度のコントロールをするのかその計画の詳細は明かされない。ジオストームというのが恐らく造語であろうことから、どれ程のものを指すのかが前提としてイメージしにくい。
大統領たちは、デッコムらの妨害追跡を逃れて無事、生体認証により衛星機能を停止する。だが、ステーションに仕組まれた自爆システムのカウントダウンは止めることは出来ず、そこでだれかが残りシャットダウンされた衛星システムの再起動をしなければならない。
自爆するステーションに残り、気象コントロール衛星を再起動するジェイクとウーテ。
正常に再起動させることでウイルスは消え、元の機能が戻るが、ステーションの方は予定通り爆発してしまう。
二人は宇宙服を着て一か八かでスペアで残っていた衛星に乗り込み、救援信号を出して運を天に任せ漂う。
最後に彼ら英雄二人を救出しに来るのがメキシコからのスペースシャトルであった。
こんなところも「デイ・アフター・トゥモロー」(ローランド・エメリッヒ)みたいだ。この映画ではアメリカ南部の人間はメキシコに難民として受け入れてもらい、アメリカ臨時政府もメキシコに置いている。
今回の子役タリタ・ベイトマンもこれからが楽しみな女優である。
キャストも全て申し分なし。
この映画は充分パニック映画としてよく出来ていた。
夏場にスッキリする映画である。
」