N郎♪'s Cafe 911、そしてそれからの世界
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マイケル・ムーア編 『華氏911の真実』
華氏911の真実華氏911の真実
戸根 由紀恵、落石 八月月 他 (2004/11/30)
ポプラ社
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ドキュメンタリー映画『華氏911』の公式ガイドブックである本書は、映画のシナリオ、内容の裏付資料、観客・著名人からの反響、評論家による映画評、ジャーナリストによる映画の論点を掘り下げた記事の五部構成となっている。

観客・著名人からの反響では、共和党支持者であるが、映画を観てブッシュ大統領への評価が180度変わったというような手紙が多く掲載され、この映画の米国内での反響がいかに大きかったがわかる。監督のマイケル・ムーア自身が編集し、ブッシュ再選を阻止するために出版された本書であるが、そういったことを差し引いたとしても実際に映画の衝撃と影響力は相当なものであったと思われる。

ジャーナリストによる記事では、イラク戦争の大義名分となった「大量破壊兵器の存在」や「アルカイダとイラクの関係」がいかに根拠がなく、無理やりでっちあげたものであったかが記述されている。それらの情報をよく知りたいと思う人には格好の解説となるであろう。

本書を読んでいて一番びっくりしたことは、マスコミの影響力と選挙への無関心について、米国と日本があまりに似ているということだ。選挙の投票率が異常に低かったり、マスコミが翼賛的な報道しかしなかったりと、日本だけの特種な現象かと思っていたが、米国も同じような状況だということを知り、驚いた。しかし米国にはムーアがいて、映画も大ヒットした。日本で起こりうることだろうか???

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●リンク:マイケル・ムーア監督 『華氏 911』

| 911、そしてそれからの世界 | 22:00 | トラックバック:2コメント:0
中日新聞・東京新聞取材班 『テロと家族』
テロと家族 テロと家族
中日新聞東京新聞取材班 (2002/09)
角川書店

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最近読んだ中で最も重く、そして辛い内容であった。本書をめくるたびに鎮痛な気持ちとなり、深刻な気持ちにならざるおえなかった。しかし本書がより多くの人に読まれることを切に願う。

9.11米中枢テロの犠牲者となった被害者家族、そしてそこから派生していったアフガニスタン空爆、パレスチナ、イスラエルと、家族を殺され、絶望的な状況のまま人生を破壊されていった多くの家族の悲しみと怒りの声を取り上げていったものだ。2002年に中日新聞・東京新聞に連載された内容に加筆されたもので、連載当時の反響は大きかったという。

日本編、ニューヨーク編、アフガン編、中東編の四部構成となっている。9.11の直接の犠牲者となった日本人家族、逆に9.11から派生したヘイトクライムにより一家の大黒柱を殺された米国のパキスタン人家族、米国の空爆により、家族の大半を失い、五体を欠落されて残されたアフガニスタンの家族、タリバンの兵として殉教者攻撃に向かう息子を持つ家族、9.11の容疑者とされながら消息を絶った息子の無実を信じるアラブの家族、イスラエル兵の殺戮に目の前で息子を殺されたパレスチナの家族、そして最後は逆に家族を殺され、日々怯えて暮らすイスラエルの家族・・・。

敵・味方、殺す側の国・殺される側の国といった枠組みを超え、家族の大切さ、家族の絆は変わることがない。9.11にWTCに飛び込んだジェット機の乗客として、妹と母を失った米国の家族の次の言葉がすべてを言い表していると思う。

「私が一番愛し、信じているのは家族です。テロリズムは、家族の愛までは壊せない。そしてテロリストにも、アフガニスタンの犠牲者にも、みんな家族がいる。彼らだってそれぞれ家族の一員だと気づいたんです」

本書を刊行した中日新聞・東京新聞取材班には最大の賛辞を贈りたい。このような企画、取材こそが本来のジャーナリズムのあるべき姿ではないかと思うのだ。日本のジャーナリズムが死に絶えたわけではないということを雄弁に物語っていると思う。


| 911、そしてそれからの世界 | 23:59 | トラックバック:2コメント:2
ノーム・チョムスキー 『9・11 アメリカに報復する資格はない!』
9・11―アメリカに報復する資格はない! (文春文庫)9・11―アメリカに報復する資格はない! (文春文庫)
(2002/09)
ノーム チョムスキー

商品詳細を見る

言語学者ノーム・チョムスキーの9.11発生直後に行われたインタビューをまとめたもの。彼の視点は明確であり、偏見に曇ることなくフェアであるがゆえに、その発言に驚かされてしまうことが多い。例えば以下のような発言だ。

「世界の大半において、米国が、充分な根拠をもって「テロ国家の親玉」と見なされている事実を認めるべきである。例えば、1986年に米国は国際司法裁判所で「無法な力の使用」(国際テロ)の廉で有罪を宣告されたうえ、米国だけが、すべての国に国際法遵守を求める安全保障会議の決議に拒否権を発動した」

このような事実に基づいた極めて真っ当な意見に驚いてしまうということは、逆にいうと、我々が日々接しているマスメディアの視点がいかにアンフェアで偏ったものであるのかということだ。9.11については誰でも知っていることだろう。しかしレーガン政権下で米国がニカラグアにしてきたこと、クリントン政権下でスーダンのアル・シーファ工場を爆撃し、その結果どれだけ多くの罪なき命が奪われることとなったか知っているだろうか?その工場はスーダン国民が薬品を手に入れるための命綱であった。(詳細については以下のサイトなどを参照していただきたい。)

●リンク:チョムスキーの「反テロ戦争」批判

マスメディアによって情報が選別され、不都合な事実が広まることが抑制され続けているからこそ、受け手の偏見は偏見のまま解消されることがない。日本の侵略について、いまだに中国や韓国で怒りが渦巻いていること、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する決議案を可決したことなど、多くの日本人は「何のこっちゃ」と違和感を持っていることであろう。しかしその違和感は、不都合な事実が広まることをマスメディアが抑制してきた結果でもあるということを我々は知るべきだ。日本が近隣諸国でしてきたこと、そして現在までの日本の状況をよくみてきた人であるならば、ある人が「違和感」と感じていることを、当然の結果として受け止めていることだろう。

彼はまた、「テロ」という言葉について、次のように述べている。

私は「テロリズム」という言葉を米国の正式文書に定義されている通りに理解している。「政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖を染み込ませることによって行われる」この -どこからどこまでも至当な - 定義に合致する、最近の米国への攻撃は、紛れもなくテロ行為であり、事実、人に恐怖感を起させるテロ犯罪である。

そしてさらにその言葉が、通常は恣意的に使われてばかりいることにズバリ言及している。

 テロと言う言葉について言えば、米国の正式文章から引用した字義通りの意味と並行して、プロパガンダ的な使い方もある。残念なことに、こちらのほうが標準的である。敵によってわれわれあるいは同盟国に対して行われたテロ行為を指すのに使われる。こうしたプロパガンダ的な使い方が事実上、普遍的なのだ。万人が「テロを非難する」のはこの意味である。ナチですら、テロを厳しく非難し、彼らが「対テロリズム」と呼んだ作戦行動をテロリストのパルチザンに対して実行している。


余談ながら、本書の最期には付録として「世界のテロリスト集団」という、米国国務省の報告が掲載されている。2001年10月の報告書の中で、世界のテロ集団28団体の中に日本のオウム真理教が含まれていることに驚いた。米国国務省が認定しているということは、当然CIAなども認識しているということなのだろう。


| 911、そしてそれからの世界 | 00:17 | トラックバック:1コメント:0
ジム・ドワイヤー、ケヴィン・フリン著 『9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言』
9・11生死を分けた102分  崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言 9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言
ジム・ドワイヤー、ケヴィン・フリン 他 (2005/09/13)
文藝春秋
詳細

本書は超高層ビル内でその日を体験した多くの証言によって構成されている。直接の体験者でなければ語れぬ悲惨な状況に、次の展開が気になるのと同時に、読んでいてかなり辛くなった。

北ビルへの最初の航空機突入。燃え盛る上層階から逃げ場を失い、苦しさに耐え切れず自ら飛び降り死んでいく人たち、それを目の当たりにする人々。そして予想だにしない2機目の南ビルへの突入、動かないエレベーター、塞がれた避難階段、崩壊する南ビル、救助作業に疲れ果て、南ビルの崩壊を知らないまま北ビルで休息している消防隊、続いて崩壊する北ビル・・・。

表紙写真にあるように、ビルの中、特に高層階は地獄絵さながらであり、救いがない。本当に悲惨なことだと思う。

・・・しかしこれだけ綿密に取材し、年月をかけてたくさんの証言を集め、高い完成度を誇りながらも、読後、本書に対して疑問を抱かずにはいられない。世界貿易センタービルの当時の清掃員であり、事件後英雄となったウィリアム・ロドリゲスの証言にあるように、北ビルに航空機が突入する前に地下で爆発があったという証言がまったく掲載されていないからだ。他の階でも爆発があったというようなビル崩壊の原因に対する疑惑についても何一つ言及されていない。建築構造が火災にもろいものであったということは何度も言及されている。

これらが意図的なものであるかどうか定かではないが、少なくともこの本だけを読んでいるならば、ビル崩壊の原因に対して疑問を抱くことはないだろう。内容の完成度が高いだけに、高度なレベルでクエスチョンマークのつく本でもある。

| 911、そしてそれからの世界 | 00:44 | トラックバック:0コメント:0
マイケル・ムーア監督 『華氏 911』
華氏 911 コレクターズ・エディション 華氏 911 コレクターズ・エディション
ドキュメンタリー映画 (2004/11/12)
ジェネオン エンタテインメント
詳細

様々な評判のわりには極めて真っ当なドキュメンタリ映画だった。よく出来ていると思う。

どのシーンが最も印象に残ったか?・・・そう訊かれたら、米国の攻撃で悲嘆に暮れるイラクの一般市民、我が子を戦場で失った米国の母親の嘆き、そういったシーンを選ぶだろう。

マイケル・ムーアが胡散臭いとか、そういった理由でこの映画を最低評価するような感想を見かけることがある。しかし、そういった人たちはこの映画の一体どこを観ているのだろうか?人の心があるんだろうか?・・・そんな疑問を感じざるおえないぐらい真摯な内容であり、最低評価を下している側にこそ胡散臭さを感じてしまう。米国人で盲目的な共和党支持者というのならまだ意味はわかるが。これは正当な評価であり、それ故にカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したのであろう。

5月の浦和での憲法集会の際、ジャーナリストの堤未果氏は、米軍のスカウトが貧しい若者を米軍に呼び込む手口について語っていたが、まさにその映像が記録されていて興味深かった。まったく堤未果氏の話のとおりであった。

米国の格差社会や戦争の構造が極めてわかりやすく凝縮されており、一つの作品として完成度は高い。一度観てみるべきだと思う。


| 911、そしてそれからの世界 | 00:41 | トラックバック:0コメント:0
芝生瑞和 著 「テロリスト」がアメリカを憎む理由
「テロリスト」がアメリカを憎む理由 「テロリスト」がアメリカを憎む理由
芝生 瑞和 (2001/11)
毎日新聞社

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2001年9月11日に発生した米国中枢テロ。その背景にあると思われる中東情勢について、極めてわかりやすく書かれた本だ。シオニズムから始まり、英国が中東にしてきたこと、イスラエルの成り立ちと米国との関係、そしてオサマ・ビンラディンの登場・・・漠然としか理解していなかった中東の歴史についてかなりクリアに理解することが出来た。

筆者は「テロリスト」という呼称について、敢えて「」をつけて表現している。”ある人にとっての『テロリスト』は、他の人にとっては『自由の戦士』だ”・・・ロイターの国際ニュース責任者ステファン・ジュークスの言葉を借りて解説しているように、「テロリスト」という呼称は、権力によって極めて恣意的に使われ続けてきた。「テロ」との闘いを標榜する米国の大統領が、実は世界最大のテロを行い続ける最高責任者であるという倒錯した現実を目の当たりにしている今、極めてフェアな視点であると思わずにはいられない。逆にいうと、マスメディアによって日々垂れ流されている情報が如何にアンフェアなものであることか・・・。

あとがきの日付は2001年10月26日となっている。9月11日から40日強しか経っていないにもかかわらず、これだけわかりやすくまとめられた本が刊行されたということに驚きを覚える。2年前に他界した著者の芝生瑞和氏について、日本社会は大きな人を失ったと思わずにはいられない。

| 911、そしてそれからの世界 | 02:11 | トラックバック:0コメント:0
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Author:N郎♪
秋葉原・ドットドット秋田犬など、東京、埼玉中心に活動中。他ロックバンド・アウフヘーベンのボーカリスト。配信番組Spotifyポッドキャスト『N郎♪ MusicHourハイビスガーデン3』
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