2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16137
東京湾と伊勢・三河湾の貧酸素水塊への気候変動の影響を明らかにするため,陸域淡水・汚濁負荷流出-海域流動・水質・底質モデルを用いた予測シミュレーションを行った.RCP8.5の中でも昇温傾向が強い将来気候では,表層水温が3~4℃程度上昇し,夏~秋の高温化による一次生産の低下は海域の水温に応じて東京湾内湾部,伊勢湾,三河湾の順に大きくなることが示された.貧酸素水塊の増加はその逆の順となり,一次生産の低下が顕著な三河湾では現在気候よりもRCP8.5の方が貧酸素水塊体積は減少した.さらに,陸域負荷管理による貧酸素水塊の抑制効果を評価したところ,DO < 3 mg/Lの水塊には効果が認められたが,DO < 4 mg/Lの水塊については負荷削減のみでは抑制が難しい海域が存在することが示唆された.