順番に説明しますので長文です。悪しからず。
電脳化することが一般的になるにつれ、
「電脳硬化症」という新たな不治の病が現れました。
この病気の特効薬となりうる薬を、村井という薬学博士が作ったのですが、
「村井ワクチン」を一般に使用するには厚生労働省の認可が必要です。
当時、認可する審議部のトップにいたのが今来栖で、村井博士の同期でした。
村井博士の偉業に嫉妬心を覚えた今来栖は、
右から左へ「認可」のハンコを押すだけだった審議部において、
わざわざ「不認可」というハンコまで作らせて、村井ワクチンを不認可にします。
しかし、電脳硬化症を治療する手段は必要だったので、
マイクロマシン療法を開発中で、認可の申請をしていたいくつかの会社から、
一番ぺーぺーだった「セラノゲノミクス社」を選び、
セラノ社が開発した医療マイクロマシンを申請からたった3日で認可します。
それを期に、セラノゲノミクス社は電脳硬化症治療の大手として発展します。
一方、自らのワクチンが認められなかった村井博士は失意の中、亡くなります。
それから幾月かたったある日、凄腕ハッカーだった少年アオイが、
ネットを探索中にある送信エラーメールを見つけます。
それは、村井ワクチンとセラノ社のマイクロマシンの効能比較と、
認可に関する顛末をまとめた告発文でした。
世の不条理さに義憤を覚えたアオイは、セラノ社に情報公開を求め脅迫。
さらに社長セラノ氏を誘拐し、
「自社のマイクロマシンは電脳硬化症に効果がなく、村井ワクチンには敵わない」
と、セラノ氏自身の意志で発表するように迫ります。
電脳を支配され、3日間体の自由が利かなかったセラノ氏は疲れ、
つい了承するのですが、いざ自由になると、約束を破り立ち去ろうとします。
アオイも拳銃で脅迫したのですが、TVカメラに映ったため逃亡します。
「おでかけ天気予報」の中継に映ったのがそれです。
TVに顔が映ったので逃亡したアオイですが、彼は超凄腕ハッカーだったので、
TVカメラはおろか、その場にいた目撃者全員の電脳をハッキングして、
自分の顔を、コーヒーショップのロゴをまねたマークで上書きします。
このマークが笑い顔だったため、
どこからともなく彼のことを「笑い男」と呼ばれるようになりました。
一度は約束してくれたのに裏切られたこと。
さんざん正義感に駆られて行動しても何も出来なかった。
この失意から、アオイはこの事件に関わることをやめ、姿をくらましました。
しかし、このことを利用して金をせしめようと考える一派が現れます。
「笑い男」を騙って大企業を次々脅迫し、妨害工作を行ったのです。
妨害工作と言っても、イスを笑い男マークに並べるとか、
ミステリーサークル的に模様を描くとか、子供じみた嫌がらせですけど。
しかし嫌がらせの影響で、脅迫された企業は売上げが落ち、
最初に脅迫されたセラノ社を含め、経営不振に陥ります。
経営不振に陥った企業には公的資金が投入され、業績は回復します。
なぜかセラノ社には投入額が少なかったのですが…。
この一連の脅迫劇を演じたのは、実は警察のトップでした。
「公的資金を投入する代わりに、裏金をよこせ」と企業に命じていたのです。
それによって、警察上層部と繋がりのある政治家達は、莫大な利益を得ます。
特に厚生大臣だった薬島(元海上幕僚長)が一番がっぽりと。
セラノ社に公的資金が回らなかったのは、
自分たちが根回しした脅迫劇の被害者ではなかったからです。
事の発端である「笑い男」の正体を知るセラノ氏に、
うかつに本当のことを話されると困りますので、
彼を「笑い男事件はまだ続いているので護衛します」という名目で軟禁。
その監視のために、隠しカメラ代わりに、
目で見た映像を外部に出力する「インターセプター」というマイクロマシンを、
護衛に付いていた警察官達の目に仕込みます。
警察官の目を通してセラノ氏は5年間監視され続けました。
そして5年後のある日。
未だに解散していなかった「笑い男事件特捜部」にいた山口刑事が、
偶然入手した不自然なスナップ写真からインターセプターに気がつきます。
インターセプターでのプライバシー侵害行為は禁止されていたので、
警察内部(特に上層部)に何か裏黒い事態が起きているのではないかと察し、
かつての同僚で仲が良かったトグサに相談しようとします。
しかし、そのことに気がついた上司により殺されてしまいます。
山口はもしもの時のことを考えて、疑惑のスナップ写真を自宅に郵送。
同封されていた言づてにより、彼の葬儀に現れたトグサに写真は手渡されます。
レンズの映り込みがないことから、視覚情報を出力したものとトグサ気がつき、
そのことをネタに、警察上層部に真相を開示するよう9課が働きかけます。
しかしあくまでもシラを切ろうとする警察は、
謝罪会見を開き、警部補が個人的にやったことだと幕引きを図ります。
この会見中継を見ていたアオイが、腹立ち紛れに長官襲撃を予告。
会見に出ていた警察幹部の口を使って、今度こそ真実を言えと脅迫します。
世間は「笑い男、再降臨!」とフィーバーしました。
そこで警察は、「笑い男」役としてナナオAというハッカーを仕立て上げ、
彼に長官のSPの電脳をハッキングするウィルスを作らせます。
同時に捜査員には彼を良き所で捕まえ、「笑い男逮捕!」で終幕予定でした。
9課長荒巻はこれらを警察の自作自演だと考え、
ナナオAの監視命令を出します。現場の刑事達も一緒です。
素子は全てがそうとは思わず、パズ、サイトーと共に、長官の護衛に付きます。
かくして長官は、ウィルスに感染したSPに予定通り襲撃されますが、
「自分が笑い男だ」「笑い男の啓示を受けた」「俺がやらないと」と、
中継での「笑い男」再出現に感化された者が次々と現れ、現場は大混乱。
いつの間にか「笑い男」は特定の人物のことではなく、
偶像というか、思想。宗教になってしまっていたのですね。
そのことに驚いたアオイは、再び逃亡。
一方、ナナオAは「偽・笑い男」であることがバレないように、
張り込みの刑事とは別の、糸を引いていた刑事の手によって殺されます。
警察からのアプローチを諦めたアオイは、
今度は村井ワクチンを不認可にした張本人、今来栖を誘拐&脅迫します。
厚生労働省の書庫から「村井ワクチン接種者リスト」を盗みだし、
その中に今来栖本人の名前があることを利用して。
さらに、リストを薬害被害者救済NPOひまわりの会に送付し、
そこからも真実が世に出ることを期待します。
地道な捜査からひまわりの会と接触したトグサは、リストを入手。
今来栖が関わっていることを知り、9課は彼の確保に向かいますが、
厚生省直轄武装組織のマトリ(麻薬取締強制介入班)と戦闘になり、
今来栖は殺されてしまいます。
戦闘で義体を損傷した素子は義体換装に望みますが、
技師に扮したマトリの残党にはめられ危機に陥ります。
そこにアオイが現れ、素子を救うのと同時に記憶を残し、去っていきます。
記憶を得た素子は、アオイに成り代わって、「笑い男」としてセラノ氏に接触。
今度こそ事の真相を明らかにする約束を取り付けます。
しかし、その様子をマスコミに撮られてしまい、
「笑い男」の正体が素子だと報道されてしまいます。
表向きには存在しないことになっている9課のことも明るみに出てしまいました。
これでは、この事件が終わっても、今後色々とやりづらくなってしまいます。
そのため、荒巻は総理大臣と裏取引をし、
「9課はクーデター考えてる悪者でした」という建前で9課を壊滅させ、
その代わりに、薬島の身辺調査をさせることを約束させます。
総理大臣に責任が及ばないようにするという建前で。
これは荒巻と内閣閣僚でとりきめた綿密な作戦だったのですが、
内務大臣が先走ってしまったため、
薬島の耳にも届き、1刻の猶予もなくなってしまいました。
そこでとりあえず扱いづらいトグサを拘留。
他の9課の面々は、死線をくぐり抜けてきた元軍人ばかりですから、
死にはしないと信じて、襲撃の中に放置しました。
結局は全員拘束されてしまいますが、
拘束の段階では作戦であることが通達されていたのでしょう。
逃げおおせた素子以外は、すんなり釈放されています。
作戦通り、表向きにはテロ集団9課は壊滅、
捜査が入った薬島は後退を余儀なくされます。
そんな作戦を全く知らなかったトグサが、
「薬島の悪事を暴いたのは9課だぞ! 手柄を横取りしやがって!!
真相を明らかにしてやる!!」
とモヤモヤして、かつてアオイがやったのと同じ事をしようとし、
党本部まで行った所を、尾行していたバトーが止め。
新9課本部でメンバーと再会、真相を知ります。
その後、薬島の裁判にて、事の真相を証言することが決まり、
セラノ氏は約束が果たせると清々しい気持ちでいましたが、
車に仕込まれた殺人マイクロマシン(?)により殺されてしまいます。
その仕込みをしたのは、「笑い男事件特捜部」にいた深見。
山口の死について、トグサと喫茶店で親しげに語った男であり、
長官襲撃事件の犯人として偽笑い男を演じたナナオAを殺した男です。
まだまだ警察・政治家の中に闇は残っていることを示唆しつつ幕引き。
一連の顛末はそんな感じです。
長くてすみません。短くできないほど複雑なのが「笑い男事件」なのです。