お魚に似て‥‥
小さい頃の私は、ふくれた輪郭に間隔の開いたちいさい目、大きな口で、ポニョのような顔をしていた。女の子バージョンではなく魚バージョンの。対する兄はつぶらな瞳、ちいさな口に卵形の顔で、会う人ごとに「ユズルちゃんは可愛いわね~、お父さんそっくりでハンサムね~」と言われていた。兄の横に立っている私にふと気づいて、慌てて「みっちゃんは‥‥‥」。先が続かない。「魚にそっくりでビジンね〜」では無理があり。また気まずい思いをさせてしまった、と私は反省するのだった。その女性たちは、父のファンだった。
それで私はすんなりと自分はブサイクなのだと信じて育った。これはもう、美ではなく芸を磨くしかないと諦観してその道に励んだ。ファンデーションやマスカラなぞ30代の終わりまでつけてみたこともなかった。だから最近になって「いや、お前は可愛かったぞ」と父や兄に言われてびっくりしたのである。
当時私たちはニッポンのど田舎、富山県に住んでいた。しかも1960年代の話だ。男はおだて、女は潰す。その姑文化のど真ん中に身を置いていたのだ。そういう場所で女の人たちに言われた事には眉にたっぷりツバをつけて聞くべしなんて、コドモの私は知らなかったので、やすやすと暗示にかかりブス街道を邁進した。
ところでポニョを知ったのは去年のことで、知人に「シカさんってポニョに似てるよね」と言われてググってみたら、本当に似ていた。つまり今でも似ている。兄は、卵形がピーナツ形に進化し、髪が薄くなり、なんか人の良さそうなフツーのオヤジになっている。
それで私はすんなりと自分はブサイクなのだと信じて育った。これはもう、美ではなく芸を磨くしかないと諦観してその道に励んだ。ファンデーションやマスカラなぞ30代の終わりまでつけてみたこともなかった。だから最近になって「いや、お前は可愛かったぞ」と父や兄に言われてびっくりしたのである。
当時私たちはニッポンのど田舎、富山県に住んでいた。しかも1960年代の話だ。男はおだて、女は潰す。その姑文化のど真ん中に身を置いていたのだ。そういう場所で女の人たちに言われた事には眉にたっぷりツバをつけて聞くべしなんて、コドモの私は知らなかったので、やすやすと暗示にかかりブス街道を邁進した。
ところでポニョを知ったのは去年のことで、知人に「シカさんってポニョに似てるよね」と言われてググってみたら、本当に似ていた。つまり今でも似ている。兄は、卵形がピーナツ形に進化し、髪が薄くなり、なんか人の良さそうなフツーのオヤジになっている。