ごちゃごちゃ入れすぎ
日本の家庭料理は品数が多く手がかかっている。私の住んだことのある国ではどこも、日本ほどいろいろ作る家庭にお目にかかったことがない。パスタ、スープ、グラタン、ローストやステーキなど一品か、副菜があっても芋か温野菜かサラダぐらい。必然的に、平均的日本人家庭で料理を受け持つ人の技術は、世界標準より高めかもしれない。
でも素人は素人。日本の素人レシピの集大成であるCookpadを見るたび感じるのが、材料いろいろ入れすぎなんじゃね? ってこと。
相性のいい(うまく結婚する、とフランス語では言うそうな)食材というものはある。それ以外のものは要らないという意味でもある。それぞれの個性は抜群でも、ソリの合わない食材もある。
私にはここが盲点で、青物ならなんでもいいやとブロッコリ、いんげん、アスパラ、ほうれん草などランダムに添え物に出していたら、「白身魚には苦味が強すぎる」とか、「海老にいんげんはぼやけるね」とか、仰る(なら自分で料理せんかい)。
鉄板の組み合わせには理由があると学習した。
そういや、中学生の頃母がスイスから持ち帰ったフォンデュはグリエール&エメンタールチーズ、白ワイン、にんにく、フランスパンだけで、完成されたレシピだった。のちに日本で広まったレシピでは茹で野菜だのウィンナーだのをチーズに突っ込むとあり、ぎょっとした。
昨晩は豚抜き豚汁風をつくった。日本のノリでは冷蔵庫の残り野菜なんでも入れて、となりそう。しかしここは堪えて、人参、蕪(大根がわり)、厚揚げ、玉ねぎ、生姜だけで、丁寧にやってみた。副菜に塩麹に漬けておいた鮭切り身、いんげんの卵とじ。豚汁以外は、材料1つまたは2つの料理だ。夫受けは至極よかった。
カルボナーラひとつにしても、パンチェッタ、卵、チーズ以外に、Cookpadでは牛乳だの豆乳だのだし粉末だのと入れるレシピが散見されるけど、材料多けりゃ多いほどいいってもんでもない。
気をつけているのは、調味料で旨み要素を二つ以上合わせることぐらいかな。トマト(グルタミン酸)とアンチョビ(イノシン酸)とか、昆布(グルタミン酸)と椎茸(グアニル酸)とか、ね。