「斧、槍、刀のどれが最強?」という問題から。
こんな談議から。…もともとの話はこの凶悪な「戦闘用スパイク・アックス」から始まる。
サヨック・カリの格闘用スパイクアックスSayoc WarHawk - 火薬と鋼 (id:machida77) http://d.hatena.ne.jp/machida77/20141014/p1
これへのブクマ
gryphonjapan @gryphonjapan
未だによく分からないのだが、斧はフランク族の時代から武器としても使われているが、剣と比べると有利不利はあるのかね?世界には「斧術」や「斧道」もあるんだろうか。 / “サヨック・カリの格闘用スパイクアックス
gryphonjapan @gryphonjapan
「スコップ最強武器論」というのもあって、戦う以外にも使えるだけで高得点だろ、とも言われますな。長篠合戦じゃないけど、戦場や行軍で木の伐採が必要なこともよくあるだろうから、貴重な鉄を使うなら兵士には斧のほうがいいのかなあ。 それとは別に斧vs剣だと剣が有利かな?
gryphonjapan @gryphonjapan
斧と刀では、
どちらの歴史が古く、
どちらのほうが世界に広まり、
戦ったらどっちが強いのか(個人戦/集団戦)
手荷物より投げるほうが有効なのか
世界のどこかに剣道的な「斧道」はあるのか…
同じような議論は「槍と刀」でもあるんどす。槍と刀が戦場で戦ったら、基本、槍のほうにアドバンテージがある、と言い切っちゃってええんじじゃないかと思います。
剣と斧はどうでしょうかね。
ただ、がちゃんと正面衝突したらば、斧の豪快なる一撃は、刀をも断つのではないかという気がします。
しかし!!
剣というのは、そういう戦闘力とは違った、別のジャンルでの有利さが存在する。世界中でこの刀、剣、サーベルと申すもの、腰にたばさみ、あるいは背負って携行するのに便利だったということです。
斧はどうだったんでしょうかね。いわゆるマサカリとかの形式は、やはりごっついでかさが必要に見えるし、あの刃の部分にカバーをしてれば大丈夫というふうにも見えない。上の「格闘用スパイクアックス」は、だいぶ刀的な携行が可能に見えるけれども。
槍も短く切った「手槍」はありますけれども、その場合は刀と比べてのアドバンテージもなくなる。もとより槍の強さと携行性は矛盾する。
こういう武器に関しては、居合いのような「瞬時、即座に使えるか」という問題もあるのだが、
ちょっとそれは今回置いておく。
さて、さて、「社会的に携行可能か」という問題について。
日本発のコンテンツとして「ジャパニーズ・チャンバラ」がそれこそ無声白黒映画の時代から一部で注目され、スターウォーズからキル・ビルまで影響を与え、サムライニンジャがサブカルチャーの一項目であるのは光栄ですが、それを支えたのは日本が明治まで「貴人(武士)は、名誉の証として刀を常に携行していい(というか持たなくてはいけない)」という社会的ルールがあったからですわな。
そして江戸時代にはいると、そもそも長槍や弓や種子島なんかをおおっぴらに持って大通りを練り歩くと、武士でもお咎めを受ける世になりました。
拳銃と幕末は、ちょうど時期的、鎖国体制から解かれて間もない時にやっと普及したということで、時代的にずれたのも幸運だった。
宮本武蔵も柳生一族も、新撰組も人斬り以蔵も千葉道場も薩摩示現流も、その制約がある中でこそ強さを誇れた、のでありましょう。
反対に、タフガイは拳銃を持って当たり前な開拓期のアメリカ西部では、二丁拳銃抜く手も見せぬ早撃ちガンマンが最強であったろう。それは異論がない。「携行を許される武器」にはどこも社会的、法的に…、あるいは2mの槍は持ち運べない、というような物理的な上限がある。
では今の日本では、銃刀法という制約がある以上、剣術はその意味を失ったのであろうか???
さてここからまだ話が続く。
「剣道の有段者はつまようじ一本、ボールペン一本でも、あるいは手を刀にしてでも戦える」説
があります。ドギャーン。
実はこの話、ずっと考えてたんだが、画像を集めるのに手間取ったのだすよ。
いまこそ画像フォルダが火を噴く。
「六三四の剣」と「刃牙道」というソースを示せば、信頼性も正確性も十分だろう。(どこがだ)
というわけで、剣道をやっていれば剣、竹刀を持っていればいうに及ばず、それを素手の状態でも応用して強い、というわけです。
なぜ強いかというと、その秘密は足さばきにある。
足さばきはいろいろと応用が利く。伝統派空手の足さばきをそのまま応用したリョート・マチダもKOの山をUFCに築いた。水垣偉弥も、剣道の足さばきを応用してたような、そうでなかったような……。
まあ、「素手でも剣道の名人は強い」論はこの際、後日の検討課題としよう。(実際に剣道の達人をパンクラスなり修斗なり「巌流島」なりに呼べばいいのに)
より問題なのは、「剣道の達人はヨウジ一本を持っていれば、相手を切り裂く武器として使える」というテーゼである。
いまのところ、銃刀法でヨウジは規制対象になっていない。ならば剣道の達人が常にポケットにヨウジを持っていれば、剣道三倍段である。ヤワラの達人も、カラテの達人も、剣士のヨウジの前に膝を屈するであろう!!
少林寺拳法の開祖は「瓦は雨を防ぐために屋根の上に乗せるもので、殴って割るためのものではない」と言ったそうだが、そういう批判は可能だとしても、やはり実戦の場で「ヨウジは歯の間に挟まった食べ物を取り外すためのもので、人を斬る物ではない」といっても始まらないであろう。
つまり、今の日本社会における最強に、一躍「ヨウジをポケットに入れた剣道家」が浮上する、というわけです。
一歩進めて「ペンを持っている剣術家」は、ペンを武器に使えるか??
これは、実例がある。
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar483676
ヤノタク ハハハハハ。そうしたら俺に恥をかかされたと思ったんでしょう。ボールペンを振りかざしてきたんですよ! そいつは「ボールペンは武器になる」とか常日頃言ってたんですよね。でも、俺はボールペンを持った手を掴んで引き込んで倒して、両手を掴んだままそいつの顔面に足蹴りをバンバン叩き込んだんですよ。
――あ、骨法より一足先にナイフ術を!
ヤノタク 足蹴りを嫌がって立ち上がったところをヒールホールドです。バキバキって音がしてヘニャヘニャとなったところで大原さんが止めに入って。
――そんな修羅場があったんですねぇ……!!(略)しかし、矢野さんカッコいいですねぇ。
ヤノタク 武勇伝ですね(笑)。つまりボクがいちばん骨法を実践した男なんですよ。
――ですよね! 喧嘩芸から関節、ナイフ術まで(笑)。
ヤノタク ねえ。まさかね、暴漢相手に使うボールペンが身内に向いてくるとは思いもしませんでしたけど(笑)。
いや…しかし、これは相手がかの伝説の関節技師・ヤノタクだったからこそボールペンでの攻撃をヒールホールドで撃退することができたので、一般的な格闘理論という点では、「このボールペンで戦う」というのはかなり良いところをついていたのではないか。1周…いや3周ほど回って、再び「骨法最強伝説」である。
さらに、twitterでの反応
https://twitter.com/nezurari/status/611030076642062337
ネズラリ
@nezurari ネズラリさんがリツイートしました gryphonjapan
KAMINOGEで見たけど、佐山先生はスミス&ウェッソンのボールペン持ってたな。。。あと金属制の箸なら見た目的にも威圧できるし投げれば刺さるし、職質されてもエコを主張すれば良いって仰ってたw。
S&Wのボールペン??そんな馬鹿なものが、と思ったら、アマゾンで売ってるよおい。
レビュー
↓
伊丹ー成田ーサンフランシスコーメキシコシティのルートでこの商品を機内に持ち込みました。
結果、すべての身体検査をクリア、特に問題ありません。
サンフランシスコの検査は他の空港に比べ、非常に厳重でしたが咎められることもありませんでした。
飛行機内に持ち込めるか悩んでいる方へのアドバイスになれば幸いです。
ま、このへんも理論はともかくあとは実践なんで、たとえばペンの代わりにもっとやわらかいちくわとか、魚肉ソーセージを持ってもらった剣道家に、実戦的に格闘家や襲ってくるチンピラに対応できるかどうか、やってもらい、youtubeで公開してほしい。
魚肉ソーセージを持った剣豪…実にシュールだ(笑)
そんな剣道家に対抗する、もう一人の最強は…「コイン投げ」だ!!
というわけで、町に道場があったり、通信教育があったり、インターハイの種目になるほどポピュラーな武術ではないが、中国には古来からコインを投げる武術が本当にあり、その威力はリンゴに突き刺さるほど、達人となれば一気に5連打できるのであります。「拳児」に描いてあるのだからまちがいない。
どうも人差し指と中指の間にコインを挟み、手首のスナップと親指での押し出しを組み合わせてコインを飛ばす。
これは遠距離攻撃であるので、近接攻撃とは根本的に違うですね。
以前こんなtogetterをまとめたことがありまして、ある意味その続編であります
のテーゼとして作者が言ってたのは、『「できればこっちの攻撃が届き、あっちは届かない、そんな遠距離から一方的に攻撃したいなあ」というのは、軍事史、兵器史を貫く大原則であり、基本的にそれに沿って兵器は進化したのだ…』という話でした。投げ槍、投石……「遠方からものを投げる」武術史、軍事史 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/598117
コインを遠方から投げてぶち当てるのが百発百中だったら、まさにこの遠方からの攻撃に特化したものであり、ボールペンを持った剣道家を超える強さでありましょう。
対抗できるのは、手裏剣ぐらい。つまりは四国を制した芦原カラテ!!
「八幡浜じゃワシはもっぱら手裏剣じゃのうてナイフ…手裏剣と言っても数多くあるけん、一本手裏剣について言えば全部鉄やろ。けどナイフは重心が安定しとらんのよ。手裏剣投げよりある意味ナイフ投げのほうが難しいけん」「八幡浜の神様に頭を下げながらご神木に向かってナイフを刺しちょったんよ」
ただ、芦原の手裏剣投げ(ナイフ投げ)は、何しろ威力はコイン投げに勝るとも劣らないだろうが、ちょっと今の日本の法体系とは相性がよくない(笑)。
芦原先生は「警官が来る前に決着をつけて逃げる」ことを技術体系の中に組み込んではいるのだが(ホント)、しかし、そういう点ではやはり…常にポケットの中にじゃらりと常備していてもとがめられないコインのほうがはるかに上をいくのではないだろうか。
そういえば元傭兵を自称する作家・柘植久慶氏は、常に多数の500円玉を常備しておき、いざという時は厚手のソックスを脱いでその中に入れて、ハンマー(ヌンチャク)風の武器ににする、と公言していたことがありました。
そういえば、世の中にはこんな奇書もございまして
手裏剣マニアになるまではいいが、その「道場」を開こうとしたり、それで生計を立てるとか言い出したりして、結局マンガの書き手の奥さんとは別居するだのしないだのの騒ぎになっているだのの話になるのであります。クールジャパンの大きな担い手はニンジャだというのに、日本社会は手裏剣に厳しすぎる。
あと、秘伝だ実戦性だと行って、閉じたサークルの中にいるより、完全にゲーム化、競技化して、明確なルールの下で多くの競技人口が競ったほうが最終的に最強戦士が生まれる…というテーゼで考えるなら、野球やダーツのような「ものを投げる」競技にこそ、最強がいてもおかしくはない。
画像は漫画「サバイバル」で、貴重な畑を奪おうとする側と守ろうとする側の闘争で「元プロ野球のピッチャー」が一種の最強兵器となっている図。
で、
まとめると、少なくとも現代の日本社会において、「合法の範囲内で最強に一番近い」のは、
・胸ポケットにつまようじか、ボールペンを挿している、剣術使い(剣道家)。
vs
・ポケットにコインをジャラジャラと入れているコイン投げ。
なのでありましょう。彼らに挑戦し、「最強を決めるのはもう少し待ってくれないか…」と言える猛者はありや。やはりダーツチャンプか…
コメント欄をそのまま転載
id:machida77 2016/07/25 09:46
ボールペン…護身用のものはタクティカルペンといわれていますが、これが護身用にどこまで有用かは北米でも議論があり、携行しても法的に問題ないのはどこまでかもまた問題があります。
まず規制の問題について。
昨年、美容で使うフェイスローラーが空港で問題視されたという事例がありました。http://twitter.com/MizU_38/status/640283166524051456
このタイプのフェイスローラーは、カナダの手荷物検査で『マーシャルアーツの武器』と認定され、別室に連れて行かれる事をお知らせします。 pic.twitter.com/lCdlivOAvK
— 水野裕子 (@MizU_38) 2015年9月5日
これはマーシャルアーツ・ウェポンに対する規制で、ペンもこの種の規制にひっかかることがあります(担当者の判断によって)。
事例 http://ameblo.jp/liliko747/entry-11136133916.html
しかし必ず規制される他の武器より問題になる可能性が低いのは確かです。その分攻撃力が低いという点が問題になります。非致死性の護身用武器は全て規制と攻撃力がトレードオフの関係になっていると考えていいでしょう。
タクティカルペンのメリットは持ち歩いても法的問題になりにくく、相手に警戒されにくい点にあります。逆に言うと相手に警戒された時点でその長所を失っています。
あとは、想定している状況、取り出しやすさ、彼我の戦力差、過剰防衛にならない程度といった条件が絡むので複雑になります。
だから、この記事で想定しているような双方互角の状況そのものが護身用武器の優劣を考えるのに必ずしも向いていないかもしれません。
投擲武器について。
手裏剣術で知られる白上一空軒氏は護身用に手裏剣術を指導したことがあり、その経験からゴルフボールを手裏剣術の技術で投擲するのが良いということを著書に書いていました。
距離によっては使えない技術ですが、護身用で離れた距離の技術としては面白い話だと思いました。