翡翠輝子の招福日記

翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

「2025年問題」の日本を生きるために

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療や介護制度が維持がむずかしくなっていくとされる「2025年問題」。その2025年となってしまいました。

といっても、東京では元日から営業している店も多く、医療や交通機関などお正月なんて関係ない職場もたくさんあります。

高齢化がますます加速すると、こうした便利で快適な暮らしも続けられなくなるのかも。そう感じたのは、先月の別府の旅でランチを食べに入ったファミリーレストランでのことです。

 

目当てにしていた地元のお店が休みだったので、ジョリーパスタへ。時刻は12時半過ぎ。ファミリーレストランで食べる観光客は多くないだろうと予測したのですが、3組ほどの待ちができていました。

順番がなかなか回ってきません。広めの店ですがフロアー担当が一人しかいないからです。食事が終わって客が席を立っても、食器を下げるところまで手が回っていないテーブルがかなりありました。注文はタブレットですが、会計は支払いまで客がパネルを操作しますが最後はスタッフの手が要ります。厨房から出来上がった料理を運ぶだけでも忙しいのに、会計のたびにレジに行き、その合間にウーバーのテイクアウトの対応までこなしていました。

すばらしかったのはフロアー担当の女性。順番待ちや会計待ちの客からのプレッシャーがあるだろうに、にこやかに次々と仕事を片付けていました。東京だったら、すきまバイトで人を増やせますが、ただでさえ人手不足の観光地ではそういうわけにもいかないのでしょう。

ただ者ではない働きぶりに、急に出勤できなくなったアルバイトやパートの代わりに入った本社の社員ではないかと想像しました。ジョリーパスタは深夜のワンオペで店員が死亡した「すき家」を展開するゼンショーです。

 

その後ようやくフロアーにもう一人スタッフが加わり、店内もかなり落ち着いていたので、会計時にワンオペ女性に「大変でしたね」と声をかけました。一瞬、緊張が走ったように感じたのは待たされたクレームがあると身構えたからでしょうか。

「あんなに忙しい中で次々と仕事を片付けていく姿がすばらしくて感銘を受けました」と続けると、ほっとしたような笑顔を見せてくれました。

 

結局、彼女が正社員なのかアルバイトなのかわかりませんでしたが、このような人のがんばりに支えられている社会は限界に来ています。客だからサービスされて当然だとふんぞり返ってばかりはいられません。

 

大分空港からの帰路。窓際の席だと、空港スタッフが敬礼やお辞儀で見送っている姿が見えますが、これも日本だけのサービスでしょう。

 

スペイン巡礼で立ち寄った食料品店は、客がレジで待っていても店主はずっと電話中でした。

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日本ではありえない接客ですが、超高齢化で人手不足が深刻する中、これでいいと割り切る時期に来ているのでしょう。そうでないと「2025年問題」の日本で生きていけません。

時間はあるけれど、ない

東京は晴天に恵まれた穏やかなお正月です。

 

スポーツクラブが休館なので、銭湯に通っています。自宅から徒歩圏内に数か所の銭湯があり、社会インフラという位置づけなのか、大みそかも元日もどこかが営業しています。特別営業で朝8時からオープンして、けっこうにぎわっていました。

高齢者が多いのは、ヒートショックが怖くて自宅のお風呂に入りたくないからかも。スポーツクラブにも、「ここなら倒れても誰かがいるから」と入浴のためだけに通っている高齢者がいます。

 

将来の自分の姿を見るかのようで、そう遠い先ではなくあっという間にそうなるだろうと自戒しています。

 

混んでいる時期は出歩かないので、銭湯以外は家に引きこもって読書とドラマ。

自己啓発本を読むのがやめられなくて『人生が充実する時間のつかい方』というUCLAの女性教授の本を読んでいます。

 

「時間が足りない人は、幸せの度合いと人生の満足度が著しく低い」とある一方で、「1日の可処分時間が約5時間以上あっても幸せの低下につながる」と書かれています。自由時間がありすぎると、生産性を実感できないからです。

リタイア生活に移行中の私には、こちらのほうが問題です。悠々自適の元エリートサラリーマンが手持無沙汰で昼間からアルコールを飲んだりするのはこのためです。

 

時間がありすぎる一方で、人生の残り時間を考えると心もとなくなります。

この本では、楽しいと思える活動があと何回できるか、これまでに何回やってきたかを計算して、全体の何割になるかを出すことを勧めています。

夫婦そろってお正月を迎えるのは、あと何回か。夫は私の実家の雑煮でいいと言ってくれるので、鰤に里いも、ごぼう、にんじんを入れてほうれん草とかまぼこを加えるすまし仕立ての雑煮を作ります。結婚後、お正月は39回ありましたが、日本人男性の平均寿命を夫にあてはめるとあと20回。もう約3分の1しか残っていないのです。健康寿命を考えるとさらに残りは少なくなります。

 

「時間はあるけれど、ない」という老後のパラドックス。お正月は時間の流れを意識して生き方を考える節目です。

 

スペインは夏でも日の出が遅く午前8時ごろ。明るくなりかけた7時半過ぎに出発して、歩きながら日の出をよく見ました。日本ではお正月の初日の出しか意識しませんが、これからは健康的に日の出を浴びることにしたいもの。夏は朝が早すぎて無理かもしれませんが。

お金は生きている

スペイン巡礼の出発前からフットケアに通うようになりました。左足の親指が巻き爪のようになっていて正常に伸びてこなかったからです。病院なら皮膚科の管轄でしょうが、ドイツ式のフットケアもできるネイルサロンが近所にあったので、行ってみました。絆創膏テープを使って矯正する方法を教えてもらい、爪は正常になりましたが、足全体のケアをしてくれるので通い続けています。

 

女性オーナーが一人で営む小さなお店ですが、阿佐谷駅から高円寺方面に抜けるJRの高架下にあり人通りはけっこうあり、占いイベントを開催するときは告知を貼らせてもらいました。

先日行ってみると、小さなフリーマーケットコーナーができていました。オーナーのお母様が高齢者施設に入居し、部屋を片付けていると未使用のタオルなど小物類がどっと出てきたので、店先に置いているとのこと。

早速、お客さんがやってきました。高齢女性が200円のタオルをお買い上げ。ところが、5000円札で支払おうとしたので、オーナーは難色を示しました。

結局、バッグのポケットを探して100円玉2枚が出てきたので無事に買い物終了。

 

お客さんが去ったところで、オーナーは私にこう言いました。

「4800円のお釣りを払うと小銭の用意が少なくなる。ワンオペだと銀行に行くのもままならないから、少額の支払いに大きなお札を出すのは勘弁してほしい。お客様は神様だから、こんなことを言ってはいけないのかもしれないけれど、銀行の両替だって手数料がかかる時代だし」

 

「お客様は神様です」は三波春夫のフレーズですが、彼の真意は「ステージに上がったら、神様の前に立って祈るように雑念を払わないと、完璧な歌は歌えない」というもの。お客はお金を払う立場だから、何をやってもいいというカスハラの言い訳にはなりません。

 

さらに、お金を払うことは一種のエネルギーのやりとりだと考え、気持ちよく払えるようにしています。両替目的で高額紙幣を使ってお釣りをもらうと、店の人のネガティブな気分がお金に乗り移るような気がします。一方、チェーン店の場合は、現金の管理のほうがコストがかかると聞いたので電子マネーやクレジットカードで支払います。

 

「すごい、そこまで考えているとは」とサロンのオーナーは褒めてくれましたが、お手本は大物風水師。「お金を払うときは、魚の稚児を放流する気持ちで。きっと何倍にもなって帰ってくるから」と話していました。

「お金を持つのは、ある意味、子どもを持つのと同じ。常に世話をして気を配っていなくてはいけない。お金は生きていて、気まぐれだから」という文章も読んだこともあります。

お金のほとんどをニューヨーク市場で育てているのは、「円は嫌だ、ドルになりたい」というお金の声が聞こえたから。成長が期待できない日本市場ではお金が窮屈だと考えたのです。ドルコスト平均法でちまちま両替するのは面倒なので、一気にドル転しました。

そして、お金が伸び伸びと活躍できるように社会の動きに合わせて銘柄を入れ替えてポートフォリオを組み直しています。財布の中を整理して、コインや1000円札を切らさないようにする延長上で投資をとらえているわけです。

 

「もっとお金が欲しい」と言いつつ、お金の世話をせず、お金の声を聞こうともしない人がけっこういるような気がします。

 

スペイン巡礼路の道筋を示す黄色い矢印。欧米では珍しい三毛猫がいました。

巡礼中の現金はJALPayのアプリで両替してATMで引き出し、お札は巡礼宿で使い、お釣りをバルで使用していました。

 

去年の12月にも同じようなことを書いています。年末はお金のことを考えることが多いからでしょう。

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健康版ノブレス・オブリージュ

年に2回、400ml献血を続けています。アルコール飲み過ぎでγGTPが60あたりをうろうろしている以外は、これといった持病もなく過ごしているので69歳まで献血できそうです。

前回の献血成分献血をお願いされました。検査のための採血の看護師さんと、献血担当の看護師さんの二人から。女性でも成分献血なら16週ごとに献血できるのです。

もっと若い元気な人のほうがいいだろうけど、少子高齢化で血液が足りず60代の血液まで当てにされているのでしょうか。今まで献血したことのない人にお願いするのはハードルが高いけれど、ずっと献血を続けている人なら応じる可能性も高いからかもしれません。

しかも、私に声をかけた理由が「血管が太い」! 言われてみれば、献血や健康診断のための採血はいつもスムーズでした。成分献血血漿だけを取り出して残りを体内に戻すので、血管が細い人ではむずかしいそうです。

 

思い出したのは、今年最も感銘を受けたノンフィクション『統合失調症の一族』のサムとナンシーのゲイリー夫妻です。

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10人の息子たちが次々と狂っていく一家を支援したのが、石油業界で巨万の富を築いたゲイリー夫妻です。石油採掘は一種の山師であり、どこを掘るかが勝負。

サム・ゲイリーの人生哲学は「一生懸命働いてきたとはいえ、運にも恵まれた。助けを必要としている人がいれば、自分にできるときには助ける必要も感じている」というもの。

ゲイリー夫妻ほどでなくても、私が金銭的不安もなく勝手気ままな老後を送れているのも、運に恵まれたから。誰かを手助けして社会に恩返ししなければ、手痛いしっぺ返しを受けるでしょう。

 

そして、『グレート・ギャツビー』の冒頭の一文も心に深く刻まれています。

“Whenever you feel like criticizing anyone,” he told me, “Just remember that all the people in this world haven’t had the advantages that you’ve had.”

「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と父は言った。

「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだと」(村上春樹訳)

 

世間のすべての人が、私のように健康体で生まれたわけではありません。健康な人間がそうでない人を支えるからこそ成り立つ社会。

 


というわけで、クリスマスシーズンに成分献血に行ってきました。クリスマスは分かち合いの時期ですから、献血にふさわしいタイミングです。

全血採血より時間がかかりますが、本を持ち込んで読書に没頭していたので気になりません。

ぎょっとしたのは、献血が終わって針を抜いたとき。血管が太いせいか、勢いよく血液が出て、下に敷いていたタオルがみるみるうちに鮮血で真っ赤に! 視覚に影響を受けるタイプなのか、一瞬、頭がくらくらしてきましたが、体調に異常はなく無事に帰宅。老体でも私の血液が社会の役に立つなら、これからも献血を続けていきます。

 

冬至に考える来年の漢字

先週の金曜と土曜は、年筮イベントでした。

天海玉紀さんの発案で始まり、夏瀬杏子さんが引き継ぎ、今は湊ゆきのさんが取り仕切ってくださっています。会場予約、告知、受付まで万全に設定してくださり、私は顔を出すだけ。ありがたいことです。

khushi-bodyart.hateblo.jp

 

卦の象意やその意味するところの大筋は、インターネットや書籍にたくさん記されていますが「わたしにとっての、この卦」という実感は、その当人であればこそ語ることのできる筋書きのないドラマ。

吉凶だけでは判断しえない思いを話し、また他の人のそれを聞くことのできる場、というのはまたとない機会です。64卦・384爻あっても、その意味するところは立筮した人のぶんだけ分岐しているとも言えるでしょう。

 

そして土曜の夜はウラナイ8のメンバーで年筮を立てます。

順番決めの漢字タロットは20番の審判で、得た卦は兌為沢(だいたく)の二爻でした。

 

この2年はスペイン巡礼がらみの卦だったのが、来年は喜びや楽しみを象徴する沢が二つ重なった浮き立つような卦。沢は人物にたとえると少女であり、季節は秋。収穫の季節のお祭りで浮かれ騒ぐような軽薄さもあります。

 

60代も半ばとなり少女でもないのですが、老いた少女だからこそできることもあるのです。少女の頃の私は外国の本が好きで、舞台となった地に行きたくて、日本に縛られているのが窮屈でたまりませんでした。老少女となった今なら、どこでも行ける! 

来年の7月はコロンビアに飛び、ガルシア=マルケスの物語の舞台を訪れます。兌為沢の二爻を転じると沢雷随(たくらいずい)になり、楽しさ(沢)に向かって動く(雷)という追っかけ。今年はBTSなら、来年はガルシア=マルケス。あこがれの人の聖地巡りといういかにも少女っぽい趣味を極めます。

順番決めのために引いたカードも「最後の審判」の復活を意味しますから、少女時代に夢中になった本をまた読むのもいいでしょう。

 

玉紀さんが今年の漢字シリーズを展開しており、私の漢字は昨年が「巡」で、今年は「湯」としました。

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ガルシア=マルケスは『百年の孤独』の構想はできたものの、どう書けばいいのか迷っていました。思い付いたのが祖母の語り口。現実と幻想が入り混じった物語が語り継がれてきたスペインのガリシア地方出身の祖母を真似て『百年の孤独』を書き始めたのです。

彼の自伝のタイトルは『生きて、語り続ける』。「何を記憶し、どのように語るか。それこそが人生だ」というガルシア=マルケスに魅せられてはるばるスペインに出向くのですから、来年の漢字は「語」になるでしょう。八卦の兌(沢)はグルメやおしゃべりなど口に関連する喜びすべてを表しますし。

 

ウラナイ8のメンバーの年筮。奇しくも、杏子さんと私は卦も爻もぴったり同じになりました。だからといって二人が同じような一年を過ごすわけではなく、それぞれの個性に合わせた兌為沢となることでしょう。