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デイヴィッド・ボーマン『ぼくがミステリを書くまえ』(早川書房)
デイヴィッド・ボーマンの『ぼくがミステリを書くまえ』読了。このタイトル、しかも早川書房という版元のせいもあって、ミステリと勘違いされそうだが、これはいわゆる純文学に属する作品。
両親のもとから家族から逃げ出し、作家をめざす「ぼく」は、砂漠の真ん中でオレンジを投げている女性と出会う。彼女の名はシルヴィア。エミリー・ディキンスンをこよなく愛する彼女は、家族を残してディキンスンの生家を見るドライブの途中であった。意気投合した「ぼく」とシルヴィアはいっしょに旅を続けるが、ある日突然に家族の元へ帰っていった。ディキンスンの詩集と別れのキスを残し……。
本書の内容をひと言でいうなら、ロード・ノヴェル、ビルディングス・ロマン、青春小説、犯罪小説……って全然ひと言じゃないが、解説にも書かれているようにいろいろな読み方が可能な小説である。ストーリー的にも前半がわりとオーソドックスなロード・ノヴェル風、後半は二転三転する展開で読者にまったく予想を許さない。
しかし個人的にはそれらがかえって作品の色を不鮮明にし、テーマが浮かび上がってこないように思える。イイ意味でオタク的というか、いろいろな仕掛けを試みているのは評価できるが、キャラクターの造型も含めて未消化の感じは否めない。
特に後半のドタバタはできればもっとスッキリさせ、前半の流れを活かしつつ、シルヴィアをもっと掘り下げてみてくれてもよかったのではないだろうか。なんだか偉そうになってしまったが、もうひとつ上のレベルを期待していたので少々残念な感想となってしまった。
両親のもとから家族から逃げ出し、作家をめざす「ぼく」は、砂漠の真ん中でオレンジを投げている女性と出会う。彼女の名はシルヴィア。エミリー・ディキンスンをこよなく愛する彼女は、家族を残してディキンスンの生家を見るドライブの途中であった。意気投合した「ぼく」とシルヴィアはいっしょに旅を続けるが、ある日突然に家族の元へ帰っていった。ディキンスンの詩集と別れのキスを残し……。
本書の内容をひと言でいうなら、ロード・ノヴェル、ビルディングス・ロマン、青春小説、犯罪小説……って全然ひと言じゃないが、解説にも書かれているようにいろいろな読み方が可能な小説である。ストーリー的にも前半がわりとオーソドックスなロード・ノヴェル風、後半は二転三転する展開で読者にまったく予想を許さない。
しかし個人的にはそれらがかえって作品の色を不鮮明にし、テーマが浮かび上がってこないように思える。イイ意味でオタク的というか、いろいろな仕掛けを試みているのは評価できるが、キャラクターの造型も含めて未消化の感じは否めない。
特に後半のドタバタはできればもっとスッキリさせ、前半の流れを活かしつつ、シルヴィアをもっと掘り下げてみてくれてもよかったのではないだろうか。なんだか偉そうになってしまったが、もうひとつ上のレベルを期待していたので少々残念な感想となってしまった。