ジェレット・バージェス『不思議の達人(下)』(ヒラヤマ探偵文庫) - 探偵小説三昧
FC2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ジェレット・バージェス『不思議の達人(下)』(ヒラヤマ探偵文庫)

 ジェレット・バージェスの『不思議の達人(下)』を読む。1912年に刊行された預言者アストロ・シリーズの短篇集 The Master of Mysteriesの邦訳、その下巻である。

The Assassin's Club「暗殺者クラブ」
The Luck of the Merringtons「メリントン家の幸運」
The Count's Comedy「伯爵の喜劇」
Pricilla's Presents「プリシラのプレゼント」
The Hair to Soothoid「『ソーソイド』の跡継ぎ」
The Two Miss Mannings「二人のミス・マニング」
Van Asten's Visitor「ヴァン・アステンの訪問客」
The Middlebury Murder「ミドルベリー殺人事件」
Vengeance of the Pi Rho Nu「ビー・ロ・ヌーの復讐」
The Lady in Taupe「モグラ色の淑女」
Mrs. Stellery's Letters「ステレリー夫人の手紙」
Black Light「ブラック・ライト」

 収録作は以上。原書が相当なボリュームのため上下巻に分けたということなので、基本的な感想は上巻読了時とそれほど変わらないのだけれど、一応はまとめておこう。

 不思議の達人(下)
▲ジェレット・バージェス『不思議の達人(下)』(ヒラヤマ探偵文庫)

 いわゆるシャーロック・ホームズのライバルの一人で、その大きな特色は、ビジネス上の理由で占星術とは言っているが、実は鋭い観察力と推理力によって事件を解決するところだろう。助手のヴァレスカに調査を任せることも多いが、自ら調査に赴くことも少なくはなく、それらの調査結果を元に推理して真相を導き出す。もちろんお客にはそんなことは教えず、水晶玉のお告げです、みたいな形で伝えるのだが、そのおかげで占い業は順風満帆というわけで、こういう設定と展開がユーモラスで楽しい。

 まあ、占いの相談だから大きな事件というものはほぼないし、トリックや謎解きも目を見張るようなものではない。そこが本家ホームズに大きく差をつけられているところだが、全般的に「日常の謎」的な面白さがあるので、それがけっこう当時の読者にアピールできたのではないか。また、アストロと助手ヴァレスカの恋愛模様も彩りを添えており、まるで一昔前のラブコメのように焦ったい進展ぶりなのだが、こういうのもファン心理をくすぐったのかもしれない。

 ということで謎解きミステリとしては落ちるものの、エンターテインメントとしては上場の出来。多少の経年劣化を含めても、意外に楽しめる一冊である。
関連記事

Comments

Edit

ルルさん

どうぞお楽しみください!

Posted at 09:12 on 08 22, 2024  by sugata

Edit

面白そうですね。さっそく上巻を注文しました。

Posted at 23:13 on 08 21, 2024  by ルル

« »

11 2024
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー
ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
月別アーカイブ