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ザ・ゴードンズ『盗聴』(論創海外ミステリ)
ザ・ゴードンズの『盗聴』を読む。内容もさることながら、まずこの「ザ・ゴードンズ」というペンネームが気になってしょうがない。実はこれ、ゴードン・ゴードンとミルドレッド・ゴードンという夫婦作家の合作用ペンネームである。二人とも元々は出版関係の仕事に就いていたのだが、その後、奥方のミルドレッドは作家に、夫のゴードンは広告関係を経てFBIで諜報活動に携わっていた。
戦後になってゴードンがFBIを辞職し、二人で小説を書くようになり、そこで用いられたのが「ザ・ゴードンズ」というペンネームのようだ。
こんな話。グレッグ・エヴァンズ警部補は盗聴チームに配属されている。犯罪に絡む家庭に盗聴器を仕掛け、事件を未然に防ぐのが大きな役目である。その性質上、チームの存在は公にされておらず、一般の捜査陣にも機密扱いであった。
そんなある日、マネーロンダリングの大物を追って盗聴を続けていると、ある会話から若い女性の命が狙われていることを示唆するやり取りが浮かび上がる。グレッグは殺人を食い止めるべく、捜査に乗り出すが……。
▲ザ・ゴードンズ『盗聴』(論創海外ミステリ)【amazon】
何といっても警察の盗聴という題材が肝である。当時(1950年代)のアメリカにあっても一般家庭の盗聴は違法スレスレのところなのだが、それ以外にもマジックミラーを用いた捜査など、警察の強引なやり方は日常茶飯事である。そんな捜査の在り方と自らの良心の間で揺れ動く主人公の心情が隠れたテーマともいえるだろう。
一方で全体のノリはそこまでシリアスでもなく、むしろライトなイメージである。トータルすると非常に既視感のある世界観というか懐かしい感じであり、要するに50〜60年代あたりのアメリカの警察ドラマを連想させてくれるのだ。
ただし、テレビドラマほどシンプルな内容ではない。先に挙げた主人公の姿、盗聴からの推理、裏切り、マスコミとの駆け引き、追跡劇などなど、ストーリーにはさまざまな要素が盛り込まれており、これがなかなか読ませる。序盤こそやや説明不足の感があり、状況が掴みにくいところもあるけれど、そこさえ超えればあとは一気であろう。
ということで上々のエンタメであり、必読レベルとは言わないけれども、警察小説やクライムノベルのファンであれば読んで損はない一冊。この種の作品は最近の論創海外ミステリでは珍しいラインナップになってしまったが、できればより本領を発揮しているであろうFBI捜査官ジョン・リプリーものも読んでみたいところである。
戦後になってゴードンがFBIを辞職し、二人で小説を書くようになり、そこで用いられたのが「ザ・ゴードンズ」というペンネームのようだ。
こんな話。グレッグ・エヴァンズ警部補は盗聴チームに配属されている。犯罪に絡む家庭に盗聴器を仕掛け、事件を未然に防ぐのが大きな役目である。その性質上、チームの存在は公にされておらず、一般の捜査陣にも機密扱いであった。
そんなある日、マネーロンダリングの大物を追って盗聴を続けていると、ある会話から若い女性の命が狙われていることを示唆するやり取りが浮かび上がる。グレッグは殺人を食い止めるべく、捜査に乗り出すが……。
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何といっても警察の盗聴という題材が肝である。当時(1950年代)のアメリカにあっても一般家庭の盗聴は違法スレスレのところなのだが、それ以外にもマジックミラーを用いた捜査など、警察の強引なやり方は日常茶飯事である。そんな捜査の在り方と自らの良心の間で揺れ動く主人公の心情が隠れたテーマともいえるだろう。
一方で全体のノリはそこまでシリアスでもなく、むしろライトなイメージである。トータルすると非常に既視感のある世界観というか懐かしい感じであり、要するに50〜60年代あたりのアメリカの警察ドラマを連想させてくれるのだ。
ただし、テレビドラマほどシンプルな内容ではない。先に挙げた主人公の姿、盗聴からの推理、裏切り、マスコミとの駆け引き、追跡劇などなど、ストーリーにはさまざまな要素が盛り込まれており、これがなかなか読ませる。序盤こそやや説明不足の感があり、状況が掴みにくいところもあるけれど、そこさえ超えればあとは一気であろう。
ということで上々のエンタメであり、必読レベルとは言わないけれども、警察小説やクライムノベルのファンであれば読んで損はない一冊。この種の作品は最近の論創海外ミステリでは珍しいラインナップになってしまったが、できればより本領を発揮しているであろうFBI捜査官ジョン・リプリーものも読んでみたいところである。
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Posted at 18:49 on 08 09, 2024 by