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『このミステリーがすごい!』編集部/編『このミステリーがすごい!2024年版』(宝島社)
つい先日、『ミステリマガジン』で本年度ミステリのランキングが発表されたと思ったら、あっという間に『このミステリーがすごい!2024年版』の発売である。この記事を書いている時点ではすでに『週刊文春』の「ミステリーベスト10」も発表されているし、ミステリ界隈もあっという間に年末気分である。
▲『このミステリーがすごい!』編集部/編『このミステリーがすごい!2024年版』(宝島社)【amazon】
とりあえず買うだけは買った『このミステリーがすごい!2024年版』だが、現代の国産ミステリにはあまり興味がないので、ランキングと「我が社の隠し球」の確認だけするともう特別読むところもない。
ただ、国産だ海外だという前に、そもそも面白そうな記事がないのである。この数年で買い始めた人はそれほど気にもならないだろうが、創刊時から読んでいる者としては、この十年(いや、もっと長いか)ほどの『このミス』は、あまりに何の工夫もないから仕方がない。
本当にそこまで読む記事がないのか、ちょっと気になって直近五年間の特集を調べてみた。それがこちら。
2024年版……京極夏彦インタビュー、名探偵コナン30周年記念特別対談青山剛昌×東野圭吾
2023年版……ジョジョの奇妙な冒険35周年記念、追悼西村京太郎Forever
2022年版……米澤穂信インタビュー、対談:斉藤壮馬(声優)×青崎有吾
2021年版……100巻目前!名探偵コナン、伊坂幸太郎インタビュー
2020年版……スペシャルインタビュー乃木坂46白石麻衣、注目のベストセラー映画化「屍人荘の殺人」
作家生活50年レジェンド対談:皆川博子×辻真先
編集部や担当者にもそれなりの苦労があるのはわかるけれど、この五年間の特集はあまりにもやる気が感じられない。インタビューと人気漫画に便乗した企画ばかりで、アイデアの欠片もない。
もちろんインタビュー自体は悪いわけではないのだけれど、国内作家へのインタビューなんて企画のうちにも入らないし、そもそもミステリ作家さんを差し置いて、アイドルや声優さん、漫画家さんを起用する意図がまったく謎である。
ちなみに同じベストテン関係の冊子でも、原書房が本格ミステリに絞って出している『本格ミステリ・ベスト10』はちょっと状況が異なる。同じように直近五年間の特集を引っ張り出してみると、その差は歴然。
2024年版……京極夏彦インタビュー、方丈貴恵インタビュー、奥深き暗号ミステリの愉しみ
2023年版……柄刀一インタビュー、夕木春央インタビュー、現場見取り図でたどる本格ミステリ
2022年版……今村昌弘インタビュー、浅倉秋成インタビュー、テーマ別厳選本格短編ガイド
2021年版……我孫子武丸インタビュー、阿津川辰海インタビュー、メンバーの「推し」100
2020年版……青柳碧人インタビュー、井上真偽インタビュー、新鋭気鋭たち一挙紹介!
必ず一つはミステリファンにアピールできる特集を組んでいるのがわかるし、インタビューにしても複数でバリエーションをつけ、もちろんアイドルなどには頼らない。
ただ、『このミス』も以前はいろいろな読み物記事を特集していたのである。それがダメになってきたのは、おそらく『このミス』が20周年を迎えた2008年あたりからか。長く続けて惰性になってしまっているのか、とんがっていた初期メンバーが皆いなくなったからなのか、理由はわからない。とはいえ、他社が出版したミステリ、さらには世界中のミステリ作家の著書のおかげでこの本が成り立っているわけだから、少しはそれに応えられるような本作りをやってほしいものである。
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とりあえず買うだけは買った『このミステリーがすごい!2024年版』だが、現代の国産ミステリにはあまり興味がないので、ランキングと「我が社の隠し球」の確認だけするともう特別読むところもない。
ただ、国産だ海外だという前に、そもそも面白そうな記事がないのである。この数年で買い始めた人はそれほど気にもならないだろうが、創刊時から読んでいる者としては、この十年(いや、もっと長いか)ほどの『このミス』は、あまりに何の工夫もないから仕方がない。
本当にそこまで読む記事がないのか、ちょっと気になって直近五年間の特集を調べてみた。それがこちら。
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もちろんインタビュー自体は悪いわけではないのだけれど、国内作家へのインタビューなんて企画のうちにも入らないし、そもそもミステリ作家さんを差し置いて、アイドルや声優さん、漫画家さんを起用する意図がまったく謎である。
ちなみに同じベストテン関係の冊子でも、原書房が本格ミステリに絞って出している『本格ミステリ・ベスト10』はちょっと状況が異なる。同じように直近五年間の特集を引っ張り出してみると、その差は歴然。
2024年版……京極夏彦インタビュー、方丈貴恵インタビュー、奥深き暗号ミステリの愉しみ
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ただ、『このミス』も以前はいろいろな読み物記事を特集していたのである。それがダメになってきたのは、おそらく『このミス』が20周年を迎えた2008年あたりからか。長く続けて惰性になってしまっているのか、とんがっていた初期メンバーが皆いなくなったからなのか、理由はわからない。とはいえ、他社が出版したミステリ、さらには世界中のミステリ作家の著書のおかげでこの本が成り立っているわけだから、少しはそれに応えられるような本作りをやってほしいものである。
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Comments
Edit
あれ?もうそんな季節だったっけ?
……と思ったら、
今年は年末ミステリベスト10予想の記事がなかっただけだった、と気づいたです。
不覚。
Posted at 16:59 on 12 09, 2023 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
>今年は年末ミステリベスト10予想の記事がなかっただけだった、と気づいたです。
そういえば昨年はそんなこともやりましたね。面倒なのでやめました(笑)。
もっと面倒な三誌平均を出すランキングがありますが、あれは明日にでもアップします。
Posted at 17:12 on 12 09, 2023 by sugata