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マイケル・ドハティ『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
このブログを読んでくれている方なら、管理人が探偵小説と同じぐらい特撮映画、なかでもモンスターや怪獣が登場する映画に目がないことはご承知かと思う。
で、もちろん先週の公開日翌日には観てきました『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。ギャレス・エドワーズが監督したモンスターバース・シリーズの第一作『GODZILLA ゴジラ』の続編で、本作は新鋭マイケル・ドハティが監督を務める。
本作の売りは何といっても、キングギドラやラドン、モスラといった東宝怪獣が一挙に登場することである。それはそれで実に楽しみだったのだが、強い懸念もあった。確かに一作目の『GODZILLA ゴジラ』はまずまず良かったけれども、この手のシリーズではより強い刺激を求めるための近道として、単純にモンスターの種類や数を増やすことに陥りがちである。深く進化するのではなく、表面的な派手さである。これはそれこそ、かつての東宝ゴジラが歩んだ道でもあるのだが、海外でもエイリアンやプレデターなどが同じ轍を踏んでしまっている。
怪獣映画に別に深さは求めないけれど、あまりにスッカスカの内容は勘弁、と期待半分不安半分というところで観にいったわけである。
こんな話。ゴジラがムートーを倒し、その姿を消してから五年。怪獣の調査を行う秘密機関モナークは、その後も極秘にゴジラの行方を追っていたが、いまや怪獣はゴジラやムートーだけではなく、他にも多くの怪獣が存在し、いわゆる冬眠状態にあることが判明していた。
モナークはそんな怪獣の管理・研究を行なっていたが、そんな施設のひとつ、中国雲南省には、モスラの卵が管理されていた。やがて卵の孵化が始まり、モスラの幼虫が誕生する。モナークの科学者エマ・ラッセル博士と娘のマディソンらは、研究を進めていた怪獣との交信装置"オルカ"を使い、孵化したモスラの幼虫との交信を試みる。だがそのとき、環境テロリストたちが研究所を襲撃、エマ・ラッセル博士と娘は"オルカ"とともに連れ去られ、モスラも行方をくらませる。
モナークの責任者でもある芹沢博士は、エマの夫であり、元モナークのアランに協力を依頼した。アランは"オルカ"の開発者でもあったのだ。
オルカの信号をもとに芹沢たちが向かった先はモナークの南極基地だった。そこには"モンスターゼロ"と呼ばれる怪獣が眠っていた……。
結論からいうと、まあ、面白いは面白いけれど、こんなものかなという感じが大きい。えらく気の抜けた感想で申し訳ないが、決して怪獣映画ファンの期待を裏切るわけではない。全体的には昭和ゴジラの後期、つまり怪獣プロレスを最新の映像技術で再現したという印象である。迫力もあるし、ビジュアルもなかなかのセンスで、トータルでは十分合格点をあげられると思う。
ただ、前作『GODZILLA ゴジラ』や日本の『シン・ゴジラ』を踏まえると、新たな驚きに欠けるというか。
ハリウッドが本気でゴジラ愛をもって映画化するとどうなるかという『GODZILLA ゴジラ』、ゴジラの怖さを再確認させ、基本に立ち帰った『シン・ゴジラ』に比べると、とにかく驚きが少ない。すべてが予想の範囲内で、「やられた!」とは思えないのだ。
本作は、怪獣が太古の時代から生息していたという同一の世界観で物語をつなぐモンスターバース・シリーズの第三作。だがこの三作目で、初めてゴジラやキングコングのいる世界をつなぐ解釈が披露された。
その証としてのラドンやモスラ、キングギドラの登場であり、実はこの部分こそが最大のトピックだったのだ。そこをもっと掘り下げ、怪獣プロレス・プラスアルファの魅力で驚かせてほしかった。
管理人的には怪獣プロレスも嫌いではないのだが、人間対怪獣という図式の方がより好みということもあり、その分さらに評価が辛くなってしまったところもあるかもしれない。
とはいえ先にも書いたように、客観的には合格点はあげてよいと思うし、実際、世間の評判はまずまず良いようだ。やはりハリウッドのバリバリの特撮でみせる怪獣対決は爽快感抜群。キングギドラやモスラの登場シーンは単純にかっこいいし、とりわけラドンが市街地を飛んだときの衝撃波で街が壊れるシーン、戦闘機との空中戦はしびれるばかりである。
一方、誰もがあげる欠点としては人間ドラマの酷さ。正直、主人公格のラッセル夫妻の言動に納得できる人は少ないだろう。製作陣の狙っているところは理解できるが、その表現があまりにチープで浅かった点は否めない。
ただ、そういった欠点はあるにせよ、怪獣映画の根本的なところでは評価してよいのではないだろうか。
最後に小ネタをいくつか紹介しておこう。あまり本筋に関係ないところだが、本作には東宝ゴジラへのオマージュというか、小ネタがふんだんに盛り込まれている。
なお、以下のネタが公式に認められているかどうかは不明なので念のため。
あと、ここから先はネタバレありなのでご注意を!
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・ラドンの登場シーン……本作では火山から登場するが、『空の大怪獣ラドン』では火山で最期を迎えた。フェニックス、復活という意味合いを持たせていると思われる。
・ゴジラのテーマ、モスラの歌……オリジナルのテーマ曲をアレンジした曲が挿入歌として使われている。ゴジラはまあ予想できるが、モスラをエンドロールでガッツリやってくれたのは嬉しい。それこそこれが最大の驚きであった。
・バーニングゴジラ……終盤で見られる核エネルギーで真っ赤になったゴジラは『ゴジラvsデストロイア』でおなじみの俗称バーニングゴジラである。
・芹沢猪四郎博士……渡辺謙演ずる博士の名前は、もちろん初代『ゴジラ』に登場する博士の苗字「芹沢」と、監督「本多猪四郎」の名前を組み合わせたもの。
・芹沢博士の最期……初代『ゴジラ』では芹沢博士がゴジラを倒すため、単身、潜水してゴジラに向かってゆくが、本作ではゴジラを救うために芹沢博士が命を投げ打つ。
・オキシジェン・デストロイア……初代『ゴジラ』を倒した最終化学兵器が本作でも登場。
・怪獣のコントロール……音楽にかぎらないが、電波などさまざまな媒体を使って怪獣を操るという設定は、『怪獣総進撃』など過去の東宝作品でも何度か用いられている。
・双子の女性博士……『モスラ』でおなじみのインファント島の双子の小美人。本作ではモスラの管理を担当する科学者が双子の女性である。
・キングギドラの登場シーン……キングギドラが『三大怪獣 地球最大の決戦』で初登場した時のシーンと同様、真正面からのアングル。
・成虫モスラの登場シーン……こちらも真正面からのアングルだが、平成ガメラのイリスの登場シーンと似ている。
・キングギドラの名称……映画の中では当初「モンスターゼロ」と呼ばれているが、これは『怪獣大戦争』で使われていた名称でもある。
・秘密機関モナークの基地番号……これは後から知ったのだが、基地番号がゴジラ関連の映画のナンバリングを振り分けているらしい。
で、もちろん先週の公開日翌日には観てきました『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。ギャレス・エドワーズが監督したモンスターバース・シリーズの第一作『GODZILLA ゴジラ』の続編で、本作は新鋭マイケル・ドハティが監督を務める。
本作の売りは何といっても、キングギドラやラドン、モスラといった東宝怪獣が一挙に登場することである。それはそれで実に楽しみだったのだが、強い懸念もあった。確かに一作目の『GODZILLA ゴジラ』はまずまず良かったけれども、この手のシリーズではより強い刺激を求めるための近道として、単純にモンスターの種類や数を増やすことに陥りがちである。深く進化するのではなく、表面的な派手さである。これはそれこそ、かつての東宝ゴジラが歩んだ道でもあるのだが、海外でもエイリアンやプレデターなどが同じ轍を踏んでしまっている。
怪獣映画に別に深さは求めないけれど、あまりにスッカスカの内容は勘弁、と期待半分不安半分というところで観にいったわけである。
こんな話。ゴジラがムートーを倒し、その姿を消してから五年。怪獣の調査を行う秘密機関モナークは、その後も極秘にゴジラの行方を追っていたが、いまや怪獣はゴジラやムートーだけではなく、他にも多くの怪獣が存在し、いわゆる冬眠状態にあることが判明していた。
モナークはそんな怪獣の管理・研究を行なっていたが、そんな施設のひとつ、中国雲南省には、モスラの卵が管理されていた。やがて卵の孵化が始まり、モスラの幼虫が誕生する。モナークの科学者エマ・ラッセル博士と娘のマディソンらは、研究を進めていた怪獣との交信装置"オルカ"を使い、孵化したモスラの幼虫との交信を試みる。だがそのとき、環境テロリストたちが研究所を襲撃、エマ・ラッセル博士と娘は"オルカ"とともに連れ去られ、モスラも行方をくらませる。
モナークの責任者でもある芹沢博士は、エマの夫であり、元モナークのアランに協力を依頼した。アランは"オルカ"の開発者でもあったのだ。
オルカの信号をもとに芹沢たちが向かった先はモナークの南極基地だった。そこには"モンスターゼロ"と呼ばれる怪獣が眠っていた……。
結論からいうと、まあ、面白いは面白いけれど、こんなものかなという感じが大きい。えらく気の抜けた感想で申し訳ないが、決して怪獣映画ファンの期待を裏切るわけではない。全体的には昭和ゴジラの後期、つまり怪獣プロレスを最新の映像技術で再現したという印象である。迫力もあるし、ビジュアルもなかなかのセンスで、トータルでは十分合格点をあげられると思う。
ただ、前作『GODZILLA ゴジラ』や日本の『シン・ゴジラ』を踏まえると、新たな驚きに欠けるというか。
ハリウッドが本気でゴジラ愛をもって映画化するとどうなるかという『GODZILLA ゴジラ』、ゴジラの怖さを再確認させ、基本に立ち帰った『シン・ゴジラ』に比べると、とにかく驚きが少ない。すべてが予想の範囲内で、「やられた!」とは思えないのだ。
本作は、怪獣が太古の時代から生息していたという同一の世界観で物語をつなぐモンスターバース・シリーズの第三作。だがこの三作目で、初めてゴジラやキングコングのいる世界をつなぐ解釈が披露された。
その証としてのラドンやモスラ、キングギドラの登場であり、実はこの部分こそが最大のトピックだったのだ。そこをもっと掘り下げ、怪獣プロレス・プラスアルファの魅力で驚かせてほしかった。
管理人的には怪獣プロレスも嫌いではないのだが、人間対怪獣という図式の方がより好みということもあり、その分さらに評価が辛くなってしまったところもあるかもしれない。
とはいえ先にも書いたように、客観的には合格点はあげてよいと思うし、実際、世間の評判はまずまず良いようだ。やはりハリウッドのバリバリの特撮でみせる怪獣対決は爽快感抜群。キングギドラやモスラの登場シーンは単純にかっこいいし、とりわけラドンが市街地を飛んだときの衝撃波で街が壊れるシーン、戦闘機との空中戦はしびれるばかりである。
一方、誰もがあげる欠点としては人間ドラマの酷さ。正直、主人公格のラッセル夫妻の言動に納得できる人は少ないだろう。製作陣の狙っているところは理解できるが、その表現があまりにチープで浅かった点は否めない。
ただ、そういった欠点はあるにせよ、怪獣映画の根本的なところでは評価してよいのではないだろうか。
最後に小ネタをいくつか紹介しておこう。あまり本筋に関係ないところだが、本作には東宝ゴジラへのオマージュというか、小ネタがふんだんに盛り込まれている。
なお、以下のネタが公式に認められているかどうかは不明なので念のため。
あと、ここから先はネタバレありなのでご注意を!
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・ラドンの登場シーン……本作では火山から登場するが、『空の大怪獣ラドン』では火山で最期を迎えた。フェニックス、復活という意味合いを持たせていると思われる。
・ゴジラのテーマ、モスラの歌……オリジナルのテーマ曲をアレンジした曲が挿入歌として使われている。ゴジラはまあ予想できるが、モスラをエンドロールでガッツリやってくれたのは嬉しい。それこそこれが最大の驚きであった。
・バーニングゴジラ……終盤で見られる核エネルギーで真っ赤になったゴジラは『ゴジラvsデストロイア』でおなじみの俗称バーニングゴジラである。
・芹沢猪四郎博士……渡辺謙演ずる博士の名前は、もちろん初代『ゴジラ』に登場する博士の苗字「芹沢」と、監督「本多猪四郎」の名前を組み合わせたもの。
・芹沢博士の最期……初代『ゴジラ』では芹沢博士がゴジラを倒すため、単身、潜水してゴジラに向かってゆくが、本作ではゴジラを救うために芹沢博士が命を投げ打つ。
・オキシジェン・デストロイア……初代『ゴジラ』を倒した最終化学兵器が本作でも登場。
・怪獣のコントロール……音楽にかぎらないが、電波などさまざまな媒体を使って怪獣を操るという設定は、『怪獣総進撃』など過去の東宝作品でも何度か用いられている。
・双子の女性博士……『モスラ』でおなじみのインファント島の双子の小美人。本作ではモスラの管理を担当する科学者が双子の女性である。
・キングギドラの登場シーン……キングギドラが『三大怪獣 地球最大の決戦』で初登場した時のシーンと同様、真正面からのアングル。
・成虫モスラの登場シーン……こちらも真正面からのアングルだが、平成ガメラのイリスの登場シーンと似ている。
・キングギドラの名称……映画の中では当初「モンスターゼロ」と呼ばれているが、これは『怪獣大戦争』で使われていた名称でもある。
・秘密機関モナークの基地番号……これは後から知ったのだが、基地番号がゴジラ関連の映画のナンバリングを振り分けているらしい。
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Posted at 16:34 on 06 13, 2019 by