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北町一郎『北町一郎探偵小説選II』(論創ミステリ叢書)
論創ミステリ叢書から『北町一郎探偵小説選II』を読む。『北町一郎探偵小説選I』では主に戦前の非シリーズものを収録していたが、本書では戦前・戦後に活躍したシリーズキャラクターものを集めている。まずは収録作。
「B/S(バランスシート)殺人事件」
「五人の乗客」
「東京間諜戦」
「三行広告の女」
「東京探偵局」
「第一話 盗まれた軍艦」
「第二話 白骨の謎」
「第三話 東京第五部隊」
「第四話 療養院の秘密」
「第五話 銀座間諜戦」
「第六話 街の警視総監」
「サンキュウ氏と眼鏡」
「サンキュウ氏と記憶箱」
「天眼鏡」
「トランプ物語」
「踊り子殺人事件」
「胃痛患者」
「三人の秘密」
「消えた花嫁」
「五月祭前後」
「狸と狐」
全体的には探偵小説と言いながらスパイものや間諜ものなど時局を反映した作品が多い。もちろん当時の事情がそうさせているところは大きいのだが、解説によると北町はむしろそれを積極的に活かし、しかもユーモアを前面に打ち出した。
これは北町が戦前の変格探偵小説、特におどろおどろしいものがあまり好みでなかったことの反動であり、他の作家が戦争のために限られたジャンルしか書けず苦労していたとき、逆に北町一郎はその限られたジャンルがピタリとはまったわけである。そうか、こういう例もあるのかと目から鱗の思いである。
まあ、そもそも方向性や求めているところが異なるので、探偵小説としてはそれほど驚くようなものではないけれども、娯楽読み物としては悪いものではない。探偵小説のスタイル自体は押さえているし、リーダビリティも予想以上に高く、全般的に読者を楽しませるコツを知っている作家である。
「B/S(バランスシート)殺人事件」から「三行広告の女」までは新聞記者の立川大二郎と法医学教授の藤浪博士が活躍する作品である。この二人の出会いを描く「B/S(バランスシート)殺人事件」は題材も設定も独創的な一作。
「東京探偵局」はその名のとおり東京探偵局を率いる局長・樽見樽平を主人公とする連作短編で、個人的な事件ではなくやはりスパイものが多くなっている。樽見の名探偵ぶりもさることながら、東京探偵局という組織的調査によって事件を解決するところが見どころか。局員や秘書でもある実の娘との掛け合いも楽しい。
「サンキュウ氏と眼鏡」から「三人の秘密」まではサンキュウ氏こと三四田三九(みすた・さんきゅう)が活躍する。ビルのオーナーにして私立探偵を開業している変わり者だが、けっこう気のいい若者という雰囲気。なんとなくその設定からぼやけており、名前のインパクトはあるが本書に収められている探偵の中では一番印象が薄い。
「消えた花嫁」以下は北野三郎公安委員シリーズ。地方都市の公安委員を主人公とするアイデアは自身の経験を活かしたものらしいが、地方都市という設定をふんだんに活かしたやりとりが読みどころ。
「B/S(バランスシート)殺人事件」
「五人の乗客」
「東京間諜戦」
「三行広告の女」
「東京探偵局」
「第一話 盗まれた軍艦」
「第二話 白骨の謎」
「第三話 東京第五部隊」
「第四話 療養院の秘密」
「第五話 銀座間諜戦」
「第六話 街の警視総監」
「サンキュウ氏と眼鏡」
「サンキュウ氏と記憶箱」
「天眼鏡」
「トランプ物語」
「踊り子殺人事件」
「胃痛患者」
「三人の秘密」
「消えた花嫁」
「五月祭前後」
「狸と狐」
全体的には探偵小説と言いながらスパイものや間諜ものなど時局を反映した作品が多い。もちろん当時の事情がそうさせているところは大きいのだが、解説によると北町はむしろそれを積極的に活かし、しかもユーモアを前面に打ち出した。
これは北町が戦前の変格探偵小説、特におどろおどろしいものがあまり好みでなかったことの反動であり、他の作家が戦争のために限られたジャンルしか書けず苦労していたとき、逆に北町一郎はその限られたジャンルがピタリとはまったわけである。そうか、こういう例もあるのかと目から鱗の思いである。
まあ、そもそも方向性や求めているところが異なるので、探偵小説としてはそれほど驚くようなものではないけれども、娯楽読み物としては悪いものではない。探偵小説のスタイル自体は押さえているし、リーダビリティも予想以上に高く、全般的に読者を楽しませるコツを知っている作家である。
「B/S(バランスシート)殺人事件」から「三行広告の女」までは新聞記者の立川大二郎と法医学教授の藤浪博士が活躍する作品である。この二人の出会いを描く「B/S(バランスシート)殺人事件」は題材も設定も独創的な一作。
「東京探偵局」はその名のとおり東京探偵局を率いる局長・樽見樽平を主人公とする連作短編で、個人的な事件ではなくやはりスパイものが多くなっている。樽見の名探偵ぶりもさることながら、東京探偵局という組織的調査によって事件を解決するところが見どころか。局員や秘書でもある実の娘との掛け合いも楽しい。
「サンキュウ氏と眼鏡」から「三人の秘密」まではサンキュウ氏こと三四田三九(みすた・さんきゅう)が活躍する。ビルのオーナーにして私立探偵を開業している変わり者だが、けっこう気のいい若者という雰囲気。なんとなくその設定からぼやけており、名前のインパクトはあるが本書に収められている探偵の中では一番印象が薄い。
「消えた花嫁」以下は北野三郎公安委員シリーズ。地方都市の公安委員を主人公とするアイデアは自身の経験を活かしたものらしいが、地方都市という設定をふんだんに活かしたやりとりが読みどころ。
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