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江戸川乱歩『明智小五郎事件簿IX「大金塊」「怪人二十面相」』(集英社文庫)
『明智小五郎事件簿IX「大金塊」「怪人二十面相」』を読む。
おなじみ明智小五郎の登場作品を事件発生順に並べたコレクションだが、ようやく九巻目に突入。本書ではいよいよ少年向け作品が収録されており、「大金塊」と「怪人二十面相」の二編という陣容である。
ちなみに「怪人二十面相」は乱歩の少年向け第一作であると同時に、二十面相と少年探偵団が初めて登場する作品でもある。当然ながら事件発生順でも最初にくる作品かと思っていたが、なんと意外にも「大金塊」の方が先になるらしい。
この辺りは編者の平山雄一氏による巻末の「年代記」に詳しいので、興味ある方はぜひそちらで。
さてまずは「大金塊」だが、こんな話。
ある夜のこと、資産家の宮瀬家に泥棒が入る。しかし盗まれたのは価値のある骨董品ではなく、一枚の破れた紙きれだった。だがこの紙切れこそ、先祖が残した莫大な金塊のありかを示した紙を半分にしたうちの一枚だったのである。
宮瀬氏の相談を受けた明智小五郎は、助手の小林少年を使い、敵のアジトへ潜入させることを思いつくが……。
「大金塊」は明智や小林少年は登場するものの、二十面相は登場しない。また、探偵小瀬というよりは冒険小説としての要素が強くなっているのが最大の特徴だろう。
これは時局的に探偵小説そのものが不謹慎というふうに判断されたための作風転換であり、乱歩の少年向けとしてはやや異色の部類になる。それでも暗号の解読や敵アジトでの小林少年の活躍、少年たちの洞窟での冒険など盛りだくさんで、面白さは文句なし。むしろ子供向けとしてはより効果的で、十分成功作といえるだろう。
続く「怪人二十面相」は、上でも書いたように、少年向け第一作であり、かつ二十面相と少年探偵団の初登場作品である。
実業界の大物・羽柴壮太郎のもとに、いま世間を騒がせている怪人二十面相から、ロマノフ王家に伝わる宝石をいただくという予告状が舞い込んだ。奇しきも羽柴家では、家出をしていた長男の壮一が十年ぶりに帰国するという知らせも届き、再会した壮太郎と壮一は二人で宝石の見張りをすることになる。
しかし、二十面相の意外な手段によって宝石は奪われ、さらには次男の壮二まで誘拐され、二十面相は荘二と引き換えに安阿弥の作といわれる観世音像を要求した。壮太郎は明智小五郎に相談をするが、あいにく明智は不在で、その助手の小林少年が駆けつけるが……。
こちらも実に素晴らしい。管理人が初めて乱歩の子供向けを読んだのは小学三年生ぐらいの頃だが、あまりの面白さにそのままポプラ社のシリーズを残らず買ってくれとねだった記憶がある。
推理の部分と冒険の部分の絶妙なバランス、数々のギミックやトリック、明智と二十面相の駆け引き、最後は子供ではなく必ず明智登場によってピリッと話が締まるところなど、いま読んでも色褪せるどころか、時を超えてなお輝きを放っている。
さすがにトリッキーなネタのほとんどが(「大金塊」もそうだが)、よその作品からの借り物なのだけれど、まあ、それは時代ゆえのこととして見逃しましょう(笑)。
書き出しの一文「そのころ、東京じゅうの町という町、家という家では、二人以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。」
そして締めの「明智先生ばんざあい」「小林団長ばんざあい」というセリフに至るまで、すべてが印象的。ああ、やっぱり乱歩はすごい。
おなじみ明智小五郎の登場作品を事件発生順に並べたコレクションだが、ようやく九巻目に突入。本書ではいよいよ少年向け作品が収録されており、「大金塊」と「怪人二十面相」の二編という陣容である。
ちなみに「怪人二十面相」は乱歩の少年向け第一作であると同時に、二十面相と少年探偵団が初めて登場する作品でもある。当然ながら事件発生順でも最初にくる作品かと思っていたが、なんと意外にも「大金塊」の方が先になるらしい。
この辺りは編者の平山雄一氏による巻末の「年代記」に詳しいので、興味ある方はぜひそちらで。
さてまずは「大金塊」だが、こんな話。
ある夜のこと、資産家の宮瀬家に泥棒が入る。しかし盗まれたのは価値のある骨董品ではなく、一枚の破れた紙きれだった。だがこの紙切れこそ、先祖が残した莫大な金塊のありかを示した紙を半分にしたうちの一枚だったのである。
宮瀬氏の相談を受けた明智小五郎は、助手の小林少年を使い、敵のアジトへ潜入させることを思いつくが……。
「大金塊」は明智や小林少年は登場するものの、二十面相は登場しない。また、探偵小瀬というよりは冒険小説としての要素が強くなっているのが最大の特徴だろう。
これは時局的に探偵小説そのものが不謹慎というふうに判断されたための作風転換であり、乱歩の少年向けとしてはやや異色の部類になる。それでも暗号の解読や敵アジトでの小林少年の活躍、少年たちの洞窟での冒険など盛りだくさんで、面白さは文句なし。むしろ子供向けとしてはより効果的で、十分成功作といえるだろう。
続く「怪人二十面相」は、上でも書いたように、少年向け第一作であり、かつ二十面相と少年探偵団の初登場作品である。
実業界の大物・羽柴壮太郎のもとに、いま世間を騒がせている怪人二十面相から、ロマノフ王家に伝わる宝石をいただくという予告状が舞い込んだ。奇しきも羽柴家では、家出をしていた長男の壮一が十年ぶりに帰国するという知らせも届き、再会した壮太郎と壮一は二人で宝石の見張りをすることになる。
しかし、二十面相の意外な手段によって宝石は奪われ、さらには次男の壮二まで誘拐され、二十面相は荘二と引き換えに安阿弥の作といわれる観世音像を要求した。壮太郎は明智小五郎に相談をするが、あいにく明智は不在で、その助手の小林少年が駆けつけるが……。
こちらも実に素晴らしい。管理人が初めて乱歩の子供向けを読んだのは小学三年生ぐらいの頃だが、あまりの面白さにそのままポプラ社のシリーズを残らず買ってくれとねだった記憶がある。
推理の部分と冒険の部分の絶妙なバランス、数々のギミックやトリック、明智と二十面相の駆け引き、最後は子供ではなく必ず明智登場によってピリッと話が締まるところなど、いま読んでも色褪せるどころか、時を超えてなお輝きを放っている。
さすがにトリッキーなネタのほとんどが(「大金塊」もそうだが)、よその作品からの借り物なのだけれど、まあ、それは時代ゆえのこととして見逃しましょう(笑)。
書き出しの一文「そのころ、東京じゅうの町という町、家という家では、二人以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。」
そして締めの「明智先生ばんざあい」「小林団長ばんざあい」というセリフに至るまで、すべてが印象的。ああ、やっぱり乱歩はすごい。
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