渡辺剣次/編『13の暗号』(講談社) - 探偵小説三昧
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渡辺剣次/編『13の暗号』(講談社)

 仕事で滅多にお目にかかれないようなトラブル勃発。何とか事後処理がうまくいき大事には至らず。原因はうちではなかったが、責任上、お客さんの会社を回って陳謝。つまらない一日である。

 読了本は『13の暗号』。渡辺剣次の編集による「暗号」をテーマにしたアンソロジーで、このシリーズは他にも『13の密室』や『13の凶器』などがある。刊行は1975年なので古くもなく新しくもなく、といったところだが、クラシックのレアどころを中心としたラインナップは当時も今も実に魅力的である。
 ただ、「暗号」というテーマはさすがに一流作家においてもなかなかハードルが高そうで、時代の古いものは暗号自体がいまいち。逆に凝りすぎた暗号は解かれたときの感動に乏しく、ミステリーにおける上質の暗号を作ることの難しさを感じる。そういう意味では乱歩の「二銭銅貨」は(いくつか疵があるにせよ)、当時としては画期的な作品だったといえるだろう。
 気に入った作品は佐野洋「三億円犯人の挑戦」、幾瀬勝彬「紙魚の罠」、鮎川哲也「砂の時計」あたり。下手をすると暗号興味だけで無味乾燥になりがちなところに、プラスアルファの要素を巧みにミックスさせたあたりを評価したい。特に幾瀬勝彬はほとんど読んだことのない作家だが、「紙魚の罠」は余韻が素晴らしい。
 なお、本書は暗号テーマのアンソロジーだが、ダイイング・メッセージものがいくつか入っているのはいただけない。作品の出来とは関係ないが、やはりダイイング・メッセージと暗号はまったく別物でしょう。

江戸川乱歩「二銭銅貨」
甲賀三郎「アラディンのランプ」
水谷準「司馬家崩壊」
海野十三「獏鸚」
大阪圭吉「闖入者」
木々高太郎「虫文字」
岩田賛「風車」
九鬼紫郎「暗号海を渡る」
仁木悦子「粘土の犬」
火野葦平「詫び証文」
佐野洋「三億円犯人の挑戦」
幾瀬勝彬「紙魚の罠」
鮎川哲也「砂の時計」

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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