Posted in 07 2012
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レイ・ゴールデン『5枚のカード』(ハヤカワミステリ)
レイ・ゴールデンの『5枚のカード』を読む。ひと頃ポケミスで集中的に紹介されてきた映画の原作のシリーズ、「ポケミス名画座」からの一冊である。
こんな話。時ならぬ金鉱の発見で好景気に沸く鉱山町グローリー・ガルシュ。しかし、小さいながら平和だった町には、大金を夢見て余所者も多く集まり、その様相を一変させていた。そんなグローリー・ガルシュで、町一番の大牧場で働く牧童が次々に殺されるという事件が起こる。被害者はすべて、かつて町で起こった私刑事件の関係者だった。
そんな頃、グローリー・ガルシュ出身の賭博師ヴァン・ナイトヒートがグローリー・ガルシュを目指していた。ナイトヒートはかつての私刑事件に巻き込まれていたため、自らも狙われていることを察して、事件に決着をつけるべく戻ってきたのだ……。
長篇にしては短い作品ながら、主人公ヴァン・ナイトヒートをはじめとする魅力的なキャラクターが満載で、なかなか読ませる。
基本的には西部劇なのだが、私刑事件の関係者を次々と葬る犯人がはたして誰なのかというミステリ的興味で引っ張る……のかと思いきや、序盤でさっさと犯人は明かされ、あとは犯人と犠牲者、主人公の絡みによるサスペンス要素の方がメインとなる。なんせ曲者揃いの登場人物ばかりなので、犯人捜しを早々に放棄するのは実にもったいないなぁと思いながらも、結局は本書は西部劇なのだから、こればかりは仕方ない。
ただ、ミステリ的興味が低いといっても、あくまでそれは謎解き的興味の話。解説でも書かれているとおり、ハードボイルドと西部劇の親和性は実に高く、そちら方面の興味で読む分には非常に楽しめる。正直、読んでいる間は本当にハードボイルドを読んでいるような感覚であった。
もちろん必ずしも西部劇=ハードボイルドというわけではなく、これは本作品における主人公の性格付けがしっかりしているからであることは言うまでもない。減らず口をたたき、女にちょっかいを出しつつも引くべきときは引き、どのような場面でも己の主義は曲げない。当然、人とぶつかる場面は数多いのだが、ときに散々な目にあっても、自分は変えない。この主人公の生き様は、そこらへんのハードボイルドよりよほどハードボイルドだ。
難を挙げれば、主人公が賭博師の割には、ポーカー場面の盛り上げがさほどではないところか。とはいえトータルでは十分楽しめる一冊であり、少なくともハードボイルド好きなら読んで損はない。
こんな話。時ならぬ金鉱の発見で好景気に沸く鉱山町グローリー・ガルシュ。しかし、小さいながら平和だった町には、大金を夢見て余所者も多く集まり、その様相を一変させていた。そんなグローリー・ガルシュで、町一番の大牧場で働く牧童が次々に殺されるという事件が起こる。被害者はすべて、かつて町で起こった私刑事件の関係者だった。
そんな頃、グローリー・ガルシュ出身の賭博師ヴァン・ナイトヒートがグローリー・ガルシュを目指していた。ナイトヒートはかつての私刑事件に巻き込まれていたため、自らも狙われていることを察して、事件に決着をつけるべく戻ってきたのだ……。
長篇にしては短い作品ながら、主人公ヴァン・ナイトヒートをはじめとする魅力的なキャラクターが満載で、なかなか読ませる。
基本的には西部劇なのだが、私刑事件の関係者を次々と葬る犯人がはたして誰なのかというミステリ的興味で引っ張る……のかと思いきや、序盤でさっさと犯人は明かされ、あとは犯人と犠牲者、主人公の絡みによるサスペンス要素の方がメインとなる。なんせ曲者揃いの登場人物ばかりなので、犯人捜しを早々に放棄するのは実にもったいないなぁと思いながらも、結局は本書は西部劇なのだから、こればかりは仕方ない。
ただ、ミステリ的興味が低いといっても、あくまでそれは謎解き的興味の話。解説でも書かれているとおり、ハードボイルドと西部劇の親和性は実に高く、そちら方面の興味で読む分には非常に楽しめる。正直、読んでいる間は本当にハードボイルドを読んでいるような感覚であった。
もちろん必ずしも西部劇=ハードボイルドというわけではなく、これは本作品における主人公の性格付けがしっかりしているからであることは言うまでもない。減らず口をたたき、女にちょっかいを出しつつも引くべきときは引き、どのような場面でも己の主義は曲げない。当然、人とぶつかる場面は数多いのだが、ときに散々な目にあっても、自分は変えない。この主人公の生き様は、そこらへんのハードボイルドよりよほどハードボイルドだ。
難を挙げれば、主人公が賭博師の割には、ポーカー場面の盛り上げがさほどではないところか。とはいえトータルでは十分楽しめる一冊であり、少なくともハードボイルド好きなら読んで損はない。