関西フィル/スクリーン・ファンタジア2007
6月17日に文化パルク城陽プラムホールで行われた関西フィルによる『スクリーン・ファンタジア2007』に行って来ました。
昨年、『組曲「宇宙戦艦ヤマト」』を演奏したところなので、プレリザーブの案内が来た時にはまだ演奏曲目が公表されていなかったのですが、念のために押さえておいたのだけど、その後に発表された演奏曲目にはあまり食指は動きませんでした。でも、せっかく押さえたチケットなので聴きに行って来ました。
演奏の関西フィルですが、去年はポップスオーケストラを名乗っていたのに今年はそうではないのは、後半の第2部がクラシック曲の演奏だからでしょうか。指揮は昨年と同じく関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫。ピアノ独奏が林佳勲という地元在住の中国人ピアニストです。
演奏曲目は以下の通りです。
(第1部)
01. オリーブの首飾り
02. 雨に唄えば
03. ムーン・リバー
04. シャル・ウィ・ダンス?
05. タイタニック・メドレー
06. 美女と野獣
07. マイ・フェア・レディより
(第2部)
08. モーツァルト
「ピアノ協奏曲第21番ハ長調」より第2楽章
09. ショパン
「ピアノ協奏曲第2番ヘ短調」より第1楽章
10. ショパン
「ノクターン第20番嬰ハ短調《遺作》」
11. モーツァルト
「交響曲第25番ト短調」より第1楽章
12. ヴォーン・ウィリアムズ
「グリーンスリーヴスによる幻想曲」
13. リスト
「ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調」
EC. マスカーニ
「歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲」
それでは順番に適当に印象や感想などを。
(第1部)
第1部は有名な映画音楽です。
「オリーブの首飾り」
昨年亡くなったポール・モーリアの演奏の代表的な曲ですが、そのことには触れられてなかったですね。映画音楽というには曲だけが一人歩きして有名になってるので、何の映画かはあまり知られていません。
軽快なピアノとハープにドラムス、ストリングス、タンバリンといったところがお馴染みのメロディーを演奏。テンポはやや速め。後半盛り上がってきたところで低音のブラスが加わってくるという感じ。
去年も演奏された曲ですが、去年は聴こえなかったハープがはっきり聴こえたのは席の関係かな。
こういう映画音楽等のポップス系の曲はオリジナルの楽譜を取り寄せるのが難しいから、関西フィルではトランペットの川上さんという人が独自にアレンジして譜面を起こしてるそうです。
「雨に唄えば」
同名のミュージカル映画の主題歌です。
うきうきするようなテンポに爽やかなストリングス。アクセント的に入るチューバのフレーズがユニークですね。チェロとヴィオラだけの旋律が続いた後、後半ブラスとドラムスが華々しく奏でてきます。
ラストはゆっくりとしたテンポでフェードアウトするようなところをハープが微かに奏でます。
「ムーン・リバー」
『ティファニーで朝食を』の主題歌。指揮者はヘップバーンの出てるが好きみたいですね。
シンフォニックなブラスのフレーズから始まり、ストリングスとフルートのワルツにサックスが絡んでくる感じ。後半、トランペットが加わって華々しく雄大に。ラストはスローダウンして終わっていく中、チューブラベルがアクセント的に入ります。
「シャル・ウィ・ダンス?」
ハリウッドでもリメイクされていますが、オリジナルの日本版の方かな? 見たことも聴いたこともないのでちょっと……。周防義和っぽい音楽かといえばそういう気もしますが……
ゆっくりとユーモラスに弾むような出だし。ストリングスがスイング風に奏でられ、続いて鉄琴の伴奏を伴ってスタッカートなフレーズを奏でます。華やかなブラスのフレーズが入った後、ややテンポが小刻みなストリングスのワルツに続きます。最後はスピードアップしてマーチ風に展開していきます。
いろいろな要素がメドレーで奏でられるユニークな曲ですね。
「タイタニック・メドレー」
お馴染みの『タイタニック』から、出航の時の音楽と主題歌のメロディーをストリングス・アンサンブルだけで。(木管と金管は退場です)
ヴィオラのやや低いフレーズの出だしに続き、流れるようなバイオリンがテンポ良く旅立ちのテーマを奏でます。チェロがひたすらリズムを奏でてるのはロックバンドのベースギター的な役割でしょうか。一方でコントラバスもゆったりと低音を奏でていますが。
ややアレグロ風の激しいフレーズが入った後、ゆっくりとしたセレナーデ風に。優雅に盛り上がってテーマソングのメロディーが入ってきます。バイオリンとヴィオラが交互に主旋律を奏で、チェロとコントラバスはリズムに徹してます。
「美女と野獣」
これはディズニーのアニメ映画ですね。今度はストリングスにピアノとパーカッションが加わります。
分厚いストリングス・アンサンブルの始まり。テンポが速く流れるようなバイオリンとティンパニーのリズム。静かになったところでチェロのソロとピアノのフレーズが入ります。バイオリンとピアノの美しいフレーズから、派手にリズムセクションが加わってくる展開。ラストは一転して駆けるようなアップテンポのバイオリンとドラムスが奏で上げます。
「マイ・フェア・レディより」
同名のミュージカル映画よりメドレー。これもヘップバーンですか。ここで木管と金管が戻ってきました。
華々しい出だし。優雅で分厚いワルツ。スピーディーに一転して華々しいスケルツォ。チェロのソロとトライアングルの調べから、ヴィオラとコントラバスのフレーズが続き、さらにバイオリンやブラスが加わって雄々しく奏でられます。
全体が盛り上がったところでトロンボーンのソロの短いフレーズが入り、木管の静かな旋律に変わります。バイオリンのソロからゆっくりとしたノクターン風のフレーズ。一転してコミカルな展開。ホイッスルがちょっとうるさい感じ。ラストはオーケストラ全体で盛り上がってテンポアップして終結。
(第2部)
第2部は映画の中で使われたクラシック曲ということですが、曲を優先に選んだって感じで、誰も見たことが無いようなマイナーな映画が散見されます。
モーツァルト
「ピアノ協奏曲第21番ハ長調」より第2楽章
モーツァルトは専門外なのでよくわかりませんが、これは『みじかくも美しく燃え』とかいう19世紀のスウェーデンで起こったある軍人とサーカス芸人の娘との間の悲劇を描いた映画で使われてたそうです。
静かで優雅なバイオリンによる主題で始まり、やがて木管が加わり、主題が変奏されていきます。ピアノがソロで主題を奏で始め、やがてストリングスが静かに伴奏を始めます。ピアノのゆったりとした展開の後、再び主題の変奏。やや沈痛に展開するピアノに、重く悲しげに掛け合うストリングス。最後はピアノが再び明るく主題を奏でた後、重々しく展開していきます。
ショパン
「ピアノ協奏曲第2番ヘ短調」より第1楽章
これは『楽聖ショパン』というショパンの生涯を描いた映画に使われてたってことですが、ショパンの映画でショパンの曲が使われているのは当然って気がしますから、あまり音楽上の効果とは関係無さそうな気がしますね。
ショパンは昔、ブーニンやダン・タイ・ソンの弾くピアノ曲をよくFMのエアチェック等で聴いていましたが、ピアノ曲以外は初めてですね。
やや激しいストリングスのアレグロ気味の展開。クラリネットのソロが入った後、ストリングスのフレーズ。分厚いバイオリンのユニゾンとアクセント的なブラスのフレーズの繰り返し。
割り込むように始まるピアノソロ。沈痛かつ激しく、そしてストリングスの静かな伴奏が始まります。軽やかで力強く踊るようなピアノのタッチ。ショパンらしいフレーズが入ります。
朗々と奏で続けるピアノ。激しくなったり軽やかになったり、伴奏のストリングスが振り回されてるような感じがします。そして激しく盛り上がるオーケストラ。やがてゆっくりと静かに帰ったところで、ピアノが協調的に奏で始めます。
ピアノがオスティナート風に同じフレーズを繰り返します。大きくアップテンポで盛り上がるオーケストラ。優雅なピアノの展開が続き、やがて激しい展開を見せた後、オーケストラが曲を締めくくります。
ピアノコンチェルトというとピアノとオーケストラが反発しあったり協調したりして掛け合うようなイメージがあるんですが、この曲ではピアノが鳴ってる間はオーケストラはほとんど伴奏に徹している印象ですね。
ショパン
「ノクターン第20番嬰ハ短調《遺作》」
これは『戦場のピアニスト』で使われた曲とのことです。ショパンのノクターンなら他にもっと有名で数多くの映画に頻繁に使われてる曲があるように思うのですが、近年の話題作ということで選んだんでしょうか。
静かな始まり。沈痛なメロディー。小刻みな旋律でやや盛り上がっていきます。スタッカートな短いフレーズからゆっくりと沈痛なフレーズへ移って行き、さらに激しく展開していきます。最後は静かで穏やかに奏でられます。
モーツァルト
「交響曲第25番ト短調」より第1楽章
これは『アマデウス』に使われた曲ってことですが、これもモーツァルトを描いた映画だからモーツァルトの曲は当たり前って感じですね。
激しくスピーディーなストリングスのユニゾンで始まり。スローダウンして静かなフレーズに転じた後、ブラスが加わって華々しく。
ストリングスの華やかな展開が続き、やがてスピーディーでスリリングに、どこかで聞き覚えのあるようなフレーズが奏でられます。やがて激しく展開して終わります。
ヴォーン・ウィリアムズ
「グリーンスリーヴスによる幻想曲」
これは『西部開拓史』という映画で使われてたとのこと。
フルートのソロとハープの旋律による始まり。ゆっくりとしたストリングスが、どこか懐かしいような主題の旋律を奏でます。
ヴィオラとチェロによる低音のフレーズが続き、バイオリンが高音でスタッカートを奏でます。ストリングス全体で優雅なフレーズを奏で上げると、再び冒頭のフルートとハープの旋律に戻り、高音のバイオリンで主題の旋律を繰り返します。
リスト
「ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調」
これは『オーケストラの少女』で使われたということですが、指揮者が言ってた『トムとジェリー』の方が親しみやすいですね。
宿命的な重々しい始まり。チューバやコントラバスの低音が響きます。
葬送行進曲風のフレーズからクラリネットのアクセントが入り、木管の加わった穏やかなフレーズが始まります。そしてストリングスによるスタッカートなメヌエット風のダンス曲。
再び冒頭の重々しいフレーズ。より重く沈痛で力強い葬送行進曲。クラリネットのソロからストリングスのゆったりとした行進曲。
今度は低音で静かに流れる冒頭のフレーズの旋律。小刻みに盛り上がってくるストリングスのメヌエット。そしてスリリングでアップテンポに展開していきます。
オーケストラ全体で盛り上がり、激しく、楽しく、弾むような演奏。ストリングスによるスピーディーなユニゾン。行進曲風にテンポアップして盛り上がり、スピーディーな駆けるような展開がオーケストラ全体に広がります。
全体が激しく盛り上がった後、一転スローダウン。ラストは畳み掛けるように展開して終わります。
ついこの前、大阪フィルの演奏で聴いた曲ですが、会場の音響だか編成の関係なのか今回の関西フィルの方がパートの強弱がはっきりしていて音がわかりやすかったかな。
(アンコール)
マスカーニ
「歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲」
これは『ゴッドファーザーPart3』で使われていたらしいです。
静かに美しいストリングスと木管の調べ。ハープが加わって、どこか懐かしいような旋律で盛り上がっていきます。歌い上げるようなバイオリンのユニゾンが見事です。
☆ ☆ ☆
去年に比べると、後半にクラシック曲が入ってるからオーケストラのコンサートとしては本格的なんでしょうけど、音楽からみた選曲はともかく、映画のタイトルから見ると渋い作品ばかりというか、華やかさが足りない感じですね。日本のアニメや伊福部昭とまではいわないけど、せめてジョン・ウィリアムズの作品が1曲でも入ってたら印象がずいぶん違ったでしょうけど。
林佳勲のピアノは線の細い、軽やかで流れるようなタッチでしたが、このところ聴き込んでた羽田健太郎のピアノに比べると硬くて引っ掛かり気味のような気がしました。
今回の物足りないところは8月のザ・シンフォニーホールでの『サマー・ポップス・コンサート』に期待したいと思いますが、さて、どうでしょうか。
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