多聞(タモン)という犬が主人公。
東日本大震災で、飼い主と離ればなれになったであろう多聞が、南に向かう途中に出会う人々の様々な人間模様を、連作短編の形態で書かれています。
各章で登場する人たちは、飼い主を失いボロボロの姿で彷徨う多聞と出会い、そんな多聞を放っておけなくなって、飼い主を探しながらも自分で飼うことにします。
多聞は賢い犬で、出会う人の心のよりどころとなります。
多聞はいつも南を向いている。
南に会いたい人がいるのに違いない。
でも、震災があったのは東北なのに、なぜ南?と不思議に思いながら読み進めました。
多聞が出会う人たちは、さまざまな問題を抱えていて、多聞のおかげで幸せになるのかな?と思いきや、亡くなってしまったりすることもあって、意外な結末が多かったです。
でも、人の最期に犬がいてくれるということが救いの物語なんだとも思えました。
犬好きな人は、素直にこの物語に感動できるはずです。
そうでない人も・・・
単なる不思議な犬との出会いと考えると、なんだか嘘くさくなりますが、登場人物の深層心理が、犬となって現れたと考えると、面白いかも知れません。
最終章の「少年と犬」で、多聞はやっと会いたい人との再会を果たします。
少年を守りたいために、多聞は果てしない旅をしていたのかと、ウルっとしてしまいました。
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