読書な毎日

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お気に入りの本の感想です。

「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」丸山正樹


かつてNHKでドラマ化され、視聴しましたが、よく内容が把握できずに終わってしまったので、原作を読むことにしました。
ドラマでは、主人公が草彅剛でしたので、原作も草彅剛のイメージで読んだので、すぐに物語に入っていけました。

聴覚ハンデイを持つろう者同士の間に生まれた耳の聞こえる子供を、英語で「コーダ」と言います。
この「コーダ」として生まれた荒井尚人が主人公。
尚人は、ある理由で長年勤めた警察事務の仕事を辞め、生活のため手話通訳士になります。

序盤は、この手話通訳士の試験や、資格を取ったあとの仕事の内容等々が語られ、なかなか興味深い内容でした。
尚人は通訳士としての実力を認められ、裁判の法廷通訳人の仕事に就くことができました。
裁判において、聴覚ハンデイを持つ人達が、たくさんの不利益を被ってしまった現実が痛々しかったです。

耳の聞こえない家族の中で唯一聞こえる尚人は、家族の通訳の役割を担いながらも孤独を感じ、健常者の中に入ってもまた別の孤独感に襲われる。
この「コーダ」の人達の心情がとてもよく描かれていました。

後半は、サスペンス色が強まり、殺人罪で逮捕された男・門奈一家を巡る謎が気になって一気に読めました。

尚人の記憶では、門奈一家には娘が二人いたはずなのに、一人しかいないと言われてしまいます。
「おじさんは私たちの味方?それとも敵?」と尚人に質問した少女は誰だったのか?

真犯人を巡っての意外な事実と家族愛。
とても悲しい出来事ではありましたが、ラストは救いもあって読後感は爽快です。

作者のあとがきを読むと、この本ははじめ「関係者」にしか読まれていなかったそうです。
それが「読書メーター」で評判になり、一気に読まれだしたということでした。
ドラマにもなってホントに良かったと思いますが、やはり原作はより深い内容になっていて、多くの人に読んでもらいたい本です。


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「源氏物語」6・7・8 角田光代





源氏物語 8 古典新訳コレクション (河出文庫)
源氏物語 8 古典新訳コレクション (河出文庫)

とうとう最後まで、読み切りました。
大河ドラマが終わらないうちに読み終えてホッとしました。
ドラマで、紫式部(まひろ)役の吉高由里子が源氏物語を書き始るシーンを見た時は、「やっときたか!」となんだか嬉しかったです。
最近では、宇治川を眺めながらまひろと道長が語り合う「川辺の誓い」の時、ちょうど浮舟入水事件を読んでいたので、物語とリンクして、とても感慨深かったです。

源氏物語は、主人公・光源氏が亡くなったあとも続くというのは知ってました。いわゆる続編というものでしょうか。
続編になる前に、光源氏はどんな最期をとげるのかなと思っていたら、なんと「雲隠」と書かれているだけ。
ドラマでいう「ナレ死」かな(笑)

光源氏の死後は、宇治に舞台を移し、息子の薫が主人公となります。
一応、息子だけど、実は・・・という人物を主人公にするところが心憎いです。

薫のライバルとして登場するのが匂宮。
匂宮は、薫が何もしなくても良い香りがして人を引き付けるのに対抗心を燃やし、衣類に香を焚きしめていたというのも面白いです。

源氏物語の続編ともいえる「宇治十帖」は、この二人に翻弄された女たちの悲劇の話でした。
特に、薫が愛した亡き大君に似ていたことから、薫から寵愛を受けた浮舟が、匂宮からも求愛され、悩んだ末に、行方不明になってからの話が、とても興味深かったです。

入水して亡くなったと思われていた浮舟は、実は生きていました。
横川の僧都と尼たちに意識不明で倒れているところを助けられ、尼たちと一緒に暮らすようになります。
これで穏やかに暮らせるかと思いきや、妹尼の亡くなった娘婿・中将にまたしても言い寄られてしまします。
今で言う、薄幸美人ということでしょうか。
浮舟はこれですっかり現世が嫌になり、出家してしまいました。

今度こそ穏やかに暮らせると思ったのに、薫が浮舟が生きていることを知ってしまい・・・・・。
さあ、どうする?というところで、物語は終わっています。

ここで終わってしまうのか!と驚きもありましたが、名作と言われるものは、古典の時代からモヤモヤ状態で終わってしまうものなんだなと納得。

男たちの執拗なまでの執念深さと、それを断り切れない当時の女性の弱さが如実に描かれた物語でした。
しかしながら、男たちに翻弄されてばかりの浮舟でしたが、結局誰のモノにもならなかったことを考えると、案外当時の女性たちにも自分の意思を貫きとおす、強さがあったのかもしれません。

現代にも通じる、ハラハラドキドキの物語の展開。
美男・美女がたくさん登場し、エンタメ性にも優れています。
それだけではなく、和歌で恋のやりとりをする当時の風流な文化が鮮やかに描き出され、私も雅な気分に浸ることができました。

今まで源氏物語の面白さがわからなかった私ですが、今回角田光代さんの訳で、最後まで読むことができ、名作と言われる所以が良くわかりました。


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「赤と青のガウン」彬子女王


皇室に詳しくない私は、彬子女王の家系もわからず、本文を読む前にまずそこから調べなくてはなりませんでした。

彬子女王は、故寛仁親王殿下の第一女子。
寛仁親王は髭の殿下という異名があり、私も知ってます。
女性皇族初の博士号を取得した方ということで、本書はオクスフォード大学に留学し、博士号をとるー赤と青のガウンのガウンを着るーまでの奮戦記です。

日本ではひとり歩きをしたことがない彬子さまが、イギリスでの初めての一人歩き。
いつもいるはずの側衛(皇宮護衛官)がいない生活になれるまでの不安な気持ち等、今まで知る由もなかった皇室の内面を見た気がして、興味深かったです。
側衛がつくことを窮屈に感じるのではなくて、むしろ家族のように頼りにしていたこと。
渡航する際は、送迎のみに側衛がつくということで、英語の不自由な側衛を彬子さまの方が心配するエピソードは、とても微笑ましかったです。

英国の交通事情の話とか、日本との違いにもビックリ。
日本のように時間どおりに電車やバスが来ることはないと、良く聞く話ですが、やはりホントなんですね。
一般の市民と同じように、交通の遅れに四苦八苦する姿はお気の毒でした。

もっと皇室の裏話とかが書かれているのかな?と思っていたのですが、ほとんどは博士号を取得するまでの、研究内容であるとか指導官の話、試験の厳しさに終始してました。
皇室の方が留学という話を聞くと、特別扱いで簡単に単位がとれるんじゃないかと思いがちですが、彬子さまの学問に対する熱意と努力は大変なもので、今まで私が思っていた皇室の方々のイメージが見事に覆りました。

とは言え、専攻は美術ということで、私は何の知識も持ち合わせてないし、著名な方々との交流記等々、所詮は雲の上の出来事だなという気持ちも否めませんでした。

寛仁親王が亡くなられた際の悲しみや、父親に対する感謝の気持ち、数々の思い出話には、ホロリとさせられました。

言うまでもないことですが、皇室の方とは言え、私たちと同じ人間なんだなということが、よくわかる本でした。


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