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リテラシーと理解について考える

「生活者の為の」近頃やってる家庭食の工夫(改題)

 はてなブッマークで宣伝したらアクセスが増えたので、個人的に家でやっている家庭食の工夫を少々書きます。「家庭料理」とまでいかないものも多いです。

     

1)サラダの工夫

 出来合いの野菜サラダを食べるときの工夫ですが、家でのサラダづくりの参考に。

 サラダというより「サラダ料理」といえるものにもなりますがサラダを単にドレッシングで食べるより野菜を多く食べられる「野菜料理」と見ます。

 

 例えばスーパーで半額とかになっている刺身や刺身用の魚でも比較的においしく食べる簡単な方法です、もちろん消費期限中にお召し上がりください。

 単純な方法としてはサラダに刺身を乗せドレッシング、ポン酢、麺つゆ酢、そのほか市販のカンタン酢やらっきょう酢やすし酢、お好みでマヨネーズ類などでもよいですので「刺身サラダ」にします。量は味を確かめて作ってください。

 もうひと手間かけるならそのたれ類に魚を「漬け」にして最低5分ぐらいあえてからのせて刺身を調味料として食べる方法です、これは魚を塩や酢につけたようになり弾力がまし生臭さも減り食感が向上します。

 上の刺身サラダと同じく混ぜてから食べてもよいです。

 ほかにはドレッシングの代わりに「漬物」を使う方法があります。

 食べやすく切った漬物を上から散らすか刺身と混ぜ合わせて5分ぐらいあえてからサラダと合わせます。

 これらは少し濃いめの味付けだと十分にご飯のおかず、汁気が少なければお好みでサンドイッチでも行けます。

 漬物や梅干しを刻んだものや辛い目のつくだ煮などの総菜を刺身に混ぜそのまま食べるという手もあります。

 釜揚げシラスなんかだとサラダ油オリーブオイルゴマ油と好みで柑橘酢や他の酢、香辛料を使えばそれで料理になります。

 塩焼き魚なんかでもできますし焼肉やスライス肉でも同じようなものです。うまみのあるものを使えば多くを「野菜料理」にできます。

 タンパク質だと他にはチーズを入れるのも定番ですし、豆腐を切るか単につぶしたものでも簡単です。

 ほかにサラダに使えるのが「スナック菓子」です、ポテトチップスやコーンスナックの基本的に甘くないものやかっぱえびせん揚げ菓子だけでではなく焼き菓子でも固くないものなら使えます。

 袋入りのものだとほんの少し空気が出入りするぐらい開け、袋ごとお好みでざっくりともみ砕いてからサラダに合わせます。菓子の塩分でサラダを食べる感覚です。サラダを食べたがらない子供さんでも口にしてくれることもあります。

 ナッツ類でもフードカッターなどで粗く刻んだものを混ぜ合わせえると味付きだとそのままでもいけます。

 サラダにタンパク質とスナック菓子などを混ぜ、それにヨーグルトか牛乳を合わせ、出来ればそれに果物を添えれば簡単朝食にもできるでしょう。残ったサラダは麺つゆ酢や調味酢、ドレッシングにつければ漬物のにもなります、それで次のサラダの味付け身も使えます。

 サラダ料理には可能性があります。

 2)レトルト・冷食のパワーアップ

 近頃の冷凍食品の麺類やビザなんかは軽食としては大変良くできています、ただ実際に食卓に乗せるとちょっと寂しいと感じる場合もあります。

 これを「料理」にまでパワーアップするのは割と簡単です。

 ピザだとまずは単純にチーズを足しましょう、「追いチーズ」です。たとえば200円位でも売られているレトルトのビザでもスライスチーズでもシュレッドチーズでもたっぷり乗せれば相当パワーアップでます。

 そのうえでスライスベーコンやほかにもお好みの素材、肉の総菜やスライス肉、焼き魚でも刺身のの残りでもキノコやナスやトマト、切ってあるものでも好みのものなら何でもできます。

ちゃんと火を通せば豪華なピザになります。ペラペラのピザが食卓の主役にできます。

 ほかにも強いのは「シーフードミックス」です。

 レンジなどで加熱すれば冷凍焼きそばや焼飯を高級品に見せることができます。他にもスライス肉などでも同じです。ちょっとした半額食品でも具材を乗せれば本格風になります。

 ほかにはレトルトカレーでもこま切れ肉などを足せば豪華さが増します。半額小間切れ肉でも炒めてのせれば「和牛カレー」です。安売りの時に買い冷凍しておけば十分です。スパイスなんかも利用できます。

 冷凍ボイルホタテの大袋でも冷凍室に常備しておけばなんでも豪華料理に見せられます。あと、煮物に入れればうま味が驚くほど出ます。

 「かやくご飯の素」でも小間切れやミンチの鶏などの肉、シーフードミックスとか冷凍あさりなど魚介類を足すと豪華です。

 少しでも時間的、精神的、予算的に余裕があれば楽しめることができます。ご参考に。

 

 

  

 

 

「日本の音楽は欧米より遅れている」のか

 はてなブックマークで「日本のテレビドラマが韓国より20年遅れている」みたいな記事に「日本の音楽も欧米や韓国から20年遅れている」というまあ「コメント」が付いていました、賛同する人も少なくはないようです。

   

 個人的には今は海外の方が人気のある日本のHR/HMのBANDの「推し」をやっていて欧米の「Reactor」と呼ばれるYouTubeの映像多く見ています。

 特にプロのミュージシャン、音楽家(有名人を含む)のものは音楽理論や演奏、作曲などについての解説は面白く素人ながら勉強になります。

   

 そういった欧米のプロの意見はどうでしょう。

 「日本の音楽が遅れている」や「レベルが低い」「偽物だ」という「日本の音楽」全般をそのように評価する「プロ」を見たことがありません。

 むしろ日本の音楽の独自性の進化から学ぶことが多い、日本の音楽のレベルが高いという意見も多く見ます。コード数が多いのが日本のポップスの特徴だそうです。

 

  

 ただし日本の芸能界の主流の人気のあるロックバンドは「わからない」という意見が少なからず見られ、ポップスでも日本で人気の繊細なものは反応があまりよくないです。

 ただこれ上下優劣ではなく文化的な文脈によるもので世界第二位の独自市場を持ち邦楽というジャンルをもつ日本の一般の人たちが聞いてきたものが違い、日本人好みに調整されたものを自ら作り出した処が「わからない」という事になるのでしょう。

 日本人が「上手い」音楽より共感しやすい、自分の感情や人生の寄り添うといった音楽好みだというところも文化が違うのであり得ます。

   

 いまだに欧米コンプレックスを持つ古い考えの日本の「洋楽かぶれ」は流石に下火になり、40歳以下の人の多くはあまり気にしない、が普通で「洋楽かぶれ」はあまり相手にされなくなっています。

 

 実際には日本の現代ポップスやロックの一部は海外でも人気があります。 

 特にBABYMETAL海外主催ツアーで28万人を動員し、大スターといえますし、先輩格のPerfumeも海外で人気です。現在進行形で日本音楽史上海外での最大の成功例です。

 ADOやYOASOBI、米津玄師なども海外で実績を残しつつ、ONE OK ROCKやあ和楽器バンドはすでに実績があります。日本では無名でも海外では評価され、国内よりも海外で売り上げが倍以上というバンドも複数あります。

 ワンオクとYOASOBIの一部以外はほぼ日本語歌詞ですので「英語が出来ないからダメ」も迷信にすぎません。

もちろんK-POPが欧米や日本で大人気で日本のアイドルやポップスが押されているのは事実でしょう、ただそれは「日本の音楽が遅れている」という大げさなことではないのでしょう。

福田刃物工業様、日本特殊合金株式会社様、ublftbo様ごめんなさい。

 福田刃物工業様、日本特殊合金株式会社様、ublftbo様ごめんなさい。

 福田刃物工業様の「KISEKI:」という商品について粉末冶金製法であることから「粉末ハイス鋼」の一種だと思ってバカなこと書きました。すみません。

  

 粉末冶金でも鉄の比率が低い場合はマルテンサイト構造で切るのではなく、タングステンの硬度で切る場合があることを知りませんでした。

 日本特殊合金株式会社様もおそらく靭性を高める苦労がおありだったにもかかわらず、単に粉末製法である点のみに気を取られ、間違ったことを書きました。

 ごめんなさい。

 ublftbo様お手間をかけせてしまいました、ごめんなさい。

 一応ブログの議論には意味があると思いたいので許してください。 

 

 間違った批判をしてすみません。皆様への迷惑 謝罪します。 

 

 

失敗のこわさ

 もし、善意と正義感や実体験で言説をし、それが支持を得て運動になり同志から認められ何らかの評価を得たにもかかわらず、それに間違いや結果としてのやりすぎがあったりした場合、取り下げるのは難しいだろうなと思います。

  

 その評価が生活や人生における必要や大切なものになったら修正する方が損であったとき、過ちや行きすぎを認められないのは仕方ないのかもしれません。

 

 褒められたり、評価されることも恐ろしいことなのかもしれないでしょう。

 自分の人生も仲間の人生も簡単に曲がるのかもしれないと思うと言葉とは難しいものです。

読書メモ抜粋その9

はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在300冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/
  

料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)

料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)

科学の視点から料理を再検討、還元研究の分子調理学と技術の分子調理法。おいしさを感じる身体・知覚メカニズム。おいしさを構成する物性と調理工程の解説、味の再構築、可能性。味の最新科学をわかり易く紹介、好著 2015/01/11

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている

風味の脳神経科学「ニューロ・ガストロノミー」。口から鼻に上る匂いの役割、嗅覚の生理、受容体や情報処理の感覚機能、脳と五感、記憶と認識、言葉、意識。ヒト独自の味覚認知とは。最新研究。充実してるが難しい 2015/01/18

本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く

本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く

通俗心理学と心理学神話。脳神話催眠サブリミナル記憶喪失嘘発見器夢病気ロールシャッハプロファイリングカウンセリング犯罪等々間違った心理知識への科学的批判。フィクションの問題も。日本とは異なる側面。要注目 2015/02/01

人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)

人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)

民族学から見たミルクと乳製品の食文化史。西アジア,インド,モンゴル,欧州でのフィールドワークから発酵、クリーム分離、凝固剤、加熱濃縮という加工保存技術と利用。乳製品不利用も検討。広い視点から見る。好著 2015/02/08

神戸とお好み焼き 比較都市論とまちづくりの視点から (のじぎく文庫)

神戸とお好み焼き 比較都市論とまちづくりの視点から (のじぎく文庫)

2002年刊。地ソース、「にくてん」クレープ(のせ型)お好み焼き、まぜ型の一般化、地域ガイド、値段の推移。恐らく東京発祥の原型が関西花柳街に持ち込まれ駄菓子的な受容から現代商品へ。地域性、都市論、考現学的か 2015/02/15

技の天ぷら評判の天ぷら (旭屋出版MOOK)

技の天ぷら評判の天ぷら (旭屋出版MOOK)

飲食業向けmook専門書。現代てんぷら事情を老舗・名店ではなく気鋭の店の技術と工夫から。高級店から大衆店、混合業態も。天丼、天定、天茶、肉天、かき揚げ、串天、創作、麺類。油、粉、卵、温度、下処理。面白い 2015/02/22

世界の軍装図鑑 18世紀-2010年

世界の軍装図鑑 18世紀-2010年

近代軍服個人装備の流れを700超の良イラストと解説。国家の威信を示す初期の礼装と兵卒の軍装、両大戦期、特殊機能を持つ現代、異装の非対称戦、警察。兵器解説。兵器戦術政治で変化。20C以降は写真からの書き起こしか 2015/03/01

納豆の起源 (NHKブックス)

納豆の起源 (NHKブックス)

納豆史研究の検討。無塩発酵大豆とは。ラオス、タイ、ミャンマー、インド・ネパールのフィールドワーク。「民族」毎の多様性。加工、形状、味付や植物利用等。照葉樹文化論の検証。多元発生説、発展段階論。基礎研究 2015/03/15

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

カリスマ高級リテールベーカリーのパン論。略史と著者経歴から。デクレ・パン,多加水,長時間低温発酵,発酵種とイースト,品種と産地・製粉,灰分と残留酵素,水,モルトエキス,機器や窯。孤高の技術,刺激的。健康説等要検証 2015/03/22

江戸の弾左衛門支配と異なる大坂の非人=貧人像。転びキリシタンを軸に「乞食」を纏めた垣外(かいと)構造。四天王寺と結ぶ天王寺垣外の偽史的伝承と権益。長吏と階層化。大坂の御用警使・治安警察と非人。実証的論考 2015/03/29

新書740魚で始まる世界史 (平凡社新書)

新書740魚で始まる世界史 (平凡社新書)

欧州保存食流通魚の近世史。オリエントから基督教迄の魚イメージと規範。中世以降の北方ニシンとタラ。ハンザ同盟からオランダ、イングランド、北米へ。領海、自由貿易ヘゲモニー。近代の萌芽を多くの資料から描く 2015/04/05

たこやき

たこやき

1993刊。たこやきの誕生と歴史と現在(出版当時)、周辺。大衆食史を学問的な手法を容れ、文献だけでなくその時代でしか行えない関係者への取材で探る。興味深い「古典」。原型の明石玉子焼と大阪のラジオ焼。文庫化済 2015/04/19

 文庫(古書)https://www.amazon.co.jp/dp/4062638002

埋立地月島100年史ともんじゃ。新興工業地と商業、露天商、地域社会。路地裏の小商いが時代の流れと共に経済的な理由で地域の代名詞に。フィールドワークから。女性の社会進出にも注視。個人史から社会を見る 2015/04/26

「お好み焼きの戦前史」を読んで

 週刊誌やガイドブックでよく知られた料理の「発祥の店」という記事を目にすることがあります。
 「オリジナル」を作るその名店に一度行きたいと思う人も少なくはないでしょう。「町おこし」にも使われます。
        
 「歴史」という学問が有るのはご存知でしょう。
 
 人々の営みの中ではもともと、口伝えによる先祖や地域の昔語りというものがあり、過去に起きたことから何かを学び、自分たちが何者なのかを位置づけます。 
 自分たちがなぜこのようにあるのか、どのような権利があり責任があるのか、どんな成功をしたか過ちを犯したか、誰とどういった繋がりがあるか、等というものです。
    
 最初は神話や伝説、教典などの形でその目的に合う事象が選ばれ、意味づけられ、「なぜそうなったのか」についての推察がされ物語としての「歴史」が生まれます。
 多くの国々や社会で、その国や社会、一族や集団の共通の認識としての「歴史」が共有されます。 
 社会や「世界」の在りかたの説明や、個人や階層・集団の顕彰の役割も持ちます。

 文字が生まれ記録が作られ「国」が生まれそしてギリシャと中国では新たな「歴史」という考え方が形作られます。
 物語としての歴史から、より確からしい根拠に基づく「歴史」への探求を目指すという考えが見いだされ、神話や伝説、教典とは異なる「学問としての歴史」に向かう道筋が示されます。 
   
 「近代」の成立とともに、「学問としての歴史」と「物語としての歴史」の相克が明らかになります。
 実際、ほんの少し前、それこそ20年ほど前までは学問と物語の歴史は混同されてたといえる部分がありました。
   
 社会的動物としての人間は多分に「意味」と「物語」の生き物です。
 事象から「意味」を読み取りそれを「物語」として理解する部分があります。理解した「物語」はヒトの認知の一部となり、世界や自分を解釈しアイデンティティーを形作ります。
  
 現在でもナショナリズムイデオロギーアイデンティティーともかかわる形で歴史は理解され、語られる部分はあります。  
 一方では事実関係による確からしさから歴史を読み解こうとする学問としての歴史であるはずです。
   
 人間というものは思い込みや偏見、価値観や理想といったものを持ち、事柄を理解する時に人間であるという部分から離れて物を見ることはできません。
 「学問としての歴史」は自分が人間であることを認め、なおかつ可能な限り「客観的」に事象を読み解こうとする試みでもあります。
             
 少なくとも日本では政治や社会の歴史に比べ、ヒトの日常の営みである風俗・文化の歴史は美術などの一部を除いては学問的な重要度が小さいとされているように思えます。 
 特に近代の風俗史は、研究の少ない分野なのかもしれません。 
 どの時代でも「今現在生きている」人にとっては当たり前でしかないことが記録されず、のちには当たり前でなくなり、人がいなくなり記憶が失われ、実際に何が起きたかがわからなくなることがあります。
 
 日本では明治時代に民俗学が生まれ、農村の「常民」の記録が残されるようになり、のちには考現学と呼ばれる試みも有りました。
 しかし一方では、ほんの少し前の出来事が記録されず残らなかったり、間違った伝承が共有されることも有ります。
     
 「お好み焼きの戦前史」は忘れられた「お好み焼き」の正体を「近代食文化研究会」(個人研究者)による「5年以上の時間をかけて収集した250以上の資料によって初めて明らかに」した論考です。
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX/*1
    
 まず今では覚えている人もいない100年前の盛り場の景色、時代の風俗が語られます。
 そして「お好み焼き」が現れます。
     
 著者はそこから歴史をさかのぼり、江戸の駄菓子の歴史から、明治の露店屋台、開国から西洋食文化の移入と日本での変容と受容、産業社会構造の変化、驚くべきウスターソースの実像、「消えた」お好み焼き、ラーメンブームの原像、全国への伝播、そして「お好み焼き」とは何だったのかを描きだします。
    
 現在までの「お好み焼きの歴史」等の大衆食の歴史とされるものの多くが、過去に一部の人が短期間調べただけの少数の記録や利害のある関係者からの証言、憶測でつくり出された事実とは異なる「物語」であると明らかにします。
 著者は料理書だけではなく、当時の新聞、観光情報案内、広告、調査資料、随筆等を渉猟し、先行研究を検証し、失われた歴史を再現します。
  
 江戸明治大正の都市の風俗、子供たちのくらし、時代の意識、人々の生業、そこから思いがけない「お好み焼き」の歴史が現れました。
 食文化に興味のある人や大衆食を愛する人には驚きの事実が示されます。
 「ほんの百年前」には多くの人が知っていた、わざわざ書き残すことでもないはずの日常が記憶から消え去り、50年前までは聞けば分かった話を調べだすという事の難しさと面白さに驚くでしょう。
   
 一つの記録を確認するために複数の情報源から事実関係を確定し、より確からしい実像に迫る知的誠実さには目を見張ります。
 一方では甘い調査から「物語」を生み出した先行書については厳しく検討します。安易に伝承や古い経験談といったオーラルヒストリーに頼ることはありません。
 記憶違いや宣伝効果、記述者の物語の仮託によってつくられた「偽史」を排し、「歴史」を描こうとします。
     
 「生き残った老舗」や名前の知られた「伝説の店・料理人」は物語の主役になりえます。
 記述者や客や「老舗」自体、時には自治体などもその物語に乗り、利用します。すでに「物語」が産業や地域振興の名のもとに「偽史」として定着していることも有ります。
 「発祥の店」「発祥の地」というものにはそういったものも少なくはありません(後継ぎが先代などからホラを吹かれただけなのかもしれませんが……)。
    
 豊富な史料から時代の霧を晴らし、かすかな手がかりを多く積み重ね、事実に迫ります。
 巻末の膨大な資料集はそれだけでも価値があるでしょう。
 この本で示されるように近代にはあまりにも多くの資料が有ります。それを調べ上げ、整理するのは大変手間がかかります。
 しかし近年では情報機器の進歩で比較的には調査が容易になったともいえるかもしれません。
   
 しかし今現在でも凡百の書き手による食の蘊蓄本は良くて数冊の先行研究、場合によっては種本一冊からの孫引きだけで書かれているものも多いのが実情です。
 最低限の基礎知識すらないままに経験談と小耳に挟んだだけの関係者の話だけでも本になります。何の裏取りもなく種本が推測としているものを事実のように書くものもあります。
 重要な基本文献に全く触れずに書かれた本も有りました。学者でも畑違いのジャンルに思い込みの間違った記述が入ることも少なくないです。        
 食に限らず、何らかの事実に触れる場合は自分の知識を顧みることも必要です。

 「食」については誰でも毎日ふれるもののため、容易に「わかった」つもりになりやすいものです。
 「大家(たいか)」とされる作者が安易な誤認を書き、誰も指摘すらしないことも目にしました。カリスマになると批判すら許されないのでしょうか。
 何十年も前の情報が現在でも検証されずに定説とされることも少なくありません。

 専門家ではない「文化人」などが調べもせずに書き、同じく知識も興味もない別のジャンルの評論家が好意的なレビューを書くことも少なくありません。
 食の歴史を学ぶ同士で「ライバル」でもある自分としても「お好み焼きの戦前史」は価格以上の価値のある著作であると断言できます。
    
 このブログでは過去に
「新・とんかつの誕生 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20150922/1442901832
「戦前のお好み焼き http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20160314/1457940308
 で同じテーマに取り組んでいますが「お好み焼きの戦前史」はそこでたどり着けなかった答えを明らかにする快著です。これからの食文化史、風俗史の新たな基準となる素晴らしい研究です。
     
 読み物としても面白いのでお勧めです。
 ご興味のある方は、「お好み焼きの戦前史」を読み、その先に向かって行くことも出来るでしょう。ここから先にまだ調べることはたくさんあります。
 「国立国会図書館」「味の素食の文化ライブラリー」「女子栄養大学・短期大学図書館」等に資料が多くあります。地域でも少し大きい図書館だと食文化の本や古い随筆も有ります。朝日新聞、読売新聞などでは古い記事もネットで検索できます(これも図書館で可能な場合も有る)。
    
 例えば昭和50年代に突然登場し53年ごろには定着した「肉じゃが」の名称と概念、それが代表的な「おふくろの味」であることが一般化したことについては今調べていますがわかりません。(海軍説はウソ)
 テレビドラマや映画又は料理番組やバラエティー番組等の影響かもしれません。ご存知の方がおられれば出来れば根拠を示して教えてください。
    
 近代食文化・風俗史は趣味としても面白いジャンルなので多くの方の参入を期待します。サブカルチャーの歴史もまだ調べることは多くあります。
 「お好み焼きの戦前史」はその道標になるでしょう。
    
 類書の風俗史としては
 創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書) 輪島裕介
 https://www.amazon.co.jp/dp/4334035906
  
 食文化史本は当ブログ「読メ」の「読書メモ抜粋」からどうぞ。
   
 近現代の「偽史」には
 江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書) 原田実
 https://www.amazon.co.jp/dp/4061385550
   
 近代日本の偽史言説―歴史語りのインテレクチュアル・ヒストリー 小澤実
 https://www.amazon.co.jp/dp/4585221921 
  
【関連記事】
 日本肉食史覚書
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120614/1339605334 
     
 関西に納豆食は無かったのか?
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20170109/1483951797
 
 一汁三菜の正体
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20170310/1489122073   

*1:電子本kindleです。登録をすればコンビニなどで買えるギフト券で支払いが出来ます