( この写真は、1987年東京豊島区千早町の傾いた様な古い下宿で私がデビュー作「 雨のドモ
五郎 」を描いた机である。 《 1987年 撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その1
漫画家の集うパーティーを私の師匠であるJ先生は・・・
「 つまらねィ~ぜェ~! 」
と切って捨てる。 しかし、私はS英社ヤングJ誌の忘年会( 立食パーティー )
へ一度は自分の目で見ておきたいと思って出席しました。
何よりも新人賞を取った同期の漫画家志望の青年たちと知り合いたかったし、
多くの先輩漫画家に直に接する事が出来るチャンスでもあると考えたのです。
有名ホテルのパーティー会場などという所はよく政治家のパーティー会場やタ
レントの結婚披露宴会場としてテレビで見るくらい。 まったく私の様な貧乏
人には縁もゆかりも無い場所でしたから、ヨレヨレのスーツに身を包み自分を
励ますようにして出かけたわけです・・・・・。
会場の装飾は意外とシンプルでしたが、さすがにその天井の高さと広さ、白を
基調とした壁の美しさやまぶしい照明に圧迫感を感じつつ・・・私は多くのゲ
スト( 1~200人ほど )の中でキョロキョロ、オドオドと震える子犬の様にい
じけていたのです・・・・・。
幸い担当の編集員K氏が私を見つけてくれ、近くにいた他の漫画家に私を紹介
してくれたりしました。 中央で賑やかな有名漫画家とは対照的に壁際には無
名の漫画家や出版関係者がいるのですが、私が紹介されたのは、その中の一人・
・・・・
独特の怪奇漫画で知られるH・H先生( 巨匠 )。 私よりも年上そうなお弟子
さんを一人連れて、黙って(退屈そうに)立っているのです。 これほど有名
な作家が華やかなパーティー会場で壁際の置物の様になっている事を不思議に
思いながら・・・私は、H・H先生に氏のある作品について話しかけたのです。
『 Hさんの・・・ 』そう話しかけようとした瞬間。H・H先生のニコリともし
ない無表情と鋭い眼光に圧迫され・・・・・・
「 ・・・H・・・先生の・・・ 」
「 ふ、古道具屋の話・・・カワイイ少女も出てきますね・・・。あの作品
はどんな感じで描かれたんですか?」
ハッキリとは記憶していませんが、確か「どんな世界を表現しているんですか
?」といった感じの質問をしたのだと思います・・・。 テーマやキャラクタ
ーについての答えが返って来ると思っていた私に・・・H・H先生は即座に、
低いかすれる様な声で・・・
「 酔いです 」
と、一言!
『 この作家はただ者ではない! 』
H・H先生に私はJ先生と同様の感性を感じ取って緊張する・・・。 先生は
クールに続ける・・・
「 酒に酔った感じを描いているのです・・・ 」
確かに先生の作品の主人公の老人はいつも酒に酔っている様な茫洋とした雰
囲気がある・・・。私は何をしゃべったら良いのか分らなくなる・・・。
「 君は幾つですか? 」
突然、私が一番気にしている事にメスを入れてくる!
「 ・・・はぁ・・・・・・さ、32です・・・・・・ 」
遅い・・・。32才でのデビューは遅い。「 何色が好きですか? 」みたいに軽く
キツイ所を突いてくる。 私は息苦しくなって来る・・・・・。 慣れないネク
タイが首に締まる・・・・・・
一秒の間。
「 ・・・・・・大丈夫。 まだこれからですよ・・・。 」
子供にアメ玉でも与える様に言ってくださいましたが・・・・・・しかし・・・
・・・全然、大丈夫じゃなかったんですよ・・・H・H先生!
「 漫画家アシスタント 第5章 その2 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その60」へ戻る 】
注意 : お知らせも併せてご覧下さい!
* 参考 *
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
.............. 私(yes)のアシスタント履歴
1974年昭和49年 さがみゆき先生 主に(少女系)怪奇漫画。単行本1冊分、
4,5ヶ月のお手伝いでした。 (19歳)
1976年昭和51年 かわぐちかいじ先生 この当時、氏は今ほど有名ではなか
ったのですが、背景技術をみっちり仕込まれました。(20歳)
1977年昭和52年 村野守美先生 漫画界一の豪傑と言われ、エピソードには
事欠きません。たった1週間しか勤まりませんでした。(21歳)
1978年昭和53年 ジョージ秋山先生 当時「浮浪雲」(ビックコミックオリ
ジナルに連載)が、すごい人気で、渡哲也、桃井かおりの
主演でTVドラマ化されていました。(23歳)
2017年平成29年 ジョージ秋山プロを退社、タイ・チェンマイにて隠居中。(62歳)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コメントをくれた皆様の中で特に以下の方々へ・・・
さいふぁさん、ねもさん、40代女性漫画家さん、kyokinkyaさん、ユウサさん、
横から失礼さん、YASUさん、歌垣さん、シャモンさん、バカざるさん、(*`Д´*)
さん、ごしまさん、ここさん、、mimiさん、ヤマさん、あきさん、サトル君、失敗
だらけだフニャさん、taroさん、マックフライさん、自営業さん、良太さん、
しばさん、TNLさん・・・
皆さんの中で、コメントが転載される事に同意できないという方は是非ご
一報下さい!
一応、このままですとこちらで勝手に編集(明らかな誤字の修正、絵文字の
解体そして改行等)して単行本に転載してしまいます。 どうか、ご遠慮な
く申し出て下さい!
このブログへのコメントでも結構ですし、以下のアドレスへのメールでも構
いません(最初の「イエス」は小文字の「yes」に変換してから送信して下さ
い)。 どうかよろしくお願いいたします!
イエス_koike@yahoo.co.jp
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
五郎 」を描いた机である。 《 1987年 撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その1
漫画家の集うパーティーを私の師匠であるJ先生は・・・
「 つまらねィ~ぜェ~! 」
と切って捨てる。 しかし、私はS英社ヤングJ誌の忘年会( 立食パーティー )
へ一度は自分の目で見ておきたいと思って出席しました。
何よりも新人賞を取った同期の漫画家志望の青年たちと知り合いたかったし、
多くの先輩漫画家に直に接する事が出来るチャンスでもあると考えたのです。
有名ホテルのパーティー会場などという所はよく政治家のパーティー会場やタ
レントの結婚披露宴会場としてテレビで見るくらい。 まったく私の様な貧乏
人には縁もゆかりも無い場所でしたから、ヨレヨレのスーツに身を包み自分を
励ますようにして出かけたわけです・・・・・。
会場の装飾は意外とシンプルでしたが、さすがにその天井の高さと広さ、白を
基調とした壁の美しさやまぶしい照明に圧迫感を感じつつ・・・私は多くのゲ
スト( 1~200人ほど )の中でキョロキョロ、オドオドと震える子犬の様にい
じけていたのです・・・・・。
幸い担当の編集員K氏が私を見つけてくれ、近くにいた他の漫画家に私を紹介
してくれたりしました。 中央で賑やかな有名漫画家とは対照的に壁際には無
名の漫画家や出版関係者がいるのですが、私が紹介されたのは、その中の一人・
・・・・
独特の怪奇漫画で知られるH・H先生( 巨匠 )。 私よりも年上そうなお弟子
さんを一人連れて、黙って(退屈そうに)立っているのです。 これほど有名
な作家が華やかなパーティー会場で壁際の置物の様になっている事を不思議に
思いながら・・・私は、H・H先生に氏のある作品について話しかけたのです。
『 Hさんの・・・ 』そう話しかけようとした瞬間。H・H先生のニコリともし
ない無表情と鋭い眼光に圧迫され・・・・・・
「 ・・・H・・・先生の・・・ 」
「 ふ、古道具屋の話・・・カワイイ少女も出てきますね・・・。あの作品
はどんな感じで描かれたんですか?」
ハッキリとは記憶していませんが、確か「どんな世界を表現しているんですか
?」といった感じの質問をしたのだと思います・・・。 テーマやキャラクタ
ーについての答えが返って来ると思っていた私に・・・H・H先生は即座に、
低いかすれる様な声で・・・
「 酔いです 」
と、一言!
『 この作家はただ者ではない! 』
H・H先生に私はJ先生と同様の感性を感じ取って緊張する・・・。 先生は
クールに続ける・・・
「 酒に酔った感じを描いているのです・・・ 」
確かに先生の作品の主人公の老人はいつも酒に酔っている様な茫洋とした雰
囲気がある・・・。私は何をしゃべったら良いのか分らなくなる・・・。
「 君は幾つですか? 」
突然、私が一番気にしている事にメスを入れてくる!
「 ・・・はぁ・・・・・・さ、32です・・・・・・ 」
遅い・・・。32才でのデビューは遅い。「 何色が好きですか? 」みたいに軽く
キツイ所を突いてくる。 私は息苦しくなって来る・・・・・。 慣れないネク
タイが首に締まる・・・・・・
一秒の間。
「 ・・・・・・大丈夫。 まだこれからですよ・・・。 」
子供にアメ玉でも与える様に言ってくださいましたが・・・・・・しかし・・・
・・・全然、大丈夫じゃなかったんですよ・・・H・H先生!
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1974年昭和49年 さがみゆき先生 主に(少女系)怪奇漫画。単行本1冊分、
4,5ヶ月のお手伝いでした。 (19歳)
1976年昭和51年 かわぐちかいじ先生 この当時、氏は今ほど有名ではなか
ったのですが、背景技術をみっちり仕込まれました。(20歳)
1977年昭和52年 村野守美先生 漫画界一の豪傑と言われ、エピソードには
事欠きません。たった1週間しか勤まりませんでした。(21歳)
1978年昭和53年 ジョージ秋山先生 当時「浮浪雲」(ビックコミックオリ
ジナルに連載)が、すごい人気で、渡哲也、桃井かおりの
主演でTVドラマ化されていました。(23歳)
2017年平成29年 ジョージ秋山プロを退社、タイ・チェンマイにて隠居中。(62歳)
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横から失礼さん、YASUさん、歌垣さん、シャモンさん、バカざるさん、(*`Д´*)
さん、ごしまさん、ここさん、、mimiさん、ヤマさん、あきさん、サトル君、失敗
だらけだフニャさん、taroさん、マックフライさん、自営業さん、良太さん、
しばさん、TNLさん・・・
皆さんの中で、コメントが転載される事に同意できないという方は是非ご
一報下さい!
一応、このままですとこちらで勝手に編集(明らかな誤字の修正、絵文字の
解体そして改行等)して単行本に転載してしまいます。 どうか、ご遠慮な
く申し出て下さい!
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