えっ。オバマにノーベル平和賞 !?
9日夕方たまたま民間テレビ局の報道番組を見ていました。『薬物汚染(21)』をまとめようと、押尾学の新しい近況が何か報道されないだろうかと思ったからです。しかしその関連のニュースはこのところすっかり影をひそめ、この日も結局同関連情報は得られませんでした。
ところが6時過ぎ、びっくりするような速報が飛び込んで来たではありませんか。
「今年のノーベル平和賞に、アメリカのオバマ大統領の受賞が決まりました」というような内容です。私は一瞬『えっ。ウソだろ』と正直思いました。去年のノーベル賞で、物理学賞が小林誠・日本学術振興会理事、益川敏英・京都産業大学教授に、化学賞が下村脩・米ボストン大学名誉教授にと、3人の日本人学者に贈られた時もびっくりでしたが、今回のオバマ平和賞もその時と同じくらい驚きました。
オバマ大統領がノーベル平和賞に不適格などとは決して思いません。しかし今年1月に大統領に就任してまだ10ヵ月しか経っていないのです。『受賞できた世界平和貢献っ何なの?』。思いつくのはやはり、今年4月のプラハでの「核廃絶演説」くらいです。しかしそれとてもただ世界に向けてそう演説したというだけで、肝心の米国をはじめ核保有国が核を実際に減らしたなどという話はまだ聞かないわけだし…。
その後伝えられた報道では、ノーベル賞委員会の受賞理由は「本委員会は国際的な外交と諸国民の協力強化に向けたオバマ大統領の比類なき努力を理由に受賞を決めた。とりわけ“核のない世界”の構想とそれに向けた取組みを重視した(以下省略)」というものでした。
つまりオバマ大統領の「比類ない外交努力」が受賞の最大の理由、それを示す顕著な功績として真っ先に「核兵器のない世界の構想」が挙げられるということでしょうか。
いずれにしても、つい先日シカゴ五輪招致で勇んでコペンハーゲンに乗り込んでも、真っ先にシカゴが落選など、最近少し影が薄くなりかけたかな?と思われた矢先でした。
五輪招致失敗はともかく。米国内では、医療保険制度改革の論議が本格化した7月から、就任当初のオバマ大統領の高支持率は下がり始め、最近は50%ほどまで下落していました。また混迷が深まるアフガニスタンへの増派をめぐっても、駐留米国司令官とバイデン副大統領の間で対立が表面化し、増派反対の世論は60%にも上るそうです。
そんなオバマ大統領本人そして米国政府にとって、今回の受賞は願ってもない朗報となったことでしょう。
今回のオバマ受賞の報に際しては、直接関係ないと思われる我が国でも、どういうわけか号外まで配られたようです。唯一の被爆国日本としての、オバマ大統領に寄せる世界平和推進への期待の表われなのでしょうか。
核廃絶を掲げる日本政府や与野党からは、祝福と歓迎の声が相次いだようです。中韓外遊中の鳩山首相も、到着した北京市内で記者団に、「本当にうれしい。みんなで大統領を後押しして核のない世界にしていこうという期待感をこめて贈られたのではないか」とコメントしました。
我が国のみならずハン・ギムン国連事務総長、イギリスのブラウン首相、フランスのサルコジ大統領など、各国首脳からも祝福のメッセージが続々と寄せられています。
そんな中石原東京都知事は皮肉にも、「平和賞は政治的な思惑があるからねぇ…」と口を濁していました。“石原嫌い”の私は、『石原さん、いい加減にしなさいよ』と言いたいところですが。しかしこの石原発言は確かに一理あるのです。
私は平和賞受賞で過去驚いて、ノーベル平和賞って一体何なの?と考え込んでしまったことがあります。それは他でもない、佐藤栄作元首相が我が国で唯一の平和賞受賞者(1974年)になった時です。確か「沖縄返還」などが受賞理由だったのでしょうか。でもそれは表向きの理由で、実際は長期政権下ただひたすらアメリカ様に忠勤を尽くした、そのご褒美なんじゃないの?と思ったのです。とにかくその前年の、訪問した国では後に必ず戦争が起こると言われたキッシンジャー米元大統領補佐官の受賞などとともに、ノーベル平和賞の権威の失墜を感じた最たるものでした。
しかし今回のオバマ大統領への受賞は、私としてはそんなに政治的な意図は感じません。強いていえば、受賞理由の中に「中東平和外交の推進」があり、オバマのイスラエル寄りの姿勢も評価されたのかな?と思うくらいで。
どこかの同ニュース見出しで、「平和賞、“実績”ではなく“理念”に受賞」とありましたが、やはりここは全世界の潮流が「平和」の方に向かっている、それをノーベル賞委員会は敏感にキャッチして決定したのだと素直に取りたいと思います。
今回のオバマ受賞を、広島、長崎でも被爆者らが「核廃絶に大きな力」と歓迎のようです。来月訪日するオバマ大統領は、結局広島、長崎への訪問見送りの方向と伝えられています。しかし今回の受賞を受けて、大いに方針を変えて米国大統領として初の両市への訪問を是非実現していただきたいものです。そうすれば、12月10日のオスロでの授賞式に胸を張って臨めるのではないでしょうか?
(追記) オバマ平和賞の陰に隠れてあまりニュースになりませんでしたが、ここ数年毎年のようにノミネートされている村上春樹の文学賞受賞は今回もなりませんでした。年初のエルサレム賞受賞時の「卵と壁」スピーチのイスラエル批判が響いたのでしょうか。何といっても、ノーベル賞の創始者・ノーベルはユダヤ人ですから。
(大場光太郎・記)
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