生きもの二人三脚
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生きもの二人三脚

雑な猟

今日の猟は大失敗。

自分の浅慮ぶりが嫌になります。

目標は猪1頭に鹿4頭の猟果だったのですが。

「大人数だから大きな猟場をやろう」と、私が楽観的思考で半ば強引に決めてしまったのが運の尽き。

もっと皆の考えを取り入れるべきでした。
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簡単には、小さな猟場を大人数でガッチリと囲むのもアリだったのです。

読み違いの一番の要因は雨。

夜半から明け方まで降り続いた雨が獲物たちに移動を促した。

いや、シッカリと降ったようなので「余儀なくした」が正解。

鹿は尾根などの比較的に開けた場所を寝場とします。

よって、そのままでは冷たい雨に打たれてしまう。

そこで間伐を行っていない樹林の混んだ場所などに雨宿り的に非難するわけです。

見切りを行えば分かることですが「雨の前後は獲物は移動する」は基本。

鹿はそれが顕著。

一方、猪もその傾向にありますが、体高が低いため普段からシダやカヤの群生地帯を寝場とすることが多く、必然的に雨を凌ぎやすい状態で休んでいます。

また岩の下や倒木の根元などの掘れた場所を利用して雨を巧みに回避したりと。

時には山中の使われなくなった農機具小屋や家の縁の下などの人工物を寝場としていることも。

そう言えば、我が移設犬舎の古家の縁の下も猪が寝屋として利用していました。
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犬舎を作り始めてからは、さすがに来なくなりましたが。

そんなことを分かっているのに漠然といつものように尾根筋から猟犬を入れてしまった私。
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山頂に向かって登って行くと、鹿の新しい寝場の痕跡がそこかしこに。

ところが鹿は もぬけの殻で、雨が強く降り出す前に移動した様子。

なのに鳴き出した猟犬たち。

鹿が居なかったため、鹿のニオイに惑わされずに猪を起こしたよう。

鳴き方やGPS画像の様子から間違いないでしょう。

これはこれでアリなのですが、頭を抱えてしまった私。

タツ配置が同猟場で実施される巻狩りでのニホンジカ管理捕獲時の鹿シフトだったのです。

「上手くタツに掛かってくれよ」と尾根上で祈るような気持ちで見守るも、銃声は聞こえず。

おまけに猪を力押ししがちで、捲らせることの下手な猟犬たちを連れて来てしまった。

タツを抜けた場合は厄介なことになってしまう。

そして心配したとおりに。

最終的には山を二つ越えたところで何とか猟犬たちを回収。

猪にも逃げられてしまいました。

そんなことをしている間に別の場所からスタートした先輩勢子の猟犬たちが、たまたま猟場内に残っていたオス鹿を川に追いつめて捕獲。

結局、その1頭のみの猟果で終了。

皆には苦労してタツ配置して貰ったので、何とも申し訳ない思いです。

強風が吹き荒れた後の獲物たちの寝場はそれなりに分かっていますが、雨の後の動向は、その降り方によっても様々なので丁寧には考えておらず。

本来ならば、その時々で見切りを行ってから猟を行うべきなのですが、近頃はヘンな慢心から手抜きをしてばかり。

雑な猟に皆を巻き込んでしまった私の責任は重大。

でも文句も言わずに解体場の清掃をしてくれる仲間たち。
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もう少し猟場に足を運んで周辺の様子を見て回らないと分からない事ばかり。

猟期後半に入って褌を締め直すのでした。


猟犬たちへのお返し

猟犬たちの上前をハネてまで作りたかった鹿スネ肉シチュー。

とにかく煮込んだスネ肉の食感と旨味は最高なのです。
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でも、このままでは猟犬たちに申し訳ない。

そこで鹿のモモ肉の中でもスジの多い『シンタマ』と呼ばれる部位を猟犬用に加工することに。
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今回はシッカリと味が染み込むまで煮込みたかったため、スネ肉を使用しましたが…
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シンタマは、実はシチューにも向いていて、すぐに食べるのならばコレで調理するのがオススメです。

・・・・・

では猟犬たちのオヤツ作りはじめ。

「作る」と言っても薄くカットして干すだけの『鹿の干し肉』ですが。

嗜好性が抜群に良いため、躾にも重宝します。

カットしたら乾燥工程へ。

ピンチハンガーで吊るして干すこともありますが、今回は燻製器の扉を全開にして網の上で乾燥させることに。
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ところが、いきなりの気温上昇。

それに対処するため、時短作戦に変更。

我が家オリジナルの乾燥機を使用します。
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暖房中の室外機の風を利用しているように見えるのは気のせい…

これならば半日で自然乾燥の5日分ほど乾きます。

そこまで乾燥させれば ほぼ完成で、腐敗の心配も無し。
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まずはカノ母さんに試食していただきましょう。

「はい『マテ』ですよ♪ カノちゃん」
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って、待ってないやんか!フライングやで!
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躾が完璧になされている従順なカノであっても我慢できない この美味しさ。

もうヤメられない止まらない。

万力のように閉じられたカノの口は 決して開くことはありませんでした。

因みに肉に味付けは一切していませんが、人が食べても かなり美味しい鹿の干し肉。

今一度、鹿肉の有用性の高さを広めなくては。

鹿の大増殖が抑えられて正常な生息密度となれば、山の植物生態系も元に戻る。

などと思う今日この頃なのであります。



スネ夫のクッキング

猪も鹿も基本的に捨てるところはありません。

肉や内臓は人や犬にとって大切なタンパク源となりますし…

皮、角、牙などは日用品や装飾品として色々と使い道があります。
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コレなどは最高のシフトフィール。
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もちろん骨だって貴重な部位。
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スープ作りには欠かせません。
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ところが有害鳥獣捕獲や管理捕獲等で次から次へと捕獲しなくてはならないため、毎回すべてを活かすことは時間的にも物理的にも厳しいものがあります。

でも、そんな状況にあっても命を奪った以上は可能な限り有効利用してあげたい。

そこで今回は鹿の残滓の中から削ぎ取ったスネ肉を使ってシチューを作ることに。
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猪であろうと鹿であろうと いつもスネ肉を持ち帰る私。

猟犬たちと分け合って美味しく頂いています。

そんなことなので猟仲間の中には私のことを「スネ夫」と呼ぶ人もいますが、それを不快に感じたことは無く、むしろありがたいくらい。

私のためにスネ肉を取り分けてくれていることも多いのです。

ではシチュー作りはじめ。

まずはトリミングして軽く塩コショウ。
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次にフライパンで焼き目を付けます。

一瞬でスジが縮んで、縦長から丸っこく変形。
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同時に部屋中に広がる香ばしい香り。

この時点ではスネ肉はスーパーボールのように硬いはず。

適度に火が通ったら一足お先に煮込み工程に入ります。

その間に玉ネギとニンジンを炒めて、時間差で鍋に投入。

2時間ほど煮込みます。

あとは市販のルーを入れて更に30分ほど煮込んでから火を止めて、一日冷所にて放置。
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スネ肉に味を馴染ませます。

では、いただいてみましょう。

スネ肉がモチモチの食感に変わっていて、噛めばホロホロと繊維状にほぐれる。
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そして旨味が深い。

調理に少々時間は掛かりますが、その価値は十二分にあります。

今日も自然の恵みに感謝。

素敵な晩餐となりました。


魂に導かれ

山に入ると様々な出来事に遭遇するもの。

とくに狩猟を始めてからは、そんなことが増えています。

以前、こんな事がありました。

初夏の管理捕獲で林道を通ろうとしたところ、山の入り口の空き地に1台の車が停めてあったのです。

その時は登山者の車だと思っていた私たち。

ところが1週間後に同じ場所を通ると、またその車がある。

他県ナンバーのその車は四駆。

もしかすると登山者ではなく、渓流釣りの釣人ではないか?とも。

でも車がおかしい。

同じ場所のまま動いた痕跡が無いのです。

そして今度は2週間後に同じ場所を通ると、車はまだそのまま。

さすがに これは事件か事故ではないかと直感した私たちは警察に通報。

後に関係者に聞いてみたところ、捜索願が出ていた方の車で、谷底で亡くなられているのが発見されたと。

崖からの滑落が原因だったようです。

「『早く気付いてくれ』って車が寂しそうだったよな」とは先輩方。

なんとも辛い結果となってしまいました。

先日は そんなことを思い出す出来事が またあったのです。

先輩勢子が私にこんな話を。

「いや こないださぁ、有害に向けて獲物の抜け道を調べてたんだけどね、その時に頭蓋骨を見つけちゃってね」と。

「えっ! 何の?」と私。

先輩は間髪入れずに「人間だよ」と。

猪か鹿の頭蓋骨だと思って拾い上げてみたところ、何か違和感を感じたそう。

「あれ?ハスが無いぞ、それに何かヘン」と。

私は心の中で「すぐに気付いてよ」と思いましたが更に話を伺うと…

「警察に言おうかどうか悩んだんだけどね」とも。

「そんなの悩まないでよ」と また心の中で思ったのは言うまでもありません。

結局、確認のために猟仲間を現場に呼んだそう。

そして「こりゃ やっぱり人だ、大変だ」となって通報し、現場検証に立ち合ったとのこと。

まずはDNA鑑定にかけるようですが。

先輩は私に静かに語りかけてきました。

「きっと呼ばれたんだろうね。無意識のうちにそっちに向かっていたもの」と。

「そう言うもんなんでしょうね」と私も同意。

猟犬を放つまでの間でしたが、なんだか切ない雑談となってしまいました。
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ご冥福をお祈りいたします。



2週間ぶりの極寒猟

先週の猟は今期初の雨天中止。

軟弱猟師の私たちは晴れた穏やかな日にしか猟行しないのです。

そして待ちに待った今日は、寒いけれども絶好の狩猟日和。

思わず「釣り日和」とも言いたくなるほどに海も穏やかでした。
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まずは猟の前に景色を眺めて心を落ち着かせ…

ではなく、各タツ配置を確認するために海際に。

山から少し離れた開けた場所だと無線が通じやすいのです。

互いに到達時間を確認し合って、最後のタツが配置に付いたと同時に猟犬を放ちました。

すると狙いどおりにスグに鳴き出した猟犬たち。

2週間ぶりなので、ストレスを発散するかの如く獲物を追っています。

程なくして山々に木霊する銃声。

そんなことを何度か繰り返して猟は終了。

回収したレイは頑張り過ぎて血まみれでした。
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トラも同じく血まみれで酷い顔。
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2頭とも少しケガをしていましたが大したことは無く、大半は獲物の血。

もう…ハッスルし過ぎ。

あまりの寒さにバテなかったのも その要因ですが。

午後は少し遅い昼食を済ませてから皆で獲物の解体。
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ところが夕方まで掛かってしまいました。

日が陰ると これまた強烈に寒い。

肉の鮮度は保たれますが、私たちの体温は保たれない…

雑談を早目に切り上げて家路に着いたのでした。

お~寒っ!