やおい その誕生と遍歴 | よろめ記
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やおい その誕生と遍歴

別なサイトの方で「やおい」に関して質問をもらった。

質問者さんの質問は
「先日、コミケの定義についての意見を拝見させて頂きましたが、古参参加者の方に御伺いしたいことがあるんです。では、やおい、はどういう意味なんでしょうか?自分が同人んを知った時にはすでにこの言葉が存在していて本にもやおい有りとかいてありましたが、全く意味がわかりませんでした。つまりBL風だという意味なんでしょうか?それとも性描写ありという意味でしょうか?と、古参の方なら知っていらっしゃるかなと思った次第です。宜しければ参考として考察のほどお聞かせ願いたく思います」

というわけで「古参参加者」としての考察を求められたのでつい熱く語ってしまった。長文になったのと、やおいの歴史について残しておこうと思ったのでこちらにも書いておく。


「やおい」っていうのは東京女子大の漫画サークルがその昔つくった「やっはるー」という同人誌(増刊号だったかな?)にはじめてその記述がでたものです。波津彬子さんや坂田靖子さん、森川久美さんたちが参加していた同人誌ですね。
その本に「やまなし おちなし いみなし」、つまり描きたいとこだけ描くぞ、という意味で「やおい」漫画として男性同士がいちゃいちゃしている、というか妖しい雰囲気を出している漫画が数本、掲載されていたんです。
なので「やおい」というのは「ストーリー性のない、自分が描きたい、読みたいシーンだけ」というのを自嘲をこめて呼んだわけです、当時は。

しかしこの「やおい」本が同人誌界に与えた影響は大きく、今では想像もできないでしょうが、当時、同人というのは案外真面目で、ストーリー性やメッセージ性のない漫画・小説などはバカにされていたもんなんです。そんなところに実力派揃いの漫画サークル(たしか「らぶり」とか言ったかな)がそういう本を出してこれがまたバカ売れしたというか、評価が高かったので、そっかーこういうことやっていんだーという免罪符的な感じでみんなどんどん描き出したんですね。
で、読みたい、描きたいシーンだけ集めるとなぜかそれらはみんな男同士のあぶない話だったと(笑)。

ただ当時、現マガジン・マガジン社であるサン出版が「June」という雑誌を出していて、美青年、美少年同士の同性愛漫画というのは元々あったわけです。
一般商業誌でも竹宮恵子や萩望都、岸裕子、名香智子、松崎あけみなんかも描いていたわけです。一回だけなら一条ゆかりや槙村さとる、山岸涼子(「日天子」はかなりあとになる)も描いてましたね。それらはストーリー性のあるものだったので、オリジナルでストーリー性のある同性愛漫画を描いていた人たちは自分たちのマンガは「やおい(やまもおちもいみもない)漫画ではなくJuneである」という自負があり、「やおい」と呼ばれるのには抵抗があった。
そんなわけで同性愛の漫画の中でもオリジナルじゃなくパロディで同性愛を扱う漫画を特に「やおい」と呼ぶようになったんじゃないかと思います。まあ、しばらくしてからはごっちゃになり、オリジナルでも特にエロシーンを指して「やおいシーン」とか言うようになりましたが。
また「やおい」には「やめておねがいいやよ」とか「やっておかしていれて」「やっぱりおしりがいいの」とかいろんな言葉を当てはめてました(笑)。

なので質問者さんの「BL風だという意味なんでしょうか?それとも性描写ありという意味でしょうか?」という答えとしては、どっちもあり、と言う答えになってしまいます。
エロ・セックスシーンのみを「やおい」という人もいるし、男性同士がいちゃいちゃしているのを「やおい」と言う人もいるわけです。ただ今はセックス描写があると「18禁」とかつけるって義務づけられているので「18禁」てのがなければエロシーンはない、と思っていいんじゃないでしょうか。

ちなみにパロディというのは今で言われる二次創作を指します。
元々パロディという言葉は「風刺画」を意味しているので厳密には違うんですが、本来あるものを茶化すという感じで使われたんだと思いますね。
なので二次創作という言葉を日本人全員が知っているかというと、そうでなく、この言葉はネットが広まった2000年あたりから使われ出したんじゃないかと思うので、ネットをやってないオフライン専門の人や、コミケ古参の人、いわゆる、コミケ準備会のイベント以外はコミケと認めない、メッセを憎んでいる、有明の会場の東ホールを未だに東館と言ってしまう人々は、いまでも「パロディ」と言うでしょうし、わたしも言ってしまいますね。

しかしその当時はやはり「やおい」は日陰ものの身の上で、わりとこそこそ描かれていました。真面目にパロディにやおいは必要かという議論があったり、やおいを扱ってないサークルが同じジャンルのやおいサークルに意見書を出した、とかいうこともありました。
この流れの中、第一次ガンダムブームが沸き起こります。その中でやおいは爆発的に表面化します。そしてキャプテン翼ブームとなり、それまでギャグ落ちか暗めの話し中心だったやおいが明るく楽しいものへと変化します。
一時期ジャンプ編集部がキャプテン翼のあまりの同人誌ブーム(特にエロ)に「キャラクターを弄ばれるのは哀しい」と声明を出したこともありました。あれで少しは自粛したのかなあ?

さて、この頃、あちこちから同性愛を扱う専門のA5サイズの漫画雑誌が一般書店に並びだします。
しかし、各編集部は困りました。同性愛の世界を描いたものをうまく言い表す言葉がなかったのです。
「June」という言葉はその雑誌が現存するので使えません。でも「やおい」というのはパロディを指しているような感じです。少年愛とか男同士の愛とか、堂々と言うには恥ずかしい、そんな言葉しかありませんでした。
そんな中、白夜書房から出た「イマージュ」という漫画雑誌がはじめて表紙に「ボーイズ・ラブ」という言葉を載せます。
「ボーイズ・ラブ」。なんて舌触りのいい言葉でしょう。
イマージュ編集部としてはそれを略してBOVEというのをはやらせたかったんですが、ボーイズ・ラブという言葉はそのままいろんな雑誌に取り入れられ、今では「男性同士の同性愛」は全てボーイズ・ラブ、BLというカテゴリに入ってしまうようになりました。

「やおい」という言葉も消えつつあるのかもしれません。
それこそ古参の人しか使わなくなるのかも。
ただ「やおい」という言葉もコミケとともに生まれ成長し変化していったものなのでコミケがある間は残ってほしいなあと古参としては思うわけです。
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