ars combinatoriaな日々 2012年10月
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ars combinatoriaな日々

11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち&トークショー@下高井戸シネマ

♪10/21に下高井戸シネマ『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』とトークショー。6月に新宿で観た感想はこちら
 日曜日だから迷ってたけど,沿線なので駄目もとで整理券配布1時間前に行って75番ゲット。12:50の配布で上映は16:10から。もちろん満席で,補助席のあとは前と通路に座布団敷いて最後に立ち見。

 トークショーは井浦新さんと故・若松監督の予定が満島真之介さん(森田必勝)に加え,大西信満さん(楯の会・倉持清)の3人で,上映のあと開催。レポは詳しい方がいるだろうとメモも取ってないんですが,井浦さんが最後にSNSとかでどんどん宣伝してくださいっていうので,覚えてる範囲です。間違いあったらすみません〜。

 井浦さんが司会で「若松監督はしみったれたことが嫌いなのでいつも通りの舞台挨拶を」と,3人の挨拶のあとすぐ質疑応答に。さすがに井浦さんの最初の挨拶というか監督がいらっしゃらないことをあやまってらした声が震えていてちょっと心配だったけど,客席の熱気とともに皆さん真剣に応えてくださいました。

 若松監督と他の監督と違うところ:(井浦さん)映画に対して純真な人。(満島さん)初演技ということもあって映画監督というより男としてかっこいい。撮影中のことはよく覚えていない。

 映画と事実の違うところ?:(井浦さん)寄せた,似たもの映画ではなく,三島由紀夫を通して若者達の心を描いている。『連合赤軍』など他の映画も同じ。ひとつだけ事実にこだわったのは市ヶ谷に車で向かう道は実際の道のり(パンフにあった?)。むしろ当時にないコンビニが映っていてもそこで撮らなければと。

 監督の印象的な言葉をひとつ:(井浦さん)「脚本は週刊誌だ」脚本に書いてあることはウソだと思え。脚本の通りにやるなんてつまらない。特にト書き。詰めたあとは表情など演技は役者に委ねてくれる。書かれてなくても怒りを感じたら怒っていい。(舞台みたいですね)
 (満島さん)「心で生きろ」皆,顔貌を見てるんじゃない,お前の心を見ているのだと。(大西さん)「ご飯を残すな」いま大人に向かって(小さい頃に祖母に言われたような)こういうことを言ってくれる人がいるだろうか。

 他に撮影現場の空気感が伝わって一番面白かったのは,大西さんが「満島くんの森田が(井浦さんの三島を)本当に切ってしまうんじゃないか,と後ろで止められるよう待機してた」って。パンフにも介錯のタイミングが早いと怒られたけど「大好きな先生を早く楽にしてあげたい」と入りきってたんですね。
 三島さんにはもっと生きてもっともっと小説を書いて欲しかったけど,自分の中でもう書くものはないと覚悟を決めたんだろうなあ。

 サイン会があるというので、持ってるけどまたパンフレット(公式ブック)買っちゃいました。井浦さんは顔ちっちゃくてキレイでした〜。握手したりお話してる方もいましたが,なんだか畏れ多くて小さい声で「ありがとうございました」としか言えませんでした。でもしっかりこちらの目を見てくれました。きゃー。月曜は確実に仕事忙しいんで迷ったけど行って良かった!

 実は中止になっちゃうかな?と心配で毎日映画館のサイト見に行ってました。人前に出てるほうが気を張っていていいのかしらとかいろいろ考えてしまいますが…。むしろ3人の今このときこうして観客の前でしゃべれる機会で若松監督の作品,監督の想い,心を伝えたい!という気持ちが届きました。こんなに真摯に生きた方,また才能のある人達に影響を与えた方が突然この世を去ったことが残念でなりません。改めてご冥福をお祈りします。

竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち@山種美術館

♪竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち@山種美術館,会期は11/25までですが前期展示は10/28までなのです。
 行ったのは10/13で,メインの『班猫』は見たことあるんだけど疲れてるのか気分的に日本画が見たかったのです。行くつもりなのが他にリヒテンシュタイン,マリー・アントワネット,ツタンカーメンとどれも濃すぎて〜。

 と消去法的に来たけど竹内栖鳳はいいなあ。『象図』の大きな屏風でも全身が入り切らない感。金に墨という大胆さに,更に屏風だから曲げてこちらに迫ってくる様子を物理的に作るのが見られるのは実物を見てこそです。印刷や画像は基本的に広げてますから。
 ※『象図』は前期展示,後期は『虎・獅子図』になります。

 逆に『緑池』の絹に描かれた繊細な蛙は薄墨の半身が水の中。でも『蛙と蜻蛉』ではむっちりとした脚が輪郭で戯画的に。同じ蛙でもこんなに静と動の空気感が違うのです。
 もちろん何度も見るのは『班猫』。大切にされてるであろう美しい毛並みと飼いならされないぞ!というエメラルドの瞳。余白がまたいい。この引き込まれる瞳は群青,緑青,金泥が用いられてるそうです。金!なるほど。

 Cafe 椿で恒例のコラボ和菓子。にゃんこがないので,うさぎにしました。 見た目ももちろん可愛くて食べちゃうのもったいないんですが,甘過ぎない上品な味でどれも美味しいのです。いつもコーヒーのセットにしてます。

 9/29〜11/25[展示替:前期9/29~10/28,後期10 /30~11/25]

アラブ・エクスプレス展@森美術館

 

アラブ・エクスプレス展@森美術館,行ったのは8月で10/28までだからあとでいいやーと…ようやく図録も読みました。
 本当は大英博物館古代エジプト展がお目当てで,ぶら美で一緒にちょこっとやってたのでついでにってくらいだったんでうけど,これが実に面白かった。今まで来た森美術館で一番かも!写真撮影可&音声ガイド無料という太っ腹です。

 まず最初にハリーム・アル・カリーム『無題1(「キングズ・ハーレム」シリーズより)』。妙にぼやけた,でも如何にもアラブの女性。でもこんな赤いヴェールはないんですって。こちらの先入観を鏡のように突き返す。でも図録にはそういう解説はないんですよね〜。音声ガイドで聞いたたんだけどなあ。

 

 【上左】マハ・ムスタファ『ブラック・ファウンテン』は映像で見てうわーわかりやすーいと思ったけど,静かに,こんこんと湧き出る黒い液体はインパクト大。
 【上右】アハマド・マーテル『マグネティズム』。磁石と鉄粉をメッカの巡礼になぞらえる。

 【下左】シャリーフ・ワーキド『次回へ続く』。あたかもテロリストの声明のようだけど,千夜一夜物語を朗読中。やっぱり先入観を裏切るというのが多いですね。そしてそういう自分の内側に向き合う作品が面白いなと思ったということみたい。ビデオアートやインスタレーションてどうも苦手みたいなんですが,こういうメッセージ性の強い作品には効果的というかとても響きました。

 

 随分時間かけて買わないつもりの図録もつい買ってしまって,おなかすいたので古代エジプト展コラボのピラミッドカレーを食べちゃったー。もう集中力が残り少なくて(そもそも仕事帰りに来て21時過ぎ),肝心の古代エジプト展@森アーツセンターギャラリーは駆け足になっちゃいました(現在福岡市美術館に巡回)。

 モツレクを付けた映像(スハ・ショーハーマン『神の御名において止めよ』)を見たあと,次は「死者の書」だから今日はメメント・モリの日だ~と思ったら「死者の書」は復活・再生への強い想いでしたよ。

辻村寿三郎 人形展 平家物語縁起~清盛、その絆と夢~

♪「辻村寿三郎 人形展 平家物語縁起~清盛、その絆と夢~」新宿は15日まででしたが,10/17〜10/29横浜で開催。
 寿三郎さんの人形はやっぱり素晴らしい! 平家物語のはほとんど雅叙園で見たのだけど,2回に分けてたからこうして一堂に介すと見応えたっぷりで,初見だったら1時間ではとても見切れなかった。いややっぱりもうちょっと余裕持って見たかったけど。

 それにしても改めて崇徳院が多いなあ(うれしい〜)!なんといっても最初に作ったという雨月物語の怨霊。改めて目に焼き付けました。でも素敵図録では西行のバックになっちゃってるのが残念。西行は美坊主ではないのね。大河がだいぶ進んだので,為朝や西光,ちっちゃな重盛にも注目しました。

 今回のビデオでは人形作りについて。「人間に近づけないで,デフォルメして人形になってゆく」ってのが面白い。そしてなんと「人形に愛情を感じていない,人形との闘い」だってのにビックリです。そうやってあの独特の存在感が出来たんですね。作り始める前に十分調べて自分の足で歩いたりとか。

 平家物語の人形については「清盛はマザコン」「(どれも)目は輝やいていない,太陽ではない月の翳り。諸行無常」と。雅叙園でのお話は更に寿三郎さんの解釈が聞けました。
 寿三郎さんは明らかな独自解釈だけど,大河の清盛は台詞だけでない総合的な造り込みで受け取る幅を持たせてると思うから公式さんは解釈はぼやかして欲しいなあ。あんな冷たく始末なんて言われたら,禿ちゃん達は“始末”されたと思うし,そこで修羅の道を翻ったら諸行無常にならないしー。

9/19〜10/1 京都タカシマヤ,10/4〜10/15 新宿タカシマヤ,10/17〜10/29 横浜タカシマヤ

ロミオ&ジュリエット〜ヴェローナの子どもたち〜

 

フランス版ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』初日(10/6)に初シアターオーブです。そして,1Fホワイエにくりぬき…。公演後サインが入ったらしいです。


 オーブのホワイエはすごく狭いです。こうして天井は高くてカッコいいんだけど,舞台と客席を作って残ったところ〜というカンジ。

 休憩にコラボメニュー。赤い薔薇の入ったジュリエットカクテル(ノンアルコール。ロミオのは青でアルコール)。ドーナツは残念ながら売切でした。

 初日ならではなのか,幕が開く前に気合を入れてる声が聞こえました! 日本版,宝塚版と見て,待ちに待った来日公演は,なんといってもアンサンブルがダンスというよりアクションで迫力でした。

 ロミオとジュリエットはおいていて(だってこの甘い2人というか,ロミオのせいでー),ティボルトとマキューシオがよかった!大公もカッコいい。ティボルトはワイルドな見た目に比して,甘くせつない歌い方がいい。
 マキューシオは日本版は妙に目立たなかったような気がしたんだけど(むしろベンヴォーリオの方が目立ってた),青いモンタギューの中1人紫の衣装(彼はモンタギューの人間ではない,大公側)で,そんな見た目だけでなく、エキセントリックで明らかに違う側の人間。最初の見せ場・聴かせどころの「マブの女王」でマイクが故障しちゃったみたいで可哀想というより申し訳ない。途中からハンドマイクにしたんだけど,むしろロックぽかった。もう少し早く用意出来ればよかったんだけど。
 2人は途中で死んじゃうわけで(ロミオめ~),でもマキューシオ,ティボルトの死~絶望のデュエットがクライマックスのように拍手もとても大きかったです。

 女性の演じる“死”は肉感的過ぎて,やっぱり中島さんの常に異質なこの世ならざるものをまた見たい~。でも最後のジュリエットに造形が似てるのが狙いなのかも。
 いやロミオとジュリエットは悪くはないんだけど,二人の周りの若者達,大人達の方多面性を感じて,何よりこのミュージカルはそれぞれのナンバーがどれも印象的なメロディなので,主役の二人だけに目がいかないんですよね。それでも「エメ(Aimer)」が一番美しく,一番哀しい。許されない恋,誰もが知っている悲劇とはいえ,結婚式のシーンがこんなに哀しい響きにしているのは達観してますよね。

 今日の席はほとんどフラットな6列目だったんで,この舞台はいろいろ対比があったり高い装置があるのでもう少し引いて見た方がいいかも。ピットがないので,正に目の前で!という迫力は堪能出来たけど。
 あと音響もガンガン来ていいけど,反響のせいか前だからか人の声がそこから発してるように聴こえなかったなあ。字幕は左右で,前だと見ようとすると舞台が視角を外れます。

 最後にマキューシオ! …知らない人の手ですよ。(初日だけじゃなくて)終演後,ホワイエにキャストが出て来ます。

 次は20日に行きます。やっぱり歌は原語で聴いてこそ音に乗っているのがわかるので,この機会にぜひ! 来日公演がまだまだ続いてくれるとうれしい。