非常に愛らしい作品で楽しい。
「下妻物語」(2004日)ジャンル青春ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 茨城県下妻市。のどかな田舎町にロリータファッションが趣味の女子高生桃子が住んでいた。代官山の店に通い詰めているが、お金がいくらあっても足りない。そこで、元ヤクザ稼業の父が残した偽ブランド品をネットで売って金に換えようとする。そこに客としてやって来たのが特攻服に身を包んだ地元レディース、イチゴだった。イチゴは何故か桃子のことを気に入り、二人は付き合い始める。やがて、イチゴが言う伝説の刺繍屋を探しに二人は代官山へ行くのだが‥。
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(レビュー) 乙女チックなロリータファッション少女と一途なヤンキー少女の友情を、笑いとペーソスで綴った青春映画。
何と言っても、見た目からしてギャップの激しい桃子とイチゴのキャラクターの対比が本作の見所である。
どちらかというと、イチゴの方が押しかけ女房的に接近していくが、桃子が天然系なので、それをさして苦にしない。そんな風にして二人はいつも一緒にいるようになるのだが、趣味も性格も異なるので当然衝突することもしばしば‥。しかし、何故か二人は離れられない。
彼女等には”ある共通点”があるからだと思う。それこそジャスコで買ったような服を着る一般人からしてみれば、二人のルックスは方向性こそ違え完全に異質のもの、アブノーマルである。彼女等は心のどこかでアウトローとしての共同体意識を無意識に共有しているのではないだろうか。
社会からはみ出した所で生きる人間の姿ほどドラマチックで面白いものはない。そういう意味では、彼女等が奇妙な連帯意識を持って、”日常”という殻を破壊していくエピソードの数々は面白く見れた。
但し、クライマックスの作りの粗さには不満が残った。極めて常道を行く展開なのだが、桃子がタンカを切る所が唐突に思えて乗り切れなかった。ここが自然に決まると痛快だったのだが‥。
むしろ、友情のペーソスという意味で言えば、中盤の川辺のシーンの方がグッときた。それまで弱さを見せなかったイチゴが、ある理由から初めて涙を見せる。そこに桃子が編んだ背中の刺繍が映し出され、まるで桃子が慰めているかのように見えてホロリとさせられた。二人の確かな絆が感じられる良いシーンである。
桃子役は深田恭子、イチゴ役は土屋アンナ。この作品では”二人で一組”という感じで正にハマッていた。一角獣の龍二を演じた阿部サダヲも、相変わらずのハイテンションな演技で笑える。また、水野晴男のカメオ出演には驚かされた。
監督はCM出身の中島哲也。ヴィヴィッドな色彩と仰角を多様した構図、ハイテンションなカッティング等、卓越したビジュアルセンスは見ていて飽きさせない。そういう意味では、桃子達のファッション共々、本作は”目”で楽しめる作品だと思う。