この手のドラマよくあるが、真摯に捉えた所に色々と考えさせられた。
「BOY A」(2007英)ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 過去に罪を犯した青年が10年ぶりに刑務所から出所する。彼はジャックという新しい名前で保護監察官テリーが見守る中、人生を再出発させる。運送業に勤めた彼は、同僚のクリスや女子社員ミシェルと親交を深めながら、次第に普通の生活に慣れていった。そんなある日、思いも寄らぬ事故に遭遇し、彼の人生は一変してしまう。
映画生活goo映画ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!
(レビュー) 前科者が様々な困難に喘ぎながら希望の光を求めてさ迷い歩く‥。こう書くとよくある”罪と罰”のドラマのように思えるが、主人公が少年という所に意義がある。昨今の少年による重犯罪化という問題がいやが上にも脳裏をよぎる。
テーマは、かつて”少年A”と呼ばれた青年ジャックの贖罪をどう捉えるか?ということになろうか‥。映画は彼の罰を安易に提示せず、観客に考えさせるように問いかけている。
そもそも一度犯した罪を拭い去るのはそう容易いことではない。現にジャックは今でも後悔を引きずって生きている。そして、彼の過去を知る周囲の人々の反応もひどく残酷なものだ。
これが現実だ、世間はそんなに寛容ではない。この映画を観た多くの人はそう思うだろう。しかし、俺はそれでも未来は必要だと思う。過去を顧みるだけが人生ではない。ましてやジャックはまだ若い。人生はこれからなのである。そんな彼の未来を誰が奪えるだろう。未来に目を向けることも必要なのではないだろうか?
ラストはドラマチックに盛り上げられている。この顛末にはそれほどの驚きはなかったが、かすかに救いが見出され感動させられた。贖罪の意味にもし答えを求めるとしたら、おそらくこういう事なのだろう。最後まで忘れてならないこと。それは人としての尊厳であるということを分からしめてくれる。
法律による裁きだけでは割り切れない人間の複雑な感情の襞。それをこの映画は見事に捉えきていると思った。”赦し”などという安易な回答でお茶を濁すことなく、この問題をどこまでも突き詰めていった所は作り手側の良心だろう。答えは見た人それぞれが考えるものである。
そして、この映画はジャックの”罪と罰”を描く一方で、保護監察官であるテリーの”罪と罰”についても言及しており、これについても興味深く見れた。
実は、彼にはジャックと同じ年頃の息子がいるのだが、妻と離婚して長年会っていない。それがある日突然テリーの元に戻ってくる。テリーは親子関係をやり直そうとするのだが、息子を捨てたという罪の意識があり、中々上手くいかない。ここがこのドラマのミソで、後半に入ってくるとジャックとテリー、二人の”罪と罰”が微妙な絡み合いを見せながら展開されていくのだ。
映画の作り自体は非常にミニマムである。そのせいで少し説明不足と感じられる部分がいくつか見られた。例えば、テリーのバックストーリーはもう少し丁寧に描いてくれた方が、見る側にとっては親切だったと思う。
キャストではジャックを演じたA・ガーフィールドが素晴らしかった。ファニーな笑顔が印象に残る。また、この笑顔があるからこそラストの切なさもいっそう引き立つのだろう。今後の活躍を期待したい。