「スパークス・ブラザーズ」(2021英米)ジャンルドキュメンタリー・ジャンル音
(あらすじ) 異端の兄弟ロック・デュオ、スパークスの魅力に迫った音楽ドキュメンタリー。
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(レビュー) スパークスは約50年に及ぶキャリアを持つロンとラッセル兄弟によるバンドである。これだけ長く続いたバンドと言うのは世界的に見ても珍しいのではないだろうか。しかも、その間、活動休止もなくひたすら自分たちの音楽を作り続けてきたというのだから凄い。
自分がスパークスを知ったのは、レオス・カラックス監督の
「アネット」(2021仏独ベルギー)に原案として参加してからである。
その後に彼らの音楽を新旧問わず聴くようになったが、ロック・オペラ風だった「アネット」からは想像もつかないような多彩な顔を持つバンドであることを知って驚いた。これまでに出したアルバムは25枚。グラム・ロック、エレクトロ・ポップ、ロック・オペラと、一つのジャンルに捕らわれない音楽性が、彼らの大きな魅力のように思う。
本作では、そんな彼らの足跡が、ロンとラッセル本人や関係者のインタビュー、MV映像を交えながら紹介されている。
幾つか印象に残ったエピソードがある。
例えば、「アネット」よりも前に映画音楽の仕事の話があったということは初耳だった。しかも、それがジャック・タチの映画だったというから驚きである。結局、タチの逝去でその企画は無くなってしまったが、もし実現していたら一体どんな作品になっていただろう。ぜひ観てみたかったものである。
また、パニック映画「ジェット・ローラー・コースター」(1977米)に出演していたというのも初耳だった。映画自体は随分昔に観たことがあるのだが、そんなシーンがあったことをまったく覚えていなかった。
他に、ティム・バートンが日本の漫画の実写化を企画した幻の作品「舞」の音楽を務める予定だった等、いろいろな話が出てくる。いずれも映画絡みの話で、やはり彼らの音楽は映画との相性が良いということがよく分かる。
製作、監督はエドガー・ライト。これまでの作品から分かる通り、彼自身音楽に対するこだわりは相当強く、聞けば元々スパークスの大ファンだったという。
基本的にはオーソドックスな作りだが、時折アニメーションが挿入されたり中々ユニークな作品になっている。140分という、この手の音楽ドキュメンタリーにしては長時間ながら、こうした趣向を凝らした演出によって最後まで飽きなく観ることが出来た。