マリオン・コティヤールの熱演が素晴らしい。
「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」(2007仏英チェコ)ジャンル人間ドラマ・ジャンル音楽
(あらすじ) 1915年、フランスの下町。貧しい家に生まれたエディットは、場末の歌手をしている母に捨てられ娼館を経営する祖母の元に預けられた。温かな人々に囲まれながら幸せな日々を送るが、戦争に行っていた父が帰国して引き取られる。父と共に大道芸をしながら暮らすこと20年。彼女は路上で歌を歌いながら日銭を稼ぐようになっていた。そこを名門クラブのオーナーに見初められる。歌手デビューを果たし瞬く間にスターダムへと駆け上がっていく。ところが、オーナーの死とそれにまつわるスキャンダラスな記事によって、彼女は窮地に追い込まれてしまう。逃れるようにしてエディットはアメリカへと渡る。
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(レビュー) 実在のシャンソン歌手エディット・ピアフの波乱に満ちた生涯を描いた伝記映画。
ピアフを演じたマリオン・コティヤールの熱演が素晴らしい。歌はピアフ本人のものであるらしいが、ステージでの振る舞い、不幸な事件に際しての嘆き、晩年の失意の表情等、亡きピアフに息吹を吹き込まんと熱演を見せる。コントラスト豊かにこれだけ様々な顔を作れるとは見事だ。
物語は幼少から晩年までを幅広くキャプチャしたもので、彼女のことを知らない俺でもそれなりに興味深く探ることが出来た。 しかし、これは伝記映画によくあることなのだが、表層をなぞるような語り口は散漫でインパクトに欠けてしまう場合が多い。特定の時代をクローズアップするやり方もあったと思うのだが、本作は敢えてそうしていない。全生涯を均等に網羅する構成を取っている。
もはやこのあたりは好みの問題としか言いようがないのだが、伝記映画として彼女の何を描きたいのか?それを伝えるための軸となるクライマックスは物語上必要だったかもしれない。
おそらく、このドラマでフィーチャーしようとすれば、エディットの失意のきっかけとなった悲恋のエピソードになるだろう。そこを詳細に描くことで映画は更にドラマチックなものに出来たかもしれない。
また、映画を散漫にしている原因の一つに複雑なカットバック構成が挙げられる。
パリ時代と渡米時代と晩年。この3つを煩雑に行き来するので落ち着いて画面に集中して見ることが出来ない。この演出意図が成功しているのはかろうじて終盤の回想シーンくらいで、それ以外は余り効果的とは思えなかった。
とはいえ、これらの難はマリオン・コティヤールの熱演の前では全て吹き飛んでしまう。そういう意味では、彼女の魅力が支えている作品のように思った。