命がけの撮影をしている。この「リアル」さには脱帽。
「デルス・ウザーラ」(1975ソ連)ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ) 1902年、シベリアのウズリ地方にアルセーニエフ率いる地質調査隊がやってきた。一向は森の中で奇妙な猟師デルスに出会う。彼が住んでいた村は伝染病で絶滅したと言う。自然と共生する彼には不思議な能力が備わっていた。調査隊はその能力を買って彼に案内役を頼む。その後、アルセーニエフとデルスが隊からはぐれてしまう。そこに猛吹雪が襲い掛かり‥。
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(レビュー) 地質調査隊の隊長アルセーニエフと過酷な自然に生きる猟師デルスの友情を、スケール感タップリに描いた黒澤明監督の作品。
前半は、極寒の大地を舞台にしたアドベンチャー趣向の強い作劇で引っ張って行ってる。雄大な自然を捉えたリアルな映像が素晴らしい。正に体力勝負の撮影で頭を垂れる思いだ。特に、漆黒の闇夜に浮かぶ赤い月、その光が青白い氷上に反射するカットはこの世のものとは思えないほど神秘的で印象に残った。
映画はこの冒険談の中でアルセーニエフとデルスの交友を描いていく。ここでのクライマックスは、隊からはぐれた二人がブリザードに晒されるシーンだ。急場を凌ごうと即興で茅葺小屋を作ろうとするのだが、その材料のために草刈が始まる。吹雪が吹き付ける中、二人は必死になって草を刈るのだが、これが正に地獄絵図。妥協を許さない黒澤演出もあいまって、迫力のあるシーンに仕上がっている。そして、この地獄を乗り越えることで二人の絆はより深まり、以後の友情というテーマにも説得力がもたらされることになる。CGでどんなにリアルに再現してもやはりホンモノにはかなわない、ということを改めて認識させられる。
後半は、アルセーニエフがデルスと再会する所から始まるのだが、ここから映画は前半で小出しにしていたスピリチュアルな要素を前面に出し始める。しかし、正直ここまで”あっちの世界”に入ってしまうと少々戸惑ってしまう。自然に生きるデルスと文明に生きるアルセーニエフの対比、つまり「自然」対「文明」を描こうとしたのだろうが、やや抽象的過ぎる。
ドラマの結末も、狼に育てられた少年の話と同じでやや安易に思えた。例えば、F・トリュフォーがその逸話を題材に「野性の少年」(1969仏)という作品を撮っている。自然を調教する人間の残酷さが強烈に提示されていたが、本作にはそこまでのシニカルさは無い。確かに物悲しいラストではあるが、感動できるほどの盛り上がりは感じられなかった。
本作は剛直さ、力強さがありテーマはストレートに発せられてると思う。ただ、反面繊細さには欠けるような気がした。
非常に愛らしい作品で楽しい。
「下妻物語」(2004日)ジャンル青春ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 茨城県下妻市。のどかな田舎町にロリータファッションが趣味の女子高生桃子が住んでいた。代官山の店に通い詰めているが、お金がいくらあっても足りない。そこで、元ヤクザ稼業の父が残した偽ブランド品をネットで売って金に換えようとする。そこに客としてやって来たのが特攻服に身を包んだ地元レディース、イチゴだった。イチゴは何故か桃子のことを気に入り、二人は付き合い始める。やがて、イチゴが言う伝説の刺繍屋を探しに二人は代官山へ行くのだが‥。
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(レビュー) 乙女チックなロリータファッション少女と一途なヤンキー少女の友情を、笑いとペーソスで綴った青春映画。
何と言っても、見た目からしてギャップの激しい桃子とイチゴのキャラクターの対比が本作の見所である。
どちらかというと、イチゴの方が押しかけ女房的に接近していくが、桃子が天然系なので、それをさして苦にしない。そんな風にして二人はいつも一緒にいるようになるのだが、趣味も性格も異なるので当然衝突することもしばしば‥。しかし、何故か二人は離れられない。
彼女等には”ある共通点”があるからだと思う。それこそジャスコで買ったような服を着る一般人からしてみれば、二人のルックスは方向性こそ違え完全に異質のもの、アブノーマルである。彼女等は心のどこかでアウトローとしての共同体意識を無意識に共有しているのではないだろうか。
社会からはみ出した所で生きる人間の姿ほどドラマチックで面白いものはない。そういう意味では、彼女等が奇妙な連帯意識を持って、”日常”という殻を破壊していくエピソードの数々は面白く見れた。
但し、クライマックスの作りの粗さには不満が残った。極めて常道を行く展開なのだが、桃子がタンカを切る所が唐突に思えて乗り切れなかった。ここが自然に決まると痛快だったのだが‥。
むしろ、友情のペーソスという意味で言えば、中盤の川辺のシーンの方がグッときた。それまで弱さを見せなかったイチゴが、ある理由から初めて涙を見せる。そこに桃子が編んだ背中の刺繍が映し出され、まるで桃子が慰めているかのように見えてホロリとさせられた。二人の確かな絆が感じられる良いシーンである。
桃子役は深田恭子、イチゴ役は土屋アンナ。この作品では”二人で一組”という感じで正にハマッていた。一角獣の龍二を演じた阿部サダヲも、相変わらずのハイテンションな演技で笑える。また、水野晴男のカメオ出演には驚かされた。
監督はCM出身の中島哲也。ヴィヴィッドな色彩と仰角を多様した構図、ハイテンションなカッティング等、卓越したビジュアルセンスは見ていて飽きさせない。そういう意味では、桃子達のファッション共々、本作は”目”で楽しめる作品だと思う。
色々な面で物足りなさがあった。
「ワンダーボーイズ」(2000米)ジャンルコメディ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 大学の文学教授グラディは、過去にたった1冊だけベストセラーを出版したことがある。しかし、その後は新作を書けず、離婚、不倫と堕落した生活を送っていた。担当編集者のテリーが原稿の督促にやって来たので頭が痛い。その夜、大学のパーティーが開かれる。グラディはそこでジェームズという学生と出会う。彼はクラスから変人扱いされる変わり者だったが、実は類まれな天才だった。そんな彼がひょんなことから取り返しのつかない事件を起こしてしまう。グラディにもその責任の一旦はあり、テリーを巻き込みながら隠蔽工作に奔走することになる。
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(レビュー) 中年教授が様々なトラブルに巻き込まれながら、教え子と友情を芽生えさていくコメディ。
スラップスティックな展開で先を読ませないところが本作の妙味だと思うが、個人的にはもっとかき回して欲しかったという気がした。天才にして変人というレッテルを貼られたジェームズのキャラクターが強烈なだけに、彼の効用を中途半端に失した脚本が惜しまれる。
笑える個所としては、グラディの新作が風に舞うシーンだろうか。幸か不幸か彼はこれによって今までの窮屈なしがらみから開放されたわけであるから、その後に見せる何とも言えぬ安堵の表情は実に可笑しい。ここは秀逸だと思う。
しかし、これ以外のギャグは正直今ひとつ‥。空回りしているという感じである。犬にまつわるブラックジョークは底が浅いし、一癖も二癖もありそうなサブキャラも”笑い”に十分活かされないまま終わってしまった。
どちらかというとオフ・ビートなコメディを狙っているような気もするのだが、だとしてもその手の作品に必携な脱力テイストは物足りない。
キャストではM・ダグラス、T・マグワイア、芸達者な演技で安定している。M・ダグラスは肩の力を抜いた演技で放蕩中年のダラダラした生き方を上手く表現していた。また、T・マグワイアも謎めいた面持ちで独特の雰囲気を醸しユニークな存在感を見せていて良かった。
本家のアカデミー賞が決まりました。
大きな目玉は、やはり作品賞、監督賞他6部門受賞の「スラムドッグ$ミリオネア」。
日本公開が今から楽しみ(^_^)
それと、日本から出品した「おくりびと」(外国語映画賞)と「つみきのいえ」(短編アニメ賞)の受賞も同じ日本人としては喜ばしいことでした。
そんなこんなで、個人的にも去年見た映画の総決算なんぞを------
去年ここで紹介した作品は198本。内、劇場で見た作品は38本。
年々ペースが落ちてるなぁ~‥。毎年のことだけど、見落とした映画が何本かある。なので、今年も限られた中からの”俺アカデミー賞”になっちゃいますが、とりあえずBEST10から。
1位
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド2位
4ヶ月、3週と2日3位
BOY A4位
やわらかい手5位
パンズ・ラビリンス6位
アフタースクール7位
ノーカントリー8位
ダークナイト9位
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程10位
イントゥ・ザ・ワイルド尚、各作品のレビューは記事をご参照ください。
ついで各賞を発表。
作品賞「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
監督賞P・T・アンダーソン(「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」)
脚本賞クリスティアン・ムンジウ(「4ヶ月、3週と2日」)
男優賞ハビエル・バルデム(「ノーカントリー」)
女優賞マリオン・コティヤール(「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」)
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」はとにかく映画的興奮に満ちた大作で、P・T・アンダーソン監督の堂々とした演出にも脱帽したので迷わず1位に決まった。
「4ヶ月、3週と2日」は堕胎というテーマもさることながら、サスペンスの面白さを評価した。たった一日の出来事だが、ショッキングな描写に果敢に挑んだ所を含め実に濃厚なドラマを描いている。
J・バルデムはもう参りましたという感じで、キャラが立ち過ぎるくらい立っていたので迷わず主演男優賞は彼に。
主演女優賞は、BEST10には入れなかったが、
「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」のM・コティヤール。正に一世一代の熱演が強烈に印象に残った。
色々と迷ったが、
「おくりびと」「パーク アンド ラブホテル」「潜水服は蝶の夢を見る」もBEST10に入れたかったくらい良かった。尚、中編作品
「赤い風船」も素晴らしい名画だった。リバイバル上映だったので対象外としたが、この作品は今年一番の収穫だったかもしれない。
ジャンル俺アカデミー賞
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ダイアン・レインが良い。長らく低迷していた彼女の復活した姿が見れて嬉しくなった。
「理想の恋人.com」(2005米)ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 幼稚園の保母をしているサラは夫と離婚したばかり。ボート作り職人のジェイクは妻と離婚したばかり。二人とも失意の痛手で恋愛を敬遠していたが、周囲の家族や友人の後押しで出会い系サイトで知り合う。初デートは互いに好感触だったが、サラにはもう一人気になる存在がいた。それは園児のシングルファザーでイケ面のボブだ。サラは二人の間で心揺れる。
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(レビュー) バツイチ男女の恋愛をハートフルに綴ったロマンチックコメディ。
ウィットに富んだ会話や、サラ役のD・レインのファッション等、見応えの多い好編と言える。
インターネットという現代的なツールを持ってきた所にも面白さを感じた。
出会いのきっかけはともかくとして、大切なのはハート、フィーリングなのだということを、この映画はネットという現代的なツールを反面教師のように登場させて暗に語っている。
日々、子供に向き合うサラ、木製ボートにこだわるジェイク、彼らは共にアナログ派の人間である。価値観を共有できる所に自然と合点がいく。
反対に、今作には合理性や利便性を重んじる、いわゆる感情希薄なデジタル派な人間たちが登場し、二人と対抗する形で尽く痛い目に合う。
例えば、ジェイクの恋敵として登場するボブは、浮気がばれて平手打ちを食らう。また、サラの父親の愛人ドリーは出会い系にのめり込みすぎて純真な少年を傷つけてしまう。ジェイクにボートの注文をするビル・ゲイツ似の(多分狙っていると思う)会社社長も最後には酷い目にあう。
このように悲惨な顛末を受ける彼等デジタル派なキャラたちは、サラとジェイクのロマンスを肯定するためのプロット要員となっている。この明快な人物配置によって、ラストはスッキリとしたカタルシスを呼び込んでいる。確かに紋切的過ぎるが、ロマコメならこのくらい楽観的な方が見やすい。
ただ、クライマックスについては物申したい。何故ボートなのか?何故飛び込む必要があるのか?色々と突っ込みを入れたくなってしまった。詰めの甘さを感じてしまう。その手前までは良かったのだが、ここで一気に興醒めしてしまった。
蜘蛛女モナのキャラクターとプロットは秀逸。
「蜘蛛女」(1993米)ジャンルサスペンス
(あらすじ) 地元マフィアと内通する汚職刑事ジャックは裏金を溜め込み、妻に隠れて不倫を重ねる日和見な男である。ある日、ロシア・マフィアの女ボス、モナを護送する役目を負う。敵対する地元マフィアの命令で彼女を売り渡そうとするが、隙を突かれて逃げられてしまった。こうしてジャックは地元マフィアと警察の両方から追われることになる。
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(レビュー) 女マフィアに翻弄される刑事の恐怖を乾いたタッチで描いたサスペンス作品。
「蜘蛛女」という邦題に見世物小屋的な怪しさが漂うが、これはロシア・マフィアの女ボス、モナのことを指している。彼女は一度狙った獲物は絶対に逃がさない。蜘蛛のように糸で絡み捕って食い殺してしまう恐ろしい女である。「蜘蛛女」という邦題は言い得て妙である。
不倫と汚職にまみれたジャックの転落は自業自得、同情の余地無しであるが、モナのモンスター振りが余りにも強烈過ぎて、かえって気の毒に見えてくる。モナのキャラクターは「白いドレスの女」(1981米)のK・ターナーや、「危険な情事」(1987米)のG・グローズ等、この手のファムファタールの傑作と並び表されても良いくらいのインパクトがある。
特に、自分の代わり身を仕立てるシーンはすごい。まさか自分の××を×××するとは‥。このシーンに限らず、意外な展開がふんだんに盛り込まれておりプロットはよく練られていると思った。
また、中盤以降の展開も見事である。シーンの繋ぎ目を極力カットし、ジャックのモノローグだけで引っ張り、正に悪夢を見ているような感覚に襲われた。やや倒錯的な世界に埋没し過ぎという気がしなくもないが、そのままクライマックスまで目が離せなかった。
最後はセンチメンタリズムに締めくくられていて、これも味わい深かった。
このラストは見ようによっては二つの解釈が出来ると思う。というのも、その直前のシーンで何発の銃弾が発射されたか?その捉え方次第で、現実なのか夢なのか判断が分かれるからである。個人的には後者の意見なのだが‥。
尚、原題の「Romeo Is Bleeding」はトム・ウェイツの曲である。本人がチョイ役で顔を出していたのはその関係からだろう。
中々歯ごたえのある戦争コメディ。
「スリー・キングス」(1999米)ジャンル戦争・ジャンルコメディ
(あらすじ) 1991年、湾岸戦争終結直後のイラク。米軍兵士トロイ、コンラッドはイラク軍の捕虜から一枚の地図を入手する。そこにはフセインがクウェートから盗んだ金塊の隠し場所が記されていた。特殊部隊のゲイツ少佐を先頭に、トロイ達は金塊探しに出発する。すぐに金塊は見つかったが、イラク軍に蹂躙される村人達を見て彼等はつい首を突っ込んでしまう。これが思わぬ災難を呼び‥。
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(レビュー) 戦争の理不尽さを痛烈に皮肉ったアクションコメディ。
監督脚本は異才デヴィッド・O・ラッセル。この監督の作品は癖があるので、決してメジャー路線にかかることはない。元来、この人は社会を斜に見るような所があり、これまでにも様々な題材をブラック風味なテイストで料理してきた。「アメリカの災難」(1996米)ではアメリカの歴史と社会を、「ハッカビーズ」(2004米)では現代人の精神的病巣を奇抜なタッチで描いている。
本作の題材は湾岸戦争である。イラク兵に蹂躙される村人達の姿などシリアスに描かれている部分もあるが、基本的に残酷描写も含めマンガチックな演出が多い。それは戦争をまるでショーのように見せている‥とも言える。戦災者に対する憐れみを出そうとしているのか、それともブラック・コメディ的に見せているのか?どうにも居心地の悪さを覚えてしまう部分もあるのだが、しかしこれこそがラッセル監督の資質であり、他の作家とは一線を画す独特の魅力である。
そして、こうした表面上の”おふざけ”はともかくとして、作品に底流する問題意識の鋭さは中々侮れないものがある。
例えば、被災地における食料難の問題。これは砂漠に垂れ流されるミルクというアイディアで表現されている。また、戦火による環境破壊は油まみれになる鳥達に、帝国主義時代を想起させる貧富の差はヴィトンのバッグやロールスロイスに表現されている。これらシニカルなギャグは、人間の本性が露になる戦時下ににおいては、ことさらおぞましいものに写るし、ある意味で真理を言い当てているようにも思う。サラリと描いてしまう辺りがデヴィッド・O・ラッセルの才気だ。
映像はMTV的なドライヴ感に溢れ非常に軽快である。戦場をここまでスタイリッシュに撮った作品も珍しいと思う。少しざらついた画面も戦場の臨場感を上手く演出していると思った。
テーマは戦争映画にはよくある人道主義的なものである。そこをゴリ押ししなかった所も良かったように思う。ただし、エピローグは蛇足に思えた。
さらりと描いているので気軽に見れるが、色々と突っ込みどころが‥。
「しゃべれどもしゃべれども」(2007日)ジャンル青春ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ) 東京下町、落語家今昔亭三つ葉はいつまでたっても真打になれず、このまま落語を続けていく自信がなくなっていた。ある日、師匠の講演を無愛想に聞く十河という女性と出会う。落語の素晴らしさを教えようと彼女のために話し方教室を開く。十河の他に、大阪から引っ越してきたばかりの小学生村林、元プロ野球選手で解説者の湯河原といったワケありな面々も入ってきた。ど素人相手に初めはどうなることかと思っていたが、三つ葉の指導の元、彼らの喋りは次第にそれらしい物になっていく。
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(レビュー) 若手落語家が様々な傷を持った人々との交流を通して一人前に成長していく姿を、淡いロマンスを交えながら描いた青春映画。
国分太一が三つ葉役を演じている。クライマックスの喋りは中々堂に入ったもので感心させられた。
しかし、全体的にやや男前すぎてしまう。半人前である自分に対する焦りや苛立ちといった、不細工な面が希薄である。飄々としたところが彼の演技の味だと言われればそうかもしれないが、だとするとこの成長ドラマはどこにカタルシスを求めたら良いのか分からなくなってしまう。
ドラマの主幹を成すのは彼の成長であるが、それに伴って十河とのロマンスも描かれている。これについても不満は残った。第一に出会い→教室開講という展開が強引過ぎる。また、ラストの二人のやり取りも唐突に思えた。これに関しては、無口で無愛想な十河の変化、ここを描ければずっと引き締まって見えたと思う。中盤の二人の不器用な交遊がそれなりに面白く見れたので、あともう一押しインパクトをもたらす事件が欲しかったところである。
二人の周縁に位置する松林と湯河原のエピソードについては面白く見れた。ただ、松林はともかく湯河原のエピソードは未消化のままなのが残念である。
作品の出来に色々と不満が残るが、落語の舞台裏を垣間見れたという意味では見て良かった。
背景を全てCGにしてしまった大胆な作品。油絵を見ているような感覚になる。
「グレースと公爵」(2001仏)ジャンルロマンス
(あらすじ) 1790年のパリ。王党派である英国人女性グレースは、革命派であるオルレアン公爵と交際していた。政治的信念は違えど二人は深い絆で結ばれていた。2年後、王政打倒を叫ぶ民衆の蜂起でパリはあたり一面血の海となる。グレースは命からがら田舎の別宅へ逃げ延びた。そんな彼女にパリに住んでいたときの友人から助けを求める手紙が届く。公爵の政敵シャンネス司令官が窮地に立たされているので匿って欲しいというものだった。グレースは危険なパリへ戻る。
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(レビュー) 革命の嵐に巻き込まれる男女の数奇な運命をを、CGを用いて描いた実験的作品。
監督、脚本はE・ロメール。元来ミニマムな作品作りをしてきた監督だが、今回は珍しく歴史大作劇に挑戦している。これまでの作品を知る者としてはかなり意外に思えた。齢80にして新境地に挑もうとする姿勢には感服する。しかしながら、その野心は買うが、残念ながら作品の出来には不満が残った。第一に、本作のようなCGの使い方には違和感をおぼえてしまう。
屋外のシーンは、油絵の絵画に人物をCGで合成するという手法で撮られている。かなり大胆且つ実験的な手法と言っていい。しかし、技術的に未熟なせいで、どうしても人物が背景から浮き上がってしまう。映画の約8割を占める室内劇はノーマルに撮られているのに、屋外になると途端に二次元と三次元のギャップが際立ち中々馴染めない。
物語はグレースとオルレアン公爵の友情が、動乱によって崩壊してく様を淡々と筆致し、映像のエキセントリックさに比べれば実にまっとうだ。
通俗的な恋愛ドラマとしなかったところは、ベテラン監督ロメールならではの手練で味わい深い。男女の友情を信じない人もいるかもしれないが、この映画を見るとそれもありかな?‥なんていう風に思えてくる。
スタッフ、キャストともに豪華なのだが今ひとつ。
「迷い婚-すべての迷える女性たちへ-」(2005米)ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 新聞社に勤めるサラは恋人ジャックと、妹の結婚式に出席するため実家に戻ってきた。そこで亡き母の知られざる過去を聞かされる。母は結婚式直前にナーバスになり別の男の元に走ったのだ。もしかしたら自分はその男の娘なのではないか‥?不安に駆られたサラは、その男ボーの居場所を突き止めて会いに行く。
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(レビュー) 女性のマリッジブルーを洒落たセンスで綴ったロマンチック・コメディ。
監督にR・ライナー、製作総指揮にJ・クルーニーやS・ソダーバーグといった豪華な面々が揃っているので期待したが、正直出来は今ひとつ。名作「卒業」(1967米)をモチーフにしたアイディアは面白かったのだが‥。
端的に言うと、登場人物が余りにも思慮に欠けるため入り込めなかった。コメディとして割り切って作っていれば、あるいは違和感無く入り込めたかもしれないが、マリッジ・ブルーを中途半端にシリアスに語ってしまうのがいただけない。このキャラクター達ならコメディに傾倒した方が楽しく見れたかもしれない。
それと、サラ役のジェニファー・アニストンの演技が、所々でメグ・ライアンにダブって見えてしまうのも余り気分のいいものではなかった。監督がメグ主演の「恋人たちの予感」(1989米)と同じだから余計にそう思ってしまうのかもしれないが、つい比較してしまう。M・ライアンといえばロマコメの女王として一時代を築いた女優である。若手気鋭のアニストンでさえ、やはり意識してしまうものなのだろうか。
K・コスナーやS・マクレーンといった豪華な俳優陣が脇を固めているが、こちらは中々の妙演を見せている。また、K・ベイツがカメオ出演していたのも嬉しいサプライズだった。