ジオラマにピリリと効くツタの表現方法
ジオラマにおいて植物の表現はその作品の善し悪しに影響を及ぼします。
最近では非常にいい素材が発売されておりますのでそれを使いこなせば絶大な効果を発揮するのですが、その情報を知っているか知らないかは運命の分かれ道です。
ジオラマを作る際のテクニック&情報を湯水のように垂れ流しつづけているのが
「情景師・アラーキーのジオラマでショー」のモットーです!
ここしばらく模型イベントのレポートブログになっておりましたので久しぶりに HOW TO記事をガッツリ紹介いたします!
今回のジオラマテクニックは私がもっとも愛する植物表現「ツタ」の作り方です!
「その建築のデザインに失敗したらツタを這わせるといい」
と海外のとある有名建築家が言ったという話を何処かで聞いたような気がしますが、それはジオラマにも言える事かもしれません(笑)。とは言いつつも失敗をごまかすというよりも、ジオラマにおいてはこのツタ表現はその作品を更にリアルに見せる効果としてはかなり高いですよね。
このブログの扉写真になっている1/32スケールのジオラマ「夏の西瓜」から。
1/100スケールのアンコールワット
どんなスケールのジオラマでもツタの表現を細かく造作すると作品が本当にリアルに見えますよね。
1番最初に紹介した1/32スケールのツタはこちらのブログでよく紹介しているベルギーのジオラマ素材メーカー
JOEFIX(ジョーフィックス)社が販売している白樺の花びらを使った天然素材です。
http://www.sakatsu.jp/product/new/162000001x.html
今回は小さなスケールでも使える素材として「ミニネイチャー」という素材も紹介します。
ジオラマ用の素材を売っている店で、この緑の固まりのようなものがブリスターパックに入って売られているのを見た事がある人もいると思います。
網のような素材にスプレーボンドを振りかけて、そこにパセリのようなものがちりばめたもの。
これで簡単に木や生け垣が作れる!と重宝されている材料です。
http://www.mininatur.asia/introduction.html
HPを見ると実にいろいろな種類が販売されているのが解りますね。
その素材の中で「カエデやモミジ(HO)]という種類の物です。
商品名に HOと入っているように鉄道模型の HOゲージ (1/80スケール)に最適な大きさですよ!という商品ですね。
実はこのモジャモジャしている葉をよ〜〜〜く見てみると、紙をパンチングしたもので、一枚一枚がちゃんとした葉っぱの形をしているんですよ。
モミジの葉の形、ツタの葉っぱと同じような星形の葉っぱですね。
先ほど紹介した JOEFIXのツタの葉との大きさ比較です。
このミニネイチャーの「カエデやモミジ(HO) ]の固まりから一枚一枚この紙の葉っぱをピンセットで取り出して、それをゼリー状瞬間接着で丁寧に張っていきます。ハイ、簡単に書いておりますが
「剥がす→葉っぱの向きを確認してつまみ直す→ゼリー瞬接を付ける→張り付ける」という作業を葉っぱ一枚一枚行なう訳です!
そうして出来上がった作品その1
単に葉っぱを張っただけでも建物の壁にツタが這う光景ってかなり緻密に見えますね。
(1/72スケールの悪役1号のジオラマ)
このツタの葉っぱを這わせる際にはツタの葉が伸びる特徴を観察して再現してあげると更に良くなります。
以下は1/64スケールの漁船の造船所のジオラマ「トタン壁の造船所」から
ツタは地面から真上に伸びるというよりも幾重もの枝に別れながら横に、横に伸びていく特徴あります。
そうやって満足いく密度を出すために一枚一枚貼っていく・・・・。
こういったコツコツ作業は骨の折れる作業ですが、私は結構好きなんですよね。
ちなみに上の写真のツタの葉っぱの数を数えてみたら・・・なんと写真に映っている範囲でも290枚!!
努力は結果に現れていますよ(たぶん)
さて、例に挙げた上記の2案は大きな違いがあります。
それは「ツタのツルを再現していあるかどうか」です。
上の1/72スケールのものはツルなし、下のトタン壁のものはちらりとツルが見えています。
見比べてしまうとツルが再現されている方が遥かにリアルだと言う事が解りますね。
さて、このツルはどうしたらいいのか?
と言えば、近所の空き地に生えていた雑草を引っこ抜いてその根を使ったもの!
それを良く洗って、そして熱湯をかけて消毒して良く乾燥させたものです。
天然のものはカビが生えたりしますので上記の作業はしっかりとやってください。
本来であれば、このツタを先に張り付けてから葉っぱをその上に貼るべきなんでしょうが、私はいつも逆です。
葉を張り付けた後に、僅かに見えるスキマにゼリー状瞬接でピンセットを使って張り付けていきます。
本物のツタをよく観察するとほとんどこのツルは見えません。模型的なアクセントのような物ですね。
1/35〜 1/24スケールのツタ表現であれば、先に紹介した JOEFIXの白樺の花を使うのがベストです。
これも上記に書いたのと同様に葉っぱをゼリー状瞬接で一枚一枚張り付けていきます。
そのままでは枯れた葉っぱの色ですので接着後に葉っぱを塗装するのですが、この際には葉っぱの付け根は緑が濃く、先端は薄く塗るとアクセントになっていいでしょう。
仕上げにクリアーを筆塗りしてツヤをあたえるとかなりいい感じに♬
さらにリアルにしあげるには、緑の葉っぱの間に枯れた葉っぱを色を塗らずに残してあげる事です。
最初に紹介した石橋に生えるツタでは葉っぱの先端を部分的に塗り残して、枯れた部分を演出してあげています。
一見「そこまでする意味があるの??」と思えるでしょうが、自然の草木の表現では青々として新芽と枯れた葉っぱの組み合わせがあるのがより自然に見えるリズムなんですよね。
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