独断的映画感想文:カムイの歌
日記:2024年1月某日
映画「カムイの歌」を見る.
2023年.監督:菅原浩志.
出演:吉田美月喜(北里テル),望月歩(一三四),島田歌穂(イヌイェマツ),清水美砂(兼田静),加藤雅也(兼田教授),天宮良(小嶋教授),伊藤洋三郎(佐々木原).
1917年,北里テルはアイヌで初めて女子職業学校に入学する.入試成績が優秀だったテルは担任から副級長に指名されるが,和人の同級生は猛反発し別の生徒を副級長に選出する.以来テルは執拗ないじめと差別を受ける.
その頃,東京から兼田教授がテルの叔母・イヌイェマツの歌うユーカラを取材に訪れ,「アイヌ民族であることを誇りに思ってください.あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」と二人を励ます.
テルはユーカラをローマ字で記録し日本語訳をつける作業を行い,兼田にその結果を郵送することになる.その結果の素晴らしさに兼田教授はテルに上京を促し,テルは叔母と将来の結婚を約したアイヌ青年・一三四に見送られて旅立つ….
アイヌ神謡集の著者・知里幸恵をモデルとした物語.映画は北海道の自然,動植物の姿の描写から始まり,それをバックに朗読されるのは,映画の最後でテルが心血を注いで完成させた,アイヌ神謡集の序文だ.この抑制が効きしかしアイヌ民族の自尊の精神をこめた序文をテルが執筆し,またユーカラの日本語訳の推考に打ち込むシーンには胸を打たれる.映画では美しい北海道の自然が折に触れ描かれるが,イヌイェマツ・島田果歩が歌うユーカラもまことに素晴らしい. 19歳で亡くなるテルの最後のシーンも心に残る.俳優は吉田美月喜,島田歌穂,加藤雅也がそれぞれ好演,見応え,聴きごたえのある映画である.
★★★★(★5個が満点).
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