独断的映画感想文:魂のゆくえ
日記:2020年5月某日
映画「魂のゆくえ」を見る. 2017年.監督・脚本:ポール・シュレイダー.
出演:イーサン・ホーク(トラー牧師),アマンダ・セイフライド(メアリー),セドリック・カイルズ(ジェファーズ),ヴィクトリア・ヒル(エスター),フィリップ・エッティンガー(マイケル). ニューヨーク州北部の教会「ファースト・リフォームド」は近く創立250周年を迎える.牧師のトラーはかって,家の伝統に従ってイラン戦争への従軍を勧めた息子を,戦火で失った過去がある.今は妻とも別れ,一人牧師館で暮らすトラーは,病魔に冒されている.
ある日礼拝に来た身重の信徒メアリーから,夫マイケルと話してくれる様に依頼されるトラー,マイケルは環境保護活動家で,地球の未来を悲観するあまり子どもをもうけることに反対だった.トラーは真摯にマイケルと議論するが,その後メアリーからの知らせで,マイケルが自爆テロ用のベストを隠し持っていることを知る.そのベストを教会に持ち帰ったトラー,その後マイケルからの呼び出しを受け出かけたトラーは,マイケルの自殺死体を発見する. トラー宛の遺書でマイケルの環境汚染企業バルクに対する活動内容を知ったトラーは,マイケルの望んだとおりの葬儀を執り行うが,250周年式典への資金提供を行うバルクの社主は,トラーの行為を政治的として激しく非難する….
何の疑問も持たずに行ったことが息子の死に繋がったという絶望を経て,トラーはマイケルの死を通じて教会の在り方自体に疑問を抱いていく. 伝統ある「ファースト・リフォームド」も大規模な教会の系列下にあり,上司にあたるジェファーズは資金調達に長けた現実家.トラーの思いは孤立し,マイケルを死なせた後悔は,彼に宗教家を越えた行動を選択させるのだ.
トラーの日記の形で記述される映画は,淡々とした物静かな画面に充分な量の情報を載せて物語を展開していく.光と闇を使い分けた美しい映像も素敵だ.見応えあり.★★★★(★5個が満点).
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