独断的映画感想文:冷たい熱帯魚
日記:2012年3月某日
映画「冷たい熱帯魚」を見る.
2010年.監督:園子温.
出演:吹越満(社本信行),でんでん(村田幸雄),黒沢あすか(村田愛子),神楽坂恵(社本妙子),梶原ひかり(社本美津子),渡辺哲(筒井高康),諏訪太朗(吉田).
映画の冒頭,怒りに満ちた相貌で手当たり次第に冷凍食品,レトルト食品を買いものカートに放り込んでいく女,胸の大きく開いた服装である.
その女社本妙子が用意した先ほどの冷凍食品の昼食を食べる食卓を囲むのは,夫・社本信行と娘・美津子の3人家族,但し娘は死んだ前妻の子と後で判る.
食事中にかかった電話に応じて食事途中で出ていく娘,ところがその後電話が入って娘は万引で捕まったという.慌ててそのスーパーに急行する夫婦,しかし店長は常習の疑いが強いと憤り許してくれそうもない.そこに介入した店長の知り合いの村田という男,口先巧みに店長を宥め,娘を貰い受けることに成功する.
村田は社本と同業の,熱帯魚店を大規模に経営する男だった.
村田は美津子を従業員として預かろうと言いだし,強引にそれを実行する.更に村田は社本をある日呼び出し,吉田という男との契約に同席させるが,吉田は社本という同業者が同席したことで安心して村田との契約に捺印した直後,村田に毒殺される.村田は社本に強いて吉田の死体処理を手伝わせる….
埼玉であった愛犬家連続殺人事件をモデルとした映画.
映画の7割方は,でんでん演ずる村田が物語の大半を占有する.
僕は無口で押しの弱い人間で,人生のあらゆる局面で,この村田の様な,押しが強く弁が立ちあくどく無神経な輩にしてやられたトラウマがあって,この村田の言動を見ているのは実に辛い(でんでんは実にうまい).
ところがその村田に良い様にあしらわれていた社本が,ある時点でぶち切れモンスターとなり,映画はその局面を転換していく.
その後映画は更に恐るべきモンスターを画面に描いて終わるのだ.
映像はエロチックかつグロテスクで,決して人に勧めたいとは思わない.
しかし最期まで見たときのこの映画の,人間に対する根源的表現はどうだろう.
人間とは何と恐ろしいものなのだろう.
その事実を認めざるを得ない僕たちは,何という存在なのだろう.
心に残る映画.しかし二度と見たいとは思わない.
★★★★(★5個が満点)
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