独断的映画感想文:ヒア アフター
日記:2011年2月某日
映画「ヒア アフター」を見る.
2010年.監督・制作・音楽:クリント・イーストウッド.
出演:マット・デイモン(ジョージ),セシル・ドゥ・フランス(マリー・ルレ),フランキー・マクラレン(マーカス/ジェイソン),ジョージ・マクラレン(マーカス/ジェイソン),ジェイ・モーア(ビリー),ブライス・ダラス・ハワード(メラニー),マルト・ケラー(ルソー博士),ティエリー・ヌーヴィック(ディディエ).
パリで活躍するジャーナリスト,マリーは,バカンス先で津波に巻き込まれ,仮死状態となる.
奇跡的に息を吹き返したマリーは,仮死状態の時に見た世界の映像に心を奪われ,仕事が手につかなくなる.
サンフランシスコに住むジョージは霊能者,死者の声を聞くことが出来る.一時はTV出演もして本も出し,サイトを開いてもいたが,自分の人生を生きようと霊能活動を退き,今は工場労働者として働いている.
料理教室で出会った女性メラニーに好意を持つが,彼が霊能者であることを知ったメラニーに執拗に迫られ,彼女の過去を図らずも知ってしまう.
ロンドンに住む一卵性双生児のマーカスとジェイスンは,母と3人で暮らしている.二人は強い絆で結ばれていたが,外向的で弟マーカスを引っ張っていたジェイスンが,不慮の交通事故で急死.薬物治療で入院する母と別れ里親と暮らすことになったマーカスは,ジェイスンとの再会を切望する.
この3人の運命的な巡り会いを描く映画.映画の達人イーストウッドの,死後の世界を巡る物語.
しかしこの映画はオカルトでもスピリチュアルでもなく,淡々と人生のつづれ織りと希望を描く映画だ.
冒頭の津波のシーンは凄まじい迫力,CGが嘘っぽくなくカタストロフの恐ろしさが胸に迫る.
映画全体はイーストウッド特有の蒼い色調で淡々と進むが,映画にスキが無く緊張感が維持されて,長さを意識することはない.
3人それぞれにその人生の困難に直面するが,終局の邂逅がそれぞれの運命を希望に向けて静かに展開していく.
映画全体を包む音楽も,ラフマニノフのコンチェルトを基調とした落ち着いた心地よいもの.イーストウッド監督の映画の充実感を堪能できる一作.
個人的には中盤の,ジョージが気分を変えようと出かけるイタリア料理教室のエピソードが,好きである.それまでの沈痛な雰囲気を変え,明るい色彩と陽気なシェフ,イタリアオペラの音楽をバックにユーモアを交えて進む料理教室が,ジョージとメラニーの出会いの場に相応しい.
こういうエピソードのはさみ方は,やはり熟練の技という感じがする.
見て損はない映画.★★★★(★5個が満点)
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