独断的映画感想文:近松物語
日記:2009年4月某日
映画「近松物語」を見る.
1954年.監督:溝口健二.
出演:長谷川一夫(茂兵衛),香川京子(おさん),南田洋子(お玉),進藤英太郎(大経師以春),小沢栄(助右衛門),菅井一郎(源兵衛),田中春男(岐阜屋道喜),石黒達也(院の経師以三),十朱久雄(鞠小路侍従),荒木忍(公卿の諸太夫),東良之助(赤松梅龍),橘公子(お蝶),浪花千栄子(おこう).
江戸時代の京の都,大経師の以春は暦の出版を免許され独占し,名字帯刀を許された豪商だが,世間体を何より気にする強欲な男.
後妻のおさんは,実家の兄から金の無心を頼み込まれ夫に言えず困っている.
おさんはその金の都合を手代の茂平に頼むが,引き受けた茂平は店の金を工面しようとして主人以春に知られ,厳しく叱責される.その上誤解が誤解を呼んで,おさん茂平は不義密通の疑いをかけられ,ともに店を飛び出してしまう….
当初誤解による疑いをかけられ飛び出した二人だが,茂平は御店大事の生真面目な朴念仁,おさんは世間知らずの豪商の内儀に過ぎない.
その二人が運命にもてあそばれ,本気の恋に落ちていくその描写が何とも言えない.特に香川京子の息をのむほどの変貌,その美しさは筆舌に尽くし難い.
近松門左衛門-川口松太郎の物語が素晴らしい上,宮川一夫のカメラが魅力的.オープンセットや,そのセットで立ち働く商家の人たちの一人一人の所作まで絵になっていて,時代劇黄金時代の日本映画の,記念碑的作品と言える.
一見の価値有り.
★★★★☆(★5個が満点)
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