謎のオジサン
私がそのオジサンに初めて出会ったのは、初夏の頃だった。
出会ったというより、玄関周りを掃除していた私に声をかけて来たのが最初だ。
私の家は商店街の端にあり、一方通行の狭い道をバスも通る交通量の多い通りだ。
「この家に住んでるの?」とか 「いい場所だね」とか聞かれて適当にあしらっていたが、色々と立ち入ってくるので掃除も早々に家に引き上げた。
構えば図々しくなるのが常だ。
身なりが汚いわけでも、変わっているわけでもない。
ごくごく普通のサラリーマンといった風情だ。
それまでは気にしていなかったが、朝窓を開けると通りの向こう側にあるベンチにそのオジサンが座っているのが見えた。
そのベンチは、小物を売っている店が軒下に設た、かなり派手な色のものだ。
本来はお客さんのためのものだろう。
早朝から午前8時頃まで占領している。
ただただ座っているだけ。
男性には珍しく、両足をきちんと揃え、道ゆく人に挨拶をする。
昼間は全く姿を見ない。
朝になると姿を現す。
そんな日が夏の終わりまで続いた。
その頃には、着ていたシャツは遠目でもかなりくたびれているのがわかるようになっていた。
路上生活者ではなさそうだが。
ベンチの持ち主のお店は、知っていたのか知らないのか。
ところが、9月の初め頃から姿を見なくなった。
しばらく見かけなかったので、すっかり忘れていた10月初め、またベンチに座っている姿を見るようになった。
朝、ブラインドを開けると嫌でもみえる。
今回は、ジャケットを着用、鞄も持ち、傘も携帯している。
衣替えしたらしい。
座っている時間帯も変わった。
朝7時頃から9時頃まで。
冬時間に変更したのかもしれない。
現在もその状態は続いている。
理由を聞いてみたい気もするが、それは危険だと思いただ成り行きを眺めている。
冬はどうするのだろうか、と。
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