沖田、土方、近藤ら仲間たちとの永訣。土方の遺影を託された少年・市村鉄之助はどこに消えたのか―維新後、警視庁に奉職した斎藤一は抜刀隊として西南戦争に赴く。運命の地・竹田で彼を待っていた驚愕の光景とは。百の命を奪った男の迫真の語りで紡ぐ鮮烈な人間ドラマ・浅田版新選組三部作、ここに完結。
最後まで読んだ時に私は、上巻からずっと斎藤一が語っていたのは新選組のことも含めて全ては市村鉄之助を語るための布石に過ぎなかったのだなと思った。
市村鉄之助は土方歳三が箱館で戦っている時に鉄之助に遺影となる土方の写真を託され、日野の佐藤彦五郎へ伝令と称して逃がした者であり、斎藤一が初めてその居合を手ほどきした若者です。
しかし、遺影と一緒に小切紙に「使者之身上頼上候 義豊」と一行認められており、土方が佐藤氏に託したのは遺影でも遺品でもなく実は鉄之助だったのが泣かせます。
こうして鉄之助は佐藤氏に匿われ二年ほど過ごすようになるが、夜中に一人で剣の稽古をしていた様を見た佐藤氏は斎藤一の剣と似ていたと後に佐藤氏を訪れた斎藤に打ち明けた。
さて、それからのち鉄之助は佐藤氏に暇乞いをして出て行き、その後の行方は分からなくなってしまうのだが突如二人は出会うことになる。
それは西郷征伐と言われた戦でのこと。
斎藤一達が宿陣した寺に夜が更けたころに薩摩兵が打ちこんできた。
その中に斎藤一は自分を見たのだ。体裁き、剣の使い方、それは新選組三番隊長斎藤一の剣に違いなかった。
それは斎藤一が教えた剣を使う市村鉄之助の姿であった。斎藤は鉄之助を探し求めて斥候に出、遂に鉄之助と相まみえるのだが。。。
死するは易く、生くるは難い。
殺すは易く、生かすは難い。