ペット業界がいちばん賑わう年末年始。ペットショップでは年末ぎりぎりまで続くトリミングの嵐、連日満員御礼のペットホテルの管理、プレゼント需要が高まり好調なクリスマス前後の生体の売り上げなど、その目まぐるしさたるやもう……。
第2のかき入れ時とも言われる年末年始。その実態は
こちらの記事でも触れています。
毎年繰り返されるショップの年末年始の風景ですが、今年は少し状況が違ったようです。
年明け最初の業界の集まりに参加させていただき、ショップに生体を流通させている業者さんのお話を伺うことができました。
「昨年は生体の流通のピークが例年よりも遅く参りました。数はそこそこ出たけど、
売れ残りも多くて」
「売れ残りは繁殖用にもう一度オークションにかけるんですが、今回は
それでも買ってくれる業者がいなくて……」
さて彼はその後「売れ残り」をどうすることにしたのでしょうか……。---------------
減り続ける犬猫の飼育率---------------
一般社団法人ペットフード協会が毎年発表している犬・猫の飼育実態調査によりますと、平成24年の全国推計飼育頭数は犬:11,534千頭・猫:9,748千頭となっています。飼育率にすると犬:16.8%・猫:10.2%となり、国民の27%が犬か猫を飼育しているということになります。犬・猫の飼育率がほぼピークとなっていた平成19年のデータと比べると、推計飼育頭数で犬:-988千頭・猫:―441千頭。飼育率は犬:-2.1%・猫:-1.0%となり、この5年間でペット(犬・猫)を飼育している家庭が減っているということになります。
http://www.petfood.or.jp/topics/index.html ペットの飼育率(普及率)が下がるということは、ペットビジネスをしている者にとっては市場規模が小さくなるということです。もとよりペットの飼育は、人の生活が成り立っていてこそのものです。残念ながら2008年秋に起きたリーマンショック、2011年に起きた東日本大震災の影響はペットの市場をも減退の方向へ進ませ、業界はいまだ回復への道を模索している状況です。
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ペットと人の共生を考え直す----------------
ペットがコンパニオンアニマル(伴侶動物)としての地位を得、人間との生活に溶け込んでいる現状があります。中にはペットが生き甲斐とまで言う方も少なくはないでしょう。そんな中、
ペットと人の共生を考え直す動きが活発になってきました。http://www.petfood.or.jp/breeding/dictionary/webcatalog.pdfhttp://www.petfood.or.jp/breeding/recommend/01/index.html 「ペットと暮らすことは飼い主の幸せにつながる」。飼い主にとって漠然とだとしても、その認識はあると思いますが、ペットと人間の関係をより深く研究し、「幸せにつながる」ことを証明することで広く社会に貢献できるようにもなります。
ペットの社会的地位を向上させ、飼育率を向上させる。研究やエヴィデンスを求めるのは獣医師主導の仕事となりますが、これを実現させるためには、社会的な制度や環境作りも欠かせません。
ペットショップの新しい挑戦も始まっています。
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ショップが飼い主に育て方のアドバイス----------------------
一例として、生体販売・グッズ・トリミング・動物用医薬品を扱う某ショップでは、動物の福祉を啓蒙する団体を作り、近隣の飼い主との散歩会を通じてマナーやペットの扱い方を学んでもらう活動に取り組んでいます。ペットに人間の道徳観を共有させるには限界がありますので、公共の場での飼い主のマナーは、ペットを生活地域に受け入れてもらうために特に重要な要素となります。
また飼育のプロが育て方の良きアドバイザーとして身近にいることは、飼育に対して安心感を与えることができます。このお店は将来的に、
飼い主のいないペットの引きとり・譲渡を行うための施設の併設を見据えており、着々と準備を行っています。
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ペットと楽しめる社会のインフラ構築---------------------
西部グループでは「ペットスマイルプロジェクト」として、自社の施設をペットと共に楽しめるよう開放するなどの動きを、グループ会社であるアドホック㈱(屋号:ペットスパ)を中心に進めています。
http://www.seibu-group.co.jp/pet-smile/index.htmlhttps://adhocpet.com/index.htmlグループとしては、ペットと泊まれる施設の拡大や、季節のイベントでは交通機関までも利用できるようにしています。また、トリミング中心の店舗ではサロンならではの美容・健康に特化した飼い主目線のサービスや商品を取りそろえています。
国内に飼い主とペットが一緒に利用できるインフラを充実させるため、また、社会に向けてこの動きを啓蒙するためのモデルケースを創るためにグループ挙げて実践している、とても貴重な取り組みです。
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繁殖・流通の改善を目指す----------------
生体販売はこの業界の中核となっている分野ですが、
繁殖・流通の過程でおきる非道徳的な問題が指摘され続けていることも忘れてはいけません。
特に感染症と遺伝疾患は購入者の直接的な不利益に繋がるだけではなく、
同じ環境下に置かれる他の個体の命にもかかわるため大きな問題となっています。
ペット(コンパニオンアニマル)を扱う日本最大手の㈱AHBでは、このような問題を解決するべく動き始めました。
http://www.bioplus.jp/index.php?FrontPage 劣悪な環境での繁殖や親犬の管理は、商品としての子犬の健康を損ね、上記のような問題を引き起こします。この会社では提携ブリーダーに対して親犬の管理を徹底させるためのセミナーや、感染症検査、動物医薬品の販売、人工授精による繁殖の補助などをサービスとして提供しています。また、全国87店舗ある直営店で扱う生体を、ISOを取得している国内5カ所のセンターで管理し、健康状態の検査を行い、検査証を発行したのちに販売を行っています。
繁殖者の意識向上は、この業界において非常に有意義であると感じます。昨今の生体の販売量低下によって値崩れも起きています。より良い生体を作ることは、そんな流れを食い止めることもできます。
また輸入が困難な短鼻種の犬などの精子の状態で輸入、国内でのブリーディングは、国内繁殖によって近似化した遺伝子を薄めるためのきっかけにもなりえると感じます。
更に進んで
遺伝疾患を持つ親の繁殖制限や、必要最低限の繁殖数管理、
劣悪繁殖者の駆逐、仔犬・猫の社会化促進までを行い、良い流通の仕組みを創っていただきたいと切望しています。
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業界スタッフの教育-----------
ペットショップで働くためには、ペット関連の専門学校で学ぶことが必要と考える方が多いようです。ペットショップでの仕事は、動物に特化した知識や技術が必要な、いわゆる専門職といえる内容が多くあります。ライフステージや季節による動物の管理の方法や繁殖の知識などを基に、顧客ごとに対応したアドバイスや商品・サービスの提供が必要とされるからです。
専門的な知識や技術だけではなく、社会人として必要なマナーや接客などのビジネススキルまで組み入れた専門学校の教育内容を受けた人材は、受け入れる側の企業にとっても選択しやすいのだと思います。
専門学校の運営には、生徒が習得した知識の質、就職率、習得できる資格などが大きくかかわります。特に就職実績と就職率は、少子化・就職難のご時世ですので生徒数を増やすために重要な要素となります。
決まった就職先に特化し、その企業運営にも貢献できる専門学校が現れ始めています。専属企業の求めるスタッフのスキル教育と、実践的な実習と商品の提供まで、教育現場と企業が連動して運営しています。詳しくは時期を見てレポートしたいと考えています。
ペットの繁殖・出産などの経験はなかなかできるものではありません。教育現場で体験させることができるのであれば、仕事をしていく上でも貴重な体験となるのだと思います。
これからの業界を牽引していくであろう人間の教育の場です、この教育を通して命に対しての価値観と、業に携わる責任感を学びとってほしいと感じています。
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ペットショップができること、すべきこと----------------------
日本は今大きな不況の中にいると言われています。ペット業界も例外なくその中であがいています。
業界の存亡は、国民のペット飼育率にかかっているというのが業界内の一致した見解です。
「人間の安定した生活に根差したペットの飼育」と考えた場合、まずは人間の生活を安定させることが優先と考えるべきなのでしょう。
しかし、疲れ切ってしまった人間の生活に充実した時間や癒し、更には現代では失われがちな人間性をも取り戻すことができるのがペットとの生活と考えると、今の日本に本当は必要とされているものだと感じています。
その実現に必要なのは、ペットとの生活に対する安心感とペットに対する社会的な受け入れです。
知識・社会的なインフラ整備、
命に対する理念の構築、飼い主への教育、売るだけでなく譲渡の仕組みを整える…など、ペットショップができること、すべきことのヒントは沢山あります。
ウェッジ・インフィニティ 2013年01月29日
ペット業界が自ら「劣悪繁殖者の駆逐」を行ってくれるのは良い事だと思います。
本気ならですが。
動物を売ってお金を得る事が前提になっているペット業界で動物愛護を訴えても自ずと限界があるでしょう。
でも何も行われないよりはずっと良い。
繁殖する人や販売する人に色々制限を設けて、ペット業界独自で免許制度を設け、その免許を取得している店舗では安心してペットを購入出来る。そうするだけで劣悪なブリーダーやショップは自然淘汰されて行くでしょう。
購入希望者への事前の説明や購入後のフォローまですれば、捨てられる子の数も減らせるでしょう。
まぁ出来るとは思えませんが。
これだけ飼い主の居ない犬や猫がたくさん居る日本で、増やして売る事自体が悪でしょう。
まずは生体販売を止めて欲しいです。
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