二期会「ドン・ジョヴァンニ」稽古 | 豊玉南一丁目音楽研究所
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二期会「ドン・ジョヴァンニ」稽古

二期会「ドン・ジョヴァンニ」通し稽古

豊玉南一丁目音楽研究所

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カロリーネ・グルーバー新演出の通し稽古を見せていただいた。日生劇場での仕込みは来週からだそうで、今日は西新宿の稽古場にしつらえた仮舞台でピアノ伴奏の通し。

いうまでもなく、ジョヴァンニは女にとって魅力的な男だ。ワルだけど、魅力的だからこそ、エルヴィーラもツェルリーナもほろっとくる。倫理の規矩に縛られないその奔放な生き方は男にとっては憧れだ。そんなジョヴァンニにモーツァルトはとびきりセクシーな音楽を書いた。地獄に落として安っぽい勧善懲悪譚で終わらせるには魅力的すぎる。ジョヴァンニは異端として描かれるが、神話の常として、その異端は男女を問わず人間誰もが心に宿している本能の一部分をデフォルメして擬人化したものだ。だから、エルヴィーラも、ツェルリーナもジョヴァンニに魅せられ、そしてこの演出ではアンナも最初からジョヴァンニの魅力に引き込まれる。

今日の段階でも、軽快に決まるアンサンブルは十分魅力的だったが、ポディウムからはマエストロ沼尻から音程やタイミングについて大きな声が飛んでいた。本番はしっかりとしまるだろう。今日拝見したのは、11月24,27日の若手組。みなさん颯爽たるアスレティックな動きで、演劇としてみても面白い。二期会の若手美男美女を揃えたキャストは、ヴィジュアル的にもすばらしい。

ジョヴァンニの魅力を鏡として引き立てる女性3人は、それぞれ声の個性が際立つ。文屋小百合さんのアンナの硬質で端正な輝き。立ち姿が抜群に美しく、セクシーな声が魅力的な小林由佳さんのエルヴィーラは、所々音程に不安定なところがあったが本番は期待できる。そしてコケットたっぷりで美しいディクションを聴かせる盛田麻央さんのツェルリーナ。

ジョヴァンニ地獄落ちのあとの幕切れのオチについては、ネタバレ勘弁とのことだったので書かない。彼が3人の女性をどう変えたのか、ぜひ本番の舞台でご覧いただきたい。

ペータース版ヴォーカルスコアによると、10番オッターヴィオ、21番レポレッロとツェルリーナの二重唱から21番bエルヴィーラのアリアがカットされていた。

11月23,24,26,27日、日生劇場で初演の後、共同制作パートナーのライン・ドイツ・オペラでも上演される。