オーブリー・ビアズリーのことは、ラファエル前派とか、オスカー・ワイルドとの関係で、まんざら知らないこともない。そもそも、『サロメ』の挿絵のインパクトは強烈だから、一度目にしたら忘れたくても忘れられない。
が、好きな人は好きだろうな、と思いこそすれ、私自身は好きだと思ったことはない。それだけに、三菱一号館美術館でビアズリーの特別展が開催されると知った時はスルーしてもいいかなという気もしたけれど、イギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館の全面協力の下、コレクションが一気に150点まとめてやってくるという触れ込みにつられ、「ま、これも勉強かな」くらいの気持ちで行ってみることに。
これまであちこちの印刷媒体で目にしてきたビアズリーの有名イラストも、正面から実物と向き合うと意外と印象が変わる——私ごときが言うのもなんだが、さすがによく出来ている。線の綺麗さもさることながら、モノクロの小さい作品なのにそれぞれ構成や構図がうまく/おもしろく決まっていて、でもそれってたくさんの作品を一気にまとめて見られるからこそ気づけることだよな、そういうところが特別展の醍醐味だよな、ビアズリーはあんまり私の趣味じゃないとか言ってスルーしてないで美術館に足を運んでよかったよかった。
いやほんと、25歳の若さで結核で死去していなければ、その先の作風がどう変わっていっただろうと思うと残念でならない。私自身が更年期もそろそろ終わりそうな年齢になったからこそつくづく思う。誰であろうと夭逝なんてもったいないだけだ(もちろん、ビアズリー本人は若くして死ぬこどなど全く望んでいなかっただろうけど)。